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令嬢たちのざまぁコレクション(一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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07 毒の才能が招く破滅は王子の末路がよく似合う。無実が証明されるのは時間の問題ですが愚かなあなた方と関わる気はありません

婚約破棄

 場所は王立魔法学園の卒業パーティ。若きエリートたちが集う華やかな場だが突如、中央の壇上で鐘が鳴り響く。


 第二王子ジルベルトが冷たい眼差しでアデリアを見据えた。


「アデリア・クロイツェル!今をもって貴様との婚約を破棄する!」


 会場にどよめきが走る。アデリアは淡い青のドレスに身を包んだまま、壇上のジルベルトと隣で震えるように立つエリティスリを見上げた。


「なぜです、殿下?」


 問う。転生者であるアデリアは外科医であった前世の経験から、相手の心拍数や呼吸、視線の動きで嘘を見抜くことに長けていた。

 ジルベルトの瞳には微かな動揺が見て取れる。ジルベルトは激昂したように叫ぶ。


「な、なぜだと?貴様は治癒魔法の才能に恵まれたエリティスリを、故意に魔法薬の実験台に使おうとしたではないか!エリティスリが王宮に持ち込んだ薬草の種を貴様の研究室で毒草にすり替えた!底知れない嫉妬と悪意が学園の、王国の宝たるエリティスリを危地に晒したのだ!」


 エリティスリはか細い声で「アデリア様は、きっと私の才能を妬んで……」と囁き、泣き崩れる。周囲の生徒たちは一斉にアデリアを非難する眼差しを向けた。


 だが、微動だにしなかった。前世で数々の難手術を成功させ、修羅場を潜り抜けてきた彼女にとってこの程度の茶番は取るに足らないと、壇上に一歩近づいた。


「殿下。一つお伺いします。エリティスリ嬢を実験台にしようとした、魔法薬の実験記録はどこにありますか?侯爵家の研究室の記録は厳重で外部への持ち出しは不可能です」


 ジルベルトは言葉に詰まる。


「そ、それは……エリティスリがメモ書きを見たと言っている!」


「メモ書き?稚拙ですね。では、薬草のすり替えについて。薬草の種をすり替えたのは学園内の植物学の第一人者である、ハインリヒ教授の立ち会いのもとでした。教授はエリティスリ嬢が持ち込んだ薬草が毒性に傾いた突然変異種であったため、緊急で安全なものと交換したことを証言されますが?」


 視線が会場の隅に立っている教授を捉える。教授はジルベルトの権力におびえていたが、強い眼差しに頷くしかなかった。


「そして、重要なこと。殿下。エリティスリ嬢の治癒魔法の才能についてですが」


 一瞬言葉を切り、鋭く言い放った。


「才能は治癒魔法を装った、毒性のある魔力を操作する異質な力だと知っています。隠すために陥れた。殿下は力を利用したいがために断罪劇を打ったのでしょう」


 ジルベルトの顔色が完全に青ざめると会場は再び静まり返った。アデリアの言葉には、反論ではない確固たる科学的根拠を持つ者の自信が滲む。王子を見限るように冷たく言い放った。


「無実が証明されるのは時間の問題。ですが、愚かなあなた方と関わる気はありません」


 自ら持っていた婚約指輪をジルベルトの足元に投げ捨てた。


「婚約破棄、喜んでお受けします。どうぞ、その毒の才能を持つ女と、ご自分がお望みになる破滅の道をお進みくださいな」


 誰にも見向きもせず、高潔な外科医のような毅然とした足取りできらびやかな会場から一人、闇の中へと消えていった。

 当て馬扱いしていたアデリアが学園のパーティを去った後、ジルベルト王子とエリティスリが築いた関係は脆くも崩れ去り始める。


 治癒魔法を装った毒性のある魔力は短期的な回復効果をもたらすものの、長期的には対象の体組織を徐々に破壊する危険な作用を持っていた。


 王子ジルベルトは、エリティスリの力を特別な才能と信じて国の要人や傷ついた兵士に彼女の治癒を施させたが、結果、癒された人は次々と原因不明の難病に倒れていく。

 王子自身も質の悪いエリティスリの魔力を頻繁に受けたことで、体調が急激に悪化。アデリアが指摘した通り、体は内部から毒に侵食される。


 婚約破棄から一年後、王国は内側から崩壊寸前の危機に瀕する。


 ジルベルトが隠蔽していたエリティスリの力の真実と、婚約者たるアデリアを陥れた動機。エリティスリの力を手に入れたかったためということが、王宮の隠密調査団によって暴かれた。

 病に伏し、魔力の暴走によって皮膚がただれ始めたエリティスリは「助けて、ジルベルト様!」と叫ぶが、同じく毒に蝕まれて手足の自由を失ったジルベルトは救うことができない。

 アデリアの知識と配慮があれば避けられたはずの、自業自得の破滅を経験する。


 王子は、国政の混乱と王族としての義務を放棄した罪で王位継承権を永久に剥奪され、エリティスリは異端の魔女として地下牢に幽閉される。

 互いに相手のせいだと罵り合いながら、嘲笑したアデリアの冷静さと正しさを身をもって思い知らされることになるわけだ。


 アデリアは追放後、人里離れた辺境の地に前世の知識を活かした総合医療研究施設を設立していた。

 貴族社会で軽視されていた科学的な衛生管理、無菌状態での手術技術といった前世の外科医の知識を導入。

 ファンタジー世界の治癒魔法では治せない難病や怪我を次々と治し、白衣の聖女として信頼を勝ち得る。


 既存の曖昧な魔法薬の調合に前世の化学知識を応用。効果を安定させ副作用のない革新的な新薬を大量生産し、領地の財政を潤す。


 王国がジルベルトとエリティスリによって引き起こされた毒による難病のパンデミックに直面した時、唯一それを治せる可能性のある人物として助けを求める使者が送られる。

 使者は断罪した貴族たち。辺境の地に立つ、近代的な病院と活気あふれる街を見て驚愕。病を治す条件として、以下の破格の要求を突きつける。


 クロイツェル侯爵家の無条件での名誉回復と王家を凌ぐ絶大な権限の付与。提唱する医療制度。公衆衛生、病院建設、医学教育を全国に導入すること。

 地下牢にいるジルベルト王子とエリティスリに対し、自分が開発した毒を中和する薬を投与する権利。


 王国はアデリアの要求を全て受け入れざるを得なかった。自らジルベルトとエリティスリの幽閉された牢を訪れる。

 絶望し傲慢さは完全に消え失せていた。

 毒を中和する薬を投与する。

 しかし、彼女が施したのは完全な治癒ではなく死に至る毒を取り除くが、才能と体力を永久に失わせる処置だ。


「これであなた方は死ぬことはありません。毒に侵された体はもう元には戻らない。どうか残りの人生で愚かさがどれほどの犠牲を払わせたか一生かけて後悔なさい」


 元婚約者たちに救いの手を差し伸べることで精神的なプライドを完全に打ち砕き完成させた。


 救国の賢者公爵として王国の政治と医療の中心に立ち、前世の知識とこの世界の魔力を融合させた新たな文明を築き上げていく。


「よし、今回はいい感じだろう」


「ちょっとズレていますよ」


「え?」


 傍には知性と才能を理解し、支える優秀な協力者たちが集る。


「ふふ」


「あはは」


 のちに夫婦となる男女の会話が研究室に響いた。

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