表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

COMICAL FILE 2 : ゲームへの招待券

またサイドストーリーで長くなってしまいました・・・。

それから、更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした!特に理由がないので本当に申し訳ないです!

さらに、今週から現地校に加え補習校まで始まってしまったので時間がなくて・・・。これからも少し遅れてしまうかもしれませんが、一生懸命頑張るので見捨てないでくださいね。

それから、さらに申し訳ないのですが冬枯笹子の名前を変更させていただきました。「冬枯笹子」改め「冬枯寒鴉」です。本編で最初にフリガナを振っておきます。

それから、ついにユニークアクセス1000人突破!

読者の皆様、本当にありがとうございます!これからもこんな作品でよければぜひ読んでください。

「俺は決めたぞ!」


部室に入ると、授業が終わると同時に教室を飛び出した時雨が部室で仁王立ちしていた。

買い物から三日が経った。今日は金曜日。本は未だに決まっていない。

そんななんでもない日に部室に入って、いきなり時雨のそんな声が鳴り響けば当然、


「・・・何を?」


そう訪ねるだろう。


「決まっているだろ、今日からこの推研で読む本だ!」

「え、ホント!?」

「時雨さん、本当ですか?」

「おう、その本とは・・・、これだ!」


そう叫んで時雨は後ろに回していた手をバッと前に持ってきて、持っていたものを俺たちに見せる。

それは、少し期待に胸を膨らませていた俺達の心を裏切るには十分だった。

その手には、「名探偵コ○ン」の単行本が握られていた。


「「「・・・。」」」

「な、何だその反応は!?これは今世紀最高の・・・!」

「誰が漫画を持ってこいなんて言ったんだ!?」

「漫画も小説も本だろ!何ら変わりはない!」

「そうかもしれないけど、俺たちは一応『推理小説研究部』なんだよ!『小説』ってついてるんだよ!」

「あ、秋冬さん、落ち着いて・・・。」

「時雨君、ふざけてないで真面目に本決めよう。」

「は、春夏、お前も認めてくれないのか?俺は、お前が俺の唯一のバカ友だ・・・。」

「それ以上言ったら殴るわよ、グーで。」

「ごめんなさい。」


・・・春夏が怖い。あんな春夏は初めて見た気がする。

つーか時雨、お前一応自分がバカだってことは認めてるんだな?


「とにかく時雨さん、それは小説じゃないので認められません。他のものを選びます。」

「ぶ、部長まで・・・。」

「(不本意ながら)部長は俺なんだけど・・・。」

「心配するな、誰もお前を部長だなんて認めてない。」

「んだとコラ!」

「あ、秋冬さん!ストップストップ!」

「・・・あの〜。」

「どけ紅葉、こいついっぺん殴ってやる!」

「だ、だめですって!確かに時雨さんも悪いですけど秋冬さんも殴ったりしちゃだめですよ!」

「・・・あの〜。」

「秋冬も時雨君も頑張って〜。紅葉ちゃん、止めなくても良いんじゃない?」

「よくないですって!」

「あの〜すみません・・・。」


・・・ん?なんか聞こえたような・・・。

俺は入り口の方を見る。そこには誰かがいた。

見慣れない制服。漆黒の髪。茶色い瞳。

俺はその人物を、つい最近見た覚えがある。そう、こいつは・・・


「か、寒鴉!?」


そこには、俺がつい先日痴漢から助けた冬枯 寒鴉(ふゆがれ かんな)が立っていた。

認識のある紅葉と春夏も驚いている。先日の事を知らない時雨は頭の上に『?』を浮かべて首を傾げている。


「ど、どうも。に、にぎやかな部室ですね・・・。」


笑顔でそう言うが、その笑顔は明らかに引きつっていた。


「か、寒鴉、いつからそこにいたんだ?」

「ちょうど風雪先輩がキレたところからです。」

「・・・よりにもよってそこかよ・・・。」

「秋冬、こいつは誰だ?」


最近時雨から色々と聞かれる事が多い気がするが、気のせいだろうか?

