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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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23/30

23 お前のような厄介者はこの家に置いておけないと冷遇された少女は二つの世界での経験を糧に、愛する人と共に祖国を支配し新たな時代を切り開いていく

 ナハリは緑豊かな大地が広がる国で暮らしていた。

 しかし、実の親を早くに亡くし、叔父の家族に引き取られてからというもの冷たい扱いを受ける日々。

 叔母は何かと理由をつけてはナハリに辛く当たり、従兄弟たちもナハリを仲間外れにして、いつも除け者。


 いつものように叔母から理不尽なことで叱られ庭の隅で一人涙を流していた。

 反動でふとした拍子に頭を強く打ち付けてしまう。


「痛っ……!」


 顔を上げると目の前の景色が歪んで見え、洪水のように全く知らないはずの記憶が脳内を駆け巡った。高層ビルが立ち並ぶ見慣れない街並み、スマートフォンという不思議な道具。

 何より自分がナハリではない、別の名前を持つ普通の女子高生だったという記憶。


「夢……?」


 混乱するが記憶はあまりにも鮮明で、昨日のことのように思い出せた。

 現代という世界で生きていた自分、友達と笑い合った日々、好きだった音楽や漫画。

 今のナハリにとって遠い幻のようでありながら存在したもう一つの自分の人生。そんな中、叔父夫婦はさらに追い詰めるようなことを言い始める。


「お前のような厄介者はこの家に置いておけない」


 有無を言わさず家から追い出した。行く当てもなく一人、森の中を彷徨い。悲しみと不安で押しつぶされそうになりながらも、前世の記憶が彼女の中に小さな希望の光を灯している。

 現代で生きていた自分は困難にも立ち向かってきた。この状況も乗り越えられるはずだ、と。

 疲れ果てて森の中で眠ってしまったナハリが目を覚ますと見慣れない場所。足元には白い雲が広がり、空に浮かんでいるような。

 叔父たちによって世界の誰も知らない天空世界へと追放されてしまう。途方に暮れる。


 そうしていると一人の青年と出会う。呆然としていると声をかけてきたのだ。

 彼の名前はカイク。鋭い眼光を持ち自信に満ち溢れた雰囲気の青年。


「ちょっといいか」


 カイクは天空世界に迷い込んだナハリを警戒しながらも放っておくことができず。

 しばらくの間、自分の住処で面倒を見ることにした。


「あ、はい」


 カイクは天空世界で力を持つ一族の出身、とのこと。性格は少しばかり上から目線気質。

「いいか、よく聞け」


 ぶっきらぼうな物言いも多いけれど根は優しく、困っている人を見過ごせない一面を持っている。最初は戸惑うことばかり。

 前世の記憶が意外なところで役に立つ当たり前だった道具の仕組みや効率的な物事の進め方など、天空世界の人々が知らない知識。


「へえ、よく知ってるな」


 例えば火をおこす方法一つにしても、現代のライターの知識を応用することでカイクたちを驚かせた。不思議な知識と困難にも諦めずに立ち向かう強い心に、カイクは次第に惹かれていく。

 一方のナハリも最初は少し怖いと思っていたカイクの、不器用ながらも優しい一面を知るうちに特別な感情を抱くようになっていく。


 天空世界で共に過ごすうちにナハリは自分の置かれた状況を理解し始める。

 世界はいくつかの浮遊大陸に人々が暮らし、それぞれが独自の文化や力を持っていること。追放された祖国はその中でも比較的小さな力しか持たない国であること。

 小さい国の一つ。前世の記憶を持つナハリは天空世界の人々にはない新しい発想や技術を生み出して、役に立てた。


 例えば風の力を利用した移動手段を考案したり、作物の栽培方法を改良。功績は天空世界に広まっていき、多くの人が才能を認めるようになる。

 カイクもまたナハリの才能と努力を誰よりも近くで見ていた。ナハリへの気持ちはいつしか友情から愛情へと変わっていく。

 恥ずかしいけど認めるしかない。少し強引なところもあるけれど、いつもナハリのことを真剣に考え守ろうとしてくれるカイクの存在はかけがえのないものとなる。


 しかし、天空世界での平穏な日々を送る中で、ナハリは故郷への想いを募らせていく。こういうのは他人事だと思っていたのに。

 冷遇された過去は辛い記憶として残っているけれど、それでも自分の生まれた国。叔父たちの支配によって苦しんでいるかもしれない人がいる。


 前世の記憶を持つ自分だからこそ、何かできることがあるのではないか、と。想いをカイクに打ち明けた時、少しばかり彼は力強く頷く。


「お前の故郷は俺の故郷でもある。一緒に行こう、ナハリ」


 共に行くことを知らずに決めていた。二人は天空世界で築き上げた信頼と力を背景に、ナハリの祖国へと戻ることを決意。地上に降りると早速行動を起こす。

 カイクの一族が持つ強力な武力とナハリの持つ革新的な知識は、祖国の人に希望を与えた。叔父たちはナハリが戻ってきたことに驚き、抵抗しようとしがすでに多くの人がナハリとカイクの味方となっていたのだ。


 気づいたときには根回しは終わっている。

 叔父たちの、不正や圧政に苦しんでいた人は、ナハリの掲げる新しい国の理想に共感し、立ち上がった。

 戦いは決して容易ではなかったがナハリとカイクの連携、熱意によってついに叔父たちの支配を打ち破ることができたのだ。


 多くの人々の支持を得て、新たな国の指導者となることに。成り行きだ。隣にはいつも少しだけだけど、誰よりも頼りになる恋人カイクが寄り添っている。記憶と天空世界での経験を活かし、人々が平等に幸せに暮らせる国づくりを目指す。


「カイク、ごめんね。ここまで付き合わせるつもりなんてなかったのに」


 冷遇された少女は二つの世界での経験を糧に、愛する人と共に祖国を支配し新たな時代を切り開いていく。


(困ってたらどうしよう)


 道のりは決して平坦ではない。


「気にするな」


 天空世界での出会い、カイクの存在が力強く支えている。いつものように彼は笑って、上から目線で一言添えた。

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