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第三章 36話 研鑽の日々と……

フッケの冒険者ギルドに併設された闘技場。

歓声に溢れるその中央ではムミョウと『獅子の咆哮』との激しい鍛錬が繰り返されていた。


僕が木刀を上段に構えつつ、一気にフィンさんへ駆け寄り、木刀を振り下ろす。

フィンさんは右斜めに振り下ろされた木刀の下をかいくぐり、ギリギリで回避した。

僕が足を止めた瞬間に、2本の矢と氷の塊が降り注ぐが、転がりながらこれを回避する。

すぐに起き上がった僕がもう一度フィンさんへ駆け寄ろうとした瞬間、左右からバッカスさんとロイドさんが木剣を振りかぶり、ほぼ同時に攻撃してきた。

僕は前に走って回避し、2人の攻撃は地面をえぐるだけの結果となった。

そのまま足を止めることなく一気にフィンさんに近づきもう一度木刀を斜めに振り下ろす。

フィンさんは回避が間に合わず、やむなく木剣で木刀を受ける格好となり乾いた音が辺りに響く。


その瞬間、周囲の観客席からさらなる歓声が沸き上がった。


「はぁ……はぁ……まだまだだなあ……私は」


その場で座り込んだフィンさんに僕が手を差し伸べる。


「いえいえ、最初に鍛錬を始めた時よりずっと回避も早くなりました。 後は如何にその瞬間に攻撃を当てれるかです。 それに、皆さんの連携もオーク達とは比べものにならないほど洗練されてて、僕としてもすごく勉強になってます」


「ははは、言ってくれるねえ……しかしなあ、ヴォイドの攻略法として相手の攻撃を躱しつつ、すれ違いざまに剣で脚を狙えなんてかなり無茶ではないのか?」


「いえ……ヴォイドの攻撃は速いですが直線的です。 むやみやたらに攻撃するよりは回避に専念し、相手が近づいてくる一瞬を狙って脚を潰して素早さを奪う。 これに尽きると思います」


僕とフィンさんが話し合っている間に、他の『獅子の咆哮』の人達も集まってきた。


「くっそう……けっこういい瞬間に俺とロイドで攻撃できたと思ったんだがな……」


「すまん……バッカス。 少し攻撃が遅れてしまったかもしれん」


「今度こそはと思ったが」

「ムミョウは良く躱せるな」


「これ以上はもっと威力を低くして速く魔法を出すようにしないと無理ね……」


僕と『獅子の咆哮』の人達で円陣になり反省会を始める。

ふと観客席を見れば、少なくない冒険者や街の人達が僕らを応援したり囃し立てていた。


「人……結構いますね」


僕が呟くとフィンさんに鼻で笑われてしまった。


「そりゃそうだろう……30階層を単独で突破した者と、『獅子の咆哮』との鍛錬だ、観客がいてもおかしくはない。 むしろ君はそこまでやっておいて有名にならないと思っていたのかい?」


「そうですね……でも今までこんなに人から見られたり褒められたりなんてことありませんでしたから。 連合国でも僕達が助けた人達以外からお礼を言われたりしませんでしたし……」


僕は思わず頭を掻いてしまう。


「賞賛は素直に受けるべきだよ……君にはそれを受けるだけの実績と実力がある。 もっと自分を誇っていい」


そう言ってフィンさんは僕の背中をドンと叩いた。

ちょっとムセてしまったけど、剣を鍛えているときとはまた違った充足感が僕を満たしていく。


「さて、そろそろいい時間かな?」


フィンさんが空の太陽を見上げる。

すでに太陽は真上まで上っており、疲れと同時に空腹も感じるようになってきた。


「では一旦家に戻って着替えたら街に出て皆で食事を摂ろうか。 皆何がいい?」


フィンさんの掛け声で皆から一斉に案が飛び出る。


「やっぱり肉食おうぜ! 肉!」


「昼間に肉はちょっときついだろう……バッカス。 私は煮魚だな」


「野菜」

「果物」


「あんまり重いものはちょっと……スープくらいでちょうどいいんじゃない?」


とまぁ見事にばらばらである。


「とりあえず、家に戻ろうか」


フィンさんも慣れているようで気にすることなくギルドの中へと戻っていく。

ギルドでジョナさんに手を振って挨拶し、外に出ると僕と『獅子の咆哮』の人達はギルドの隣にある家……というよりは屋敷に入っていった。


いつ見てもデカいよなあ……


立派な門と塀に囲まれ、結構広い庭もついており、2階建ての白い壁で統一された屋敷が僕達を出迎える。

入り口には使用人の人達が僕を待っていてくれた。


こんなお屋敷どうしたかって?