とりあえず、先日の事を時雨に説明した。


「なるほど、色々あったんだな。」

「まあな。で、こいつは冬枯寒鴉。寒鴉、こいつは『バカ』こと朝霜時雨だ。」

「よろしく。」

「あ、はい、よろしくお願いします。」

「・・・スルーだな。」

「そうだね、本人も自覚してるからじゃない?」

「お前もか?」

「もちろん。」

「・・・悲しくないか、お前ら?」

「?」


俺は二人を少し哀れに思いながら、寒鴉の方を向く。


「で、なんでお前がここにいるんだ?」

「先輩達、『推理小説研究部』何ですよね。暗号推理ゲームと言うのに出てみませんか?」

「「「「暗号推理ゲーム?」」」」


俺達は異口同音に尋ねた。


「はい、私の祖父母が住んでいる村の村おこしで、暗号推理ゲームというのをやるらしいんですが、よければ先輩達もどうですか?」

「それはいつなんだ?期間は?」

「明後日から来週の土曜日までの一週間です。」

「それだったら全然行けるな。」

「学校来週はゴールデンウィークで一週間丸まる休みだからね。」

「じゃあ行ってくれるんですか!?」


寒鴉が目を輝かせて尋ねてくる。


「親が了承すればな。ま、十中八九大丈夫だろ。」

「あ、ありがとうございます!あの村はもう廃村寸前だと聞いたので、少しでも多く参加者を集めているらしいんです。」

「大丈夫、皆行けるから。よし、じゃあ来週の予定は決まったわね!」

「冬枯、だっけ?その村ってどんなところなんだ?」

「私も行ったことがないので詳しくは知りません。ただ、漁業が盛んらしいです。」

「海の近くにあるんですか?」

「そうみたいです。ここから電車で約三時間かかるそうです。」

「意外と遠いな。移動費結構かかるんじゃないか?」

「あ、それは私の家が出すので、先輩達は気にしなくても大丈夫です。」

「ここにいる全員分のですか?それって結構な金額ですよ?ひょっとして寒鴉さんの家ってお金持ちなんですか?」

「そうですね、一般家庭よりは裕福だと思います。」

「でも本当にいいのか?少し悪い気もするのだが・・・。」

「構いません。先輩達には頼んで来てもらうんですから、これくらいしないと。」

「分かった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。頼むぞ。」

「はい、任せてください。先輩達は許可をもらっておいてくださいね。」

「了解。さて、じゃあ早速許可をもらいに行くか。推研は来週からだな。じゃあ今日は解散。各自親の許可をもらい、明日駅前に11時に集合な。」

「あの・・・秋冬さん?」


紅葉の声が聞こえたので振り向くと、いるはずの春夏と紅葉の姿がなかった。


「二人とも説明の途中で勢いよく走って出て行っちゃいましたよ。」

「・・・桜火先輩も朝霜先輩も元気ですね・・・。」

「・・・もう少し落ち着いてくれるとありがたいんだがな・・・。」

「いつものことじゃないですか。さ、私達も帰りましょう。二人には後で私から連絡しておきます。」

「サンキュー。それじゃ帰るか。寒鴉、家まで送ってやるよ。家どこだ?」

「え、そんな、悪いです!大丈夫です、一人で帰れますから!」

「またこの前みたいな目に会いたいのか?」

「う゛・・・。」

「この後もどうせ暇だし、一人で帰るより楽しいだろ?」

「・・・分かりました。じゃあお願いします。」

「よし。じゃ、行くぞ。紅葉も来るか?」

「もちろんです。行きましょう。」

「ありがとうございます、風雪先輩、星河先輩。」


俺達は部室を後にし、10分ほど歩いて寒鴉を家まで送った。その間に携帯番号とアドレスを交換し、通信手段も得た。

寒鴉が家に入るのを見送った後、俺と紅葉も家路についた。紅葉も家に送ってから、俺も家へと帰る。


「ただいま〜。」

「あら、お帰り秋冬。今日は早いのね。」

「まあ、ちょっとね。それより母さん、俺日曜から旅行行ってくるから。来週の土曜まで。」

「そう、分かったわ。行ってらっしゃい。」

「・・・いや、まだ行かないけどさ。」

「え〜!?お兄ちゃん一週間もいなくなっちゃうの!?」

「ああ、休みの間はずっとだな。」

「そんなのヤダ〜!私も一緒に行く!」

「そんなこと俺に言われても・・・。自分で寒鴉に行ってもいいか聞いてみろ。」

「寒鴉?」

「火曜日に俺が痴漢から助けた中三の友達だ。」

「その人がリーダーなの?」

「そんなところだ。ほら、電話番号これだから。」

「よし、早速電話してみよう。」


そう言って、携帯に番号を入力し始めた。


「あんまり期待しないほうがいいとおも・・・。」

「・・・え、本当ですか!?ありがとうございます!」

「・・・マジか?」

「お兄ちゃん、いいって!やったー!お母さ〜ん!」


涼美は母さんに報告しにキッチンへと走っていった。

寒鴉、断ってもよかったんだが・・・するわけないか、あの性格だもんな。


「・・・後でちゃんと謝らないとな・・・。」


ため息混じりに呟き、晩飯まで部屋でだらだらと過ごし、食べ終わると即行で寝る支度を済ませてベッドに潜り込んだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌日。


