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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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16/18

16 幸せのくろいとりは飛べない私を幸せにしてくれた。もうお前など養えない。出て行け。役立たずの羽なしめと蔑まれたけど今は足元にひれ伏しているので無問題

獣人

 奈落の花は気高い。高潔の翼は大きく空へ。鳥族が空を舞い、風が翠の羽根を煌めかせる世界。

 一見うつくしいが。その一室でホワイティは冷たい声に突き刺されていた。


「もうお前など養えない。出て行け。役立たずの羽なしめ」


 亜麻色の髪は乱れ、翡翠の瞳は怒りと絶望に濡れている。彼女は紛れもないこの一族の末娘だった。


「お前のような弱くて醜い鳥は一族の汚点だ。さっさと消え失せろ」


 兄たちの罵詈雑言がホワイティの胸に突き刺さる。彼らは皆見事な翼を持ち、一族の中でも強い力を持つ者たち。

 一方、ホワイティは羽ばたこうとしても上手く飛べず、魔力も微弱。現代日本から事故で転生してきた彼女にとって鳥族の世界の価値観は理解し難いものばかり。


 努力や知恵よりも、生まれ持った力と翼の美しさが全てを決める。そんな世界で彼女は異質な存在として疎まれてきた。


「消え失せるべきなのはそっち」


 ホワイティは震える声で叫ぶ。


「穀潰し?あなたちこそ、親の庇護の下で偉そうにしているだけ。いつか必ず報いを受ける」


 捨て台詞を吐き捨て、ホワイティは屋敷を飛び出す。背後では嘲笑の声が木霊していく。夜の帳が降り、冷たい風が彼女の頬を撫でた。

 行く当てもない。頼れる者もいない。それでも、ホワイティの瞳には強い光が宿っていた。

 絶対にこの屈辱を忘れない。這い上がって、あの愚かな家族を後悔させる。



 当て所なく森の中を彷徨っていたホワイティは疲労困憊し、倒れ込んでしまった。意識が薄れる中、優しい歌声が聞こえた気がする。


「大丈夫ですか?」


 目を開けるとそこにいたのは見慣れない鳥族の青年が。漆黒の翼は夜に溶け込むように美しく、瞳は優しさに満ちている。見惚れていると彼は心配そうにホワイティを見下ろしていた。


「あなたは?」


「私はカラス族のレイラッツと申します。こんなところでどうされました?」


 事情を話すとレイラッツは深く同情してくれた。


「それは酷い仕打ちですね。もしよろしければ、私の村にいらっしゃいませんか?うちの村人たちは皆温かい人々です」


 警戒しながらもホワイティはレイラッツの申し出を受けることにした。カラス族は他の鳥族からは少し異質な存在として見られていると聞いたことがある。独自の文化を持ち、魔法の研究に熱心な彼らは力至上主義ではないと。


 レイラッツに連れられ、カラス族の村に辿り着いたホワイティは温かい歓迎を受けた。

 翼が小さくても魔力が弱くても、誰も彼女を蔑むようなことはしない。

 彼女の持つ、現代の知識や発想に興味を持ち、様々なことを教えてほしいと頼まれた。もちろん解放する。


 ホワイティはカラス族の人々との交流を通して心を開いていった。特にレイラッツはいつも優しく、辛抱強く彼女に様々なことを教えてくれた。

 鳥族の言葉、魔法の基礎、この世界の歴史や文化。共に過ごす時間の中でホワイティはレイラッツの知性と優しさ、温かい眼差しに惹かれていった。


 一方のレイラッツもホワイティの聡明さや困難に立ち向かう強さに心を奪われている。理不尽な扱いを受けても腐らず、前向きに生きようとする姿は彼の目に眩しく映ったのだ。



 カラス族の村で数ヶ月が過ぎた頃、ホワイティは驚くべき才能を開花させていた。

 現代の知識を応用した新しい魔法の理論や、これまでになかった道具の開発に成功したのだ。

 特に、風の力を利用した移動術は翼を持たないホワイティにとって空を自由に飛び回る夢を叶えるものだった。


 夢のような躍進。自ずと活躍は鳥族の耳にも届くようになっていた。

 じわりじわとやってくるものがある。

 予測はできたもののある日、遂にホワイティの元家族が彼女を探しにカラス族の村へとやってきた。


「ホワイティ!こんなところにいやがったのか!一族の恥を晒しおって!」


 かつての兄たちは相変わらず傲慢な態度でホワイティを見下ろした。今のホワイティは弱々しい少女ではなかったので鼻で笑う。

 彼女の瞳には確固たる自信と、彼らへの恨みの敵意が宿っている。


「あなたたちに私がどうこう言われる筋合いはありません。私は今、この村で幸せに暮らしています」


「幸せだと?こんな落ちぶれたカラス族と一緒にいるのか!早く戻ってこい!父上も心配しているぞ!」


「心配?私を役立たずと追い出した父が、ですか?笑わせないでください」


 ホワイティは冷笑した。


「あなたたちこそ、私を追い出したことを後悔するといい。私がどれほどの力を秘めているか思い知らせてあげます」


 その言葉通りホワイティはカラス族の人々と協力し、これまでに開発した様々な技術や魔法を駆使して元家族が支配する領地で事業を起こした。

 斬新なアイデアとカラス族の持つ現代知識と魔法が融合し、瞬く間に形勢は逆転。兄たちはホワイティの成長に愕然とし、その傲慢さは影を潜めた。


 父はいまさら特殊に頭を下げ、許しを請おうとしたがホワイティの心はずっと昔に氷で閉ざされている。

 知能戦の終結後、ホワイティはカラス族の人々の仲に迎えられた。力だけでなく、知恵と優しさで人々を導き、誰もが平等に暮らせる新しい社会を築き上げていったのだ。


 その隣にはいつもレイラッツがいた。ホワイティの良き理解者であり支えであり、愛する人。二人は共に手を取り合い困難を乗り越える。

 カラスだからこそ仲間思いなのだ。それを知っていた。過去の世界では賢かったし。空を見上げれば、ホワイティは風に乗って舞い上がることができる。


 かつて見下した者たちは今やホワイティの足元にひれ伏している。理不尽な扱いを受けながらも自身の力と仲間達で運命を切り開き、新たな世界を築き上げたホワイティ。


「レイラッツ、見てて。私はもっとこの世界を良くしてみせるから」


「ああ、ホワイティならきっとできる。私はいつも、君のそばにいる」


 二人の言葉はどこまでも広がる青い空に吸い込まれていった。



 ホワイティがカラス族の彼と夫婦となってから数年が経つ。統治は鳥族社会には見られなかった調和性なものになっていた。

 身分や種族に関わらず、能力のある者がその力を発揮できるような制度を導入し教育の機会を均等に与え、科学技術の発展を積極的に推進。


 カラス族の村はホワイティの指導の下、目覚ましい発展を遂げた。現代の知識とこの世界の魔法を融合させて生み出す革新的な発明品は、生活の質を飛躍的に向上させたのだ。


 例えば、風力を利用した動力システム。重労働を軽減し、生産性を向上させた。

 薬学の知識を生かした新たな治療法は多くの命を救う。ホワイティの評判はカラス族の領地内だけでなく、他の鳥族の領地にも広まっていった。


 家族から追い出されたら家族を得られた幸せの黒い鳥は、自慢の旦那様なのである。

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