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CASE FILE 1-02 : 現場検証

更新が遅くなってすみません。色々大変だったもので・・・。

タイトルは「現場検証」なんてなってますが、実際には皆さんにも犯人が分かってしまいます。

ただ、まだ謎解きなんかは全く出てこないので、それは安心してください。

それではどうぞ。

「時雨、二人を頼んだぞ。」

「あ、ああ。秋冬、お前は?」

「現場検証だよ。」


それだけを告げて俺は二階を後にした。


「・・・さて、と。」


事件現場は居間。被害者は紅葉の父さん。

第一発見者は俺、春夏、紅葉、時雨で、発見時刻は午後四時半。

遺体はそこの戸を抜けて左側の窓の前に・・・。


「・・・!」


あった。見ていられないほど痛々しく無残な遺体。

服はあまり乱れていないが、何かで刺した跡が喉や背中に無数についている。

血は窓や床など様々な所に飛び散り、居間を真紅に染め上げていた。

そんな異様な光景に、吐き気すら覚える。


『帰りたい。今すぐここから逃げ出したい。』


それが本音だった。


「・・・。」


だが、この人は俺の親友の親。あいつにとって一番大切な人だ。

その人がこんな風に殺されたんだ。あいつの痛みに比べたら、このくらいなんとも無いだろ!

そう自分に言い聞かせ・・・俺は遺体に向けて、一歩踏み出した。


被害者の死因は刺殺で間違いない。

喉や胸などの急所を刺されてるから、即死だろうな。

死後硬直の進行具合と死斑の量から考えて、死亡推定時刻は朝七時から八時の間。

血も完璧に乾いているから、犯行は相当前だろう。

顔には特に異常はない。手には・・・。


「ん?時計?」


左腕には腕時計をしていた。死体が硬直していたので苦労したが、何とか時計を見ることができた。


「・・・あ、ストップウォッチが動いてる。」


何かの拍子にスイッチが入ったのか、高級そうな腕時計のストップウォッチが作動していた。

確認すると、分を表す針が3を指していた。あいにく何時間かを表す針は無かった。

つまり、このストップウォッチは作動してから数時間と十五分が経過しているということだ。

今の時刻は四時五十分。

仮にこのストップウォッチが被害者が死亡したときに作動したなら、さっき割り出した死亡推定時刻と照らし合わせると・・・。


「・・・七時三十五分。」


正確ではないが、近いはずだ。


「遺体から得られる証拠はこれくらいか。」


俺は立ち上がり辺りを見回した。居間は戸を抜けて左側にある。右側にはキッチン。

居間の中央には小さな木の机があり、戸の所から見て一番奥の角の所にテレビがある。

テレビの左側には大きな窓がある。紅葉の父さんはそこに倒れていた。

外に手掛かりがあるかどうかを確認するために窓を開けようと取っ手に手を掛けて引っ張るが・・・。


「ん?あれ?開かない・・・?」


鍵は掛かっていない、というか掛かっていなかった。だから犯人はここから進入したと思ったんだけど・・・。


「・・・ん?何だこれ?」


窓の敷居に、きれいな木の棒がはまっていた。


「・・・なるほど。窓を開けようとするとこの棒が邪魔をして開かないのか。」


もう一度試しに引くと、やはり棒に阻まれて開けられない。

パッと見ただけだが外に証拠らしきものは見当たらなかったので、再び視線を家の中に戻す。

まずはテレビや床を調べ、次に机を調べた。

残念ながら、特に証拠になりそうなものは無かった。


「居間はこれで終わり。残るは・・・。」


俺は残りの部屋を調べるために、戸を抜けて居間を出る。

部屋を一通り見て回ったが、ほとんどの部屋が荒らされていた。

書斎らしき部屋の書類は全て床に散らばり、紅葉の部屋や寝室には服などが散乱していた。

玄関には俺達が来たときには鍵が掛かっていた。

ただ、犯人が窓から出たとは言い切れない。


「・・・ドアを半開きにした状態で鍵を掛けて、自分だけ外に出てそのままドアを閉めれば密室の出来上がり、か。」

「・・・それはありませんよ。」

「・・・!」


驚いて振り返る。すると、そこには紅葉が立っていた。


「紅葉、もう大丈夫なのか?」

「はい、いつまでも寝てられませんし・・・。」

「無理しなくてもいいんだぞ?」

「大丈夫です。今は自分のことよりお父さんを殺した犯人を見つけたい気持ちのほうが上ですから。」

「・・・分かった。それより、『それはない』ってどういうことだ?」

「この家は少し特殊で、さっき秋冬さんが言った方法では鍵は閉まらないんです。何でしたら試してみてもいいですよ。」


紅葉の許可が出たので俺はまずドアを開けて、鍵を閉めて外に出る。

ドアを閉めて、再びドアノブを回すと・・・。


「・・・本当だ。」


鍵は掛かっておらず簡単に開けて中に入ることが出来た。


「つまり侵入方法はあの窓しかないわけだ。」

「そうなりますね。」

「・・・ん?そういえばあの二人は?」

「春夏さんと時雨さんならまだ二階にいます。さすがにもうあの光景は見たくないって・・・。」

「・・・ま、そりゃそうか。・・・ところで紅葉。」

「はい?何ですか?」

「・・・今日何時ごろ家を出た?正直に答えてくれ。」


それを聞いて、紅葉の顔が強張る。無理も無い。

被害者の実の娘を、俺は疑っているんだから。


「・・・七時、五十五分です。少し寝坊して、秋冬さんと春夏さんが来るほんの少し前に学校に着きました。」

「・・・そうか。ところで紅葉、お前の母さんってあとどれくらいで帰ってくる?まだ当分帰ってこないなら、電話したいんだけど・・・。」

「・・・母も疑っているんですね。当分は帰ってこないので電話したほうがいいですよ。」

「俺だって疑いたくない。でも、部外者が犯人の可能性はほぼゼロなんだ。俺の推理が間違ってなければ、犯人はお前かお前の母さんか・・・。それは、この電話で分かるよ。」

「・・・そう・・・ですか・・・。」


紅葉はそう呟き、携帯電話を操作し始めた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・はい。・・・はい。・・・分かりました、ありがとうございます。」


キッチンの隅で秋冬さんがお母さんと話している。私は椅子に、お父さんの遺体から背を向けるようにして座っている。

秋冬さんは私かお母さんが犯人だと言った。そしてお母さんは犯人じゃない。それは秋冬さんだってすぐに分かるはず。

そうなったら、もう消去法で・・・。


「・・・ここまで、ですかね・・・。」


思わずポツリと、小さく呟いていた。

いかがだったでしょうか?

まあ、これで皆さん犯人が誰かは分かったと思いますが、方法や根拠は分かりましたか?

次回はいよいよ謎解きです。

もし何か矛盾などありましたら知らせてください。なるべく筋が通るよう修復するので・・・。

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