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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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40/63

40【後編】最低な妹と連れたちにボコボコにされていたら運命に助けられて姉は仕返しと悪どい罪を罰で殴りつけにいくことにした。私は怒っているので許しませんよ?

 決意に迷いはなかった。あの時の屈辱と恐怖を決して忘れることはできない。

 妹のような人間が、このままのうのうと生きていることを許すことができなかったのだ。綿密な計画を立てた。

 ハウロアの圧倒的な力で相手を制圧し、その上で妹の悪行を白日の下に晒す。


 そのためには証拠が必要。妹たちがこれまでに行ってきた悪事の証拠を、少しずつ確実に集めていった。

 ハウロアは夜の闇に紛れ、妹の周辺を探り、彼女たちが脅したり陥れたりした人たちの証言を集めていく。


 中には妹の番たちに酷い暴行を受け、泣き寝入りをさせられた者もいた。証言は妹たちの悪行を如実に物語っている。

 いよいよ行動を起こす日が来た。街が静寂に包まれた頃、ハウロアは私を伴い妹が頻繁に出入りしているという屋敷へと向かう。

 妹が懇意にしている有力者の息子の邸宅。邸宅には高い塀に囲まれ、物々しい警備が敷かれていた。


 ハウロアの力の前ではそのようなものは意味をなさない。夜の影のように音もなく塀を乗り越え、邸宅の中へと導いた。中に入ると騒がしい声が聞こえてきたから、宴会でも開かれているのだろうか。


