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CASE FILE 2-01 : 第一の暗号

少し間が空いてしまいました。申し訳ありません。

さて、今回やっと暗号が出てきます。

ちなみに、今回答えは教えませんので、解けるかどうか挑戦してみてください。

それでは、CASE FILE 2、お楽しみください。

「電車で三時間かかるとは聞いてたけど・・・。」


春夏がバスの中で愚痴をこぼす。


「バスで一時間とは聞いてなかったわよ?」

「え、言ってませんでしたか?」

「言いませんでしたね。私も聞いてませんから。」

「す、すみませんでした。」

「それにしても、何もないな。先程から海が少し見えるくらいだ。」

「祖父母の村は田舎ですからね。何もなくてごめんなさい。」

「あ、いや、そういうつもりじゃ・・・。すまん。」

「いえ、気にしないでください。」

「あ、お兄ちゃん、寒鴉、あとその他、そろそろ着くよ。」

「・・・涼美、その呼び方は止めろっていつも言ってるだろ。」

「え?『お兄ちゃん』意外になんて呼べばいいの?」

「いや、そっちじゃないんだけど・・・。」

「?」


そんな会話をしているうちに、バスが止まった。

腕時計を見ると、ちょうど三時半を回ったところだった。


「ここからほんの三分ほど歩いたところにあるそうです。」


俺達は寒鴉を先頭に山道同然の道を歩き始めた。


「そうだ、寒鴉。移動してる間に今回のゲームの詳細教えてくれないか?」

「はい、分かりました。今回の暗号ゲームは、全部で二つの暗号があります。」

「二つだけか?ずいぶん少ないな。」

「人口が少ないものですから、捻る知恵があまりないんです。ですが村全体が半年かけて考案した暗号だそうなので、それなりに難易度は高いと思います。期限は今日から来週の日曜日まで。暗号を解くのに必要になりそうな道具は全て村が用意してくれているそうです。」

「そういえば暗号ってどんなのが出るんだろうね?この前電車の中で秋冬が作ったみたいのかな?」

「そうとも限らないですよ、春夏さん。暗号は大きく分けて三つの種類があるんです。」

「三つの種類?」

「はい。三つの種類と言うのは代用法、置換方、そして挿入法の三つです。代用法とは文字や記号をを他の文字に置き換える方法です。この間の秋冬さんの暗号はこのタイプですね。次に、置換方というのは元の文を別の方向から読んだり、他の方向に書き換える方法です。『はちにんこ』を『こんにちは』と書き換えるのと同じ感じです。最後に、挿入法。これは元の文に関係のない文字を挟み込む方法ですね。 『たぬき』等が有名ですね。」

「『たぬき』?」

「『たぬき』って『た』を抜くとも考えられるだろ?だから『こたんたにたちたは』って書いてある横に狸のイラストかなんかがあったらその文から『た』を抜いて『こんにちは』って読む方法だよ。」

「ふ〜ん。」

「・・・分かってないだろ?」

「分かるわけないじゃん。」


俺と紅葉はそろってガックリと肩を落とす。今までの説明が意味ないじゃないか・・・。


「先輩達に涼美ちゃん、着きましたよ。ようこそ、冬枯村へ!」

「な、長かった・・・!まさか丸一日かかるなんて・・・!」

「春夏さん、そんなにかかってませんよ。」

「冬枯って・・・お前の苗字じゃないか?」

「はい。私の祖父はここの村長ですから。」

「お前の家系は田舎でも都会でもかなりの権力があるんだな。」

「・・・おや、寒鴉ちゃん。いらっしゃい。」


全員村の入り口付近と思われる場所で会話を交わしていると、今にも消えてしまいそうな小さな声が聞こえた。

少し驚いて声がした方向を見る。すると、そこには小さなおばあさんが立っていた。


「おばあちゃん!久しぶりだね、元気?」

「ああ、わたしゃ元気じゃよ。ところで、そちらの方々はお客さんかい?」

「うん。私が来年入る高校の先輩達と、その妹さんだよ。皆さん、紹介します。私の祖母、冬枯 鴉(ふゆがれ からす)です。」

「こんにちは、寒鴉さんに勧められて今回の暗号ゲームに参加することになった風雪秋冬です。今日からしばらく、ご厄介になります。」

「私、妹の涼美!おばあちゃん、よろしくね!」

「秋冬さんの友人の星河紅葉です。しばらくこの村でお世話になります。」

「同じく桜火春夏で〜す!」

「さらに同じく朝霜時雨だ。よろしく。」

「はい、皆よろしくね。わたしゃ鴉だよ。今日はこんな遠くまでわざわざありがとね。早速、宿に案内するよ。宿と言っても、今は誰も住んでいないただの家だけどね。悪いね、そんな粗末なものしか準備できなくて。」

