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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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49/62

49 無能ですって?いいえ、本当の無能はあなたですわ。自分の悪意が自らを破滅させることすら気づかないなんて、ね?

 私こと、ファーマンナ・ラヴィニアは、前世の記憶を持つ異世界転生者。類い稀な美貌を持つがゆえに、常にトラブルに巻き込まれてきた。

 今日もそう。社交界の華とうたわれる侯爵令嬢のソフィアが、醜い嫉妬の目で睨みつけている。美貌を妬み、社交界から追放しようと画策していた。


「ファーマンナ様、このような場所で安酒を飲むとは、下賤なこと。あなたの品格を疑いますわ」


 ソフィアは人の注目を浴びながら、わざと大きな声で罵った。周囲の人が、嘲笑をこらえきれずにいる状況に前世の記憶が蘇ったらしい。

 いつも理不尽な目に遭い、何もできず耐えるしかなかった過去、静かに微笑み手に持ったグラスを床に置いた。


「侯爵令嬢がそのようなことをおっしゃるなんて、お育ちが知れますわ。安酒でもあなたのような濁った心よりはよほど清らかでございます」


 ソフィアの顔が赤くなると怒りに震えながら、隠し持っていた魔法の護符を取り出した。


「うるさいわ!この護符を使えば、あなたの美貌は醜いシミで覆い尽くされるのよ!誰もお前を相手にしない!」


 ソフィアが護符を向けた、その瞬間。体内から巨大な魔力が溢れ出したそれは、美貌そのものが持つ呪いを解き放つ力。望まない悪意を、すべて弾き返す魔法。

 護符から放たれた光が、魔力に触れた途端に反転、光はソフィア自身に向かい顔面を覆い尽くす。


「きゃああああ!」


 悲鳴が響き渡ると顔には、泥を塗られたかのような醜いシミが無数に浮かび上がり、見るも無残な姿に変わっていた。周囲の貴族たちは、悲鳴を上げるソフィアを見て、驚きと同時に嘲笑を隠せない。


「私の……私の顔が……か、か!」


 床に崩れ落ち、醜い顔を両手で覆った。近づき、静かに囁く。


「ごきげんよう、ソフィア様。美貌を失ったあなたに、社交界での居場所はございません。ご自身の悪意が醜くなったのです。自業自得、とでも申しましょうか」


 絶望に顔を歪ませ、何も言い返せない。背を向け、会場を後にした。これから先、このような出来事が何度起きても、魔法で理不尽な悪意をすべて跳ね返していくことができる。


 次のターゲットは、名門貴族の子息、ディラン。自らが持つ剣の腕前を鼻にかけてこちらを何故か、か弱い女と見下していた。


「ファーマンナ殿。剣も持たぬお前のような娘は、この世界では生きていけぬ。私の妻となれば、守ってやることもできるのだが」


 ディランは護衛を追い払い、屈辱的な言葉を投げかけた。傲慢な笑みに、前世の記憶を重ねる。

 能力を理解しようともせず、ただの女としてしか見ない、彼らはいつも支配しようとしてきたが。自分の力で立ち上がることを選んだのだ。


「私を守る?傲慢な言葉、後悔させてあげましょう」


 微笑み、持つ愛剣に触れた。魔力は、触れたものの力を吸収しそれを所有者の弱点に変換するもの。


「お前に何ができる?」


 ディランは嘲笑したが、次の瞬間、顔から血の気が引いた。愛剣が、鉛のように重くなっているのだ。剣を振り上げようと必死になったが、剣はぴくりとも動かない。


「なぜだ!私の愛剣が!」


 ディランは剣を支えきれず、その場に崩れ落ち静かに言う。クスッと笑う。


「あなたの剣は、あなたの傲慢さの重さを背負いました。ほら。もう、あなたの腕では持ち上げられませんわ」


 ディランの愛剣を軽々と持ち上げ、見せつけた。


「守られるべきか弱い女ですって?愚かな。剣は、もうあなたには二度と使えないでしょう」


 ディランは絶望に顔を歪ませた。最大の誇りであった剣は、傲慢さゆえに、一生彼に刃向かうことになったのだ。去った後も、ディランは地面に崩れ落ちたまま、自分の無力さを呪っていた。



 宰相の息子、ディガン・ウェルズは、言葉巧みに人を操り、裏で汚い取引を繰り返していた。こちらの美貌も、利用価値のある駒でしかない。


「ファーマンナ嬢。こちらと組めば、社交界どころか、国の影の支配者となれる。君の美貌と、私の才覚があれば、不可能なことなどない」


 ディガンは、静かな部屋に呼び出し、甘い言葉で誘惑した。 背後には、不正に蓄財した財宝や、人を脅すために集めた秘密の文書が置かれているそれらはすべて、築き上げた欺瞞の城の礎。


「ご提案、まことに恐ろしいですわ。ですが、他人の汚れた力を借りる気はございません」


 きっぱりと断ると、ディガンの顔から笑みが消えた。


「はっ!無能な人間は、無駄なプライドで自滅する。覚えておきたまえ」


 言い放ち、部屋に閉じ込めて去っていったがこの時を待っていた。魔力は、向けられた悪意を形作った根源ごと破壊する。

 部屋の中央に立ち、魔法を発動させた魔力は、ディガンが部屋の壁に施した、拘束するための魔術陣に呼応。魔力は、魔術陣を伝って、ディガンが築き上げた、すべての汚れた財産と秘密を司る根源へと向かっていった。


 遠くから、ガラスが砕けるような音がし、ディガンが管理する秘密の金庫や、悪事が書かれた文書が音を立てて塵と化す音が。部屋に戻ってきたディガンは、こっちの姿を見て愕然とした。


「な、な、なぜ……!なぜお前はここに!この音は……!」


 顔からすべての傲慢な表情が消え去った目は、部屋の壁の魔術陣を凝視していた。


「まさか……ありえない……」


 顔が、青ざめていく。汚れた財産と、権力の基盤が、すべて消滅したことを悟ったのだろう。楽しい。


「無能ですって?いいえ、本当の無能はあなたですわ。自分の悪意が、自らを破滅させることすら気づかないなんて、ね?」


 静かに微笑み、背を向けた。権力も財産も失った無力な男。もう二度とこちらを害することは出来ないだろう。

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