HINT FILE 2 : 簡単な暗号の使い方〈下〉
ようやく十話達成です!
三ヶ月で十話って・・・。我ながら、かなりペース遅いですね・・・。
もう少し頑張っていこうと思います。
えっとですね、現時点でユニークアクセスは997という非常に惜しい数を記録しています。
念願の四桁達成まで、あと三人!
少し気が早いですが、読者の皆様、こんな作品を読んでくれて本当にありがとうございます!
それでは、記念すべき第十話、お楽しみください!
しばらく歩いて、駅に到着する。
「今日は楽しかったね〜。」
「何か必要以上疲れた気がする・・・。」
「何お年寄りみたいなこと言ってるの?」
「誰のせいだと思ってるんだよ?」
「え、誰かのせいなの?」
「・・・疲れる・・・。」
「と、とりあえず切符を買いましょうよ。早くしないと電車が出発しちゃいます。」
「よし、行こうか。秋冬、早く行くよ。」
「はいはい・・・。」
俺達はそれぞれ切符を買い、ホームで電車を待つ。
「・・・そういえば明日から推研始まるんじゃなかったっけ?」
「あ、そうだったね。」
「さすがにそろそろ本を決めないといけませんね、ただでさえ二週間活動を休止してたんですから・・・。」
「それが決まらなかったからずっと行き詰ってたんだろうが。」
「う゛・・・。」
「もう適当なのでいいんじゃない?」
「そうかもな。ま、とりあえず明日時雨も含めて皆で決めればいいだろ?」
「そ、そうですね・・・。」
「あ、電車来たよ。」
駅全体に騒々しい音が鳴り響き、目の前の線路を電車が走り、しばらくしてその場に停まる。
やがて扉が開き、中から人がわらわらと出てくる。その波が一段落してから、俺達は電車に乗り込んだ。
「・・・意外と混んでるな。」
「ラッシュほどでもないけど、まあ多いほうだね。」
「あ、こっちに二席だけ空いてますよ。」
「お、ラッキー。」
人混みを掻き分け、空いた席の前に到着する。
「春夏、紅葉、俺は立ってるから座ってていいぞ。」
「え、ホント?秋冬、ありがとね。」
「いいんですか?」
「全然構わないよ。何かこのまま座ったら寝ちまいそうだし。」
「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
「つくづく丁寧な奴だな、お前。」
俺は改めて感心し、二人に席を譲った。席はドアの近くだったので、近くのポールに掴まっていた。
少しして、電車が動き出した。外の風景が動き始める。
普通路線だから、大体十分くらいか。まあ、春夏にとっては一時間のようだが・・・。
十分間、何をしていようか迷ってキョロキョロしていると、あまり電車にでは見たくないものが目に飛び込んできた。
慌ててそちら側から視線を逸らす。が、見てしまったものを無視するのはやはり気が引ける。
一度ため息をつき、再びそちら側を向く。
そこにはさっきと同じように、中年の男が制服姿の女子の体、正確には下半身を触っていた。
「痴漢か・・・。全く、今日はいいことないな。」頭の中で自分の運の悪さに苦笑する。
「春夏、紅葉、ちょっと俺あっち行ってくる。お前らは来なくていいから。」
「え?あ、うん、分かった。」
「何しに行くんですか?」
「ま、ちょっとな。」
そういって、俺は再び人混みを掻き分け、痴漢に近づいていった。
十分に近づいてから、俺はそいつの手をガッと掴む。
そいつは俺を驚いたような表情で見ている。女子生徒も同様だ。
「何だお前は?」
「何でもいいだろ?それより、あんたは何やってんだよ?」
小声で聞かれたので、小声で返してしまう。
「別に何をしていようが俺の勝手だろう。」
「人に迷惑がかかるようなことなら話は別だ。」
「生意気なガキだな。それに、その程度で俺が止められるとでも思ったか?」
「・・・なんかどっかのバトル漫画みたいなセリフだな・・・。」と一瞬思ったが、すぐにそんな暇ではなくなった。
男のもう片方の腕が女子生徒へと迫っていった。
「あんた、恥じらいとかはないのか?」
「俺の勝手だ。」
「・・・分かったよ。好きにしてろ、ハゲ。」
「ハ・・・!」
俺は男を無視して、その女子生徒の横に立つ。
女子生徒は俺に助けを求めるような目を向けてくる。
ま、安心しなって。そう頭で呟き、ポケットから携帯電話を取り出す。
そして、文字を入力して男に見えないように女子生徒に見せる。
