【ちょっと待て】婚約破棄後に求婚してくるスパダリ【そいつはほんとに大丈夫?】
婚約破棄後にでてくる突然のスパダリ、ヒロインそんな男を信用して大丈夫!?やたら高位とか怪しくないか!?という気持ちで書いたら妙な事になりました( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
出てくる人が概ねクズといかれぽんちで断罪されません!よろしくお願いします〜!!m(__)m
「カタリナ•マッケンジー!貴様との婚約を破棄する!」
王立学園の卒業パーティー、華やかな喧騒の中、ヨシュア•サバラン侯爵令息様は仰いました。
ヨシュア様は私、カタリナの、幼い頃よりの婚約者です。学園卒業後、すぐに結婚する予定でした。
「なぜ…と、お伺いするまでもありませんわね。」
ヨシュア様の腕にはピンク頭のボインがへばりついています。
「ごめんなさいお姉様〜♡メイたんヨシュア様と真実の愛をみつけちゃったの〜♡」
自分をメイたんと呼ぶ脳みそカラカラボインことメイデス嬢…私の従妹です。
両親を亡くし、哀れに思った父が我が家に引き取りました。
元々男爵家の令嬢で、マナーや教育がまったくなっておらず、不憫な身の上からせめてよい嫁ぎ先をと、私も親切心からあれこれ口を出したことは認めます。
しかしそれも…
「カタリナ!貴様メイデスをことあるごとにいじめたそうだな!」
『真実の愛』を見つけたお二人にかかれば、こうなるのですね。
「お姉様はいつも意地悪でしたの〜♡シクシク〜♡」
「あなたにお姉様と呼ばれる筋合いはありません。」
従姉妹ですし。
「なんと非情な!これだから親にも見捨てられるのだ!」
そう、私の両親も、いつしか実の子の私よりも、メイデスを大事にするようになりました。真面目がとりえの地味な私より、朗らかでかわいらしいメイデスの方がよかったのでしょう。
なぜ?
私はただ、貴族として責務を果たすべく、真面目に生きてきました。辛い教育にも耐え、政略で決まった婚約に不満を隠さないヨシュア様にも、お互い様だと言いたいのを堪えて歩み寄ろうとしました。
けれど結果は——…。
ヨシュア様は勉強や修練をサボって、女性を侍らせ、あまつさえいかがわしいところへの出入りをする始末。
両親に訴えても、お前が悪いと責められるばかり。
何度ヨシュア様をおいさめしたって、聞く耳など持ってくださらないのに——…
そして何一つ努力しない従妹が、両親の愛も、いらぬとはいえ婚約者も奪っていく。
私は、なんなの?
頑張ってきたことは誰にも認められず、貶められるだけ——……
周囲の人たちも、この下らない余興にひそひそとするだけ。カタリナ様じゃあ仕方ないなんて声まで聞こえてくる。
結婚したって、家の仕事をするのは自分になることはわかっていました。その為の勉強で、学友との交流も少なかったけど——……。
遊ぶのも我慢して、我慢して、我慢して——……
ふ、と張り詰めたものが消えてしまった。
「婚約破棄、承りました。」
それだけ告げて、踵を返した。
あの二人がはしゃいでいますが、もうどうだっていい。
会場を出ようと、早足で扉へ向かっていると——…
「では、私が求婚しても?」
「!?」
現れたのは、学園で教えを受けておりました、スミス先生でした。
「な、何を仰って……!」
「教師と生徒、まして君には婚約者がいる。その為想いに蓋をしていたが——……。
カタリナ嬢、君の真摯に励むその姿に、いつしか心奪われていたんだ。君を愛している。
どうか、私の手を取ってくれないか?」
そっと私の手を取り、口付けをされました。
!!!???
きっと今、私の顔は真っ赤でしょう。まさかこんな——……!
