職場に女神が現れる
いつもどおり、会社で勤務に励む。
俺は、プログラマーの仕事をしており、黙々とパソコンで打ち込む作業をしている。
仕事はチームで動いており、作業は上司の指示のもと、自分の裁量なく、ただただ打ち込んで行く。
自分にとって、上司がストレスの原因になっており、
厳しい指示やイライラした態度に常に悩まされている。
上司がプログラミングの高い知識を有しているのなら、まだ良い。
「何故、遅れる! 設計通り作れない。 仕事が遅い! 知識が足りないんじゃないか。
何遊んでいるから終わらないだろ!」
チームとはいっても、俺が困った時に助けてくれる人はこのチームに誰もいない。
困った時には、他のチームの同期でもある田中に相談している。
「おもえも大変だなぁ」と言われる、
田中いわく、俺だけでは対応できない事があれば、誰かが助けに入るという体制で、
知識のあるスタッフが、指導係になっており、チーム全体のスキルを上げる体制に仕上がっている。
向こうのチームは上手く回っているようで、
自分に出来ない事は、誰かが上手くサポート出来る環境になっているらしい。
心底、うらやましい。
逆に俺の場合、チームだからと、困った事を押し付けられるのだ。
上司は良く顧客からのエラー対応や不具合の調整役を、俺に押し付けてくる。
上司の仕事のはずなのに・・・他のメンバーの仕事のはずなのに・・・
何故か俺がしているのだ。
やれと言われたら、やらなくてはいけない。
そのプログラムを自分が組んでもいないのにだ。
ようは、尻ぬぐいをさせられる。
その仕事の押し付けは、度を過ぎており、自分の仕事が増えてしまって、
自分の受け持った仕事が進まないという、状況になっている。
上司はというと、部下に難しい仕事を押しつけ、簡単な作業をしつつ、
午後6時の定時には帰ってしまう、ダメ上司である。
きまって午後4時頃に、今日中には終わらせろよと、追加の仕事を振り分けられる。
基本、みんなに同じ件数が振り分けられるが、悪意を感じる点は自分にだけ、
仕事のボリュームが多いという点なのだ。
それが分かったのが、勤務して6カ月後になる。
いつも、一番遅くまで残業しているのが、自分なのだ。
上司は、残業などせず、定時でさっさと帰ってしまう。
他の同僚に作業量を確認させてもらって、分かったのだ。
あからさまに、毎度毎度、1、5倍くらい多く仕事を振り分けられる。
ある時、上司にこの作業量の違いについて抗議したが、
おまえは、仕事辞めたいの?仕事が出来るんだけらやってくれ。
あえて、難しい内容の仕事を渡して、技術を上げる訓練をしてやっているんだから、
理解しろよ。
残業代も出るんだし、若いから頑張れるだろうと丸め込まれた。
仕事が、終わらないのである。
残業人数は、8時頃が8割、9時頃が1割、10時では俺だけとなる。
ここ1年ぐらいは、決まってそんな感じだ。
ただ、給料はもらっている方ではあるし、身体は慣れており、やる事は分かっているのでラクなのだ。
夜は上司がおらず、邪魔をする人がいないので、仕事がスムーズに出来る。
ずっと同じ姿勢で作業をしている為、眼精疲労や、肩、背中の疲労はあるにせよ、
時間をかければ、終わるから、俺は、それを日々頑張っている。
いつもと違い異変を感じたのは、午後3時頃になる。
異変は突然やってくる。
そう昨日のようにだ。
皆、自分のタイミングで15分の休憩をとる。
会社の決まりとなっていて、ある社員はコーヒーを自分で入れて飲んだり、
スマホをいじったりしている。
俺は休憩中は、デスクでコーヒーを飲みながら、仮眠をとる時間に使っている。
スマホの目覚ましアプリを使って、音は出さず、振動で起きれるようにしている。
寝ている時に、トントンと肩を叩かれ、起こされたのだが、
それが最初は分からなかったが、制服を着たクワックだったのだ。
ビックリして、小声でヒソヒソと会話を始めたのだ。
「なんで、制服きているの?」
「指導するのに、職場を見ておかないとできないでしょ」
「忙しそうね」
「いつも、こんな感じ」
「それより、制服きているし、バレるだろ、大丈夫なのか」
「大丈夫、洗脳しておいたから」
不穏なワードが出てきて、俺は顔が曇らせる。
「他の社員には、私が認識できないようになってるわ」
「空気と一緒、あるけれど、常に空気があるって認識していないでしょ」
「ふーん仕事の様子が分かったから、私は帰るわ」
「のびの仕事っぷりも、見てたよ」
まぁ自分に被害が及ばなければ良い。
「今日も残業になると思うので、よろしく。」
「残業が無い方が、ゆっくり指導できるよね・・・・」
「そうなら・・・今日は定時に帰れるように、鬼子母神ちゃんへお願いしておきましょう」
あまり聞きなれない、名前が出てきた。
誰だ、鬼子母神って・・・・・いかにも強そうな名前だ。
クラックはどうにかするらしい。
「私が、対応しておくので、早めに帰ってきてね」と言い残す。
どういう事と、聞こうとしたが、目の前に居たクラックは、スッっとどこかへ消えてしまった。
休憩が終わり、仕事に戻って約30分後、
上司が、大声で電話をしながら何やらバタついているのが分かる。
「ちょっと全員聞いてくれ」
「社長から電話があり、今から私と社長とである企業へ出向くことになったので、
今日の午後6の仕事振り分けは無し」
「今日は残業無し、みんな定時に帰宅でよろしく」
そういうと、急いでかばんを持って、上司は外に出ていった。
あぁ、コレかと思いつつ、流石に女神だなと感心した。
家に帰ったら、鬼子母神ちゃんについても聞いておきたい。
上司がいる時は、いつも怒っていて、ピリピリしているので、職場の雰囲気も重い。
いない今の状況は、穏やかな雰囲気となっている。
たまには、こういう感じで仕事をするのも気楽で良い。
いつもより照明が明るく感じ、疲労感も少ない、時間が過ぎるのを早く感じられるのだ。
定時の時刻となり、一斉に社員が明るいあいさつをしながら、会社を出る。
普段より、足取り軽い。
俺はこれから、スーパーと紅茶専門店と洋菓子屋に寄って食材と高級紅茶、デザートも買って、
帰る事にする。
最近、異世界モノの執筆をはじめてます。
こちらの方をメインで書いており、かなりユルカイウンの投稿は遅れます。
異世界モノは、10万文字ぐらいになる予定。
今3万ほど書き溜めており、まずは完成させてから投稿します。