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CASE FILE 3-02 : 悲劇の役者達

秋冬「結局またずいぶんと遅れたな・・・。」

作者「・・・本当に申し訳ないです。」

??「まあ、気持ちは分かるけどね。」

秋冬「・・・。」

作者「・・・。」

??「・・・。」

秋冬「・・・いや、お前まだ出てきちゃダメだろ!?」

作者「あ、本当だ!何で出て来るんだ!早く、戻れ戻れ!」

??「出したのはあなたでしょ?」

作者「うぐっ!い、痛いところをついてきたな・・・。」

秋冬「と、とりあえずどうぞ!」

「幸太さん、寒鴉の家ってどんな感じなんですか?」

「すごく立派ですよ。家は地上4階地下2階あって、貫太郎(かんたろう)様と椿(つばき)様、寒鴉お嬢様に執事の森様、そして家政婦の理恵(りえ)様が住んでおります。」

「幸田さんは住み込みじゃないんですか?」

「僕は普段は他の場所で働いていて、貫太郎様から依頼が来たときだけ運転手をさせていただいているんです。」

「へ〜。他には何かあるんですか?」

「もちろん。地下2階には今回のパーティーの舞台となるパーティールーム、地下一階は大浴場。地上には大広間があります。まあ、リビングのようなものです。裏庭にはプールがありまして、2階はゲームセンター、3階は住んでいらっしゃる方全員の寝室に加え客室が20部屋ほどあります。4階はスケートリンクになっております。それから、敷地内に小さな別荘、というか離れがあります。大した物は無いですが、人が普通に引っ越して生活を始められるような作りにはなってますよ。他にも様々な小さな施設が数十個あります。」

「・・・恐ろしいですね。」

「大丈夫ですよ。風雪様はまだ話を聞いただけです。実物を見たらもっと驚きますよ。」

「・・・。」


富豪って恐ろしい・・・。


「それから、『風雪様』って止めてもらえます?」

「かしこまりました、秋冬様。」

「・・・。」

「秋冬様〜!後ろ見て、すごいよ!」

「『様』止めろ!ってうわっ!」


俺は今まで前に座っていて後ろを見てなかったので、後ろを見てそのスケールのでかさに驚く。

まず目に入ったのは、車の長さ。普通に畳三畳くらい縦に並べられそうだ。後ろの方にあるドアが遥か向こうにあるような錯覚にすら陥ってしまう。

通路|(正確には車内なのだが・・・)の左右には高級そうなワイン等が置いてある。

・・・完全にどこぞの超高級ホテルだろ、これ。

車内の様子は、春夏と涼美は大騒ぎ。紅葉はリラックスするために作られたデザインの車内でガチガチになっている。凛は車内の高級感を満喫している。お姫様体質のあいつにはたまらないだろうな、これは。時雨は車内にあった赤ワインをがぶ飲み・・・と思ったらビンに入ったグレープジュースだった。


「時雨、そんなに飲んで大丈夫か?それ多分高いぞ?」

「どうだろうな。幸太さん、これいくら位するんだ?」

「そうですね・・・。外国から輸入した高級グレープジュースですので正確な値段は分かりませんが、日本円で大体5万円ほどだと思いますよ。」


そういわれた瞬間、時雨は口に入れていたグレープジュースを盛大に噴き出した。

・・・あ〜あ、もったいない。


「―――じゃなくて!ジュースが1本5万って普通の感覚じゃないでしょ!」

「そうですね。でも、僕はもう慣れてしまいましたから。」

「・・・慣れって恐ろしいですね。」

「ですね。さ、あと5分ほどで着きますよ。」


幸太さんの言ったとおり、冬枯邸にはぴったり5分で着いた。・・・これも冬枯家に雇われるための能力なのだろうか?


