カミラ様
あの騎士の誓いの時、カミラ様と初めて会ったとき
俺は前世のこと、前世五十嵐小春のことを質問してみた。
「カミラ様、少しよろしいでしょうか?」
「いいわよ!なんでも、お聞きになって」
口調がキャラの定まっていない感じで少し間が抜ける。
何でも聞いてよいのか…
…さて、どうしたものか
父さんやレクス様がいる中、急に前世の話をしだしたら
頭がおかしくなったと思われかねない。
かといって、中途半端な質問をしてもただの世間話の質問だと思われてしまう。
…そうだ、日本語で話しかければいいじゃないか
周りの人には聞こえないように耳元で囁けばいいし。
俺は、カミラ様に近づく。
「え、え!え!?アル君!?」
なぜか、俺が近づくとカミラ様は後ずさる。
離れられると質問ができない…
「カミラ様と二人だけの内緒の質問なので…できれば、耳を貸していただけますか?」
「え、は、はひ!」
顔を真っ赤にして目をぎゅっとつむるカミラ様
可愛い…
おっと、見とれている場合じゃない
俺はカミラ様の耳元で質問をする。もちろん日本語でだ。
『あなたは…五十嵐小春さん?』
囁き終えて、カミラ様から離れる。
カミラ様は俺をじっと見つめる。
これで転生者同士話し合いができる。
と、言っても特に転生者同士で話すこともないのだけど…
それに五十嵐さんとは接点もなかったわけだから、気まずくなるかもしれない。
騎士の誓いをやっておいてそれは少し、まずいかも…
「アル君…あなた…」
今度はカミラ様から顔を近づけてくる。
さっき、カミラ様が離れていった理由が分かったかもしれない。
迫られると確かに後ずさってしまうかもしれない。
言い表しようのない、威圧感がある。最もカミラ様は威圧感よりも
その圧倒的な美形な顔に気おされる。
そんな俺を逃がさぬようにガシッと肩をつかんでくる。
え、カミラ様なんでそんなに血走った顔してらっしゃるの?
「古代語を話せるのね!」
「………はい?」
カミラ様が何を言っているのか理解するのに3秒はかかった気がする。
コダイゴ?日本にそんな地名あったっけ?
「もしかして、アル君も古代の遺産などが好きなの!?」
さっきまでのぎこちないしゃべり方とは打って変わって
年相応の話方で、早口になる。
「そうよね!気になるもんね!古代の歴史、古代の遺産すべてロマンがあると思うわ!どのように文化が生まれ、どのように発展し、どのように私たちの今にたどり着いたか!いつ頃から、魔法が誕生し!魔物が生まれ!ダンジョンという古代人が残した建造物が今の時代まで残っているのか!気になるもんね!お父様や、お母さまにお話ししても全く聞いてくれないもの、でも!アル君は私の知らない古代語を教えてくれた!もしかして、私が歴史のこと好きだから教えてくれたのかな?」
やばい…半分以上何言っているかわからなかった。
助けを求めるように、レクス様のほうを見る。
その目は濁っていた。
あぁ、何度も聞かされていたのだろう…
あの執事の人に助けを求めようと部屋を見回す。
さっきまで、お茶を入れていたはずなのにいつの間にか部屋にいなかった。
父さんは、突然のカミラ様の変容ぶりにおろおろしてる。
「アル君!さっきおっしゃっていた古代語を教えてください!いいえ!さっきのだけでなく知っていること全部教えてください!」
目をキラキラと輝かせながら俺の手を握る。
普通はこのシチュエーションはドキドキするものだが
今の俺には、絶対に逃がさないぞといった強い意志が感じられて、泣きそうだ。
「わ、わかりました!教えます!教えますから!」
「ありがとうございます!では早速、書庫に行きましょう!じっくりお話ししましょう!…ついでに今後のことも!」
俺にとってはそのついでの今後のことが大事なのだが…
いつ、話せるのか…
そのあとは、俺はこってりと日本語のことについて根掘り葉掘り聞かれた。
当然だが、カミラ様は前世の記憶五十嵐小春としての記憶がないらしい。
日本がわからない時点で確定なのだが
ただ、性格自体は五十嵐さんそのもので、誰にでも好かれるような女性だった。
日本語を教えているときに聞いてみたのだが、貴族として生きていくうえで威厳があるように
口調を変えようとしていた時期だったらしい。
話しやすいように話したほうがいいのではと提案すると
少し考えたのち、そうですねと前世の記憶にある五十嵐さんの話方になった。
といった、過去の話がある。
今は、カミラ様も日本語を話せるようになったし、書けるようにもなった。
ただ、前世の五十嵐さんとしての記憶は思い出したわけではない。
日本語で日本のことを聞いてみた。
だが、質問したことはすべて知らないか、文献で見知ったことばかりだった。