 ハウロアは気配を消し、音のする方へと私たちを導いた。広間では妹が男たちの中心で笑い声を上げている。傍には屈強な番たちが控えている。

 酔っぱらった男たちは下品な言葉を連発し、場は騒然としていた。ハウロアは目配せをしてくる。今だ。


 次の瞬間、ハウロアは強大な魔力を解放し、広間に圧倒的な威圧感が満ち、騒がしかった宴の喧騒は一瞬にして凍りついたように静まり返った。

 銀色の髪が妖しく光を放ち、彼の全身から発せられる強烈なオーラが室内の空気をビリビリと震わせる。


 獣の咆哮にも似た威嚇するような唸りが、男たちの耳をつんざいた。妹は突然の異変に驚き、顔面蒼白に。

 彼女の番たちもハウロアの圧倒的な気配に気圧され、武器を構えることすらできない。


「お前たち……一体何者!」


 酔いが覚めた有力者の息子が震える声で叫ぶ。ハウロアは彼を一瞥もせず、冷たい視線を妹に向けた。


「主人の妹よ。貴様がこれまで犯してきた罪を、今ここで償ってもらう」


 ハウロアの声は氷のように冷たく、広間の空気をさらに凍りつかせた。妹は恐怖で体が震え、言葉を発することができない。


「姉さん……これは一体……」


 やっとのことで妹は掠れた声で言った。その声にはいつもの強気が微塵も感じられない。


「私が連れてきたの」


 妹に冷静に告げた。


「あなたが私にしたこと、あなたがこれまで他の人々にしてきたことを、全て明らかにするために」


 広間の男たちは訝しげな視線を妹に向けた。妹の背後にいる有力者の力を恐れ、見て見ぬふりをしていたのだろう。圧倒的な力を前にして、彼らの態度は明らかに変わっていた。


 ハウロアは事前に集めていた証拠を、男たちの前に突きつける。妹たちが脅迫や暴行を繰り返してきた証言を記した書面。

 男たちは書面に書かれた内容を読むにつれて、顔色を変えていった。有力者の息子は事態の深刻さを悟り、必死に言い訳を始める始末。


「こ、これは……何か誤解があるはずだ!私の知らぬところで、彼女たちが勝手にしたこと!」


 ハウロアは冷酷な眼差しで、彼を見据えた。


「貴様が本当に知らなかったというのなら、監督責任を問われるのは当然だろう。そうでなければ、共犯とみなすまで」


 その言葉に有力者の息子は完全に言葉を無くし、顔は恐怖と焦りで歪んでいた。妹は完全に追い詰められ、泣きながら懇願してくる。


「お姉ちゃん、ごめんなさい!私が悪かったわ!もう二度と、こんなことはしないから!どうか、助けて!」


 心を動かされることはなかった。何度もチャンスはあったはずなのに彼女は、自分の犯した罪を都合が悪くなるといつも他人のせいにしてきたのだから。


「もう遅い」


 冷たく言い放った。


「あなたがしてきたことは決して許されることではない。自分の犯した罪を、しっかりと受け止めるべき」


 ハウロアは妹とその番たち、有力者の息子をその場に拘束。集めた証拠と共に街の治安を守る役人に連絡を取る。


 翌日、妹とその取り巻きたちの悪行は、街中に知れ渡ることになった。有力者の息子も監督責任を問われ、厳しい処分を受けることになったという。

 妹は多くの人々の前で自分の犯した罪を告白し、謝罪することになった。


 彼女の目は絶望の色に染まっていたのを見遣る。事件はこうして幕を閉じた。

 妹は自分の犯した罪を償うことになり、私はようやく心の澱のようなものが晴れた気がしたし、ハウロアは傍で静かに微笑んでいたので満足満足。


「ご主人様、よくやりました」


 言葉は心にじんわりと温かく響いた。ハウロアの温かい手にそっと自分の手を重ねた。


「ありがとう、ハウロア。あなたがいてくれたからここまで来ることができた」


 満月の光が未来を照らしているようだった。


 過去の影を乗り越えつつ、妹の事件から数週間後。街には平穏な日常が戻っていた。

 妹の悪行は人々の記憶に刻まれたものの、新たな騒動はなく穏やかな日々が流れている。

 ハウロアと私はあの邸宅から少し離れた、静かな場所に小さな家を借りて二人で暮らしていた。


 事件を通して言葉を交わすことのできなかった彼と今は心を通わせ、共に笑い、時に真剣に語り合う。


 そんな毎日がかけがえのないものだ。

 まだ番としての関係を深めている最中。前世の飼い主とペットという特別な繋がりがあったとはいえ、今世では互いに惹かれ合う男女だ。


 その関係をどう発展させていくべきか、まだ手探り状態だった。ハウロアは常に優しく、紳士的な彼は気持ちを尊重し、決して無理強いすることはない。


 ただ、時折見せる、熱を帯びた瞳や、ふとした瞬間に、触れる手の温かさに、彼の秘めた想いを感じることがあった。

 一方の私はというと、ハウロアの優しさや強さに惹かれつつもどこか照れ臭くて素直になれない。


 前世の記憶が時折よぎり、彼を「ハウロア」と呼ぶことに慣れていても番として意識すると、どう接していいのか分からなくなることがある。


 ある朝のこと。まだ寝室でまどろんでいるとパンケーキの甘く、香ばしい匂いが漂ってきた。ハウロアが朝食を作ってくれているのだろう。


「おはようございます、ご主人様」


 寝室のドアを開けて、ハウロアが優しい笑顔で顔を出した。銀色の髪は朝日を受けてキラキラと輝いている。


「おはよう、ハウロア」


 まだ眠気眼を擦りながらベッドから起き上がった。

 食卓にはふっくらと焼き上げられたパンケーキと、たっぷりのフルーツ、温かいミルクティーが用意されている。心遣いが嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。


「わあ、ありがとう。すごく美味しそう」


「気に入って頂けたら嬉しいです」


 少し照れたように微笑んだ。朝食を二人で囲んでいる時だ。ミルクティーを飲もうとした瞬間、うっかり手を滑らせてしまいカップは傾き、中身が私の白いワンピースにこぼれてしまった。


「あっ!」


 慌てて立ち上がろうとしたら、ハウロアは冷静にハンカチを差し出した。


「大丈夫ですか、ご主人様。熱くありませんでしたか?」


「うん、大丈夫。ちょっと慌てちゃって」


 シミになったワンピースを見て、少し落ち込んでいるとハウロアは真剣な顔で言った。


「ご主人様、そんなに気にしないでください。新しいものを買いに行きましょう。きっと、もっとお似合いになるものが見つかります」


 彼の優しい言葉に温かくなった。ただの失敗なのに、彼はこんなにも心配してくれる。


「ありがとう、ハウロア」


 その日の午後、街の洋品店へ出かけた。

 ハウロアは熱心に私に似合う服を選んでくれ、普段は冷静で落ち着いている彼が服を選ぶとなると、子供のように目を輝かせているのがなんだかおかしくてクスッと笑ってしまう。


「どうかしましたか、ご主人様?」


「ううん、なんだかハウロアが楽しそうで」


 少し顔を赤らめた。


「ご主人様が綺麗になるお手伝いができるのは、私にとってとても喜ばしいことなのです」


 彼の真剣な眼差しにドキッとした。何着かの新しいワンピースと、可愛らしいアクセサリーを買って帰った。ハウロアは試着するたびに「とてもお似合いです」と照れた様子で褒めてくれる。


 夜、二人で夕食を作っている時も、野菜を切っていると不慣れな手つきで危なっかしいところがあったらしい。

 ハウロアは心配そうに手元を見ていたかと思うと、後ろからそっと近づき、手を包み込むようにして包丁の使い方を教えてくれたのだ。


「こうして、刃先を少し前に出しながらゆっくりと引くんです」


 温かい手が手に重なり、心臓はドキドキと音を立てた。息遣いがすぐ後ろから聞こえてきて、なんだか恥ずかしい。


「あ、ありがとう……はい」


 顔が赤くなっているのを悟られないように礼を言った。


 食事が終わり、二人で庭のベンチに腰掛けて星空を見上げていた時のこと。ふと、ハウロアが何かを思い出したように。


「ご主人様、そうだ。以前、あなたが占い師だったとおっしゃっていましたね」


「ええ、まあ……前世の記憶なので、あまり詳しくは覚えていないのだけれど」


「もしよろしければ、少しだけ占ってみて頂けませんか?私の……未来を」


 ハウロアは緊張した面持ちで、見つめてきた。戸惑いながらも応える。前世の記憶は曖昧だけれど、もしかしたら何かを感じ取ることができるかもしれない。

 彼の掌をそっと握り、目を閉じた。意識を集中させると微かに温かい光のようなものが、彼の内側から湧き上がってくるのを感じる。


 優しさや強さ、深い愛情の色。しばらくして、目を開けるとハウロアは不安そうな表情で見ていた。


「どうでしたか……?」


 ふふっと照れながら微笑みかけた。


「あなたの未来は……とても明るい光に満ちている。その光の中心には……いつも私がいる」


 瞳が嬉しさと安堵の色に輝いた。言い終えると手を握りしめてくる。


「ありがとうございます、ご主人様。あなたの言葉は私にとって何よりも心強いです」


 しばらくの間何も言わずに寄り添って星空を見上げていた。夜風が優しく頬を撫で、静かな時間が流れていく。何気ない日常の中に、ゆっくりと真愛は育まれていった。

 不器用ながらも互いを想い合う気持ちが、距離を少しずつ縮めていく。時には些細なことを笑い合い、時には真剣な眼差しで未来について語り合う。


 一人の魅力的な男性として、彼に惹かれていることに気づき始めていた。ハウロアもまた、かけがえのない番として深く愛してくれているのだと感じるように。


 満月が未来を優しく照らしているのを感じながら、風の音に身を委ねた。

後編

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