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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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51/60

51 周りが魔王の娘だからと冷遇してくるならばこちらも同じくそれ以上にし返すから楽しみに待っていて、きっと泣き叫んでもやめるつもりはないから。崩壊する国で人は後悔に叫び出す

冷遇ざまぁ

 目が覚めたら、豪華だけど薄暗い部屋の中だったロアミ・フランソワーズは昨日まで、普通の教員だったはずなのにどうやら乙女ゲームに出てくる意地悪な悪役令嬢に転生してしまったらしい。


 プレイしたはしたが、あまり起動してない類のゲームだったし、しかもなんだか様子がおかしい。周りの人間は冷たい目で見るし、陰口も聞こえてくる。


「魔王の娘」


「忌み子」


 一体どういうこと?

 調べていくうちに、自分が魔王の血を引く人間と魔族のハーフだと知った。この国は昔から魔族を恐れていて、疎ましく思っているらしい。

 はぁ?とか、アホかこの人達という気持ちが日々強くなる。力は誰よりも強いのにそのせいで逆に人間たちに警戒され、バカにされる毎日。


「もう我慢できない!」


 ある日心に誓った。こんな理不尽な世界、ぶっ壊してやろう。特に、ずっと見下してきたこの属国。魔法の力を使って、徹底的に潰してやるんだから!


 ロアミは、まず手始めに情報収集を始めた。侍女や使用人たちの会話に耳をそばだて、こっそり抜け出しては街の様子を観察する。他愛無い。

 属国の人々は、王都からの搾取に苦しみ、日々の生活に疲弊しているようだ。


「ふ〜ん、人間って弱い生き物みたい」


 そう思いながらも、ロアミの心には複雑な感情が湧き上がっていた。前世ではごく普通の生活を送っていた彼女にとって、この世界の貧しさや人々の苦しみはどこか、他人事のように感じられた。


 令嬢として、魔王の娘として生きる中で、彼女の中に眠っていた魔族の血が徐々に、人間たちへの憎悪を掻き立て始めていた。


 ロアミは自室で、密かに魔法の練習を始め、前世の知識と、この世界で与えられた強大な魔力。組み合わせることで、ロアミは恐るべき破壊力を持つ魔法を次々と生み出していった。


「この力があれば、あの忌々しい属なんて、簡単に消し去ることができる」


 決行の日が近づくにつれ、ロアミの目は冷酷な光を宿していく。自分を蔑んだ人間たちに、絶望と恐怖を味あわせることを想像し、密かにほくそ笑んだ。


 ついに、その日が来た。満月の夜、背後には、黒々とした魔力が渦巻かせながら、静かに城を抜け出すと単身で属国の王都へと向かった。

 王都に近づくにつれて、ロアミは自身の魔力を高めていく。黒い霧のような魔力が彼女の体を包み込み、周囲の空気をビリビリと震わせる。


「愚かな人間。お前たちの本音を聞かせてもらうわよ?」


 ロアミはそう呟くと、掌を王都の方向へ向け、強力な魔法を発動させた。人々の心に直接作用し、普段は隠されている本音を強制的に口に出させるという、恐るべき魔法。


 魔法が王都全体を覆った瞬間、街中から悲鳴や怒号。今までひた隠しにされてきた、醜い感情が噴き出し始めた。


「うわああ!王様なんて大嫌いだ!税金ばかり取りやがって!」


「あの金持ちの旦那、いつも若い娘を侍らせていやがる!」


「隣の家の奥さん、いつも私の悪口を言ってるんだ!」


「本当はあいつのこと、ずっと羨ましかったんだ!」


 王宮の中も例外ではなかった。大臣たちが互いの陰謀を暴露しあい。兵士たちは日頃の不満を叫び散らす。王は玉座の上で。


「もっと贅沢がしたい!美味しいものが食べたい!」


 と駄々をこね始めた。ロアミは、阿鼻叫喚の王都を見下ろしながら、冷たい笑みを浮かべた。


「これが、お前たちの本性。表では良い顔をして、裏では醜い欲望と憎悪に満ちている。こんな偽りの世界、壊して当然!」


 魔法の効果は徐々に広がる。街は混乱の極みに達した。普段は理性によって抑えられていた人間の本音がむき出しになり、秩序は崩壊寸前。ロアミは、その様子を満足そうに眺める。


「さて、次はどうしよう?」


 彼女の瞳には、破壊への欲望が宿る。魔法の効果範囲をさらに広げ、その強度を高めた。王都の外にまで広がった魔法は、周辺の村々や街道を行き交う人々にも影響を与え始める。


「なんだ!?急に体が熱いぞ!」


「言いたくないことまで、口から勝手に出てくる!」


 普段は穏やかな農民たちが、隣人への不満や隠していた不倫関係を暴露しあい、小さな村はたちまち大騒ぎになった。街道では、商人たちが法外な利益を上げていたことや、客を騙していたことを告白し始め。信用は失墜し、取引は停止した。

 王都では、混乱がさらに悪化していた。


 今まで取り繕っていた人間関係は崩壊し、憎しみや妬みがむき出しになった人々が互いに罵り合い、時には暴力を振るう者まで現れた。治安維持にあたるはずの兵士たちも、上官への不満や同僚への嫉妬を爆発させ、職務を放棄する者が続出。