スミス先生は、年若い教師で、ボサボサの髪に分厚い眼鏡、授業以外での口数も少なく、冴えない教師と陰口をたたく者もいました。けれど、質問すれば真摯に答えてくださり、私の疲労に気づいて気遣って下さる、優しい方でした。
ただ、でも、いい先生だなと思っていただけで——…
「わはは!!それはいい!堅物のカタリナにボンクラ教師など地味モサ同士丁度いいではないか!その平民教師と仲良くやるのだな!」
「お姉様〜よかったですわね〜〜♡平民になってもお元気で〜〜♡」
ヨシュア様とメイデスが笑います。私は唇を噛みました。私のことはいいのです。だけどスミス先生のことまで——……!!!
「馬鹿にしないで!あなたみたいな愚かものと結婚して貴族でいるより、平民になったってスミス先生と結婚した方がよっぽど幸せだわ!!」
「「!!??」」
言い返すと思わなかったのでしょう。二人が驚いています。
慣れないことに息を弾ませていると…
「それは、求婚を受け入れてくれるということでいいのかな?」
「えっ…」
スミス先生が眼鏡をとり、ボサボサの髪を撫で付けました。するとどうでしょう。天下一品のイケメンが…!!
「平民になってもと決意してくれたところ申し訳ないが、君にはリグラム国の王妃になって貰いたい」
「「「なっ…!!?」」」
リグラム国といえば、隣国の強大な——…我が国よりよほど栄えた強国です。
「跡を継ぐ前に見聞を広めよと父に言われてね、身分をかくして教師をしていた。このまま雲隠れしてしまうのもいいかと思っていたが——…君には、相応しい地位が必要だ。どうか我が国に来てくれないか?」
「アーサー•リグラム…殿下…?」
まさかの事態に目を丸くしていると、スミス先生…いえ、アーサー様が、ふっとやわらかく微笑まれました。キュン!
「だ、だめだだめだ!!おいカタリナ!!その男はだめだぞ!!」
ヨシュア様がわめいています。なんだというのでしょう?
「元婚約者殿、貴様に口を出す権利はない!」
アーサー様が私の肩を抱きながら鋭い目でヨシュア様を睨みます。キュン!
「私、アーサー様と共に生きたく存じます」
「カタリナ嬢…!!」
そして私たちは手に手を取り合い、わめく二人を尻目に、会場を後にしました。
そして今、私はリグラム国にいます。
私に王子妃、はては王妃など務まるかと心配でしたが、皆さま優しく受け入れて下さいました。沢山覚えることはありましたが、これまで学んだことも役立っています。
今までの努力は無駄ではなかった——…。
私は胸が熱くなりました。
一方、実家はといえば、親族の男子が継ぎました。元々実子は私だけ、両親は私の嫁入りに騒ぎましたが、アーサー様に乞われたとなれば反対はできません。これまでの冷遇をたてに、縁を切らせて頂きました。
また、ヨシュア様ですが、勘当され、メイデスと共に平民となりました。
私の出立準備中にも再三現れ、あの男はだめだのなんだの文句を仰っていました。アーサー様によれば、今更私が惜しくなったのだろうとのことでした。
でも私は、違うと思います。
ヨシュア様は三男で、我が家に婿入り予定だったのです。メイデスと私を入れ替えればいいとでも思っていたのかしれませんが、両親はメイデスを養子にすることは拒否しました。さすがにあの二人ではやっていけないとわかっていたのでしょう。
なので、いまさら爵位を失う恐怖を知って、私とヨリを戻そうと嫌がらせをしたのでしょう。
それに、私が自分より上の地位に就くことも許せなかったのかもしれません。
ついてきたメイデスが、アーサー様じゃなくて他の男にするべきよ〜などと言っていたので。
どちらにせよ、あさましい人たち……。
メイデスは今では娼婦となり、ヨシュア様はメイデスの働く娼館で働いているそうです。
真実の愛で結ばれた二人……。
愛する女性が、毎晩毎夜、他人に抱かれ、その金で暮らす気持ちとはどのようなものでしょう。
でも、私には、もはや関係のないこと……。
私は彼らを忘れ、より一層アーサー様と、「この国」に尽くそうと心に決めました。
******************
俺はあの女を馬鹿だと思っている。
