第三章 41話 今はもう、一人じゃない
僕の宣言を受けた『獅子の咆哮』の人達は最初は驚いたけど、すぐに表情を戻した。
「そうか……でも君ならいずれ近いうちに40階層に挑戦するとは思っていたよ」
フィンさんが頷く。
「おう! ムミョウならきっと40階層もあっという間に攻略だな!」
「帰ってきたらまた皆でまた乾杯だ」
「君を」
「信じてる」
「大丈夫。 あなたならきっとやり遂げるって信じてるわよ」
他の皆も口々に太鼓判を押してくれた。
その足で僕はジョージさんやジョナさんにも40階層挑戦を告げると、それを聞きつけた冒険者の皆さんが一斉に僕に集まってくる。
ジョージさんは、こうなると報告書も30階層じゃなくて40階層に修正しないとねと言ってくれたし、ジョナさんには絶対帰ってきてと何度も念押しされた。
「おおお! ムミョウ君頑張ってくれよ!」
「よっ! フッケ期待の星!」
「帰ってきたら皆で祝ってやるからな!」
「きゃー! ムミョウ君愛してる!」
冒険者の人達にもみくちゃにされながら僕はギルドを出た。
鍛錬場までは『獅子の咆哮』の人達とレイ、ミュールがついてきてくれている。
そして鍛錬場前の広場に到着したけどそこでひと悶着があった。
中には最初僕とレイだけで行くつもりだったが、ミュールも一緒に行くと言い出したのだ。
僕は無理をしなければ一緒でも別に構わないと思ったけど、レイがやはり危ないと思ったようで、涙目のミュールを押し留めている。
「嫌! 私も一緒に行きたいの!」
「駄目だよミュール……僕は師匠について行くのが当たり前だけど、ミュールは違うんだし……」
「嫌ったら嫌!」
平行線を辿る話になるかと思われたが、メリッサさんが助け船を出す。
「レイ君? ミュールちゃんはね、あなたやムミョウ君が心配なのよ?」
「でっでも……やっぱり危ないし……」
「ふふ、そうね。 でも、実はミュールちゃん魔法の才能があったみたいで、回復魔法を私と一緒に時間のある時に勉強してちょっとは使えるようになったのよ? 階層攻略で怪我したときにもきっと役に立つわ。 それに……私達が20階層攻略の時にもレイ君にはちゃんとミュールちゃんを守ってあげてってお願いしたでしょ? あの時は出来て、今回は出来ないの?」
「うう……」
メリッサさんの大人の論法にレイもたじたじだ。
というかミュールにも魔法の才能あったのか……メリッサさんと時々隠れて何してるのかと思ってたらそういうことだったのね。
ふう……しょうがないので、ここは僕の一言で決めさせてもらおう。
「レイ、師匠としての指示だ。 全力でミュールを守ってやれ」
僕の言葉にミュールは満面の笑みを見せ、レイはビシっと背筋を伸ばす。
「はっはい! 師匠!」
広場に皆の笑い声が流れるとともに、僕達3人は水晶へ向けて歩き出す。
転移する直前、僕は『獅子の咆哮』の人達に右手を掲げる。
皆も右手を掲げ返してくれたのを見ながら、水晶に触れ視界が真っ暗になった。
視界が明けると着いたのは31階層。
僕達は階段を降り切り、ゆっくりと広場を見る。
向こうには鎧兜のオークとウェアウルフ、グールがそれぞれ4体ずつ。
単に他の階層からモンスターを集めただけか……?
一応警戒はするが、新しいモンスターは見られない。
レイは僕の後ろについて死角を塞ぐ様に動き、ミュールには紙にモンスターの種類と数を書いてもらうために後ろの階段に下がらせた。
ジョナさんには、僕と一緒にレイやミュールも文字と数字を習ったので少しは書けるようになっている。
こいつらの事なんて今更調べる必要もない……
そう思って僕は一気に広場に躍り出ると、一斉に向かってきたモンスター達を片っ端から薙ぎ払っていった。
オークの首を跳ね、ウェアウルフを真っ二つにし、グールの胴体を掻っ捌く。
レイも初めての実戦だが、気圧されることなく、近づいてきたグール1匹の腕を飛ばしてから胴体を袈裟斬りにして倒していた。
32階層もモンスターは同じ構成。
もう少しレイに経験を積ませようと思い切って半分のモンスターを任せてみた。
僕の方はさっさと首を跳ね飛ばしておいて、レイの後ろでしっかり援護できるように構えておく。
ちらっと後ろを見たらミュールが紙を握り締め、口元に手を近づけてレイの様子をハラハラしながら見ていた。
……もうちょっとレイに向ける数減らした方がいいかな……?
