06 追放された辺境の老賢者は美味しい保存食を作りながら暮らすとストレス皆無で天国に行く前に天国を作ってしまったようじゃ……すまんな!
男主人公
王宮付きの宮廷魔導士だった老賢者、アルパース。保守的な貴族たちに疎まれ、古い時代の魔術に固執する愚か者として辺境の森の奥深くに追放されてしまったものの、張本人は全く気にしていない。
(ふぉっふぉっふぉ。これでようやく、煩わしい会議や儀式から解放され、ワシの保存食研究に没頭できるわい!)
王宮から持ってきた、唯一のアイテムは自身が現代の知識を基に具現化した高性能魔導冷蔵庫、アイスボックス。温度と湿度を完璧に制御し、食材の鮮度を永遠に保つことができる魔法の道具。
追放された森の奥でアルパースは小さな小屋を構え、研究とスローなるライフを始めた。
最初に着手したのは森で豊富に採れる魔法のハーブで強い香りと薬効を持つものと、野生のベリーを活かしたコンフィチュールのジャム作り。
(ベリーは酸味が強く、そのままでは食べづらいが低糖度ジャムの技術と、魔導冷蔵庫による真空低温殺菌を組み合わせれば保存食になるじゃろう)
熟練の職人技を再現する真空低圧煮込み釜はベリーを低温低圧で煮詰めることで、果実の色や風味や栄養素を損なうことなく砂糖の使用量を最小限に抑える。
ハーブ浸漬制御ま魔法、ハーブの香りをジャムに最適な時間だけ移し、苦味が出ないように取り出す。
魔導真空充填魔法は完成したコンフィチュールを殺菌したガラス瓶に真空状態で充填し、長期保存を可能にする。完成したコンフィチュールを焼きたての硬いパンに塗って味わう。
「うむ!酸味と甘みの完璧なバランス!強いハーブの香りが味に深みを与えておる。素材本来の風味が凝縮されておるわい。ふむふむ」
コンフィチュールの瓶は見た目も美しく、魔法のハーブのおかげで食べる者に活力を与える効果もある。まったりと食べて楽しむ。
森の近くに住む一人の若い女性ハンター、ブランシカがアルパースの小屋を訪れた。森で獲れた獲物を売り、生活しているとか。アルパースが差し出したコンフィチュールをパンにつけて食べると、美味しさと身体に満ちる温かい力に驚く。
「こんなジャム……美味しいだけでなく体が軽くなる気がします。魔法のようです。美味しい」
「ふぉっふぉっふぉ。魔法じゃよブランシカ。食の魔法じゃ。森の恵みを形で残す研究をしておるのじゃ」
老賢者は追放者ではなく、森の奥で静かに暮らす美食の仙人のように見えたブランシカはこれから研究に協力し、森の素材を届けることを申し出る。
まったりもっちりとした保存食研究生活は、こうして始まった。老賢者とスローライフ友達になった女性はストレス皆無の生活を送っていく。