「あ、皆さん!ようこそ、これが私の家ですけど・・・どうかしましたか?」

「・・・いや、軽く泣きたくなってきただけだ。」

「え、な、何でですか?幸太さんが何かしましたか?」

「いや、そうじゃないけど・・・。つーかむしろ何かしたのはお前だ。」

「ふぇ!?わ、私ですか!?な、何しましたか!?」

「・・・。」


とてもじゃないが、もう何も言えない。本当に、全く自覚が無いのだ。

幸太さんの言っていた意味が分かった。なるほど、確かに車の中では話を聞いただけだった。

実際に見てみると、また話とは違った意味で驚く。涼美が言っていたとおり、西洋の城のようだ。家全体は真っ白で、話どおり庭の中心辺りに噴水がある。そしてそれを囲むように、花や草が植えてある。そして何故か警備員、というかもうほとんどSPみたいな人たちが数十人警備に当たっている。つーかこれって・・・。


「ホワイ○ハウス?」

「違います!」


紅葉から高速のツッコミを食らった。さっきまで唖然としてたくせに、何でいきなり元に戻るんだよ・・・。あとは少し遠くに雰囲気に似合わない木で出来た別荘のようなものがあるが、まあ後で見てみよう。



「皆様、ようこそいらっしゃいました。私がこの家の執事をやっております、森と申します。」


さっきから寒鴉の後ろに直立不動で立っていた初老の男性が言った。

この人がこの家で唯一の執事の森さんか。なんとなく鉛筆のようなイメージを抱く。腕などは細く、身長は高い。大体185センチくらいだろう。黒いスーツを華麗に着こなして、「英国紳士」という感じだ。白銀の髪をオールバックにしていて、しわもほとんど無い。かなりかっこいい老人だ。


「どうも。俺は―――」

「存じ上げております。風雪秋冬様、ですね。後ろの方々は桜火春夏様、星河紅葉様、朝霜時雨様、風雪涼美様に間違いありませんか?」

「ちょっと!あたしが入ってないわよ!」

「おや、これは失礼しました。あなたは・・・初霞凛様でよろしいのですか?」

「そうよ。今後気をつけるように!」

「かしこまりました。」


凛の奴、威張ってるな〜・・・。


「悪いな寒鴉、急に来ることになった奴があんなで。」

「いえ、私はかまいませんけど、風雪先輩大丈夫ですか?あの方が先輩の従妹なんですよね?相当こき使われてるんじゃないですか?」

「やっぱりそう見えるか?」

「はい、正直なところ・・・。」

「正解。」

「あ、やっぱりそうなんですか・・・。今森さんが凛さんの名前を挙げなかったのは私が彼女の容姿を知らないからなんですよ。」

「そうか。後で俺から謝っとくよ。あと凛に指導を入れとく。」

「そうしてもらえると助かります。」


寒鴉は苦笑いを浮かべながらそう言った。やっぱり好印象ではないらしい。

悪い奴じゃないんだけど、それを理解できるまでに時間が掛かるんだよな・・・。


「さあ皆さん、とりあえず上がってください。お父さんとお母さんも皆さんに会いたがっているので、どうぞ。」


そう促されて、俺たち6人は冬枯邸|(ホワイ○ハウス)に入った。

入って早々、メイド服の綺麗な若い女性が満面の笑顔で俺たちを出迎えてくれた。


「ようこそ!私はこの家で家政婦をやっている亀兎(かめと)理恵です!」

「よろしくお願いします。変わった苗字ですね、亀兎って。」

「結構言われますよ。さ、どうぞこちらへ。貫太郎様と椿様がお待ちです。」


亀兎さんは身を翻して、コツコツと音を立てながら歩き出した。俺達はその後を追って歩き始める。春夏や凛は中を見て驚いているが、俺はもうこれ以上驚いてもきりが無いのでもうオーバーに驚くのは止めた。

それにしても、本当にすごいな・・・。全部木製のタンスや、木でできている掛け時計なんかがある。

しかし、少し違和感を感じるのが、デザイン。タンスは取っ手がリング状の奴なのに、それも全部木製。時計は本体の数字はごく普通の英数字なのに、周りのデザインの数字はローマ数字なのだ。タンスでリング状の取っては普通金属を使うし、高級な時計は結構ローマ数字を使うかかなり洒落ている英数字を使うのに、本体の数字は普通の英数字で、外側がローマ数字って言うのは珍しいな・・・。