だが、レイの方を見ればまだまだ緊張しているとはいえ、ちゃんと教えた事はやれているようだ。
無理に首を狙わず、相手の動きか攻撃を制限して二撃目以降で倒す。
相手の動きはしっかり見て視線から外さない。
複数相手の場合には、死角を作らず全体を見れる位置まで移動する。
『獅子の咆哮』の人達との稽古も良かったのだろう。
足を止めることなく、しっかりと広場を縦横無尽に動き回り、モンスターに的を絞らせない。
僕との立ち合いで見せた、あの一瞬で間合いを詰めた動きはまだ見られないが、十分すぎるほどの実力を見せている。
最期の1匹のオークをしっかり鎧の隙間に剣を突き通して倒すと、レイは大きく息を吐いた。
「よく出来てるよ。 ちゃんと教えを守っているようだね」
僕が近づいて頭を撫でてやるとレイが大きく歯を出して笑顔を見せる。
「どうですか師匠! 僕強くなったでしょ?」
「ああ、でも油断はしちゃいけない。 最後のオークだからっていきなり無理に鎧の隙間を狙わなくても、鎧で守られていない足などを斬ってからでもよかったんだ。 もし外して掴みかかられたらレイじゃ逃げられないぞ」
ちゃんと指摘するところは指摘しないとね。
レイはシュンとなったが、すぐに顔を上げると僕にお礼を言う。
「あっありがとうございます! 師匠!」
ミュールも駆け寄ってきたので3人で階段を降りていく。
その後の33から35階層以降はグールがスケルトンナイトに変わったくらいだったので、ミュールに記録してもらいつつ僕とレイで半分ずつモンスターを相手にする。
僕はレイが心配なので、さっさとモンスターを倒しレイの援護に入れるよう待機していたが、ふと連合国での師匠の事を思い出す。
そういえば師匠も僕が戦ってる最中はすぐにモンスターを倒してしまっていたなあ……
もしかして……師匠も僕のことが心配で仕方なかったのかな……?
そう思うと師匠がこっちをチラチラ見ていたり、やたらとこっちを気に掛けることを言ってきたりしていたのも合点がいく。
人を教える立場になって、初めて分かった師匠の真意に思わずクスっと笑ってしまった。
そうして36階層へ降りるとモンスター達の構成が一気に変わる。
弓持ちのオーク2体にウェアウルフ6体、そして骸骨騎士が2体という構成。
ここから先はレイだと厳しい相手になってきているな……
そう思った僕はレイを後ろに下がらせてミュールを守るよう指示し、自分1人で相手をするようにした。
広場に入った瞬間、一気に飛び出して弓持ちオークを真っ先に潰しに行く。
オークは一番奥にいたので他のモンスターも反応するが気にしない。
真っ先に2体のオークの首を飛ばすと、返す刀で突進してきたウェアウルフを次々に撫で斬りにする。
骸骨騎士2体は前に倒した時の様に、馬の脚を斬り飛ばして転がしてから馬と騎士の頭を踏み砕いた。
37から39階層も同じモンスター構成であったので、レイには手を出させず、全部僕1人で倒した。
レイはちょっと不満気ではあったが、
「レイ、動きを見るというのも大事な稽古の1つだ。 僕の動きを見て自分の動きと比較する。 これって簡単なようで難しいんだよ?」
そう言ってたしなめた。
そして……ついに僕達はやって来た。
ティアナが倒した魔王四天王の最後の1人がいるであろう40階層に。
階段降りた先には……巨大なドラゴンが僕達を待ち構えていた。
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