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講義③『企画書』で制作するシナリオの全体をイメージする

私3「予定とは違うものができているが、どういうことかね?」

私1「……多すぎたんです、書くことが。想定外デス」

私3「まあ、修正するしかあるまい」

私1「予定より講義の話数が多くなりそうです。『企画書』は恐ろしい子デス」

 それでは講義③を始めます。

 講義③では本創作論の『プロット』に含まれる『企画書』を説明します。

 この『企画書』を作る目的は以下のようになっています。


①制作する意図や全体の方針を作業中、執筆中に確認するために使う

②作品の推敲作業に使う


 というのが主な目的です。細かく言えば「本文とプロットがずれまくってきた執筆不可能に」「なんのために作業しているのか意味不明で筆が止まった」というのを防ぐために作ります。あるいは「作業のズレがひどいので整えたい」というときに使います。


 上記の現象を防ぐのは意外と簡単です。「簡単な制作方針を紙媒体やワードのファイルにしておき、それを確認しながらズレないように作業すれば良い」だけです。


 そのため『企画書』は大雑把に「作品の全体像や全ての制作作業が理解できるもの」「短時間で制作するシナリオの全体を確認できるもの」を作り「プロット作成や執筆作業でずれないようにする」ことを目標にします。

 

 完成したときの最終的な枚数はA4用紙で3~20枚と言った感じになるのではないかと思われます。


 もちろん閃きなどで「このままではダメだ! 変更!」と大きな決断をしたなら「企画書の方を変更することもあり」です。その辺の判断はよく考えて行ないましょう。


 『企画書』に必要だと思われる内容がこちらです。


①〈制作目的〉と〈対象ユーザー〉

②〈コンセプトとテーマ〉と〈ジャンルと作品容量〉

③〈シナリオ構成〉と〈描写方針〉

④〈キャラクター設定〉と〈世界観設定〉

⑤〈作品名候補〉と〈広告あらすじ〉


 の5つです。これが『企画書』に書くべきことです。

 順番に説明しましょう。





 まず①の〈制作目的〉と〈対象ユーザー〉について。

 当然ですが「目的と需要」について書く項目です。


 アマチュア作家でも「王道シナリオを書きたい!」などという目的をもって作品制作を行ないます。しかし「娯楽作品のシナリオとはユーザーに消費して楽しんでもらうために存在する」ものです。「需要」というものを外してはいけません。プロはこれを当たり前の意識にしています。アマチュアの方もどうせ制作するなら意識してしまいましょう。


 というわけで、まず〈制作目的〉で書くべき内容は「目的」「需要とその原因」です。


 「目的」はそのままですね。「なんのために制作するのか」「誰のために制作するのか」を書きましょう。そして「需要と原因」はその「目的」の作品制作を行なう理由を書きましょう。これらを探してから作品制作をしても遅くはありません。


 こんなイメージを持てば良いと考えています。



目的「王道シナリオを書くぞぉ!」

 ↑

原因「なろうで王道シナリオが不足しているよぉ」byユーザー

原因「ふえぇ……なろうの作者はみんな奇をてらいすぎだよぉ」byユーザー

 ||

需要「質の高い王道シナリオを読ませろこらぁ!(切実)」byユーザー



 といった感じでしっかり指定しておけば「投稿する場所に存在しないシナリオを書きやすくなる」「質が高いという評価がされやすいシナリオを作りやすい」といった利点が生まれます。基礎編で述べた「ユーザー評価点」について思い出していただければ幸いです。


 またおぼろげに考えたシナリオが「ありきたりかな?」なんて不安のある創作者はこのように「原因と需要」を考えて「おぼろげに考えたシナリオを修正する」と良いでしょう。


 基礎編の「ジャンル」で述べたかもしれませんが、ほんの少し「ジャンルをずらす」ことをすれば立派に「オリジナリティのある作品」は作れます。「ゾンビが出てくる小説」がありきたりなら「変な笑い方をする強すぎるゾンビが出てくる小説」に魔改造すればいいのです。


 次に〈対象ユーザー〉ですが、これは上記の「目的」「原因と需要」を補足するものと考えていただければと思います。「目的」「原因と需要」のうち、「原因と需要」を「だれが求めているか」を想定すればいいのです。