「とんでもないです。こんなに遠くまでただで来れたんです。これ以上何か文句なんて言ったら逆に罰が当たりますよ。」

「そうかい、ありがとね。じゃ、行こうか。」

「はい、ご案内よろしくお願いします。」


歩き出した鴉さんに続き、俺達は村に足を踏み入れた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「じゃあ皆今日からこの家を自由に使ってくれていいからね。」

「はあ、ありがたいんですが・・・。」

「なんだい?遠慮なく言ってごらん?」

「あの、全員ここに泊まるんですか?」

「そうだよ。何か問題でもあったかい?」

「いえ、一応俺も時雨も男で、あいつらも女なんですが・・・。」

「何だ、そんなことかい?そんなの妹ができたと思えば問題ないじゃないか。」

「いや、そういう問題じゃ・・・。」

「じゃ、あたしゃ行くからなんかあったら呼んでね。」

「いやだから・・・。」


俺の必死の抗議も空しく、俺達六人はめでたく全員同じ家に泊まることになった。


「・・・。」

「一昔前の人はそういうことをあまり気にしないようですね・・・。」

「まあいいや、涼美が三人増えたと思えばいいんだろ?そう考えると大した問題じゃない気がしてきた。」

「現実逃避は止めてください!」

「そういえば寒鴉この村には来たことないって言ってたよね。じゃあ何でおばあちゃんの顔は知ってたの?」

「二年くらい前に都会に遊びに来たんだ。その時に家に泊めたから顔を知ってたってわけ。」

「へ〜。」

「さすが秋冬の妹ね。もっともな疑問だわ。」

「ところで秋冬よ、早速暗号と言うのを受け取りに行かないか?」

「それもそうだな。寒鴉、その暗号ってどこに行けばもらえるか知ってるか?」

「あ、はい、さっき地図をもらったので分かりますよ。」

「俺にもその地図見せてくれ。」

「いいですよ。どうぞ。」


寒鴉はそう言って持っていた地図を俺に見せてくれた。


「どうも。・・・へ〜。意外に広いんだな。色々あるし。」


地図には港、崖、寺、村長の家などが記されていた。

丁寧にわざわざ俺達が泊まっている家まで印されている。


「じゃあとりあえず村長の家に行ってみるか。」

「そうですね。村おこしの最高責任者は村長さんでしょうし、そこに行けばまず間違いなくその暗号について何らかの情報が手に入るでしょう。」

「オッケー!じゃあ早速行こうか〜!」


家を出て、地図通り村長の家に向かった。


「・・・ん?」


途中、道の端の墓が目に入った。


「秋冬さん、どうしたんですか?」

「いや、ちょっとこの墓が気になってな。」

「?普通のお墓じゃないですか。」

「いや、だって・・・。」

「こんなところにお墓があるのっておかしいでしょ?」

「え・・・!?」


俺は驚いて声のした方向を見る。

なぜ驚いたかって?当然だ。俺が今言おうとしたことを誰かが言ったんだ。

その声の主は・・・春夏だった。


「どういうことですか?別にお墓くらい・・・。」

「だってここ何にもないただの道だよ?何でちゃんとしたところじゃなくてこんなところに置くんだろう?」

「そう言われればそうですね・・・。」

「まあ後で村長さんに聞けばいいか。とにかく行こう!」

「そうですね。」

「・・・ああ。」

「?どうかしましたか、秋冬さん。」

「・・・いや、なんでもない。」

「?」


ひょっとしたら春夏は、俺と同じ才能の一つを持っているのかもしれない・・・。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「すいませ〜ん!鴉さ〜ん!」

「はいはい、ちょっと待っておくれ!」


春夏がそう呼びかけると、中から鴉さんの声が聞こえた。

間もなくして、中からヒョコっと鴉さんが出てきた。


「おやおや、どうしたんだい、皆揃って。」

「暗号をもらいに来たんです。」

「まあ、なんとも気の早い人たちだね。まあいいさ。えっと、確かここに・・・。」


鴉さんはそう言うと靴箱の中を探し始めた。

しばらくゴソゴソ探した後、小さい丸まった紙を取り出した。

本当に小さい紙だ。5センチもないと思う。

・・・つーかなぜ靴箱に暗号を?