『安心しろ。助けてやるから、少し待ってろ。』
それを見た女子生徒は、先ほどとは少し違う意味で驚いた表情で俺を見る。
俺は頷き、早速行動にかかった。
まず、紅葉にメールだ。そしてこの時、わざと男にも見えるようにする。
「・・・ん?何だ、メールか?」
「何の用だよ?もうあんたに興味はないんだ。」
「何をしようと俺の勝手だ。」
・・・口癖なのか、それ?まあいい。
もちろん今の会話も大体計画通りだ。こそこそやるより、大胆にやったほうがむしろばれないからな。
俺はそれ以上文句を言わず、黙々と携帯に文字を打ち込む。
「何々?『【→】けあちたおを。くあそあづバヅエてる。かぢおりると。』・・・?何をやってるんだ、ガキ?頭大丈夫か?」
「黙ってろ。人の心配より自分の頭の心配したほうがいいぞ。」
「ふん、俺はエリートだ。お前なんかより数倍賢いんだよ!」
「中身じゃねーよ、外見だ。」
「・・・っな!?」
「これは人に見られたくないメールの時の暗号みたいなもんだ。何かあんたに内容知られるのは癪だったんでな。」
後ろで何やら文句を言っているが、無視してメールを送信する。
横では俺のメールを覗き込んでいた子が首を傾げている。
さて、後はあいつが解けるかどうか・・・。ま、問題ないだろ。簡単な暗号だしな。
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「『【→】けあちたおを。くあそあづバヅエてる。かぢおりると。』・・・?何でしょう、これ?」
「いたずらメールじゃない?」
「いえ、差出人は秋冬さんなんですが・・・。」
「秋冬から?じゃあ何か意味があるんでしょ、考えてみよ。」
「そうですね・・・。」
「・・・ねえ、この『→』ってなんだろ?」
「何かの鍵ですかね・・・。」
「これって暗号なんじゃない?」
「おそらくそうでしょうね。で、この『→』というのをうまく使ってどうにか・・・。」
「・・・ダメだ、さっぱりわかんない!」
「・・・あ、分かりました!」
「え、ホント!?なんて書いてあるの?」
「えっと・・・。『こいつちかん。けいたいでビデオとれ。きづかれるな。』・・・!」
「ち、痴漢!?」
「は、春夏さん!しーっ!」
「あ、秋冬はどこ?」
「・・・あ、あそこです!」
「紅葉ちゃん、あの横の人!」
「ほ、本当ですね、明らかにわざと触ってます。」
「・・・サイテー。」
「と、とりあえず秋冬さんの指示に従いましょう。」
「そうね。」
私は急いで携帯をビデオモードにして、痴漢行為を行っている男性を録画し始めた。
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・・・よし、ちゃんと分かってくれたみたいだな。
俺は紅葉が録画を開始したのを確認し、視線を女子生徒の戻し、彼女を観察し始めた。
背は俺よりも10センチくらい低いから168センチくらいかな?
髪型は脇辺りまであるセミロングを首の後ろ辺りで纏めている。色は黒、というか漆黒だ。それほどまでに黒い。
さっきチラッと見えたが、目の色は茶色。制服は知らない制服だ。
なんだか少し大人っぽい印象を得るので、高校生だと思う。
・・・こんなところか。そろそろいいだろ。
俺は再びメールを送る。今度はばれようがばれなかろうがどうでもいい。
だからそのまま送る。
『もう十分。後は任せろ。』
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「『もう十分。後は任せろ。』・・・。分かりました、お願いしますね。」
私はそう呟いて、携帯電話をパタンと閉じた。
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俺は今度は手を掴まず、二人の間に割って入った。
「邪魔だ。どけ、ガキ。」
「仕方ないだろ。こんなに混んでんだから、スペースがないんだよ。」
「・・・。」
こういわれては黙るしかない。これも作戦通り。
「それよりあんた、会社どこなんだ?さっきエリートとかほざいてたけど。」
「ふん、聞いて驚け!俺はあの名ゲーム会社、MOLESTERの開発部長だ!」
・・・聞いたこと無いし、なんて卑猥な名前だよ・・・。どこで有名?マニア達の間でか?
