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第三章 45話 この手が届くように

「レイ、ベイルさんにまた近いうちに伺いますって伝えておいてね」


師匠と屋敷を出る時にそう言われ、僕とミュールは笑顔で頷いた。

そのまま師匠とは別の方向へと走っていく。


北門を抜けて20分も進めば僕達の家族の住んでいる集落だ。

ただただ歩くのも暇なので、ミュールと色々世間話をしながら向かっている。


「師匠はやっぱりかっこいいよなあ……僕もあれだけ強くなりたいな……」


40階層で刀をきらめかせながら、巨大なドランを倒した師匠の姿が今でも目に焼き付く。


「でも……なんでレイが弟子になれたのかいまだによく分からないわね。 弱そうな見た目なのに……」


せっかく思いに浸っていたのに……ミュールの余計な一言で一気に現実に引き戻されてしまった。


「うるさいなあ! 僕だって師匠の元で鍛えればきっと強くなれるんだ!」


「へぇ……そう? まぁムミョウさんや『獅子の咆哮』さん達直々の指導なんだし、ちょっとだけ期待はしてあげる」


ミュールがくすっと笑いながら僕を見つめる。

あの目は絶対に期待してない目だ!

くっそー!


「今に見てろよー! ミュール!」


「はいはい」


半笑いで軽く返されてしまった……

昔のミュールはもうちょっと優しかったのになあ……

最近特に、僕に対して当たりが強いというかなんというか……


それに時々、僕に隠れてメリッサさんと2人で話し合ってるみたいだし……一体何の話してるんだろう?

ミュールは口が達者だから、何か文句を言っても気付けば言い負かされてしまっているんだよね。

だから僕が問い詰めたところで上手く言いくるめられるだけだし……あまり深く聞けないのが辛い所だ。


悶々とした気持ちになりながらも歩いていくと向こうに久しぶりの集落が見えてきた。

けれど何かおかしい気がする。

集落の柵の角に、今までなかった見張り台が建てられており、柵の上にも人が上れないように返しが取り付けられていた。


近づいて門を叩こうとしたらすぐに門が開いて中に通された。


「レイ、ミュール誰かに後を尾けられたりしてないか?」


聞いてきたのは良く集落を利用してくれている冒険者の人だ。


「多分……されてないと思う」


よく分からないけど、僕達の後ろには誰もいなかったと思う……

冒険者の人はミュールにも尋ねたけど、僕と一緒に来たわけだし首を横に振った。


「一体どうしたんです? 集落が前よりも物々しくなってる気がするんですが?」


気になってに尋ねると事情を説明してくれた。

最近見知らぬ人物がこの集落を見張っていたのを集落の人が見たらしく、狩りに出かけた人も、集落から東の方にある洞窟で何人かの男がたむろしていたのを見掛けたとのこと。


その洞窟は昔オークが住んでいたとかで、人が住むような場所ではないらしく、山賊などが住み着いている恐れあるということから、ちょうど集落に立ち寄った自分たちに護衛として依頼をしたらしい。


「まぁ念のため、皆で見張り台を立てたり柵を強化したわけだけど、確認されたのはそこまで数はいないらしいから大丈夫だろうさ」


そう言って安心させようとしてくれるけど、ちょっと不安だな……


「一旦戻って師匠も呼んだ方がいいのかな?」


「師匠って……? ああ! そういえば君はムミョウ君の弟子なんだっけ? 羨ましいなあ……」


冒険者の人は目をキラキラ輝かせて僕を見てくる。

そうやって尊敬されている人が僕の師匠ってだけでちょっと誇らしくなってくる。


「でも……それは申し訳ない気がするね。 そろそろ『獅子の咆哮』の皆さんが30階層に挑戦するっていう噂もあるし、今が大事な時なのに多少の山賊程度であのムミョウ君を呼ぶのもね……。 もしちょっと手に負えないなら正式にギルドに依頼するってベイルさんも言ってたよ」


冒険者の人はすまなそうに首を振った。


うーん……不安ではあるけど……

とりあえず今日は泊まって、明日戻って師匠に話してみようかな?


そう思った僕は冒険者の人と別れ、ミュールと一緒にそれぞれの家まで歩いていく。

お互いの家は向かい同士なので、家の前で手を振って別れた。


「じゃあまた明日」


「うん、また明日ね。 レイ」


僕が家に入ると、父や母、弟たちが一斉に出迎えてくれた。

僕は帰るなり、食事もほどほどに街に向かってからの出来事を熱っぽく語った。

僕が弟子にしてもらった時の立ち合いや、『獅子の咆哮』さん達との稽古、師匠の40階層挑戦への同行と初めて倒したモンスター、そして……師匠とドランの手に汗握る一騎打ち。


父も母も弟も、家族みんなじっと聞いてくれて、その夜は僕の独壇場だった。

そしてもう皆寝る時間になり僕は見張りに立つべきか父に聞くと、今日は自分たちの番ではないらしく、それにせっかく帰ってきたレイやミュールに立たせるのもかわいそうだからゆっくり休んでいくといいと言われた。