ベッドの中で休日の朝を堪能していた俺は、一通のメールの着信によって起こされた。


『寒鴉ちゃんが海水浴できるって言うから水着買いに行こ! by春夏』


俺としてはまだまだベッドの中でだらだらしていたかったのだが、春夏は言い出したら聞かないことを知っているので諦めてベッドから起き上がる。

クローゼットから洋服を取り出し、すばやく着替えて家を出る。


「秋冬、おはよ!メール見てくれたの?」

「見なかったらこんな朝っぱらから外には出ない。」

「それもそうか。じゃ、行こうよ!」

「俺達二人だけか?」

「そうだよ。」

「そうか。それじゃ行くか。」

「うん!出発進行〜!」

「・・・何歳だよ?」


春夏の年齢に似合わない言動に(いつものことながら)戸惑いながらも、俺は春夏と肩を並べて街へと足を進めた。

何だっけ、こういう状況にピッタリの言葉があったような気がするんだが・・・。


「そういえば春夏、そのスカートって・・・。」

「うん。一昨日秋冬が買ってくれたやつだよ。似合ってる?」

「そうだな、上が制服じゃないから自然に見える。」

「えへへ〜。」

「つーかまた服か・・・。こんなことならこの前隣町に行った時についでに買ってくればよかったな。」

「まああそこは服の専門店だから水着はないんじゃない?」

「それもそうか。で、どっか行きたいところとかはあるのか?」

「特にないよ。どこでもオッケー。もちろん今回も秋冬が買ってね。」

「・・・俺さすがにちょっと金欠気味なんだけど・・・。」

「これが最後だからさ!今度は私の誕生日にでも買ってもらうから。」

「お前の誕生日って・・・11月14日だろ!?もう一ヶ月ないじゃねーか!」

「細かいことは気にしない気にしない!それより早く行こ!」

「ったくお前は・・・。」


こいつはどこでもいいと言うので、とりあえず適当な店を探して入る。

途中で春夏が再びランジェリーショップに入りかけたので、慌てて止めた。

その後そこがランジェリーショップだったことを説明したが、春夏が納得するまでに十五分かかった。

やっとの思いでたどり着いた店の中で、春夏がまたとんでもないことを言い出した。


「さて、と。・・・何しに来たんだっけ?」

「だああぁぁ!」


あまりの衝撃的な発言に、思わずずっこけてしまった。


「お前が水着を買いに行こうって言い出したんだろうが!」

「あ、そうだった。いや〜ごめんごめん。」

「・・・はあ。ほら、早く行くぞ。」

「は〜い!秋冬、ちょっと待ってよ〜!」

「具体的にどんなのがいいとかあるのか?」

「ん〜。あんまりないかな。ただ、あんまり恥ずかしくないやつ。」

「お前に羞恥心ってあったのか?」

「『しゅうちしん』?ああ、あの歌ってた人達?タオルぐるぐる回しながら。」

「違う違う、恥ずかしいって思う心だよ。」

「失礼なこと言うね〜!私だってそれくらいあるって!」

「あっそ。」

「何よその『興味ありませんよ』風な返事は!」

「別にそんな風じゃなかったよ。そんなことより、あっちに水着コーナーあるぞ。」

「あ、ホントだ。よし、行こう!」

「・・・扱いやす。」

「秋冬、置いてっちゃうよ〜!」

「はいはい、今行きますよっと。」


まだ思い出せない・・・。何だっけ?こういう状況・・・。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うわ・・・。」