 王宮内では、王族たちの醜い争いが繰り広げられ、王国の権威は地に落ちた。ロアミは、高台からその光景を冷ややかに見下ろす。魔法によって暴かれた人間の本性は、彼女が想像していた以上に醜く、脆かった。


「これが人間というもの。表面だけ飾り立てても、中身はこんなにも腐っている。こんな世界に生きる価値などない」


 彼女の心には、怒りや憎しみだけでなく、深い失望感が広がっていた。人間という生き物に対する希望は、完全に打ち砕かれたと言ってもよい。


「はぁ、あっさりしすぎてる」


 魔法の効果は数日間に渡って続き、属国は完全に機能不全に陥った。

 経済は停滞し、人々の心は荒廃し、社会の秩序は崩壊。


 存在していたであろう穏やかな日常は、跡形もなく消え去った。ロアミは、ガタガタになった属国を見渡し、静かに呟く。


「さて、そろそろ潮時かなぁ」


 彼女の瞳には、次なる行動を示す冷たい炎が宿る傍には、常に一人の影が寄り添っていた。漆黒の髪に、どこか憂いを帯びた瞳を持つ青年、セイディア。

 彼はロアミがこの世界に転生して以来、ずっと彼女の世話役を務めてきた。セイディアは、ロアミが魔王の娘であることを知っても他の人間のように、彼女を恐れることはなかった。強大な魔力と、時折見せる脆さや孤独に惹かれている。


 愚かな人間たちがロアミを蔑むほどに、心は彼女への愛情を深めていった。混乱が極まる王都を見下ろすロアミの横顔を、セイディアは静かに見つめていた。

 彼女の瞳に宿る冷たい炎は、美しくもどこか痛々しい。


「ロアミ様」


 セイディアは、そっと声をかけた。彼の声は優しく、わずかに震えていた。


「このまま、全てを壊してしまうのですか?」


 ロアミは、セイディアの方へゆっくりと視線を移した。その瞳には、まだ拭いきれない怒りと、ほんの少しの迷いが宿っている。


「こんな世界、残す価値なんてない。人間たちは愚かで醜いし、私をずっと苦しめてきた。滅んで当然」


 セイディアは、悲しげに目を伏せた。


「ですが、ロアミ様。全ての人々が愚かで醜いわけではありません。中には、心優しい人々も」


 ロアミは、セイディアの言葉を遮った。


「そんなの、ほんの一握りでしょ?私はもう人間に期待することなんてできない」


 声は冷たいが、奥には深い悲しみが滲む。セイディアは、そんなロアミの痛みを理解しているからこそ、何も言い返せず。しばらくの沈黙の後。セイディアは、意を決したように顔を上げる瞳には、強い決意が宿っていた。


「ロアミ様。もし、あなたが全てを壊してしまうというのなら……せめて、その最期をこの目で見届けさせてください。そして、もし許されるのなら……あなたの傍で、共に滅びさせてください」


 セイディアの言葉は胸に深く突き刺さる。冷静で控えめな彼が、これほどまでに強い感情を露わにするのは初めてだった。

 瞳に映る自分は、冷たい悪役令嬢ではなく、ただ孤独を抱える一人の少女のように見える。


「セイディア……」


 今までになく弱々しくセイディアの言葉は、ロアミの心に小さな波紋を広げた。全てを破壊することへの躊躇いではない。初めて他者から向けられた、純粋で深い愛情への戸惑いだ。


 長年積もり積もった人間への不信感と憎悪は、そう簡単に消えるものではない。属国が本音を曝け出し、醜い争いを繰り広げる様を見るにつけ、ロアミの心は再び冷たい感情に支配されていく。


「セイディア……あなたの気持ちは、わかった。ありがとう。でも、私の気持ちは変わらない」


 再び王都へと視線を戻し、掌には、黒い魔力が渦巻き始めている。


「こんなにも醜い本性を晒け出した人間たちに、生きていく資格はない。苦しみ、もがいて、絶望してもらう」


 ロアミは、さらに強力な魔法を発動させた。精神を蝕み、絶望の淵へと突き落とす黒い波動。街中には、すすり泣く声、狂ったように笑う声、静かに希望を失っていく姿が広がっていった。

 作物は枯れ、井戸水は濁り、街は急速に荒廃していく。心は希望を失い、生ける屍のように彷徨い始めた。


 ロアミは、光景を冷たい瞳で見つめる。セイディアは、静かに傍らに立ち、破壊の光景を見守っていた。心から愛するロアミを止めることができない無力感。背負う孤独への深い悲しみが、渦巻いていた。


「帰ろう」


 数日が過ぎ、賑やかだった属国の王都は、見る影もない廃墟と化し生き残った皆も、精神を深く傷つけられ、絶望の中にいる。そのような光景を前にしても、冷たい表情を崩すことはない。


「これで終わり。人間たちの時代は、終わった」


 街の静寂の中に、冷たい響きを伴って消えていくロアミの背中を、ただ静かに見つめていることしかできなかった。


「帰ったらなにか美味しいものでも、食べよう」


 意気消沈している男を連れて、踵を返した。

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