2.あの日
あの日の朝も、エドワード・レインはいつものごとく起きた。
何も変わらない部屋に、何も変わらず読書をして一日を過ごす。
はずだった。
なんだ…? なんなんだ…?
起きてすぐにレインは動揺した。
いきなり周りの人や物の気配が急に感じられるようになったからだ。
無自覚に魔力を探知して。
しかもなぜか少しいつもより体調がいい。
すぐに立って使用人を呼ぼうと、レインは走って使用人の部屋へ向かった。
その時も、朝食の時も、周りの気配が気になってばかりだった。
そんな落ち着かない朝を過ごし、やっと読書ができると思ったら、今度は王宮に呼び寄せられた。
そこには父王をはじめとした家族と一人を除いてまったく知らない五人の家臣がいた。
「あのー、なぜここに呼ばれたのでしょうか」
レインが質問した。
「レイン、それはーーー」
「王子の魔術が目覚めたからです」
父王チャールズ3世が言いかけたことを、先に重臣ハルクス・ジオークが言った。
「おい、父親である私より先に言うな」
「すみません。では王の仕事を奪った責任を取り、全ての職を辞めて隠居させていただきます」
「先の発言は無しだ。全て許す。それよりレインに話の続きをしろ」
今ではこんな仲良しだが、ハルクスは先の戦争で一般兵として王を守り切り、獅子奮迅の活躍をしたことで名を挙げた。
今では王立魔術師協会副代表と王国魔術師隊総司令官を兼ねているほどの大物である。
ハルクスは続けて
「あなたの類まれなる力が目覚めたのです。その力があれば、外で遊ぶどころか世界を変えることすら可能なのです。王子も魔術を極めてみてはーーー」
その時にはもう、答えは決まっていた。
「やります。魔術を極めます。そしてその力で世界を変えて見せます」
これが、後に世界を変え歴史に名を残す魔術師エドワード・レインの始まりだった。