さて、水着コーナーについたはいいが・・・。


「改めて見ても、女性用の水着って種類多すぎじゃないか?」

「まあそうだね。私も全然覚えてないもん。」


男性用では考えられないほど色鮮やかな空間が広がっている。

右を見ればワンピース型が、左を見ればツーピース型が広がっている。


「よくよく考えるとさ、この時期に海水浴って早過ぎないか?まだ春だぞ?」

「あっちは暖かいって書いてあったよ。え〜っと、ほら。」


そう言って春夏は俺にメールを見せる。そこには確かに寒鴉から、


『先輩、確かに海では海水浴も出来るらしいですよ。あちらは暖かいようなので、水着を持ってきたければ持ってきてください。』


と書いてあった。


「・・・お前だけに書かれてるってこととこの『確かに』ってのを見ると・・・お前寒鴉に自分から海水浴が出来るか聞いたんだろ?」

「えへへ、ばれた?」

「ばればれだよ。ったく、抜け目ないな、お前。」

「まあね。じゃ、早速だけど選ぶの手伝ってね。」

「だから結局どんなのがいいんだよ?」

「とにかくあんまり恥ずかしくなければいいから・・・下がスカートみたいになってるツーピースかな?」

「はいはい。じゃあ選びに行くか。」


俺は春夏と一緒に左を向いた。いろいろな種類の水着が並んでいる。


「あ、これは?」

「・・・派手過ぎないか?ジャラジャラうるさそうだし。」

「じゃあこれは?」

「それは逆に地味過ぎというか・・・。」

「これ。」

「下はスカートがよかったんじゃないのか?」

「ただの希望でしょ?あんまり恥ずかしくなければそれでいいの。」

「まあそれだとしてもあんまり似合わないと思うけど。」

「なんで?」

「大人っぽ過ぎる。」

「・・・それは私が子供だっていいたいわけ?」

「そうだけど。」

「怒るわよ?」

「もう十分怒ってるように見えるのは俺の気のせいですかね?」

「気のせいじゃないわ。かなりイライラしてる。」

「それはそれは、機嫌を損ねたようで申し訳ありません。お詫びといっては何ですが、私目が水着を選んで差し上げましょうか?」

「へえ、それは楽しみね。どんなのを選んでくれるの?」

「これでございます。」


それは赤をベースに、白、ピンクなどの色のストライプが斜めに入った水着だ。下は春夏の希望通りスカート型になっている。

あそこまではふざけていたが、この水着は俺が本当に春夏に似合うと思った水着だ。


「・・・え、何?意外とここは真面目?」

「まあな。活発な性格してるんだから、たぶんこういう明るい色が似合うだろ?」

「あ、ありがと。じゃあ、ちょっと試着してくるね。」

「今度はどのくらいかかるんだ?」

「ちょっとかかると思うけど・・・なるべく早くするから待っててね!」

「分かったよ、行ってこい。」

「は〜い!期待しててね!」

「分かったから早く行ってこいって!」


春夏は楽しそうに回ったりしながら水着を抱えて試着室へと走って行った。

俺も後に続くようにゆっくりと歩き出す。

十分後―――。


「秋冬、いいよ〜。」

「今回もまたずいぶんと長かったな。」

「水着は服とは違うんだよ!」

「分かった分かった。で、なんで出てこないんだ?」

「い、いや、なんか秋冬以外に見られるのは、その、恥ずかしいから・・・。」

「何だそれ?お前らしくないな。じゃあどうしろって言うんだ?着た意味ないじゃんか。」

「そ、そうだけど・・・。」

「じゃあ何か?俺に試着室に入ってこいとでも言ってんのかお前は?」

「あ、それいいね!秋冬、入ってきて!」

「・・・いや、冗談で言ったんだけど。」

「いいからいいから!」


試着室のカーテンの奥からゆっくりと手が伸びてくる。どこかのホラー映画みたいだ。

・・・いや、下手したらホラー映画なんかより数倍怖いかもしれない・・・。

その手が俺のと首を掴む。春夏のだと分かっていても,思わず体がビクッとした。


「いや、さすがにそれはまずいんじゃ・・・。」

「大丈夫,ちゃんと水着着てるから。これなら私も恥ずかしくないしね。」

「お前がよくても俺がかなり恥ずかしいんだが・・・。」

「気にしない気にしない。えいっ!」

「・・・!うわぁ!」


急に力を入れられたので、試着室に引っ張り込まれる。

顔にカーテンが引っかかり、前が見えない。

慌ててそれを振りほどくと―――目の前には水着姿の春夏がいた。

真っ赤な水着に身を包んだ春夏は、そこら辺にいる水着姿の女性よりも数倍綺麗だと思う。まあ、比較する対象がいるわけではないのだが・・・。


「・・・どう、これ?」

「・・・予想以上に似合ってる。」

「ホント?」