そう思ったが、あえて触れないでおく。
「ふーん。あ、そうだ開発部長さん。早いうちに新しい働き口見つけといたほうがいいよ。」
「何だと?」
「そこ、すぐにクビになるから。」
「ふん!何を世迷言を!」
「・・・忠告はしたからな、二回も。」
「・・・?」
男は不思議そうな顔をしていたが、すぐに俺の言ったことが分かる日が来るだろう。
やがて、電車は駅に到着した。
俺は電車から降り、春夏と紅葉と合流した。もちろん、俺の横にいた女子生徒も一緒にいた。
「秋冬、大丈夫だった?」
「被害者は俺じゃねーよ、こいつだ。」
「大丈夫でしたか?えーっと・・・。」
「冬枯 寒鴉です。助けてもらってありがとうございました。」
「よろしくね、寒鴉ちゃん。私は桜火春夏。こっちの子が星河紅葉ちゃんで、そこの男の子は風雪秋冬。」
「はい。・・・でも、もう少し早く助けてくれるとありがたかったです・・・。」
「そう言うなって。おかげで、証拠も出来たしな。紅葉、ちゃんと出来てるか?」
「はい、たぶんちゃんと取れてると思いますよ。」
「そういえば秋冬、あのメール何だったの?暗号?」
「ああ、そうだよ。」
「私全然分からなかったんだけど・・・。」
「そういえば私も・・・。」
「ああ、あんなの簡単な暗号だよ。お前ら二人とも一番上の『→』ってのは見たろ?」
「うん。でも、あれだけじゃ何にも分からないよ?」
「分かるんだよ。ヒントは、五十音表。」
「・・・あ、そういうことですね。つまり、あそこに書いてあった文字を一つずつ右にずらして読んでみろって事ですか。」
「そういうことだ。」
「そんなの五十音表がなきゃ無理だって・・・。」
「そんなことないですよ、現に私はすぐ分かりましたし。」
「紅葉ちゃんは格が違うでしょ、格が。」
「そんなに頭いいんですか、えっと、星川さんって。」
「まあ、一応学年トップだな。」
「が、学年トップですか・・・。ちなみに、皆さん何年生なんですか?」
「全員高二だ。お前は?」
「私は中三です。」
「ちゅ、中三!?お前、中学生だったのか!?」
「は、はい、そうですけど・・・。何でそんなに驚いてるんですか?」
「何でも何も、寒鴉さんすごく大人びて見えますよ?」
「よく言われます・・・。来年は村西高校に行く予定なんですけど、皆さんはどの学校なんですか?」
「え、じゃあ寒鴉ちゃんは来年には私達の後輩になるのか。」
「皆さん村西高校なんですか?じゃあ来年からは先輩ですね。今から先輩と呼ばせてもらってもいいですか?」
「別にいいけど。」
「そうですか。ありがとうございます、風雪先輩。」
「何か苗字で呼ばれるのも久しぶりだな。新鮮な感じだ。」
「・・・それで、あの人はどうなるんでしょうか?」
「さあな。ま、おそらくこのビデオ見せたらクビになるだろうな。」
「そうですか、じゃあもう私にはかかわってこないことを願います。お世話になりました。」
「ま、何かまたあったらいつでも相談しに来い。一応俺探偵だからさ。」
「・・・あ、風雪先輩があの有名な探偵だったんですか!」
「有名なって・・・。」
「まあ本当のことでしょ?」
「確かに秋冬さんは有名ですね。」
「お前らまで・・・。」
「分かりました、何かあったら相談しに行きます。それでは、風雪先輩、桜火先輩、星河先輩、ありがとうございました!」
「おう、気をつけて帰れよ〜!」
俺達三人は寒鴉の背中が見えなくなるまで見送っていた。
「・・・さて、俺達も帰るか。」
「そうですね。あ、このビデオは秋冬さんに送っておきますね。私あの人の会社が分からないので。」
「ああ、そうだったな。・・・しかし、世も末だな。」
「どうしたの?」
「あいつの勤めてる会社、MOLESTERって言うんだってさ。」
「・・・っな!」
紅葉は顔を赤くして俯いてしまった。
「そ、そんな名前、絶対におかしいと思うんですが・・・。」
「ま、絶対に成人向けゲームしか作ってないんだろうな。」
「ねえ、『もれすたー』ってどういう意味?」
俺はそう訪ねてくる春夏に対し、少し間を開けてからこう答えた。
「『痴漢』って意味だよ。」
どうでしたか?皆さんには、あの暗号が解けましたか?
まあ、あの暗号はかなり基本的で簡単なものなので、考えるのも、解読するのも容易いです。
さて、そして新キャラが登場しました。
このキャラは今後も結構重要な役割を果たすので、忘れないでくださいね。
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