しばらくそれについて考えていると、一つの答えにたどり着いた。


「あ、そうか。」

「え、どうかしましたか?」


声に出してしまったのを紅葉が聞いて、質問してきた。


「いや、少しだけこの家の大きさに納得した。」

「?どういうことですか?」

「この家を少し観察させてもらったけど、結構木製のものが多いだろ?タンスは取っ手の部分まで木製、時計は英数字とローマ数字がバラバラ。何でだと思う?」

「普通にそういうデザインなんじゃないですか?」

「そうかもしれない。でも、俺はこう考えた。この家のご主人、貫太郎さんは節約家なんじゃないかって。本当に必要なもの、例えば家は豪華なものを作るけど、常用品なんかにはそんなにこだわらない。その反面、人を接待する場合なんかには最高のもてなしをする。」

「節約家・・・ですか?」

「そう。タンスも時計も全部手作りだとすると、木製なのもデザインが滅茶苦茶なのも説明できる。木は扱いやすいからタンスは自分で作って、時計は市販のものが入る寸法で枠を作って、時計を入れて高級そうに見せた。『お洒落=ローマ数字』って方程式は結構一般的だから、ローマ数字が入っているデザインにした。そうしたら結構筋は通るだろ?」

「・・・そうですね。でも、証拠は無いじゃないですか。」

「だから最初に言ったろ?『こう考えた』って。ほとんど推測だよ。」

「私を嵌めた時と同じ手ですね。」

「だな。ま、真偽の程は後程、ってな。本人に聞きゃはっきりするだろ。」

「これから3階にある貫太郎様の部屋へとご案内いたします。皆様、このエレベーターにお乗りください。」


森さんに言われたままに、俺達はエレベーターに乗り込んだ。

・・・自宅にエレベーターって、どこのゲ○ツだよ?


「そういえば亀兎さん。」

「理恵でいいですよ。」

「じゃあ理恵さん。理恵さんまだ結構若いですよね?家政婦ってお年寄りってイメージがあるんですけど、どうして家政婦なんてやってるんですか?」

「実は私数年前まで老人介護センターに勤めていたんです。で、何でも私が一際面倒見が良かったと言うことで紀美子様が私にここで働いてくれと言われたんです。」

「紀美子様って?」

「お嬢様のお祖母様です。4年前にお亡くなりになられましたけど・・・。」

「え?寒鴉のおばあさんは鴉さんじゃ・・・?」

「ああ、鴉様は貫太郎様のお母様です。紀美子様は椿様のお母様なんです。」

「あ、そういうことですか。でも、大変じゃないですか?この家唯一のメイドさんなんですよね?」

「最初のうちは失敗続きでかなり苦戦しましたけど、今はもう慣れましたよ。慣れって恐ろしいですよね。」

「同じ事をついさっき思いましたよ。あともう一つ。」

「はい、何ですか?」

「その格好、恥ずかしくないですか?」

「・・・慣れというのは恐ろしいものなんですよ。」

「・・・そうですか。」


寒鴉の家は本当にそのことを痛感させられるな・・・。

と、考えている間にエレベーターのスピードが落ちてきた。そろそろ着くのだろう。

チンッ、という音が鳴り、エレベーターのドアが開いた。すると、左右にドアがかなりの感覚で並んでいる長い通路が視界に入った。


「・・・慣れって恐ろしいな。もうこのスケールのでかさに慣れたよ。」

「順応するの早いですね。」

「そうか?」

「ええ、私はまだ全然ダメです。」

「それが普通なんじゃないか?」

「だといいんですけどね・・・。」


そういってる間にも俺達は長い通路を歩き、一番奥にあるドアの前に立った。


「何でこんな遠くに作ったんですか?自分の部屋なら近いところのほうがいいでしょ?」

「貫太郎様は『この方が運動できるからこれでいいんだ!』と仰っていました。」

「・・・今のはモノマネですか?」

「はい。一応そのつもりでしたけど、どうでした?」

「・・・いや、まず俺達はその本人に会ってないですから・・・。」

「あ、そうでしたね。失礼しました。」


・・・この人、かすかに春夏と同じにおいがする・・・。


「貫太郎様、椿様。風雪秋冬様とお連れの皆様がお見えになりました。」

「誰がこんな奴の『お連れ』よ、誰が!」

「んなことどうでもいいだろ。こんな豪華な家に来れたのは誰のおかげだ?」

「こんな豪華な家を持ってる寒鴉のおかげ。」

「・・・痛い所突くな、お前。」

「うるさい。ほら、来たよ。」


巨大なドアが静かに、ゆっくりと開く。・・・ドラ○エの魔王の部屋はこんな感じなのだろうか?