カタリナのことだ。
カタリナは知識があり勤勉で実務能力も高い。だが馬鹿だ。
あいつは自分の望みを叶えようとしない。
その為に能力を使おうとしない。「自分が正しくて」「周囲を糺せば」自分の思う、正しい世界になると思っている。そうならないのは周囲が間違っているから。そう思っている。
他人を自分の意に沿わせようとするならば、説得なり報酬なり暴力なり、何がしかの手段が必要だ。
しかしあいつはそれをしない。
自分が正しいと思っているから。
だからただただ自分の信じる正論で、ただただ相手を追い詰め、相手が自分の意のままにならなければ、己が不当に扱われたかのような顔をする。
クソモラハラ女である。
俺は本当にあいつのことが嫌いだった。
ガキの頃からネチネチネチネチネチネチネチネチあーしろこーしろとクソうるさく、仮に成果を上げても(俺にだってたまにはそういう時がある)足りぬとばかりにネチネチネチネチネチネチネチネチ。
大体初対面の顔合わせからして、互いに挨拶してしばらくのち、「卒爾ながら長いお付き合いになるかと存じますので申し上げますわね、お辞儀の仕方ですが、もっとネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチした方がネチネチネチネチネチネチネチネチ」
とやられてうっわ無理!と思った俺を責められようか。五歳のガキだぞ。
齢五つにして俺は悟った。
この女といると死ぬ。
俺の心が殺される。
たとえこいつの言う通りに勤勉に励んだとしてもこいつのネチネチはとまらない。もっとできるもっとできるなぜできないなぜしないとネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチ…!!!!
死ぬ!!!
あるいはあいつの考える「良い貴族」になりたいのなら、あいつの言うことを聞くのも…いや無理だな。無理。あれは無理だ…。だってあいつの親も閉口してたからな…。あそこのご両親も、まあ色々あるがこの国の貴族として普通にやっていたのだが…。
そりゃたまに酒を過ごしたり気が抜けたりすること、人間だからあるだろう。
あいつはそういう隙を見逃さない……。
実際本人はいつでも完璧だった。ただそんなふうに生きるのを、万人が望むわけでもなく、そんな生き方だけが正しいわけでもない。
人にはそれぞれ考えがあり、意見が違えば話し合い、時に譲り、時に拒む。
一人の人間にはいいところも悪いところもあり、それが他の人間には、許せることもあり許せないこともある。人のありようは、それぞれ違う。
それがあいつには、わからなかった。
俺はあいつと結婚するのも爵位を継ぐのも真っ平だったので、それは当の本人にも伝えていた。あいつも俺との婚約は不本意だろうから、なんなら婚約解消に協力してあたれないかと思っていた。まだ甘かったのだ。
あいつはそんな事できるわけがないと聞く耳ひとつもたなかった。
家の定めるとおり、不本意でも婚姻を結ぶ、それが「良い貴族」なのだと。
「できない」ではなく、「しようとしない」だけなのだが、あいつにはその自覚もなかった。
まああいつが、勝手に自分を縛って己を憐れみながら生きるのは、環境を良くするより自分が「こうあるべき」というふるまいに固執するのは好きにすればいい。
だが巻き込まれるのは真っ平だ。
なんとか婚約解消してやろうと思ったが、盛場で女を買ったり賭博に耽ったり程度の不品行では無理だった。
あっちの両親も婚約解消となればあの女に後はないとわかっていた。あいつのネチネチは有名だった。
そらまあ、暴力に訴える男ならあいつのネチネチに対抗できるかもしれないが、さすがに娘をそんな目に遭わせたくはなかったろう。
かといって俺に押し付けられても困る。
死ぬ。
うちの方も、クソガキを処分できるならってんで婚約解消する気はなかった。当初の政略の内容(主に事業だ)とはずれていたが、親同士はここで片付けとこ!となっていた。
と言うわけで卒業パーティーでの婚約破棄だ。
公の場でこれだけやれば婚約は解消せざるを得ない。ついでに廃嫡もゲットだぜ!
