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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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47突っ込み属性転生者獣人は番と共に旅をして疑問を解消していく

転生者/番/ざまぁなし

 深い森の奥の獣人の里。白雪は、白い毛並みと月のような瞳を持つ、美しい獣人。

 でも、内気でドキドキしやすい。心の中ではいつも、それ、変じゃない?とツッコミを入れていた。ツッコミ属性というものだ。


(遂に私にも番が)


 里の決まりで、番となる相手を探す年頃になった白雪。不安だけど、少しだけ期待もしていた。そんな時、里に見慣れない獣人、ディアムが現れた。


(あ)


 強い体、鋭い目。黒い縞模様の虎の獣人。多くを語らず、野生の力強さと一人でいるような雰囲気を持っていた。初めて会ったのは、長老が決めた顔合わせの場。


「お前が、おれの番の女か」


 と、ディアムは低い声で言った。

「は、はい」


 その言い方に、白雪は心の中で。

 え、何その言い方!もっと優しくできないの?

 なんて、言いたかったけれど。でも、言えずに、小さくうなずいた。


 こうして、内気なツッコミ獣人白雪と、クールな虎獣人ディアムの、ちょっと変わった夫婦生活が始まる。ある日、ディアムが言った。


「人間の場所へ行く」


 なぜ人間のもとへ?

 白雪には分からなかった。でも、ディアムの強い目を見ていたら、何も言えない。

 それに、狭い里から出てみたい気持ちも少しあったし。人間の村や街は、獣人の里と違って、とてもにぎやかだった。


 見たことのないものばかりで、白雪はびっくりした。ディアムはいつも冷静で、周りをよく見ている。

 人間の言葉や習慣に戸惑う白雪。その挨拶は何?

 なんでこんなに人が多いの?

 その食べ物、本当に美味しいの?


 心の中でツッコミは止まらない。でも、言えないまま、ディアムの後を歩いた。

 旅の途中、色々な人間に出会った。親切な宿の人、怪しい商人、獣人に嫌な顔をする人もいた。


 世間に揉まれながらも、人間の文化や暮らしに少しずつ触れていく。ディアムはあまり話さないけれど、白雪が困ると、そっと助けてくれた。言葉は荒っぽいけど、優しさが見え、それに気づく。


 ある夜、野宿をしている時、白雪は不安そうに聞いた。


「ねぇ、ディアムはどうして人間の世界に来たの?」


 ディアムは夜空を見て、言った。


「知りたかった。違う生き方、違う世界を」


 短い言葉だったけど、白雪の心に響いた。いつも多くを語らないディアムの、その言葉に込められた気持ちが、少し分かった気がしたので。その時、白雪は初めて、ディアムの荒っぽい話し方の中に寂しさのようなものを感じた。


「そっか」


 白雪は、もう何も聞かなかった。焚き火の音と、夜の森の静けさが、二人の間を満たしていく。


 翌朝、二人は再び歩き出した。

 静かに。白雪は、昨夜ディアムが語った言葉を反芻していた。

 違う生き方、違う世界。それは、白雪自身も心のどこかで求めていたものだったのかもしれない。


 里の古い掟や、周囲の期待。窮屈に感じていたわけではないけれど、もっと広い世界を見てみたいという憧れは確かにあった。人間の街をいくつか巡るうちに、白雪は少しずつ人間の生活に慣れてきた。


 物珍しそうに店を覗き込んだり、美味しそうな匂いに誘われて屋台の食べ物に挑戦したり。もちろん、その度に心の中で。


 え、この色とあの色、組み合わせが斬新すぎない?

 なんでみんな大声で話すの?

 この食べ物、見た目はあれだけど、意外と美味しいって、やっぱりちょっと変じゃない?


 と、ツッコミが炸裂していたのだが、以前よりもいくらか。それを表に出せるようになってきていた。

 ディアムは相変わらず多くを語らない。だが、白雪の変化に気づいているようだった。

 時折、白雪が興味深そうに何かを見ていると、足を止めて待ってくれたり。言葉少なに、説明してくれたりすることもあった。


「それは、織物だ」


「あれは、人間の子どもの遊具だ」


 その低い声には、以前のような突き放した冷たさだけでなく、ほんの少しの温かさが混じっているような気がした。ある大きな街で、二人は大道芸を見た。人間たちが、信じられないような身のこなしで空中で舞う。


 奇妙な楽器を奏でる様子に、白雪は目を奪われた。え、体どうなってるの?

 その音、本当に楽器から出てる?

 すごいけど、一体何の役に立つの?

 疑問符が飛び交う中、観客の湧き上がる歓声と熱気に、白雪もいつの間にか引き込まれていく。隣に立つディアムを見ると、普段は微動だにしない彼の口元が、ほんのわずかに緩んでいるように見えた。


 その夜。宿の簡素な部屋で、白雪は勇気を出してディアムに話しかける。


「ねぇ、今日の大道芸、面白かったね。ディアムも、少しはそう思った?」


 ディアムはしばらく沈黙した後、静かに頷いた。


「ああ」


 たった一言だったけれど、白雪にはそれが、ディアムにとって精一杯の言葉だったように感じられた。普段感情を表に出さない彼が、ほんの少しでも自分の気持ちを共有してくれたことが、白雪には小さな喜びだ。


 危険な目に遭った時、ディアムは迷うことなく白雪を守り。白雪もまた、ディアムの不器用な優しさに気づく。感謝の気持ちを抱くようになっていた。


 心の中のツッコミは相変わらず健在だったけれどその矛先は、自分自身や人間の文化に向けられることが多くなる。ディアムに対する批判的なツッコミは、いつの間にか減っていた。


 ある日、二人は美しい湖のほとりに佇む小さな村に立ち寄った時の湖面に映る夕焼けの色が絵画のように美しかった。


「わあ」


 思わず見惚れる白雪の横顔を、ディアムは静かに見つめる。その時、白雪はふと、ディアムの瞳の中に、夕焼けと同じような。どこか物憂げな光が宿っていることに気づいた。


「綺麗だ」


 ディアムが、ぽつりと呟いた。白雪は驚く。風景を見て美しいと感じる心を持っている。新たな発見だった。


「うん、本当に綺麗ねぇ。ディアムは、故郷の森の夕焼けも、こんな風に綺麗だった?」


 ディアムは少しの間、遠い目をしていた。


「おれの故郷には、こんな大きな湖はなかった。鬱蒼とした森の隙間から、時折赤い夕日が差し込むだけだ」


 白雪はディアムの故郷の風景を想像した。いいところなのだろう。深く静かな森。

 時折差し込む、鮮烈な赤色の光。ディアムの孤独な雰囲気に、どこか似ているような気がした。


 その夜、二人は湖畔で焚き火を囲んだ。揺れる炎を見つめながら、問いかけた。


「ディアムは、いつか故郷に帰りたいと思う?」


 ディアムはしばらく沈黙した後、ゆっくりと首を横に振った。


「分からない。だが、今は、お前と共にいたいと思っている」


 白雪の心臓をぎゅんと強く締め付けた。嬉しい。荒々しい言葉の裏に隠された、ディアムの真摯な想い。

 初めて聞く、ストレートな感情の吐露。白雪は、自分の頬がほんのり熱くなるのを感じた。


「そう、なんだ」


 白雪は、照れ隠しのように、焚き火に落ちた木の枝を弄んだ。心の中では。


「え、今の流れ、もしかしてって、いやいや、考えすぎ!」


 と、いつものツッコミが顔を出していたけれどその声は、どこか戸惑いと小さな期待に満ちていた。

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