「ようこそ!私がこの家の主、冬枯貫太郎だ!皆良く来てくれた!」


野太い声が広い部屋中に木霊する。その広い部屋の置くに、座っている男性と女性の姿が目に入った。あの二人が寒鴉の両親の貫太郎さんと椿さんだろう。

貫太郎さんは黒いスーツに身を包み、茶色い髪をオールバックにしている。結構スリムでかなりかっこいい。

椿さんは青いドレスを見事に着こなしている。長い金髪をおろしていて装飾の派手なカチューシャをしている。プロポーションは・・・まあそんじょそこらの人達とは比べ物にならない。顔も整っていて、超美人だ。

・・・つーか、理恵さんの貫太郎さんのモノマネそっくりだ。


「風雪秋冬です。今回は俺なんかのためにパーティーなんて開いてくれてありがとうございます。」

「おお、君か!私の大切な娘を痴漢から助けてくれたのは!いやいや、礼を言うのはこっちだよ!寒鴉を助けてくれて、ありがとう!」

「そんなたいそうなことしてないですよ。むしろそんなことのためにパーティーなんて申し訳ないです。節約家なのに。」

「節約家?私はあまり節約しないほうだが?」

「ありゃ?じゃあ趣味でやってるんですか?」

「何をだね?」

「あ、失礼しました。順を追って説明します。」


これじゃ理恵さんと変わらないな、と心の中で苦笑しながら貫太郎さんに説明すると、本人はもちろん、話を聞いていた紅葉以外全員が俺の話に感心していた。


「たいしたものだな。確かに時計やタンスは私が趣味で作ったものだ。」

「一発正解とはいかなかったか。まあ上出来だろ。」

「風雪君、今度私の会社で推理ゲームの監修をしてみない?」

「それはちょっと勘弁していただきたいです。プレッシャーが・・・。」

「そう?残念ね。」

「・・・で、後ろの方々は?名前は知ってるが、誰が誰だか・・・。」


あ、紹介すんの忘れてた。


「左から順に朝霜時雨様、初霞凛様、星河紅葉様、桜火春夏様です。涼美様には前にいらした時にお会いしましたよね?」


森さんが淡々と名前を並べる。名前って意外と覚えられないのに、流石だなぁ。・・・ん?何が流石なんだ?俺まだこの人のこと全然知らないぞ?


「ありがとう、森。さて、皆!早速パーティーに行くとしようか!」

「そっか、パーティーって地下2階でやるんだったね。」

「主役がいなくちゃ始まらないでしょ、風雪君?もう皆来て先に始めてるわ。急いでいきましょう。」

「了解です。」


ん?『皆』?俺達のほかにも誰かいるのか?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「「「・・・。」」」