そして今、俺は———……
「おっつ〜〜♡♡ヨシュたんおっつ〜!♡今日のデブ男との見た?どうだった〜〜??♡♡」
「最高だったよハニィ〜〜〜〜♡♡』
俺、ヨシュアは一仕事終えてやられたてホカホカのメイデスを自室に迎え入れ、抱きしめた。
ここはこの町で中堅どころの娼館だ。
廃嫡され、平民として街に放り出されたあと、俺は以前から隠し溜めていた賭博の勝ち金でここを買った。
もとよりその予定だったのだ。狙い通りである。
俺は以前、まだ婚約中に娼館に通ううち、恋人に働かせてのんべんだらりとしているヒモの存在を知った。
最高じゃん!!
そう思った。
あとヒモの話を聞くうちに、惚れた女が知らん男に抱かれてんの超いいなとなった。なにかが芽生えたのだった。ヒモになりたくてたまらなかった。
なので、そうなるべく努力したのだ。
俺は、俺の望みを叶えるべく頑張ったのである。
勿論、幸運もあった。
「次予約入ってるけどどうする〜??♡見てく〜??♡」
「んー、予約…あーあの細マッチョかー。うわ見たい…!!けどちょっと仕事しなきゃなあ〜。あとで聞かせて〜」
「おっけ!じゃあとでね〜ヨシュたんだーいしゅき!♡」
「俺もしゅきい〜〜♡♡♡」
ぶちゅーとキスしてメイデスは仕事へと向かった。
そう、メイデスだ。
彼女との出会いは幸運だった。
メイデスもまた、俺と同じ、いや俺以上に自分の欲求を知り、その為に手札を全力で使う女だった。
そもそもメイデスはカタリナの父親の愛人だ。
男爵家で貧乏暮らししていたのを見そめられ、望まれたが、男爵夫妻は許さなかった。娘のために拒絶した。
それで毒殺され、病死とされた。
殺したのはメイデスだ。
メイデスはいい暮らしがしたかったのだ。
カタリナは知らなかったが、母親のマッケンジー夫人は閨事がお嫌いで、子を生したあとは外で用を足して欲しいと夫に頼んだらしい。それでいて仲のいい夫婦なので、性愛ばかりが全てではないのだなーと思ったものだ。
メイデスを家に入れる、つまり妻妾同居となることにはさすがにいい顔をしなかったそうだが、親族として学園に通わせハクをつけ、いずれ金持ちに売る予定ということで納得したそうな。メイデスの弁え方にも好感をもったらしい。
メイデスはいい暮らしができるなら相手は誰でもいいので、信頼できるスケベに売ってくれるよう頼み、彼らはそれを了解した。
なので、カタリナが良い嫁ぎ先をと、高位貴族としてマナーや知識を教えているのは無駄だった。
というか、メイデスはカタリナ程では勿論ないが、普通の伯爵令嬢程度のマナーはこなせる。奔放な方が受けがいいので、あまりやらないだけだ。
まあこれは俺も、メイデスとごっこプレイして知ったんだけど。
ただカタリナにとっては、しないことはできないこと、できるようにすべきことだった。あとそもそも要求レベルが異常。一人で思い込んで突っ走って誰もわかってくれないするいつものあれだ。アホだ。
そしてメイデスは、俺に出会った。
メイデスは俺に一目惚れしたそうだ。
俺はメイデスの事情を知っていたので、いや義父と兄弟とかないんでって感じだったが、メイデスは強かった。
俺の事を調べ上げ、密かな願望を探り当て、見せてくれた。
俺をメイデスの自室のクローゼットに閉じ込めたのだ。そしてマッケンジー伯爵が、部屋を訪れ——……
最高だった!!!!
