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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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52/65

52仮面令嬢の演劇と氷の断罪。陥れる?私はあなたの脚本を最後まで演じて差し上げただけです。あなたが始めた罪人が断罪される劇の正しい結末を

断罪/追放/婚約破棄

 侯爵令嬢ローザは、王都随一の美貌を持ち、冷たい女として完璧さで知られていた。


 その日、事件は王立歌劇場で起こった。彼女の婚約者の第三王子ヒヤシウスは舞台上で劇団の看板女優アネットを抱きしめ、ローザに刻々と告げる。


「ローザ。お前との婚約を破棄する」


 会場は騒然となり、さらにヒヤシウスは激昂した声でローザを断罪する。あまりの暴挙に客たちは混乱をきたす。


「お前は私との婚約を利用して、劇団の運営資金を横領した!愛するアネットを妬み、舞台で使う小道具に細工をしたな」


 アネットは涙目でこれみよがしに訴える。


「ローザ様っ、ど、どうかお許しを。でも、あなたから受け取った資金の帳簿は」


 すべてがアネットによる巧妙な芝居。帳簿の偽造、細工の濡れ衣。ローザの完璧さが周囲の妬みを呼び、罠に嵌められたのだ。


「そんなはずは、私は何も」


 反論しようとするが誰も聞かない。ヒヤシウスはローザの顔に手を伸ばし、美貌を保つためにいつも顔に当てていた純銀の仮面を容赦なく剥ぎ取った。


「醜い心を持つ者に仮面は不要だ。お前を貴族籍から除名し、北方の鉱山へ送る。そこで一生、罪を償え!」


 ローザは観客を見つめ、無言で衛兵に連行された。


 北方の鉱山は過酷な労働と飢えが蔓延する場所だが、ローザは貴族令嬢として育った体力を意外な才能で補った。人の心を操る演技力と洞察力。持ち前の冷たい美貌と完璧な立ち居振る舞いを武器にした。


 鉱山で働く人々や監督官の欲望、弱み、不満を徹底的に観察、監督官に対しては従順で無力な美しさを演じ、労働者には公正な管理者を演じ分ける。人の間の対立を巧みに煽り、彼らが持つ情報を引き出し、元に鉱山の権力構造を掌握していく。


 数ヶ月後、ローザは表向きは奴隷だが実質的に鉱山全体を裏から操る影の支配者となっていた。鉱山で掘り出される貴金属を秘密裏に横流しし、潤沢な資金と心酔する私設の護衛団を作り上げた。


(ヒヤシウス。アネット。舞台はもうすぐ終演よ。今度はの演目は復讐劇の始まり)


 王都ではアネットを王太子妃に迎え、贅沢な演劇に国費を注ぎ込んで国の財政は悪化し、貴族たちはヒヤシウスのわがままに不満を募らせていた。

 国境付近の鉱山から、王室へ納められるはずの貴重な鉱石が突然途絶えると国はパニックに陥った。ヒヤシウスは鉱山を視察するために北へ向かう。


 そこで彼が見たのは以前とは比べ物にならないほど洗練され、武装した都市に変貌した鉱山だ。都市の中央には黒いドレスを纏い、顔に新しい純金の仮面をつけた女性が立っている。


「歓迎いたします、第三王子ヒヤシウス様」


 声はローザの冷たい声によく似ていたが、今は絶対的な権力を帯びていた。


「き、貴様はローザなのか?」


 ローザは優雅に微笑むが、仮面の下の表情は誰にも見えない。


「ローザ?ああ、貴族籍を剥奪された罪人のことですか。残念ながらその者ではありません。私は北方の支配者。あなたの国を助けて差し上げられる唯一の存在です」


 ヒヤシウスを無視し、連れてきた護衛団のリーダーに指示を出す。


「王子殿下を丁重に客人としてもてなせ。ただし、王都に戻るか戻らないかは、こちらの気分次第」


 ヒヤシウスは完全に立場が逆転したことに気づき、恐怖で立ち尽くす。ローザは自分が受けた屈辱の舞台を見事に復讐の舞台へと変えて見せたのだ。


 ヒヤシウスは北方の都市で丁重な客として扱われたが豪華な檻の中にいるのと同じだった。ローザの許可なく一歩も外に出られない。ヒヤシウスの面前で国の全権を握る準備を進めた。


「ヒヤシウス様。国の財政は鉱石の供給なしには持たない。したがって、私たちはあなたの国の財政顧問としてすべてを管理します」


 ヒヤシウスが自分にしたように権力と自由を一つずつ剥ぎ取っていく。彼は焦り、王都に残したアネットに助けを求める手紙を送る。


 その頃、王都ではアネットが王妃の座を目前に不安に苛まれていた。ヒヤシウスが北へ行ってから連絡が途絶えたためだ。

 ローザの父である侯爵家を味方につけようとするが侯爵は娘の無実を知っており、アネットを冷たく突き放す。


 ついには、アネットの過去の悪事が暴かれ始める。劇団時代の横領、他の女優への嫌がらせ、ローザへの冤罪の証拠がどこからともなく貴族たちの手に渡り始めたのだ。鉱山に追放される前に計画として仕込んでいた復讐の仕掛けだった。


 混乱した王都にローザからの公式文書が届く。


「第三王子ヒヤシウスは、国の危機に際して、当方の協力を得るため、全権を北方の支配者に委任した」


 偽りの文書だったがヒヤシウスが北方にいるため、誰も確認できないとアネットは絶望する。作り上げた舞台は、ローザの仕掛けたより大きな舞台によって一瞬で崩壊したのだ。


 アネットは自らの潔白を証明するため単身、北方の都市へ向かうしかなかった。到着し待っていたのは煌びやかな劇場だった。ローザは鉱山の労働者たちを楽しませるために立派な劇場を建設していたのだ。


 舞台の上には玉座に座るローザと足元に跪かされているヒヤシウスの姿が。


「アネット……どうして来たんだ」


 ヒヤシウスが悲鳴のような声を上げるとローザは舞台の上で、アネットがやったように優雅な演技を始める。


「素晴らしい女優のアネット様。まさか、このような寂れた劇場に足をお運びいただけるとは」


 アネットは震える声で訴える。


「ローザ!あなたは生きていたのね!私を陥れたのはあなたでしょ!?」


 静かに笑う。


「陥れる?私はあなたの脚本を最後まで演じて差し上げただけです。あなたが始めた罪人が断罪される劇の正しい結末を」


 そして、ローザは部下に指示を出す。


「捕らえよ。国の財政を破綻させた真の罪人です。私が受けた罰である終身、鉱山での肉体労働を与えなさい」


 アネットは自分自身が作った舞台の上で、自分が演じた悪役の末路を辿ることになった。ヒヤシウスは愛する女性が地獄へ落ちるのを無力なまま見ていることしかできない。ローザは玉座から立ち上がり、仮面に触れる。


「演劇はここで終わります」


 自分の手で仮面を外し、王都へ戻ることを拒否した。


「王都は舞台ではない。私の舞台は新しい帝国」


 ローザは北方の支配者として、ヒヤシウスの国を実質的に併合し、仮面を外した素顔で自由と力を手に入れた。

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