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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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33/46

33 外見だけで今までの苦労を水の泡にさせ怒らせてはいけない彼女を怒らせて平民上がりの愛人ごと彼らは永遠にカミを失う。美しさなんて一晩で消え失せる陳腐なものだったでしょう?

 キャルメンは夜会の照明の下、優雅な笑みを浮かべたまま心の中で毒を吐く。


(許さない。絶対に許さないわ、アルバードス様!)


 アルバードスという王子は、隣に立つ平民上がりの愛人ハンネリザを抱き寄せながら、キャルメンに向かって言い放った。


「キャルメン。前との婚約を破棄する。お前は権力志向の女。ハンネリザの太陽のような金色の髪こそが、私にとっての真実の愛なのだ!」


 ハンネリザの豊かなウェーブのかかった金髪を、陶然とした表情で撫でている。

 ハンネリザもまた、勝ち誇ったように美しい髪を揺らしてキャルメンを嘲笑う。みしりと手に持つ物が音を立てた


(か、み?髪?確かにハンネリザの髪は国で最も美しいと評判。アルバードス様は自分の美貌と豊かで癖のない金髪に、異常なほどプライドを持っている。こうなったら)


 キャルメンの頭の中で計画作成というチートスキルが発動した。計画はシンプルかつ、相手にとって最も精神的なダメージを与えるもの。


 ターゲットは王子、金髪のプライド、。ハンネリザは太陽のような髪。王妃は美髪の維持。実行手段は、公爵家の持つ極秘の錬金術資料から、毛根破壊の無色無臭の薬液を精製すること。


 美の象徴を奪い、人前で恥をかかせ精神的なストレスを与えようとその夜、キャルメンは使用人を装い、王城の王族専用区画に侵入した。

 ポケットには透明な小瓶に入った、無色無臭の薬液が入っている。

 公爵家の錬金術師が極秘に開発したもので、皮膚に触れても無害だが髪の毛のタンパク質のみを選択的に分解し、毛根を弱体化させる恐ろしい薬。


 キャルメンの最初のターゲットは、アルバードス王子だった。


「ふふ、これで一生、鏡を見るたびに思い出すといいわね」


 王子が愛用している特別な香りがついたポマードの瓶に、キャルメンは全ての薬液を注入した。ポマードと薬液が完璧に混ざり合い、何も残らない。


 次にハンネリザの部屋へ。自慢の金髪の手入れに欠かせない、最高級の椿油に慎重に薬液を混ぜ込んだ。

 最後に王妃の寝室へ。美髪の維持に余念がなく、毎晩特別なブラシで髪を梳く習慣がある。

 キャルメンはブラシの根元に、薬液をたっぷりと染み込ませた布を押し当てた。


(さあ、これで準備は整った。後は、復讐劇の開幕を待つだけ!)


 *


 翌朝、王族の寝室から三つの異様な絶叫が響き渡る。アルバードス王子の崩壊のカウントダウンが終わったのだ。


「は?はあああああ!な、なんだこれはあ!?」


 アルバードスは鏡の前でパニックになっていた。朝、自慢の金髪をセットしようとポマードを付け、いつものようにブラッシングした瞬間、ごっそりと毛束が抜け落ちたのだ。


「かかかか、髪が……!私の髪ががが……!」


 慌てて頭を触る。触れた部分から枯葉のように髪の毛が抜け続け、あっという間に頭の大部分が斑状にになってしまった。惨状を隠すために慌ててターバンを巻いたが、顔は絶望に歪んでいた。


 ハンネリザはさらに悲惨だった。髪の美しさが唯一の誇りであり、朝の儀式として椿油を塗布し髪を整えていたのに。


「ひ、いや!いやよ!私の、私の太陽の髪が……いやあああ!」


 美しい金髪は油を塗ったそばから、ネバネバとした泥状に変わり、恐ろしいほどの速さで抜け落ちた。頭は謎の病にかかったように、まだらな地肌を露呈し、美貌は完全に損なわれる。


 王妃といえば。ブラシで髪を梳くたびに髪が根元からプツンプツンと切れ続け、最終的にはみじめなショートカットになってしまう。

 ブラシの毛根に仕込まれた薬液は、毛の強度を極限まで弱めていたのだ。


「キャルメン!キャルメン・アントワーヌ!!お前か!呪いはお前の仕業だろう!?言え!言え!」


 王妃は怒りのあまりヒステリックに叫んだが、姿は気品のかけらもない、醜い老女に過ぎない。


 その日の夜会はやはりとはいえ、地獄絵図と化す。


 ターバンで頭を隠したまま、終始うつむいているアルバードス王子。泣き腫らして顔を上げられない、薄汚いスカーフを巻いたハンネリザ。

 不格好なウィッグでなんとか体裁を保とうとするが、常に頭を掻いている王妃。


 美貌とプライドを失ったことで、精神的に完全に打ちのめされていた。場にキャルメンは公爵父娘と共に、堂々と出席する。銀色の髪は照明を浴びて一段と輝いて見えた。


 美貌が崩壊した、王子の耳元で冷たく囁く。


「ねえ、アルバードス様。美しさなんて一晩で消え失せる陳腐なものだったでしょう?」


「ひ、ひい!?」


 王家に対して最後に宣言した。


「公爵家は本日をもって、ローゼリア王国との全ての関係を断ち切ります。復讐は終わりました。さようなら、頭の寂しい王族のあなた方」


 公爵父と共に隣国との国境近くにある、公爵家の領地へと移住した。

 そこで美貌を保つ錬金術師としての新たな人生をスタートさせ、富と技術で隣国の貴族たちを魅了していく。そうして着々と、より強大な地位を築き上げていった。


 一方、ローゼリア王国は美しさを失い、精神的に不安定になった王族たちの統治により、急速に国力を失う。数年後には隣国に併合される運命を辿ったという。


 これで、婚約破棄の代償は払ってもらえたので許してあげようかしら?

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