のぞきってほんといいもんですね。
そしてメイデスは、自分を愛してくれるなら、俺のためになんだってすると言った。いい暮らしができなくともいい、俺がいればいい、この世の全てを滅ぼしてでも俺が欲しいと言ってくれた。
こうまで言われて、惚れない訳がなかった。
俺はメイデスを愛し、メイデスは俺を愛した。
よって、最高のネトラレを味わうことができたのだった!!!
どうしてメイデスが、それほど俺を愛してくれるのかわからない。幸運としかいえない。
メイデスと出会えた幸運…その為にこれまでの人生クソだったのかと思った。俺の女神である。
そうして、俺たちは計画をすすめ、予定通りこの愛の館で毎日楽しく暮らしている。
メイデスが客をとり、俺がそれを覗く。最高だ。
俺が喜ぶとメイデスも嬉しい。メイデスが喜ぶので何も知らん客も嬉しい。うぃんうぃんである。
完全なヒモでなく経営者となったのは、変な環境でメイデスが体調を崩すと困るからだ。
愛しているのである!
ちょっと働くくらい愛の為ならできるのだ。あらかた人に任せているが。
一方カタリナだが、あの時は驚いた。
ボンクラ教師と思っていたらなんと隣国の王太子だった。
やべえと思ったね。
あの男は人殺しだ。
両親を殺したメイデスを愛する俺が言うのもなんだが、あの男はやばかった。その醜聞は、公になることはなかったが、娼館には情報が集まる。俺はその話に興味を持ち、裏を取り事実と知った。
あいつが、婚約破棄された女を持ち帰るのはカタリナで四人目だ。
一人目の時は、婚約者に浮気され不当に責められ公の場で婚約破棄された令嬢にその場で求婚した。俺たちの時と一緒だ。
その時は、虐げられた令嬢を救うヒーローと、まさかの大逆転シンデレラ令嬢として、二人の恋は大評判となったらしい。
しかし一人目の女は病死した。世紀の大悲恋としてこれも評判だったらしい。
そして二人目。これまた公の場で婚約破棄された女だ。
病死した婚約者を思い辛く過ごしていたが、婚約者に虐げられても健気に耐える女の姿に勇気をもらった、また生きていけると思ったと涙ながらに求婚したそうだ。
これまた愛を失った者同士の恋物語として大評判だったそうだ。
だが、気づいた者もいたかもしれない。
一人目が死んだのは、あいつが二人目の女を見つけてからだ。
不貞などではない。話したこともなかった。ただ、虐げられた女を、見つけてはいた。
それからしばらくは、互いの傷を癒すよう仲睦まじく暮らしていたそうだ。
が。
二人目の女は、しかしかつての婚約者が忘れられず、平民となっていたその男と駆け落ちしたそうだ。
その行方は知れないという。
その辺りでかなりの人間がんん〜〜〜〜????となっていたそうだ。とはいえ王子である。確かなこともなにもない。
お気の毒な王子様、ということになった。
そして三人目!!これまた公の場婚約破棄され女である。
そして彼女が婚約者に冷遇されている現場を王子が目撃したと思しき夜会、その時期は二人目が駆け落ちした頃であった!
キタコレである。
案の定彼女は冷遇された挙句公の場で婚約破棄され、王子すかさず求婚………!!とは、ならなかった。
三人目の女の両親がちょっぱやで駆けつけ、王子が口を挟む前に娘を守って即行家へ帰り、修道院に押し込んだ。
なんなら「婚約破棄する!」「了解帰るぞーーー!
