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第十五話

 首を飛ばされた精霊は、次第に魔力の靄となって消えていく。

「スピカ」

 彼女は振り返ると、嬉しそうにはにかんだ。

「はい、し…セオドアさん」

 腰が抜けたのか、その場にへたり込むスピカ。

「やった……ってことでいいんだよな?」

「っ……セオドアさん、そういうのは倒した直後に言っちゃいけないんですっ!」

「なんと言うんだ?」

「やったわけないよな……とか?」

「後ろ向きじゃないか?」

 軽口をたたき合っていると、靄となった魔力が突然渦巻き何かの形を成していく。

「ああっ!ほら、セオドアさんがあんなこと言うからッ!」

「よし……あきらめるか」

「ああっ!台無しですよそれ!」

 魔力は、手となり足となり、人になっていく。

「「どうすれば……!」」

 二人抱き合って絶望していると。

 そこには幼女がいた――幼女がいた。

「……どういうことだ?」

「分からないです……」

 誰も口を開かないまま、時が進んでいく。

『れいを、いいます。ひとのこらよ……』

 ようやく聞こえたのは、舌っ足らずな甲高い声と、それに見合わない硬い口調だった。

『あなたがたの、くんとうにより、わたしの、てんせいは、ぶじに、すみました』

 これが伝承による精霊の転生ということで合っているのだろうか。正直、幼女の声は聞き取りにくいのだ。

『まずは、あなたがたの、なまえを』

「セオドアだ」

「スピカです」

『せおどあ、すぴか――おぼえて、おきましょう』

 おそらく、とてつもない栄誉に違いないのだが、いかんせん相手が幼女だ。今一、背筋が伸びないというか、ほっこりするというか。

「精霊様に敵意はないのだな?」

『ほんらい、せいれいが、せいめいに、きがいを、くわえることは、ありません』

「襲われたのだが、凄い形相で」

 さっきまで、半狂乱で殺しに来た相手だ。そう簡単に、切り替えなどできない。しかし、精霊は全く意に返さず、話を続けた。

『…せいれいは、だいがわりを、するのです……いちぶ、れいがいは、いますが』

 言いながら、意味深に俺を見つめた。

「……?」

『しょきかには、よけいな、じょうほう…えねるぎーを、はきする、ひつようが、あります』

「はあ……?」

 スピカは分かっていなさそうだ。

「ならば記憶もないのか……」

『はい、さいていげん、いがいは、まりょくに、かえて、しょうひ、します』

 なるほど、それが暴れ回る理由だったのか。何とも傍迷惑な方法だ。

「もっとましなやり方はないのか?」

『たいか、のような、ものです……なにごとにも、たいかは、あります』

 ああ、そういうことか。何故、スピカが生気を吸い取られなかったのか。対価という言葉で納得できる。今までサイン村がのどかでいられたのはこの精霊のおかげであり、対価を支払う、つまり精霊と戦うべきなのも村人というわけだ。それに、殺し合いではなく試練のようなもの。だから、スピカには生気を吸い取る攻撃がなかったのだろう。

『あたらしい、わたしが、ふたたび、さいんやまの、あんねいを、ちかいましょう』

 この子もそう言っている。今回沈静化したことで、約束される。ある意味契約だ。

 身体のせいで、何とも頼りなく見えてしまうのはご愛敬だが。

『では、さらばです……せおどあ、そして、すぴか……あなたがたに、せいれいの、しゅくふくを……』

 そう言い残し、サイン山の精霊はスッと消えてしまった。

「……消えちゃいましたね」

「ああ…」

 ここで、勇者化も解けてしまった。肉体が、本来のものへと戻っていく。

「セオドアさん…ありがとうございます」

 スピカは俺に向き直ると、深くお辞儀をし礼を述べた。

「頭を上げてくれ…俺は手助けをしたに過ぎないよ」

 俺を真っ直ぐ見上げるこの少女に。

「よく……頑張ったな」

 再度頭を撫でる。

「あ、その、は、恥ずかしいです……」

 そう言いつつ、されるがままのスピカは困ったように笑ったのだった。

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