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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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56/60

56転生者の異世界貿易。エルフの美しい織物やドワーフの精巧な細工品を地球に持ち帰り、代わりに地球の珍しい食料品や日用品を異世界へ

ざまぁなし/ほのぼの

 異世界に転生して早数年。苦労した。とてつもなく。ユーキュは魔法の才能を開花させ、地球との貿易も少しずつ軌道に乗せていた。

 頑張った自分。エルフの美しい織物やドワーフの精巧な細工品を地球に持ち帰り、代わりに地球の珍しい食料品や日用品を異世界へ。


 なんとか形にした。一人で始めた貿易はユーキュにとって刺激的で、どこかゲームの攻略のような面白さがある。刺激はやりがい。


 ある日。ユーキュは新たな交易品を探して、これまで足を踏み入れたことのない深い森へとやってきた。

 暗いように感じたので魔法で光を。鬱蒼とした木々が生い茂り、昼なお暗い森の中はどこか神秘的な雰囲気を漂わせている。

 魔法で身を守りながら慎重に進むユーキュの耳に微かな泣き声が聞こえてきた。


「誰か、いる?」


 警戒しながら声のする方へ近づくと、大きな木の根元で小さな生き物がうずくまっている。

 それは、手のひらほどの大きさの、ふわふわとした毛並みを持つ生き物。大きな瞳には涙が溜まり、小さな体は震えている。


「どうしたの?」


 ユーキュがそっと声をかけると、その生き物はビクッと体を震わせた。言葉は通じないようだが。

 優しい眼差しを感じ取ったのか、逃げる様子はない。よく見ると小さな足には棘が刺さっている。

 それが痛くて動けないようだった。ユーキュは持っていたポーションの中から、傷を癒す効果のあるものを取り出すと生き物の足に塗ってやる。


「よーし、これで」


 淡い緑色の光が傷口を包み込み、みるみるうちに棘の跡は消えていった。不思議そうに自分の足を見つめていた生き物は、やがて顔を上げる。ユーキュの目をじっと見つめる。

 小さな声で何かを呟いた。それは、ユーキュには理解できない異世界の言葉だったが感謝の気持ちが込められていることは伝わってきたほど。


 お礼かな?ユーキュは、自分の持っていた小さなクッキーを差し出した。生き物は恐る恐るそれを受け取ると、一口食べ目を丸くする。美味しそうにクッキーを頬張る姿を見て、ユーキュの心も温かくなった。

 それからというもの、ユーキュが森を訪れるたびに、その小さな生き物は現れるようになる。名前がないと呼ぶのに不便。


 ユーキュはコロと名付けた。コロは言葉こそ話せないものの、ユーキュの言葉を理解しているようだった。ユーキュが悲しい時にはそっと寄り添い、嬉しい時には一緒に飛び跳ねて喜んだ。


 ある日、珍しい薬草を見つけられずに困っていると、コロはちょこちょこと森の中を駆け回る。やがてユーキュの足元に、探していた薬草をくわえて持ってきた。

 賢さにユーキュは驚く。コロの優しさに心が満たされた。


「ありがとう、コロ」


 言葉は通じなくても心は通じ合えるとユーキュはコロとの触れ合いを通して、異世界の住人との間に育まれる温かい絆を実感していた。

 一人で始めた異世界での生活は、決して孤独なものではない。言葉を超えた深い友情を育んでいきたいと、ユーキュは心の中でそっと誓う。


 異世界での貿易も落ち着き、ユーキュは最近地球から持ち込んだレシピを異世界風にアレンジすることにハマっていた。


 ふっくらと焼き上げたパンケーキは優しい甘さと食感で、ユーキュのお気に入りの朝食となっていた。

 ある日のこと。いつものように森の中で採取したベリーを添えてパンケーキを焼いていた。甘く香ばしい匂いが、静かな森の中にふわりと広がる。


 どこからともなく小さな羽音が聞こえてきた。


「ん?何の音?」


 ユーキュが顔を上げると目の前にキラキラと輝く小さな生き物が現れた。それは、絵本で見たことのある妖精。

 手のひらに乗るほどの大きさで、透明な羽を忙しなく羽ばたかせている。

 パタパタと光の粉が舞う。妖精は、ユーキュが焼いているパンケーキを、興味津々といった様子で見つめる。

 驚く。


「わあ、本物の妖精!」


 びっくりしてしまう。ユーキュが驚いて声を上げると、妖精は少し警戒したように体を後ろに引いた。あっ、となる。ユーキュは慌てて両手を広げ。


「怖くないよ」


 と優しく話しかけた。


「へ、平気だよ〜、怖くないよ〜」


 言葉は通じないようだったが、ユーキュの穏やかな表情を見て、妖精は少しずつ警戒を解いていった。ユーキュは焼き立ての小さなパンケーキを妖精の前に差し出してみる。

 妖精は恐る恐る近づくと、小さな指でパンケーキをちょんと触り、その甘い香りに誘われるように、一口かじった。

 その瞬間、妖精の小さな顔がぱっと明るくなった。


 キラキラとした瞳がさらに輝きを増し、夢中でパンケーキを食べ始める。可愛らしい姿に顔も自然とほころんだ。それからというもの、ユーキュが森でパンケーキを焼いていると妖精は必ず現れるようになった。


「用意しておいたよ」


 ユーキュは妖精にピピという愛称をつけた。ピピはユーキュがパンケーキを焼く様子を、いつも楽しそうに眺め時には、いたずらっぽくベリーを一つかっさらって、慌てて逃げていくこともあったが。


 ユーキュは、そんなピピの行動も微笑ましく思っていたある日。ユーキュがパンケーキを焼きすぎてしまった時、ピピは仲間たちを連れてやってきた。


「お、消費してくれる?」


 小さな妖精たちがユーキュの周りを飛び回りながら美味しそうにパンケーキを頬張る光景は絵本の中のよう。

 言葉を交わすことはなくても、ユーキュと妖精たちの間には、温かい交流が生まれていた。パンケーキの甘い香りと、このほのぼのとした時間が、異世界での生活をより豊かなものにしてくれていると感じる。


 いつまでもこの穏やかな時間が続けばいいなと、心の中でそっと願う。

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