開いた口が塞がらない、ってのはこういうときに使うんだろうな・・・。

俺達の中で比較的常識のある3人が呆然と立ちすくむ。


「・・・寒鴉、部屋どこだ?俺もう今日寝るから。明日の午後七時に起こしてくれ。」

「ちょっとぉ!それじゃパーティーに全然参加できないじゃないですかぁ!何のためのパーティですか!?」


それは結構こっちのセリフなんだが・・・。


「せっかく皆さんを招待したのに、主役がいなきゃ話にならないじゃないですか!」

「『皆』ってお前・・・。」


俺はもう一度パーティー会場を見る。常識のない3人が恐れを知らずに色々としている。


「秋冬、この人達歌手のEX○LEだよ!握手してもらってこよっと!」

「お兄ちゃん!芸人のダウンタ○ン!私サインもらってくるね!」

「秋冬!あいつイ○ローだぞ!後あっちには・・・!」


そう、パーティー会場にはテレビで見たことのある人達ばかり集まっている。

俺達は完全に場違いだ。SPだらけだったわけだ・・・。

・・・つーか時雨、超一流スポーツ選手に相手に『あいつ』って・・・。


「お、寒鴉ちゃん!今日も豪華なパーティー開いたね!」

「開いたのは私じゃないですよ?」

「いいんだよ、すごいのは寒鴉ちゃんの家だからね。それじゃ、また後で。」

「・・・寒鴉、今のは?」

「え?俳優の織田裕一さんですけど?」

「・・・やっぱ俺寝るわ。おやすみ〜。」

「だからダメですって!」

「・・・寒鴉、あたしも寝るわ。」

「すみません、私も・・・。」

「だからなんでですか〜!?お願いだからいてくださいよ〜!」


寒鴉の半分泣いている声を聞いて少し悪い気もしたが、さすがにここにとどまる勇気はない。

と、ちょうど寒鴉が泣き出しそうになったその時―――


「皆、よく来てくれた!」


タイミングよく、と言うか悪く貫太郎さんがステージに上がった。

おかげで帰るタイミング逃しちまったよ・・・。


「今日集まってもらったのは他でもない!私の娘、寒鴉を痴漢から救ってくれた勇敢な青年を皆も一緒に祝ってもらおうと思って開かせてもらった!」


場内が歓声が上がる。頼むから名前を出さないでくれ、頼むから俺の名前を出さないでくれ・・・!


「その青年は、そこにいるこの会場で唯一私服を着ている青年、風雪秋冬君だ!」

『・・・。』


・・・うん。悪気はないんだろうな・・・。


「さあ秋冬君!ステージへ!スピーチを!」

「へ?」

「ん?面白そう!秋冬、早く行ってきなさい!」

「いやいやいや!いきなりステージとか言われても!」


凛が面白がって仰ぎたてる。無茶振りだろ・・・!


「秋冬さん、行ってらっしゃい♪」

「先輩、張り切ってどうぞ!」


・・・追い詰められた、完全に!

と、俺がグズグズしているとSPらしき人達が俺を強制的にステージに上げた。

そしてまたもや強制的にマイクを持たされ、


「さあ、どうぞ!」

「・・・えええぇぇぇ・・・?」


これは何の罰ゲームなんでしょうか・・・?


「秋冬、可哀想だね。」

「だな。」


そう思うんなら助けろよ!と、薄情な友にツッコミを入れたところで冷静に現在の状況を把握する。

まず間違いないのは俺がある意味絶体絶命だと言うことと、助けは来ないということ。

これだけでもう何にもする気がなくなった・・・。

いいや、貫太郎さんには悪いけどもう適当に終わらせよう。

―――以上、ここまで約0.5秒。


「・・・え〜、本日は俺なんかのために皆様お集まりいただき、ありがとうございます。

正直俺は未だにこの状況に混乱しているのですが、こんな盛大なパーティーを開いてくれたことには感謝しています。

と言うわけで主役の俺がこんな感じなので、皆様パーティーの目的は忘れて普通に楽しんでください。以上です。」


最後にため息をついて、マイクを貫太郎さんに返す。場内の様々なところから「オォ〜」と言う声が聞こえる。


「あの歳でずいぶん堂々としているな。男らしい青年だ。」

「落ち着いてるし、かっこいいわね。あなたも見習ってよね。」


超有名人達に見習われても困るのだが・・・。心の中でそう呟きながら元いた場所まで戻る。


「すごいね!かっこよかったよ、秋冬!」

「堂々としていて立派でしたよ!」


・・・なんだ?俺はやることなすこと大げさに見られてしまうのか?


