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第4話 異世界情勢は単純怪奇なり

「すごい美味しかった。本当にありがとう」


2人で一緒に食べていたポテチがなくなると、彼女はそう切り出した。7割以上彼女が食べてたし、かなりおいしかったみたいだ。


「私の名前はアンジェラ。アンジェラ・スタイナー。あなたは?」

「えっと、加藤優斗です。加藤が姓で優斗が名ね」

「カトウユウト、か……呼び方はユウトでいい?」

「あー、まあいいよ」


地味に下の名前で呼ばれるとかあんまりないのだが、まあ別にいいだろう。


「あの……さっきは助けてくれてありがとう。本当に助かった」

「いえ、なんのなんの」


がれきに挟まって苦しそうのしていたのに、放ってはおけないだろう。当然のことをしたまでだ。

それにしても、彼女はなぜあんなところでがれきに挟まっていたのだろうか。そもそもこの廃墟は何なのだろうか。この世界はどんなところなのだろうか。

知りたいことは色々とある。がれきに挟まっていた彼女は俺が初めて接触した異世界人なので、いろいろと情報を仕入れていきたい。

とりあえず、あそこで挟まっていた理由を知りたいな。


「えっと、なんであそこでがれきに挟まっていたのかな?」

「屋敷の中を探索していたら、地震が起きて、天井が落ちてきて……4、5時間ぐらいは前だと思うけど、そこからずっと挟まってたの」

「探索……この屋敷にはなんでいたの?」

「食べ物を探してて。缶詰とか瓶詰がないかと思ったんだけど……」


そこまでいうと、彼女は何かを思い出したようなしぐさをした。


「私のリュックは……」


彼女は自分が挟まっていたがれきの山へと舞い戻り、そして半身を山へと突っ込んだ。彼女の荷物ががれきの中に残ったままなのだろうか。しかし、これは少し危なくないだろうか。


「ちょ、ちょっと大丈夫?」


また崩れたりしないだろうか、心配しながらその様子を見守る。

幸いにもすぐ近くにあったみたいで、上半身をがれきの隙間に入れていた彼女は数秒で出てきた。彼女の手にはさっきはもっていなかった大きなリュックがあった。


「あー、それがリュック?」

「そうだけど、リュックのベルトが切れちゃってる……でも中身は無事みたい」


話している間にも、取り出した茶色のリュックの中身を彼女は確認し続けた。その様子をチラ見すると、中には缶詰や金属製の水筒のほかに、布団のようなものや鍋なんかも入っているみたいだ。彼女の持っているバッグはそれなりの大きさだと思うが、年端もいかない少女の物としてはかなり大きいと思う。

しかし、廃墟で食べ物を探すとはどういうことだろうか。そんなことをやるということはよほど貧乏ということか、ひょっとしたらこの子は浮浪児、ホームレスなのだろうか。

もしそうなら色々と闇が深いぞ。異世界に来てまで経済格差の現実を見せられるとは思いもしなかった。

こういう話題はあまり振らないほうがいいだろう。別の話題を振ることにした。


「えっと、さっきはかなり驚いていたみたいだけど、どうして?」


大方この理由は予想できる。この建物はどうやら廃墟みたいなので、人が来ると思っていなかったのだろう。俺の顔がブサイクだからとかいう理由はやめてほしい。


「私、2か月ぶりに人を見たから、ちょっと驚いちゃったの。ごめんなさい」

「ほう、まあそりゃあ驚くな……ん、2か月ぶり?」


さらりと聞いていたのだが、彼女の発言によっていったん思考が止まる。いまこの子は間違いなく2か月ぶりって言った気がする。いくら何でもそれは少しおかしくないだろうか。


「ちょっと待って、2か月ぶりに人間を見たってこと?」


俺の問いかけに、その子は黙って頷いた。


「正確には2か月かどうかわからいけど、多分それくらい。2か月前……私のお父さんが死んだの。人を見たのはそれっきり」

(めっちゃ重いやん)


軽い気持ちで聞いたのだが、普通に重い話題でこっちも気分が重くなる。お父さん死んだとか……

いやそれよりも、この子の話を聞く限りお父さん以外の人は見ていないということになってしまう。それはどういうことだろうか。この子が嘘をついているようには見えないが……

もしかして、これは引きこもりという奴だろうか。いや、もしかしたら人は見ていないけどエルフは見たみたいなことかもしれない。


「……それって人間以外は昨日見たみたいなミスリードを誘った感じ?」

「え? いや……2か月間、お父さん以外の誰とも会っていないよ。お父さん以外の人を見たのはもう何時になるかな……あれからずっと独りぼっちだったの」

(……これ文明崩壊とかしてたりするのか?)


1つの考えが浮かんだが、今までの話を聞くに、その可能性が大である。この建物が廃墟になっているのも単に整備されていないのではなく、人類が滅んだからなのかもしれない。浮浪児説も文明崩壊していればそうなるだろう。

もしかしたら、この子は文明崩壊後のわずかな生き残り的なものなのかもしれない。ここは思い切って聞いてみるか。


「ねえ、もしかして人類って滅びてたりする?」

「……え、何言っているの?」


こちらの質問に対し、この子は変なことを言っているような眼をした。それに少し安堵した。どうやら自分の予想は外れていたみたいだ。やはりこの子はただの浮浪児なのだろう。


「あー、やっぱり自分の予想は外れて「昔の文明はもう50年ぐらい前に滅んだってお父さんから聞いたけど……違うの?」……マジか」


どうやら自分の予想は当たっていたみたいだ。やはりこの子は文明崩壊の生き残りなのだろう。

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