話は2週間前に遡る。


『獅子の咆哮』さんと協力して鍛錬場を攻略していこうと決めた日にジョージさんが家を見つけたと言ってくれたわけだけど……紹介してくれたのがここだった。


いつもギルドに入るときにデカイお屋敷だなあと思って見てたけれど、まさかここが紹介されるとは思ってなくてびっくりしてしまった。

ジョージさんが言うには、


「君のおかげで鍛錬場の攻略が成るかもしれんのだ、私達ギルドとしてもそれに見合うだけの報酬を金貨以外でも渡したいと思ってね」


ということだったので、僕は素直に好意に甘えて屋敷を買って住まわせてもらうことにした。


けれど、ジョナさんに後でこっそり聞いたところによると、この屋敷はギルド本部のお偉いさんや貴族達がこの街で過ごすためのものだったそうで、僕に売ることを独断で決めたジョージさんはかなり追及されたそうだ。

でも、鍛錬場攻略のためだと言い張って結局押し通しちゃったらしい。


僕に会ってもそんな事一言も言わなかったジョージさんには頭が上がらない……有難うジョージさん。


とまぁこんな大きいお屋敷に1人で住むわけにもいかないので、『獅子の咆哮』さん達にもこれから毎日闘技場で鍛錬するんだし一緒にどうですか? とお誘いしたら、最初は驚かれたけど話し合いの結果、快く了承してくれた。


そうして今はこのお屋敷とギルドを行ったり来たりし、『獅子の咆哮』の20階層突破のために日々鍛錬に励んでいるというわけだ。


汗を拭いて替えの服に着替え、入り口で皆を待つ。

服はいつも着ている赤い着流しだけでよかったのだが、屋敷に住み始めた時フィンさんやメリッサさん、ジョナさんからもちゃんとした服装も揃えるべきと口々に言われ、貴族が着る高そうな服を何着も買わされ着させられた。


今もその高そうな服を使用人さんに着させられたわけだけど……うん、すっごく動きづらい!


その内に皆も集まってきたので、街へと出た。

街では色んな人から褒められたり応援をもらった。

うう……恥ずかしいけど……やっぱり人から褒められると嬉しいよね。

その後は結構高そうなお店に入り、各々が希望した食材の料理を注文してお腹も満たされたことで今後の方針を話し合うことにした。


フィンさんが第一声を上げる。


「我々がムミョウ君と一緒に鍛錬を始めて2週間。 君から見て僕達は……ヴォイドに勝てると思うかい?」


「……まだ難しいと思います。 僕は鍛錬でヴォイドを意識して、あいつとなるべく同じ速度で動いています。 やはりライトさんやレフトさん、メリッサさんは回避を確実に、フィンさんやロイドさん、バッカスさんは回避と同時の攻撃を出来るようにならなければ……」


「やはりか……」


フィンさんが腕を組んで考え込む。

僕から見てもフィンさん達はかなり強くなったと思う。

『獅子の咆哮』の到達階層は現在10階層、20階層に直接飛ぶことは出来ないため10階層からの攻略となるわけだけど、既にオークやボルスくらいなら苦も無く倒せるだろうし、ウェアウルフなら特に問題はないと思う。


ただ、ヴォイドは速さが全然違ううえに鉄すら切り裂く鋭い爪を持っている、回避が絶対条件だ。

そう思って鍛錬では絶対に攻撃を受けてはいけない事にして、回避からの攻撃や相手の動きが止まった瞬間への攻撃を中心にした。


ある程度までは回避と攻撃の両立は出来るようになったけど……確実でなければ安心はできない。

それでも光明が見えつつあるのを感じ取っている皆の顔は明るい。


「さて、ではまた家に戻って鍛錬の続きと行くか……」


フィンさんが立ち上がると僕達も立ち上がって店を出る。


屋敷に戻る道中でも対策などを話し合っていたら、ふいにメリッサさんが門の方を指さす。


「あら? 門の前に誰かいるわよ?」


そう言われたので、僕も門の方を見るとやや小さい人が2人見える。


「あれは……」


僕もよく知っている2人であった。

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