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第三章 33話 四天王との再戦 中

 今日は早めに起き、朝の日課の後に刀の手入れをする。

 トゥルクさんの村が最後で、久しくやってなかったから汚れなどが目立つ。

 師匠に怒られそうだから念入りにしておかないとね。

 何度も刀を返して確認し、せっせと刀身を布で拭いつつ今日の予定を考える。


 さすがにまたいきなり鍛錬場に行くのはまずいよな……絶対ジョナさんに怒られるし……

 大人しくギルドに寄るとして、もう少し鍛錬場の事聞いた方がいいかなあ。

 今日の目標は20階層までとして、10階層がボルスなら20階層は……あいつだろうなあ……


 連合国で戦った疾風のヴォイドが頭に浮かぶ。

 ボルスほどの腕力はないにしても足の速さは断然ヴォイドの方が上。

 僕ならともかく、普通の人なら攻撃を防ぐのでも精一杯だろう。


 だけど……


 ボルスと戦った時に感じた違和感。

 ボルスであってボルスじゃない……

 次に戦うであろうヴォイドでも、その違和感が鍵になる様な気がしてならない。


 手入れが終わった僕は腰帯に刀を差し、気合を入れてから宿を出た。


 ギルドには『獅子の咆哮』のフィンさんが1人でベンチに座っており、僕を見かけると近づいて声を掛けてきた。


「今から行くのか? ムミョウ君」


「はい。 今日は20階層が目標です」


 僕が頷いて答えると、フィンさんは首を振った


「一応私は、君と鍛錬場攻略のための情報を共有するという話になっているからな、昨日は伝えれなかった情報などを君にと思って待たせてもらった」


 そう言うとフィンさんから


 まず、

 ・階段まではモンスターは来ないものの、弓兵や魔法使いなどが階段から攻撃した場合は、広場にいる者を無視して襲ってくる。

 ・階段だけでなく外周にある小部屋にもモンスターは近づくことが無い為、一時的な避難場所としていた

 ・広場に入っても一定の範囲に入らないとモンスターは反応しない、ただし遠距離攻撃の場合は別。


 等の鍛錬場の情報を聞かされた。


「有難うございます。 フィンさん」


 僕がお礼を言うと、フィンさんは目をそらしながら悔しそうにつぶやく。


「君は……怖くはないのかい? 鍛錬場が……」


「怖くは……ないですね。 むしろ楽しいですし、嬉しいです」


 僕の言葉が信じられなかったようで、眼を見開き僕の肩を掴んで揺さぶってきた。


「なぜだ!? どうしてだ!?」


「だって、あいつらは僕が連合国で散々斬り捨ててきた連中ですし……それに、僕の鍛えた剣で鍛錬場の攻略や調査が進んで、ジョージさんとか皆が喜んでくれるんです……人が喜んでくれるなら自分だって嬉しいでしょう?」


 僕が笑顔で話すのを見て、フィンさんは身体をわなわなと震わせながら離れる。


「すまなかった……ムミョウ君。 取り乱してしまって」


「いえ……それじゃあ僕はジョナさんに挨拶してから行きますね」


 僕はフィンさんから離れ受付へ向かったが、後ろを見るとフィンさんは拳を握り締め、ずっと下を向いて立ち続けていた。


 受付のジョナさんに挨拶をすると、何度もしつこく無理はしないようにと大声で念押しされ、勢いに押されつつふらふらとギルドを出て鍛錬場へと向かう。

 鍛錬場前の広場には誰もおらず、僕は水晶の前まで進んで手をかざす。

 10階層の水晶に転移した僕は階段を降り、まずは次の階層を確認することにした。


 11階層のモンスターは狼人間4体。

 特に苦戦する相手ではないが、調査のため少し様子を見つつ戦うことにする。


 右手を刀の柄に添え、いつでも抜き放てる体勢を取りつつ手近な狼人間に近づくと、一体がこっちを向くと同時に大きな跳躍で一気に僕へと近づき、その鋭い爪を振り下ろしてくる。


 僕は腰をかがめ、爪を下にすり抜けるようにかわしつつ、刀を抜いて胴体を斬り裂いた。

 空中で2つに割かれた狼人間がそのままの勢いで僕の後ろへと転がっていく。


 他の3体も反応して襲ってきたが、皆動きがバラバラで僕に近い順から飛び込んでくるだけ。

 余裕で躱しつつ、返しざまに刀を振るって首を飛ばしたり胴体を2つに斬り裂いていった。

 その後の階層も同じ狼人間が数を増やして待ち構えているだけで、特に苦も無く全滅させていく。


 確かに動きは早いけどそれぞれの連携もないし、直線的な攻撃で見せかけの攻撃も全然しないから、飛び込んできたのを斬るなり叩き潰せば良さそうっと……

 弓とか飛び道具が無い分、むしろオーク達より戦いやすそうだなあ。


 既に19階層まで進み、僕に飛び掛かってきた狼人間の首を飛ばしながら、ジョナさんに報告する内容をあれこれ考えていた。

 19階層のモンスターを全滅させた後、階段を降りれば奥に見えるのは、こちらをじっと見据えた真っ黒な毛の大きな狼人間。


 間違いない……ヴォイドだ。


 ボルスに呼びかけても反応はなかったし、無駄なことだと思いつつも僕は大声で叫んでみる。


「ヴォイド! さあもう一度会いに来てやったぞ!」


 やはり反応はなく、ただただ僕を見続けるだけでじっと動かない。


 はぁ……


 僕はがっくりと肩を落とした。

 だが落ち込んでいても仕方ない。


 両手で頬を何度か叩いて気合を入れなおし、広場へと足を踏み出した。

 徐々にヴォイドとの間合いが狭まる。

 僕は意識を集中させてヴォイドの気を探るがまだ線は見えない。

 だが、また一歩と踏み出した瞬間、一直線に白い線が僕めがけて走ったかと思うと、その刹那ヴォイドが牙をむき出しにして、放たれた矢の如く僕へ向けて飛び掛かって来た!


