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COMICAL FILE 4 : 初霞 凛

今回は少し早めの更新です。その分短いですが・・・。

暗号ゲームが終わり、秋冬達が家に帰ってきます。

そして、新キャラ、初霞 凛。

どんなキャラかは、ご自分でお確かめください。

「長い間お世話になりました。」


俺達は一週間前に来た村への入り口に立っている。

現在の時刻は午前7時。朝弱い俺がこんなに早い時間に立っているのには、もちろんワケがある。

それもこれも、全部あいつのせいだ・・・。


「残念じゃの・・・。もう帰るのかい?」

「ええ。午後にはたぶん従妹が家に来るので、その時までには家にいないといけないんです。」


そう・・・。俺の従妹、初霞 凛。

俺がわざわざこんな時間に起きて、バスに乗って、電車に乗って長い道のりを帰らなきゃいけないのも全部あいつが悪いんだ・・・。

一度ため息をついて携帯電話の画面を見る。


『秋冬、久しぶりね。さっきあんたの家に電話してあんたの番号を冬美さんに聞いたの。で、何だか旅行に行ってるみたいだからメールにしたわ。せっかくの旅行気分を電話で台無しにしちゃ悪いからね。

突然なんだけど、私の実家が全焼しちゃったから来週の日曜日からしばらくあんたの家に居候することになったから。私が行くまでにちゃんとプリンとショートケーキとカステラとドーナッツ用意しといてね。後アイスも。

あ、それから私そっちに行くの初めてだから色々案内してね。買い物に付き合ったりカラオケ行ったりするから。文句は言わせないからね。それじゃ、また電話するね。

初霞 凜』


送られてきたメールを見て、俺は携帯電話を握り潰してやろうかと本気で思った。

実際、俺の手の中では携帯電話がミシミシ言っている。


「お、お兄ちゃん?携帯壊れちゃうよ?」

「・・・壊しちまおうかな・・・。」

「だ、ダメだよ!いきなり何言ってるの!?」


そんな俺の様子を見た事情を知っている紅葉が、俺に歩み寄ってきた。


「秋冬さん、そんなにイライラするならそんな約束しなければいいじゃないですか。と言うより、そもそも約束じゃないんじゃないですか?凛さんが勝手にそう言ってるだけなので、断っちゃえばいいじゃないですか。」

「お前はあいつを知らないんだよ・・・。」

「はい?」

「前にあいつに逆らったとき、母さんの前で散々ワガママ言われた。母さんは俺に『女の子には優しくしなさい』ってやかましいから全く助けてくれる気配なし。むしろ『やりなさい』的なオーラを放ってた。で、結局一日で3万円使わされて、楽しいはずの休みを丸一日潰された。その後は金欠状態でかなり落ち込んでた。」