僕はその好意に甘えて久しぶりに自分のベッドに潜り込む。

師匠達の屋敷のベッドよりも固くて古いけど、寝てる時の安心感ならこっちの方が上だなあ。

そしてすぐに僕は深い眠りに落ちていく……



深夜でほとんど皆も寝静まった頃、突然けたたましい鐘の音が鳴り響く。

僕は飛び起きてすぐに剣を取り家の外に出る。東の方の見張り台に設置している鐘が鳴らされているようだ。

急いで東の柵へ向かい、見張り台に上ると、昼とは別の冒険者の人が森を指さす。


「あれを見ろ!」


向こうを見れば、数えきれないほどの松明がゆらゆら揺らめきながらこっちへ向かってくるのが見えた。


「山賊だ! 10じゃ20じゃ済まん! おそらく100以上はいるぞ!」


その声で僕は一気に血の気が引く。

どうするべきか迷っていると冒険者の人に一喝された。


「何してる! 皆を叩き起こせ! すぐに逃げるぞ!」


「にっ逃げる!?」


「そうだ! 相手は100以上、こっちは戦えるのはいても精々20ほどだ。ここからフッケが近いといっても応援を呼んで来るまで守り切れるもんじゃない! さっさと皆で街まで逃げるんだ! さあ突っ立ってないでさっさと動け!」


「わっ分かった!」


僕はその言葉で見張り台を一気に駆け下り、大声を出して集落の人に避難するよう叫び続けた。

ベイルさんや他の皆も一斉に起きてあわただしく正門から逃げ出し始める。


僕はミュールと合流し、最後尾で敵を抑える役目に自ら志願した。

集落の人全員が出たのを確認し、僕や冒険者のパーティーと一緒に街へ向けて街道を走り出す。


もうすでに追手達は目と鼻の先まで迫っている。

冒険者パーティーの弓使いの女性の人が走りながら敵に向けて矢を放つけど、盾に防がれる。


「ちっ!あいつら装備がいい! 山賊じゃないぞ! おそらく傭兵どもだ!」


弓使いの女性の人が叫ぶ。


向こうが持っている松明の明かりでよく見れば、皆一緒な鎧や兜をつけていて、明らかに山賊なんかよりしっかりした装備をしている。


女子供連れの集落の人達では足が遅い。

みるみる追手たちとの差が詰まっていく。

段々と逃げる集落の人達もばらけていってしまっている。


「仕方ない! 相手の出鼻をくじくぞ!」


冒険者の人達が足を止めて追手に向かっていくので、僕とミュールも一緒になって相手に突進する。

追う側だった傭兵たちが突然の逆襲を受け一時的に混乱はしたけど、所詮数名の攻撃だ。

傭兵たちはすぐに立ち直ると、僕達を叩き潰そうと襲い掛かってきた。



しばらくの間、僕や冒険者の人達は剣や槍を振り回して、なんとか囲まれないように走って抜け出したけど、もう逃げるので精一杯だ。

迫る追手を振り切りつつ、必死で街道を走り続けると遠くに街の城壁が見えてきた。


あそこまで逃げれば助かる!


必死に城壁近くまで走り抜くと追手たちはようやく追撃を諦めてもと来た道を戻っていった。

僕達は疲れ果てて城門近くに座り込む。

しばらくすると重々しい城門が開き、中から衛兵さん達が駆け寄ってきた。


ベイルさんが衛兵さんに事情を説明していたけど、ふと気づけばミュールがいないことに気付いた。


「ミュール! ミュール! どこなんだ!?」


必死で周りに叫ぶけど返事はない。

他にも何人か女性の名前を叫んでいる人がいる。


冒険者の人達が近づいてきて、息を切らせながら僕の肩を掴む。


「すまない……俺達が追手から逃げる際に、ミュール君があいつらに捕まって連れ去られていくのを見た……。 仲間の弓使いの姿も見当たらない……恐らく一緒に連れていかれたかもしれん……」


そんな!

ミュールが傭兵たちに――!?


身体が震え、崩れ落ちそうになったところで城門から師匠の声がする。

その方向に振り向くと、師匠が僕の方へ走り寄ってきていた。

多分衛兵さんが知らせてくれたんだろう。


「レイ! 大丈夫か!?」


僕は師匠に抱きつき思わず泣き出してしまう。


「師匠――! 集落が……襲われて……ミュールが! ミュールや他の女の人も傭兵たちに捕まって連れてかれて――!」


「そいつらは!? どこに行ったんだ!」


「多分……集落から東の方にある……洞窟だと思う……集落の人がそこで何人も人を見かけたって……うぅミュールがぁ……」


師匠が僕の話を聞くなり、どんどん表情が険しくなっていく。

そして僕を優しくなでるとこう言った。


「レイ……僕が必ずミュールを助ける。 君はここで待っていろ」


そう言うと師匠は風のような速さで集落の方へ街道を走り抜けていった。

僕は……涙を拭いて、少し考える。


このまま待っていればきっと師匠がミュールを助けてくれるはず……でも……

ただ待っているなんて……なんのために師匠に弟子入りしたんだ――!


言いつけを破ることになってでも……

僕は助けたい。

大事なミュールを……絶対に助けるんだ!


僕は決心した。

顔を上げ、立ち上がって師匠の後を追って冒険者の人が止めるのも聞かずに暗い街道の道を走り出す。


必ず師匠と助けに行くから……待っててね! ミュール!

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