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正体を知った二人

 ノエルは初めて地下牢にきた。

「ノエル!よく来てくれた!鍵を、持ってきてくれ!」

「・・・ノエル?お母さまのこと・・・どうして?そんなに嫌いなの?」


 牢の二人は口々に話しかけた。食事を差し入れられる時以外は基本二人きりだ。ののしり合いも疲れてしまっている。他の者と話すのを渇望していた。

 そして相手は子供だ、うまく話を運べば出ることが出来る。


「ノエルの父上は少しおかしいんだ。だから私をここから出してくれ、父上を助けてやらないといけないんだ。」

 ノエルは牢の前に立って二人を見る。

「・・・まずこれ。差し入れ。」

 牢の隙間から高級なお菓子を差し入れた。

「ノエル!こんなものより鍵だ!出してくれ。」

「せっかく持ってきたのに・・・僕の差し入れ食べてくれないの?食べてくれないなら鍵持ってきたくない。」

 拗ねるようにノエルはうつむいた。

「わ、わかった。」

 前侯爵は慌てて食べ、アマリアにも食べるよう言いつけた。

「どうだ?食べたぞ。早く鍵を!」

 ノエルは冷たい表情で二人を見ると

「・・・毒入りだよ、それ。」

「何?!ふざけてる場合じゃない。さっさということを聞きなさい!」

「毒で死ねるなんて幸せじゃないか。俺なんか、家族と恋人に騙されて、冤罪かけられた上に切られて崖から突き落とされて死んだんだ。よく知ってるだろうけど。」


 アマリアと前侯爵は真っ青になった。

「だ、誰から・・・聞いたの?ノエル・・・そんな話、誰が?」

 アマリアは震える声でノエルに聞いた。

 息子は自分の母の裏切りを知っていた。だからこその「あばずれ」発言だったのか・・・しかし。

「・・・俺なんか?」

「ノエル!訳の分からないことをいうんじゃない。どうせセレスタンが言ったんだろうが、お前の父こそが弟を殺した罪人なのだ!もしかしてセレスタンから毒を盛るよう言われてきたのか?!あいつめ!自分だけ逃れようとしやがって!ノエル!お前の父こそが弟を殺した罪人だ。早く出してくれ、頼む。本当に毒なら医者を呼んでくれ!」

 前侯爵は悲痛な声で叫んだ。


「・・・心底軽蔑するよ。お前が俺を殺すように命じたんだろう。俺はお前を絶対に許さない。アマリア、兄上と結婚して幸せだったか?」

「・・・リュ・・カ?リュカなの?!」

「馬鹿な!」

「毒なんて入ってないけど、もう会うこともない。じゃあね・・・アミー。」

 リュカしか呼ぶことのなかった愛称で呼び、ノエルは牢を後にした。


 後ろからアマリアの慟哭と前侯爵のわめき声が聞こえたが、もう振り向くことはなかった。


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