「・・・成程、納得しました。」

「だからまたそんなことになるのは避けたい・・・。と言うわけで、断るってのは無理だな。」


と、そんな会話を繰り広げていると、いつの間にか俺達以外はお別れを済ませてしまっていた。


「げっ!そ、それじゃ、色々本当にありがとうございました!また来ます!」

「はいよ、それじゃ待ってるからね!寒鴉ちゃんをよろしくの!」

「はい、任せてください!それじゃ!」


手っ取り早く別れの挨拶を済ませ、俺と紅葉は先に行ってしまった四人の後を追った。


「・・・結局、参加者は私達だけでしたね・・・。」

「・・・そうだな。でも大丈夫だよ。あんな暗号を考えられるお年寄り達だ。何があっても食うものに困ることは無いと思うよ。」

「そうですね・・・。さ、行きましょう。」

「ああ。・・・そうだ、紅葉。」

「はい、何ですか?」

「・・・帰りの電車で、将棋やらないか?」

「望むところです。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「王手。これで詰みだ。」


パチンと景気のいい音を鳴らして、俺の勝利は確定した。


「・・・負けました。」


紅葉も潔く負けを認める。


「よし、これで一勝零敗一分けで俺の勝ち越しだな。」

「・・・チェスなら負けません。今度はチェスで勝負です!」

「そうしたいのは山々だが、生憎もう駅に着くからな。また今度だ。」

「・・・勝ち逃げです。」

「か、勝ち逃げじゃねぇよ!しょうがないだろ、時間がないんだから!」

「いいえ、時間ならあります!私が秋冬さんを瞬殺して終わりです!」

「んだと!?そこまで言うならやってやる!できるもんならや―――!」


『ピンポ〜ン。次は〜愛輪市〜愛輪市〜。』


「・・・。」

「だから言っただろ?時間がないって。」

「何が『だから言っただろ?』ですか。一番向きになってたのは秋冬さんでしょ。」

「誰が―――!」

「秋冬〜!早く行こうよ〜!」

「・・・了解。」


何でこう・・・タイミングが悪いんだ?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ただいま〜。・・・あれ?」