「嘘つく理由がないだろ?本当だよ。」

「よし、じゃあこれにする。秋冬、もう試着室でていいよ。」

「ああ、そりゃどうも。誰かさんに引っ張り込まれなければここにはいないんだけどな。」

「そういう憎まれ口利かないの!いいから外で待ってて。」

「はいはい。」


半ば追い出される感じで、俺は試着室を出た。

さて、ここからまた十分か・・・。

それにしても、春夏の奴、意外と胸あったんだな・・・。

着痩せするタイプなのか?普段全然気にならない、というか気にしないからな。全然知らなかった。

さすがに昔みたいに二人で風呂に入ることももう無いし、最近は泳ぎになんて行ってないから機会も少ないってのも原因の一つか。

よくよく考えれば、春夏も紅葉もスタイルはかなりいいんだよな。

ただ俺はそういうのには全然興味がないからどうでもいい、とまでは言わないけどあんまり惹かれるものはないな。

変わっていると思うかもしれないが・・・俺が惹かれるものは、『和』だ。

俺の好きなものは基本的に全て和を中心に広がっている。

和菓子、和食、和服、そして日本の伝統的行事。これらに全て共通しているのは『和』である。

例外として文学は認めているが、それ以外は正直あまり好きではない。きっぱり言ってしまうと嫌いだ。

と、そこまで思考を巡らせたところで試着室から春夏が出てきた。もちろんちゃんとした服を着ている。


「秋冬、準備オッケーだよ。」

「早いな、まだ五分しか経ってないぞ?」

「秋冬待たせるのも悪いでしょ?」

「お気遣いどうも。それじゃ、とっととそれ買って行くか。」

「秋冬が買ってくれるんだよね?」

「無理矢理だろ?」

「私みたいな美少女の水着を買えるんだよ?ありがたく思ってもらいたいわ!」

「・・・知ってるか?『美少女』って『美』の『少』ない『女』って書くんだぞ?」

「な、し、失礼ね!」

「ほら、行くぞ。早くしろ。」

「あっ、こら、逃げるな〜!」


俺は春夏をおいて先にレジへと早足で向かった。

春夏にレジで色々言われたが、俺はそれを無視して黙々と代金を払った。

最後に女性の店員さんに笑顔で「仲がいいですね。お似合いですよ。」と言われた。

春夏は満々の笑みを浮かべてお礼を言っていたが・・・果たして俺は喜んでいいのだろうか?


「あ〜いい買い物した!」

「お前は何も買ってないだろ?」

「えへへ〜。まあそうなんだけどね。」

「ったく・・・。」

「明日はどこで集合だっけ?」

「駅前に11時。携帯もちゃんと持って来いよ?」

「バカにしないでよ!私だって一応現代人ですよ〜だ!携帯くらい今だって―――あ、電池なかった・・・。」

「バカだろ、お前。」

「う、うるさいな〜!私だってたまにはこういう失敗くらいするよ!」

「それにしても、随分時間潰したんだな〜。」

「話聞いてよ、もう!」


春夏はとりあえず無視し、空を見上げる。

店で水着を選んでいるうちに、空はすっかり真紅に染まっていた。


「もう今日は帰ろっか。明日からは旅行だし。」

「そうだな。明日遅刻すんなよ?」

「秋冬に言われちゃおしまいだよ。」

「う゛・・・。」

「さ、行こ!」

「はいはい。」

「ねえ秋冬、腕組んでもいい?」

「はあ?何だよ急に?」


唐突な質問を受けて状況がよく飲み込めない俺の意思を無視して、春夏は素早く俺の腕に抱きついてきた。ちょうどこの前のプリクラの時と同じようにだ。


「お、おい、春夏・・・!」

「いいからいいから。」

「はあ・・・。こうなったらお前は聞かないからな・・・。」

「そういうこと。諦めてね。」

「自分で言うなよ。」


俺は少し頬を染めながら家へと続く道を歩き始めた。春夏が右腕にくっついたままの状態で・・・。

・・・あ、思い出した。こういう状況でピッタリの言葉。


「・・・なあ、今気付いたんだけど今日のこれって・・・。」

「ん?デートでしょ?」


俺の予想は的中だった。

今回は前半が次のCASE FILEへの伏線、後半がただのコメディーでしたね。コメディーかどうかは分かりませんが・・・。

性格の違いにより、必然的に落ち着いて秋冬と行動する紅葉との会話が多くなっていたことに気付き、今回の春夏との話を作ってみました。いかがでしたでしょうか?

ちなみに、僕自身水着等の知識は皆無です。なので、全て想像のみで書いております。日本の店になどほとんど行ったことがないので、どういう感じなのかいまいちよく分かっていません。

なので、もし何かおかしなことがあったらご一報ください。僕の出来る範囲で修復いたしますので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