13 令嬢はスローライフを満喫する。ピザを食べていただけなのに彼らは自滅していたみたい?追放されたのでピザ屋を開きます!とろりとしたチーズに夢中でしてよ?
「フーチェリ。貴様との婚約、今ここをもって破棄する」
「え?」
公爵令嬢である私、フーチェリは王太子であるボテチエワ様から大勢の貴族の前でそう叫ばれました。理由はもちろん、王太子様が溺愛する侯爵令嬢バルマラという可愛らしい女の子が現れたから。
「バルマラ様に意地悪をしただろう!貴様は悪役令嬢だ!」
「え?」
理不尽な罪を着せられましたが、もうどうでもいいわ。だってずっと窮屈だったもの。彼の婚約者をずっと辞めたかったし。
「ああ。そういうことですか?はい、かしこまりました。どうぞお幸せに」
あっさりと婚約破棄を受け入れ、王都から離れた領地の隅にある小さな村へ一人で追放されました。
村での生活は最高でした。毎日、侍女に決められたドレスを着る必要もない。面倒な社交界の挨拶もお茶会もない。退屈で傲慢な王太子と顔を合わせることもない。
早速、夢だったことを始めました。それはピザ窯を作ること。
村の職人さんに手伝ってもらい、レンガを積み上げて本格的なピザ窯が完成。
庭でトマトやバジルを育てて、チーズは近くの牧場から仕入れます。
薪の火で焼いたピザは外はカリッ、中はモチモチ。トロトロのチーズと自家製ソースが絶品。村人たちも特製ピザを気に入ってくれてフーチェリ様のピザ屋は大繁盛。すっかりピザを焼く陽気な元令嬢になっていました。
「ふふ、王都にいた時より、今のほうがずっと幸せ」
ピザを焼き畑を耕すスローライフを満喫して、数ヶ月が経ったある日。王都からやってきた行商人から、懐かしい人たちのとんでもない噂を聞きました。
「聞いてくださいよ。王都はもう、めちゃくちゃですよ!」
「え?」
行商人がピザを食べながら、興奮気味に語ります。バルマラ様のことばかりで政務を完全に放置。国境の防備が手薄になり隣国との関係が悪化しているとか。
バルマラ様は贅沢三昧で国の財政を圧迫し「気に入らない」と文句を言って、有能な役人を次々とクビにしたそうです。
王太子の取り巻きだった公爵子息たちも王太子に追従して仕事をサボり、自分の領地もボロボロに。行商人は最後にガクリと肩を落とす。
「このままじゃ、この国は本当にダメになっちまいますよ……」
「あらまぁ。ふふっ。行き着くところに行き着いただけですよ」
窯から焼き上がったばかりのマルゲリータを取り出しました。婚約者に選ばれる前、父から国を治めるための知識を徹底的に叩き込まれていました。
口出ししていた頃、王太子はまだマシだったのに消えた途端、あっという間に国が傾き始めたようですね。考えなくてもわかっていたことなので。
「私がいなくても世の中は回ると思っていたけれど……意外とそうでもなかったのね」
温かいピザを一切れ食べました。トマトの酸味とバジルの香りが口の中に広がります。
「まあ、でも……もう私には関係のないことだわ」
遠い王都でボテチエワ王太子たちが自業自得の破滅へと向かっていることなど、もう私の知ったことではありません。今日もピザ窯の前で笑っています。
「焼きたてのピザはいかが?最高のチーズと新鮮なバジルを使っているわよ!」
「はい、フーチェリ様!今日も美味しそうだ!」
村人たちの笑顔に囲まれて、自由で平和なスローライフを謳歌します。美味しいピザを食べながら、ふと空を見上げると青空がどこまでも広がっていました。
「元婚約者様。私はこんなに幸せよ」
私の物語はピザの香りと、小さな村の笑い声と共にゆっくりと続いていくのでした。