「ああ、あった。ほら、どうぞ。何か必要になりそうな道具はあるかい?」

「じゃあ鉛筆と紙、それから定規か巻尺を貸してください。」

「はいよ。ちょっと待ってておくれ。すぐに取ってきてあげるから。」

「ありがとうございます。」

「おばあちゃん、手伝おうか?」

「んん?ああ、ありがとう寒鴉。それじゃあお願いしようかね。」

「うん。じゃあちょっと待っててくださいね。」

「おお、ゆっくりでいいからな。」


そう言うと寒鴉と鴉さんは家の中に入っていった。

数分玄関で待っていると、寒鴉が紙と鉛筆と巻尺を持って家を出てきた。


帰る途中、数人の村人に会ったが、やはり皆高齢者だった。

しかし、そんなことを気にさせないくらい皆活気があり、賑やかだった。

そして、皆が誰一人例外なく俺達のことを歓迎してくれた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「村人も皆元気だな。いや〜、いい村だ。」

「確かにいい村だ。こんなに元気があるのは田舎だけだからな。」

「さあみんな、早速暗号解読を始めようじゃないか!」

「おー!」

「・・・精神年齢5歳が約二名いるな。」

「・・・ですね。」

「風雪先輩、頼みましたよ!」

「ま、やれるだけやるさ。さて、春夏、広げてみろ。」

「は〜い!」


春夏は紙を止めていた輪ゴムを外して紙を広げ始めた。


「う、意外に長いね。」


縦は5センチ未満なのに、横には三十センチ程ある。

それを全部広げて、床に置いた。


「何か書いてあるけど・・・何だろ?外国語?」

「日本語だ、日本語。達筆だからちょっと読みにくいけど。」

「手書きなんですね。えっと・・・。」


『【←】やれふめよろげも』


「やれ踏めヨロゲも?」

「何つー読み方してんだよ!?暗号なんだからそのまま読んでも分かるわけないだろ。」

「あ、そっか。」

「・・・これ、この前風雪先輩が電車で考えた暗号と同じじゃないですか?」

「そう言えばそうだね。じゃあ同じ方法でいけるのかな?」

「やってみましょうか。えっと、左だから・・・。」

「・・・『もるひむゆりぐめ』。」

「な、何ですか?それ。」

「俺が知るか。でも、意味を成してないってことは暗号の解き方が違うってことだな。第一、そんなに簡単に解けるような暗号を半年も考えるわけない。」

「それもそうだな。と言うことは何か他に鍵があると言うことか?」

「そうなりますね。とりあえず色々調べてみましょう。」


まず、裏を調べたが何も書いていない。

あぶり出しの可能性も考えあぶってみたが、やはり何も出てこなかった。

結論:紙自体には何の細工もしていない。


「この暗号が代用方なのは間違いないんだけどな・・・。」

「何でそう言い切れるんですか?」

「最初に【←】ってあるだろ?これはまず間違いなく他の暗号の種類では使われない。」

「あ、もしかして左から読めってことかな?えっと・・・『もげろよめふれや』?」

「だからそんなに簡単に解ける暗号じゃないって言ってるじゃん。まったく、春夏姉ちゃんは単純だな。」

「何ですって〜!」

「紙に細工はない。だったら次は紙のデータを取って、それでも何も浮かばなかったら他の鍵を探そう。」

「分かりました。」


と言うわけで、今度は紙のデータを採取した。

検査結果:

縦:3.3センチ

横:33.3センチ

厚さ:測定不能ペラペラ

となった。


「・・・特に何も出なかったね。」

「いや、この暗号はわりと簡単だったな。俺解けたぞ。」

「私も解けました。」

「私も一応・・・。」

「え、えっ、!?」

「え〜!?私全然分かんないよ〜!お兄ちゃん、教えて〜!」

「俺もさっぱりだ。」

「おまえら、これも解けないんじゃ先が思いやられるぞ?」

「いいから早く教えてよ!」




「ま、それは次回のお楽しみだ。」

「何よそれええぇぇ!」

どうでしたか?暗号は解けましたか?

まあこれは簡単なほうですね。とても基本的な暗号です。

作るのも簡単で、解く方は鍵が分かっていないと少し苦戦すると言う便利な暗号です。

謎解きは次回です。お楽しみに!

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