俺は家の鍵を空けて家に入ったのだが・・・。


「誰もいないな、電気もついてないし・・・。母さん、いないのか?」


母さんを呼んで見るが、返事はない。寝ているのか、出掛けたのか。

まあいい。とりあえず休ませてもらおう。俺はキッチンにある椅子の一つに腰掛けた。

電車から降りた後は、みんなそれぞれ勝手に家に帰っていった。

涼美は寒鴉の呼んだ高級車で彼女の家に遊びに行き、春夏と紅葉は俺が家まで歩いて送っていった。

時雨はなにやら買い物があると言っていたので、まだ家には帰っていないだろう。


「ふう・・・疲れ―――。」


ピンポ〜ン。


「・・・俺、今日言いたいこと最後まで言えないな・・・。」


母さんが帰ってきたのか?いや、母さんなら鍵使って勝手に入ってくるはず。

他の奴らか?いや、何か用があるなら電話すればいい。わざわざ家に来る必要なんかない。

となると・・・あいつか。

俺は一度ため息をついて椅子から立ち上がり、ドアへと向かう。

ドアの前に立ち、もう一度ため息をついてからドアを開ける。刹那、


「遅い!」

「・・・いきなりだな。」


たった今叫んだこの女こそ、俺の従妹、初霞 凛。 黒い髪に黒い目。肩近くまであるツインテール。

かなりかわいい女の子、と言うイメージしか思い浮かばないかもしれないが、それはこいつの本性を知らないからである。

こいつの本性、それは・・・。


「あたしが呼んだら3秒以内に来る!何回もそう言ってるでしょ?」

「お前が来たかどうかなんてドア越しに分かるわけないだろ?」

「言い訳は聞きたくないわ。それより、あたしが言っといたプリンとショートケーキとカステラとドーナッツとアイスは?」

「そんなに山ほどねーよ。今帰ってきたんだから。」

「じゃあ何にもないの!?」

「・・・プリンが冷蔵庫に。」

「それを早く言いなさいよ。」


そう。こいつは一言で表すと―――『超ワガママ』。

理不尽な命令を次々と下す、自分では何もやらない。俗に言うお姫様体質、と言うものだ。


「・・・いつまでそこに突っ立ってるの?あたしが入れないじゃない。」

「はいはい、どうもすみませんね。」

「まったく。はい、これあたしのスーツケース。あたしが使う部屋に運んどいて。」

「俺お前が使う部屋知らないんだけど。」

「あたしだって知らないわよ。いいからどっか置いといて。後、あたしが靴脱いでる間にプリン用意しといてね。」

「・・・相変わらずだな。」

「何よ、あたしの性格がこの半年で変わってるとでも思ったの?」

「まさか。お前のこの性格は一生そのままだろうよ。」

「そうそう。第一、これは体質なの。性格じゃない。だから、変わらない。分かったらとっとと動きなさい。」

「はいよ。」


俺は変わらない従妹に小さく笑みを浮かべ、スーツケースをリビングの隅に置き、冷蔵庫からプリンを出してテーブルの上に置いた。


「これで文句ないだろ?」

「まあ秋冬にしては上々じゃない?」

「素直じゃねーな。あ、そうだ、髪形変えたのか?」

「え?ああ、これ?うん、ちょっとイメチェン。似合ってる?」

「似合ってない、なんて言ったらどうする?」

「叩き伏せる。」

「だろうな。まあ、それなりに似合ってるよ。」

「何か心からそう思ってない感じ。」

「んなことねーよ。」

「そうだ、ちょっとテスト。半年前までのあたしの髪型覚えてる?」

「え?ポニーテールだろ?」

「・・・何で覚えてんの?ちょっと気色悪いんだけど・・・。」

「毎朝そのポニーテールを俺に結わせたのはお前だろ。それで覚えてないわけないだろ?それに、それで気色悪いとか言われたくない。」

「そういえばそんなこともあったわね。懐かしい思い出ね。」

「忌々しい思い出だよ。お前が毎朝6時に起きるせいで俺も毎朝その時間に起こされたんだぞ?俺朝弱いのに。」

「文句ばっか言ってないで手を動かす!」

「これ以上何をしろと?」

「・・・スプーン出して。」

「お前それ今考えただろ。」

「う、うるさい!とっとと出す!あたしが食べ終わったら町案内してもらうからね!」

「俺たった今し方長旅から帰ってきたんだけど・・・。」

「誰があんたの事情を聞いたの?あたしはこの後町案内してもらうって言ったの!」

「・・・了解。」

「よろしい。さ、分かったら早くスプーン頂戴。」


とりあえずこの話題では勝てそうに無いのでおとなしくスプーンを渡す。

俺からスプーンを受け取ると、凛は心から嬉しそうな顔をしてプリンを食べ始めた。


「で、何があったんだ?」

「ん?何が?」

「家だよ、家。何だよ全焼って、何があった?」

「ああ、あれ?ゴールデンウィークに京都行ってて、帰ってきたら丸焼けだったの。」

「何だそれ?放火じゃないのか?」

「消防士さんはそれは無いんじゃないかって言ってた。出火場所は父さんの寝室だから、原因は父さんのタバコがちゃんと消えてなかったからじゃないかって。」

「何だ、じゃあ事件性は無いわけだ。」


俺がそう言うと、凛はため息をつき、


「あのねぇ、いくらあんたの唯一の取り得だからって、すぐにそっちの方に考えるのはやめなさい。」

「お前なぁ、俺だってもっと取り得くらい―――。」

「何、あんたあたしに意見するつもり?」

「・・・いえ。」

「あっそ。・・・ご馳走様。さ、行くわよ。早く準備して。」

「・・・。」


もう何も言わない。逆らうだけ無駄だ。俺は黙って椅子から立ち上がり財布を持って靴を履き、玄関で凛を待った。

1分ほどすると、凛も俺の横で靴を履き始めた。


「で、まずはどこに行くの?」

「俺が知るか。」

「・・・あたしは『案内して』って言ったの。だから、どこに行くかを決めるのはあんたの役目、分かった?」

「・・・まずはこの町の商店街、その後駅、最後に俺の友達の家を回るって感じでいいか?」

「よろしい。じゃ、早く案内して。あ、ついでにどっかでアイス買ってね。」

「・・・了解。」


・・・長い一日になりそうだ。

どうでしたか?

新キャラ、凛はそれなりに気に入ってます。

なんていうか、書いてるうちに勝手に動くと言うか、どんどんアイディアが浮かんでくるんですよ。書いてる間に。


秋冬「そんなんで大丈夫か?この作品・・・。」

凛 「ま、長続きしない可能性大ね。」

作者「そ、そんな事言うなよぉ・・・。」


・・・頑張ります。

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