」くらいの勢いだったと言う。
おそらく、娘が婚約破棄されるかもしれないとわかった時点で、万が一にも王子に求婚されぬよう気を張っていたのだろう。先に解消してやれと思わなくもないが、まあ先方のが爵位高いとかなんかあったのだろう。
王子は茫然と立ち尽くしていたという。
そんなわけでフリーとなった王子だが、皆がモヤモヤすることとなった。
二人消えて、三人目に手を出そうとしてたよな…いやでも本当にただ気の毒な方かも知れないし……消えた二人は本当に……モヤモヤ…。
と言うわけで、身分を隠して我が国に教師としてやってきたのだった。
あっちのほうが強国なので、受け入れるに否やはない。というか別に無理難題ってわけでもないので、なんで?とはなったがお望みならどうぞと我が国はオッケーしたそうな。まあそれはあとで知ったのだが。
まあモヤモヤ評判が収まるまで飛ばしとくかって話なのだが——あいつはあの時、「君を王妃に」なんつってたが立太子していないので気が早い。現王の男子はあいつだけだが、王弟がいる。跡を継ぐ前に見聞広めにとか言ってたが、臣籍降下一歩手前だった。
あれはそんな男だった。
だからあの時は驚いた。
王子の噂は知ってたが、身分を隠して云々というのはそりゃ隠してくるのでその時は知らなかったのだ。あっちの国で大人しくしてんのかなと思ってた。
だからほんとにびっくりした。
えっあの噂の化け物がこんな近くに!!と超ホラーだった。お隣さんは殺人鬼って感じだ。感じというかそのままかもしれない。
だから俺は、焦ってカタリナを止めた。死ぬほど嫌いだが死んで欲しい訳ではない。寝覚が悪い。
しかしカタリナは止まらなかった。まあ仕方ない。カタリナが決めたのだ。
この国の伯爵令嬢などという後ろ盾のなさで、素っ裸で虎の檻に入るようなものだが俺にできるのは冥福を祈る事だけであった。
一方マッケンジー夫妻も泡を食ったらしい。
今までのカタリナのモラハラ被害者は身内と学園での知り合いだ。
しかし隣国でやらかしたら……!!国に被害が及ぶかも知れない!!
と、なんとか止めようとしたらしいが、叶わなかった。しかしカタリナから縁切りしてくれたので、これで類は及ばぬ一安心とホッとしたという。冷たいようだが仕方ない。
また、メイデスの件だが、金持ちに売る予定をパーにしたので、没落して娼婦となった令嬢二人ばかり紹介して許してもらった。メンゴ。彼女たちも娼館で客をとるよりも、お嬢ロンダリングして金持ちの愛人やる方が楽だと喜んでいた。
ちなみにあの王子から、カタリナを傷つけたのだからと婚約破棄の慰謝料請求されたが、長年のモラハラ被害により心を病んだという医師の診断書で跳ね除けた。いやー卒業パーティーで婚約破棄するくらい病んじゃったからね。仕方ないね。
そういう訳で、俺たちはそれぞれに、幸せを手に入れたのだった——……。ハッピーーー!!!!
…ところで数年後、いつ死ぬかと思っていたカタリナは、なんと王太子妃となった。あの王子が立太子されたのである。まさかであった。
仲睦まじい二人は、日々の研鑽にも余念がなく、あの王子はといえば、虚ろな瞳で「ハイ仰ルトオリデス…善処イタシマス…」と精進の日々だという。
国王夫妻も「スバラシイ王太子妃デス。スベテハサイコーデス」次代のためにと、これまで以上に国のため励んでいるらしい。
その話を聞いて、俺はあいつ…やりやがったな……!!やり遂げやがったな……!!と何か深い感慨を覚え、彼方を見やり、遠方元彼面したのだった。
あと潰されなかった俺ほんとすげえな!!!と思った。
☆☆完☆☆
お読み頂きお時間ありがとうございます!!(´∀`*)王子をやべー奴にしようと思って、対抗できるヒロインを考えたらやべー奴になり、やべー奴ばっかになりました…。タグのヤンデレはメンデスです。
お楽しみ頂けてたら嬉しいです!!ありがとうございました!
1/7レビューいただきました〜!スゴイ〜!!ありがとうございます!はじめてのレビューです〜!アコガレ!
ご感想や誤字報告、☆などご評価頂けるのも本当にありがとうございます!!感謝感謝です〜!ハッピー!!(´∀`*)