 ヴォイドの左手の爪が目の前に迫る。


 くっ――!


 やむなく刀を抜き、そのまま柄頭をヴォイドの左手に当てて軌道をずらす。

 完全に勢いを殺せるわけではないので、ずれた軌道の内側へそのまま転がるように抜けてヴォイドと距離を取り、起き上がってすぐにヴォイドへと正眼の構えをとる。


 ちょっとヒヤッとしたよ……


 ヴォイドの方も僕に向き直って唸り声をあげて腰を低くし、いつでも飛び掛かれる構えをしている。

 明らかに連合国の時よりも速度が上がっている。


 師匠ほどじゃないけど白い線が見えてからの攻撃も速かった。

 もしかして強くなっている?


 そうも思ったりもしたが、やはり何か違和感がある。

 それが何かを知るため、僕は何度か攻撃を受けてみることにした。

 ヴォイドと自分を交互に見て大体の距離を目算する。


 ……今の間合いはさっき飛び掛かられた時よりもやや遠い。


 少しずつさっきの間合いまで近づいてみる。

 一歩、二歩、三歩……ある程度進んだところで一旦足を止めた。


 多分、次に踏み込んだらヴォイドが飛び掛かって来る――


 そう思いつつ、僕が一歩前に足を出すとヴォイドはさっきと同じように俊敏に動き出して僕へ突進してくる。


 今度は右!


 だがある程度予想は出来ていたので、今度は爪に触れそうなくらいのギリギリで回避しつつ右側へ逸れていった。


 そしてまた間合いを取り、一歩ずつ近づいて反応を見る。

 そんな事を何度か繰り返した時、僕は察した。


 ああ……分かった。

 こいつら自分で考えてないんだ。


 ある一定の範囲までこちらに反応しないというのはフィンさんから聞いた。

 けれど、さらにその範囲内の一定距離まで近づかないと攻撃してこない。

 そして距離に合わせて同じ攻撃しかしてこない。


 まるで操り人形。


 連合国の時のヴォイドであれば動きに緩急をつけたり、蹴りや噛みつきなどもしてきただろう。

 だが()()()()()()()()()は一切そういう気配がない。

 ただ決められた動きをし、決められた距離から決められた攻撃をするだけ。


 ボルスの時もそうだった。近づけば上から鉄塊を振り下ろすだけ。

 途端に身体の熱が冷えていくのを感じる。


 神様は、モンスターの身体は真似できても頭の中までは真似できないんだな……

 これ以上はもう情報は集める必要もないかな?


 そう判断した僕は、刀を収めて一気にヴォイドへ駆け出す。

 ヴォイドの方も僕を見据えて地面を蹴り、左手を振りかぶる。


 お互いがすれ違う瞬間。


 ――僕は刀を抜き放ち。


 ヴォイドは手を振り抜く――


 一瞬の邂逅の後、僕もヴォイドは微動だにせず刀と手を振り抜いたままの体勢。


 ――そして僕が刀についた血を振り払った後、鞘に納めると同時にヴォイドの胴体から血が噴き出し、地面に崩れ落ちた。


 そしてボルスと同じように白い灰となって消えていく。

 20階層から下へ続く階段の扉が開き、ヴォイドのいた場所には赤い宝箱が現れた。


 フゥー……


 一息つくと、左頬から血が流れ落ちるのを感じ、右手で拭う。


 よし、今日は帰ろう。


 そう思い、赤い宝箱の中身を開けると中には銀で作られた精巧な槍が入っていた。

 まぁ槍なんて使わないし、これもジョージさんに買い取りだなあ。

 槍を担ぐと、僕は階段を降りて水晶に触れ地上に帰還する。


 ギルドではジョナさんが僕を見つけると一目散に駆けつけて怪我はない!? 生きてる!? 大丈夫!?

 と顔を真っ青にしながら心配してくれた。

 僕はジョナさんの前で水晶玉に手をかざし、しっかり20階層まで突破出来ていることを確認してもらった後、ジョージさんにも報告して報酬と買い取りの金貨35枚を頂き帰ろうとした。

 ところが席を立ったところ、ジョージさんが何かを思い出したようで、ちょっと待ってと呼び止められた。


「この前ムミョウ君は私に家を探してほしいと言っていただろう? あれから伝手を頼って聞いてみたら良さそうな家があったらしいから、今度見に行ってみるかい?」


 あのお願いからまだ3日しか経ってないのにジョージさん探してくれてたんだ……ありがたい。


「それは良かった! あっ……でも家を見に行く前にやられちゃったら元も子もないですね……」

「20階層も軽々突破した君が早々やられるはずはないと思うけど?」


 僕とジョージさんはお互い冗談を飛ばし大笑いしあった。


 そうして改めて挨拶をしたが、ジョナさんにはもうちょっとここにいればいいのに! と名残惜しまれたけれど僕はギルドを出た。

 いよいよ明日で30階層。

 相手は恐らく僕が苦戦したあいつ。

 けれど、色々聞いた情報で試してみたいことが浮かんだので、宿に向かう前に寄り道することにした。


 フッフッフ……我に秘策あり!




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