第五章 63話 連合国への道中
「師匠、あとどれくらいかかりそうです?」
レイが僕の横を歩きながら、顔をのぞき込んでくる。
「うーん、そうだね……大体二週間ってところかな」
以前連合国へ行ったときは、兵士に見つからないよう街道からそれて森の中を歩いていたし、あの時よりは早く着けそうかな?
「あーあ、暇だなあ……ただこうやって歩き続けるだけって……」
両手を頭に組み、口をとがらせるレイ。
「レイ、師匠からの受け売りだけど、こうやって歩くことも鍛錬の一つなんだよ? 歩く速度を一定に保つことや、歩幅やつま先の向きを意識することは体捌きにも重要なことだからね。一歩一歩歩くたびに強くなっていってると思えば、楽しくなってこないかい?」
「なんだか地味……」
僕の言葉にレイは半信半疑の模様。
「ふふっ、レイくん。だったら気分転換に私と一緒に馬に乗ってみる?」
そんな時、後ろで馬に乗っていたティアナからの提案。
「いいの? ティアナお姉ちゃん」
「いいわよ」
「わーい! 馬に乗るのは初めて!」
飛び上がって喜ぶレイを見ながら、僕は顔を曇らせる。
「ティアナ……甘やかしちゃダメだよ」
「たまにはいいじゃない? あっもしかしてムミョウも乗りたかった? 私と一緒に」
「わっ! バカ! 何言ってるんだ!」
「ふふふ」
「あー! 師匠の顔が赤くなってるー!」
ティアナから意地悪な一言に、僕は慌てて顔を隠した。
連合国への道すがら、僕たちはこうやって和気あいあいと街道を歩いている。
今はようやく半分を過ぎたくらいの距離。
すでに王国と連合国と国境は越えており、途中の街や村で名産の食べ物などを楽しみつつ、連合国内に唯一鍛錬場のある街、ライノを目指しているところだ。
「でもまぁ確かに、レイとトゥルクさんの集落へ行ったときと比べると楽な旅路だ。あの時とまでは言わないけれど、モンスターを相手に刀を振るいたくなってくるよ」
今までの道中は平和そのもの。
モンスターを相手に稽古と行きたいところなのに、襲ってくるのはもっぱらファングウルフなどの比較的弱いモンスターばかり。
レイのように騒ぐほどでもないが、もう少し刺激が欲しいとは内心思っていたところである。
「ムミョウ、そんな物騒なこと考えないで、こうやって平和なのを喜びましょう」
レイを後ろに乗せたティアナがたしなめてくる。
「そうだよね……ごめん」
考えれば当然だろう。
危険な道をわざわざ行くよりも、こうやって安全に進めることのほうがはるかにいいことなのだ。
だめだなあ……自分からそういう刺激は望んじゃいけない。
剣は振るうべき時にこそ振るうもの。
暇だからといってむやみやたらに抜くものじゃないんだ。
「ふぅ、まだまだ心は未熟……師匠にバレたら鉄拳制裁ものだな」
刀を撫で、頭の中で僕を叱る師匠の姿を思い出しつつ、気持ちを新たに進もうとする。
だが……。
「ん?」
かすかながら小さな悲鳴のようなものが耳に入る。
「どうしたの? ムミョウ」
足を止めた僕を不思議に思い、馬を近づけてティアナが声を掛けてきた。
「静かに!」
それを手で制止しながら、目を閉じて耳を澄ませる。
「――けてっ!」
また聞こえた!
しかも声だけでなく、なにか金属を叩くような高い音も聞こえてくる。
「間違いない! 向こうで誰かが声を上げている。しかもかなり切羽詰まった感じだ。もしかするとモンスターに襲われているのかもしれない!」
声や音のする方向は自分たちが歩いている街道の先。
ティアナたちに指で指し示す。
「えっ! 本当に!?」
ティアナは驚きの表情は見せたものの、すぐさま腰に差していた剣も抜いて対応出来るような体勢をとっている。
「レイ! いくぞ!」
「はいっ! 師匠!」
レイもすぐに馬から下り、僕と一緒に声のする方へと走り出す。
ティアナも馬を駆り、僕たちの後に続く。
そうして街道を進んだ先に見えたのは……。
「あれは!?」
街道の真ん中で横倒しになった馬車。
その周りには同じ鎧を着た人たちが馬車を守るように立ち、倍の数はいるであろう装備や服もバラバラな男たちと戦っていた。
すでに辺りには何人かの人が血を流して倒れているのも見える。
「襲われている人たちを助ける! 僕が突っ込むからティアナは魔法の準備を、レイはティアナの警護を頼む!」
「はい!」
「分かったわ!」
二人がうなずいたのを見て、僕は刀を抜いて集団の中へと突っ走っていく。
ライノへ行くのが遅くなるかもしれないけれど、目の前で襲われている人がいるならば助けるのが当然だ。
「やらせはしない……絶対に!」
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『そうだ、異世界に行こう』~仕事に疲れた神様は旅に出る~