「先輩、どうしたんですか?ずいぶん疲れた様子ですけど・・・。」

「あれで疲れないのはバカぐらいだよ。」


俺がそう言うと皆揃って時雨を見る。

まあ確かに俺の中でも時雨≧春夏=涼美と言う方程式は成り立っているからな。


「ん?どうした、皆揃って俺を見て。はっ、そうか!俺に見とれているのだな!止めてくれ、照れるだろう!」


・・・今、俺の頭の中で時雨>春夏=涼美の方程式が完成した。


「寒鴉、俺適当にこの家の中見てきていいか?」

「ええ、構いませんよ。あ、でもどうせならガイドでもつけましょうか?」

「は?いいよそんなの、パーティーやってればいいだろ?」

「大丈夫です、彼女は今パーティー会場にいませんし、やることもないでしょうから。」

「?」


俺は寒鴉の言った意味がいまいち分からないまま寒鴉が呼んだ理恵さんについていく。

他の皆は普通にパーティーを楽しんでいたいらしく、俺についてきてはいない。


「ここです。」


そう言って理恵さんが連れてきてくれたのは3階にある客室の一つだった。

理恵さんがドアをノックすると、中から「開いてるよ〜。」と気だるそうな声が聞こえてきた。


「失礼します。」


そう言って理恵さんが中に入り、俺も後に続く。俺が中に入ると、理恵さんは外に出てパーティー会場に戻っていった。

中にはベッドや超薄型特大テレビ、高そうなパソコンなどが置いてある。

そのパソコンの目の前に一人の少女、と言うには少し大きすぎるが女性と言うほど大きくもない、まあおそらく女子高生が座っていた。


「何?パーティーまだ終わってないんでしょ・・・ってあなた。風雪じゃない。」

「は?何で俺の事知ってんだ?」


俺は目の前で椅子に座っている女子をよく観察する。

年齢は多分俺と同じくらい、身長は座っているからよく分からない。胸は・・・うん。

髪は黒くて長く、ポニーテールにしている。瞳も同じく黒い。

結論。俺はこいつとはあったことがない、はず。


「何、あなたクラスメートのことも覚えてないの?」

「クラスメート?お前が?俺の?」

「そうよ、高1から同じクラスでしょ?今年も。」

「・・・ダメだ、全然思い出せない。」

「・・・沙希。白鳥 沙希(しらとり さき)よ。」


白鳥はため息をついて俺に名前を教えてくれた。


「白鳥・・・。あぁ、思い出した。そういえばいたな。」

「ええ、そういえばいたのよ。」

「あ、悪い。怒ったか?」

「別に。で、何の用?」

「あ、忘れてた。寒鴉が屋敷内を俺に案内してくれって。」

「寒鴉が?・・・はあ、めんどくさい事してくれるわね、あの子。ていうか、あなたが今回のパ−ティーの主役じゃないの?」

「場違いな感じだったから抜け出してきた。」

「ま、分かるけどね。分かったわ、どうせやることもないから案内してあげる。」

「そいつはどうも。で、白鳥は何でここにいるんだ?」

「沙希でいいよ。特に理由はないよ。ただ、私寒鴉とは遠い親戚だから一応こういうパーティーの度に招待されるんだ。で、やることもないから来るんだけど、結局ここでもやることないのよね。」

「パーティーなのにやることないのか?変わった奴だな。」

「あなたが言う?」

「・・・ごもっとも。」

「ほら、早く行きましょう。この家バカみたいに広いんだから全部まわるのに結構かかるわよ。」

「了解。じゃ、案内よろしく。」

「しょうがないわね。さっさと済ませましょう。私早く寝たいから。」


・・・こいつ、俺と同類なのか?

作者「と言うわけで、前書きの『??』は沙希でした。」

秋冬「『沙希でした』じゃねーよ!何思いっきりネタバレしようとしてんだ!」

沙希「挙句の果てに私に『戻れ戻れ』なんて・・・。失礼にも限度ってものがあるでしょ?」

作者「・・・申し訳ありません。」

秋冬「で、結局今回全然事件なかったぞ?」

沙希「しかも私出てきて十数行で今回終わったわよ?」

作者「いや、それはほら、先に登場人物全員知っておかないと・・・。」

秋冬「まだ寒鴉の伯父とやらが出てないぞ?」

作者「・・・あ、忘れてた。」

沙希「すっかり休みボケしてるわね。」

秋冬「まあ後4日でアメリカに帰るから大丈夫じゃねーの?」

作者「まあ多分更新スピードは多少上がるだろうな。ああ、さらば日本・・・。」

秋冬「どうせ来年も来るんだろ?気にすんな。」

作者「そうだな。と言うわけで、また次の話で会いましょう!」




追記:

小説読者数カウントが不調で、読者様が何人いるのか分からず、ちょっぴり不安な作者でした。

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