 先ほどのイメージに付け足すとこうなります。



目的「王道シナリオを書くぞぉ!」

 ↑

原因「なろうで王道シナリオが不足しているよぉ」byユーザー

原因「ふえぇ……なろうの作者はみんな奇をてらいすぎだよぉ」byユーザー

 ||

需要「質の高い王道シナリオを読ませろこらぁ!(切実)」byユーザー

対象「ユーザーは16~40歳くらいの男女だ! 活字慣れしているぞ!」



 といったイメージです。


 この〈対象ユーザー〉で重要なことは「ユーザーの資質」「ユーザー評価点」です。


 「ユーザーの資質」は大雑把に言えば「漢字の含有率」「伏線の理解度」がどの程度かといったこと書き、制作中はそれを考慮しましょう。

 「ユーザー評価点」は「ジャンル別の作品評価基準」ですね。最低限のクオリティはどの程度求められているかを書き、それに応える作品制作に尽力しましょう。


 これらは基礎編で述べたと思うので、詳しくはそちらを読んでくれると助かります。


 という感じです。「①〈制作目的〉〈対象ユーザー〉」の内容をまとめると「制作目的と需要を一致させてユーザーが喜ぶものを作ろうぜ」ということになります。




 次は②の〈コンセプトとテーマ〉と〈ジャンルと作品容量〉ですね。

 前者は「完成作品のイメージ」です。後者は「シナリオの種類とその長さ」だと考えてくれればよいかもしれません。


 まず〈コンセプトとテーマ〉ですが「コンセプト」は「シナリオに含めたい具体的なものを書く」といいでしょう。


 基本的にはなんでもよいです。例えば〈制作目的〉が「王道的シナリオを書く」であるなら「勇者が出る」「弱気な魔法使いが成長する」「伏線を使う」「ハラハラさせる展開」「定期的に歓喜の感情が欲しい」といった感じでしょうか。

 これは「クオリティを上げるための縛りや制限」という捉え方でもいいかもしれません。とにかく「プロット作成や執筆作業でズレを起こさせないようにすることが大切」です。


 また無理やりに〈制作目的〉に合わせる必要はありません。関係なさそうなことでも構いません。ただし「制作目的に真っ向からケンカを売るコンセプトはNG」だという認識は大切にしましょう。


 例えば王道的シナリオを作りたいのに「ラスボスは最初に出会った村人のじいさん」なんてどうあがいても変化球のシナリオにしかならないでしょう。そうなったら「プロットを無視して書くのと同じ」です。


 そして「テーマ」ですが、こちらは「ユーザーに与えたい利益である大雑把な感情」を書けばいいと思います。


 よく「テーマを書け。愛とか努力とか友情とかを伝えるように頑張れ」という指導をする創作本があると思います。あれをわかりやすくすると「愛って素晴らしい」「この熟年夫婦的な雰囲気、これが愛か」というような感動や納得などの「感情」をユーザーに与える目標を立てろという意味だと解釈できます。

 こちらもちろん〈制作目的〉にケンカを売る真似はやめましょう。


 こういったユーザーに与えたい「感情」を「愛」「愛とは崇高で静かである」「悲愛は辛い」と文章で簡単にまとめようというのが「テーマ」を書く目的ですね。これを設定しないと「愛」という「テーマ」で作られるシナリオの中に唐突に「トマトは至高の食材であるなどの感情しか発生しないストーリーを放置することに繋がる」ことがあります。


 こうなった場合の何が問題かと言えば「制作目的に違反する」=「想定した需要と合わない」=「ユーザーが求めていないものを提供する」ことになります。クオリティや評価の低下につながるのです。

 わかりやすいイメージで言うなら「牛丼屋に入り、食べたい牛丼を注文したら、なぜか大きなミカンが出てきて牛丼と同じ料金をむしり取られた」といった状況が近いと思います。


 サブテーマなどももちろん「テーマ」に書いても構いません。「愛」「悲恋」などの「感情」を牛丼とするなら、サブテーマの「差別」「身分差」などの「感情」は紅ショウガに該当しますからね。これが牛丼を3倍の美味しさに引き立てる紅ショウガであるなら文句の付け所がありません。


 このサブテーマを「トマト」などと関係なさそうなものを指定していいのか、というのは、それは創作者の力量と作品次第でしょう。


 次に〈ジャンルと作品容量〉です。これは「どういったジャンルに属するか」ということを指定するものです。「ファンタジー」「ホラー」はもちろん「長編」「短編」などもです。「ジャンル」については基礎編を参照してください。


 これを設定するのも〈制作目的〉に沿った作品を作るためですね。例えば「王道的シナリオ書きたい」なら「ハイファンタジー」「悪役令嬢系」などといったものを「ジャンル」に書くといいでしょう。


 「制作容量」はそのまま小説やマンガ、映画の長さのことです。こちらも「需要」で「短編が読みたい!」と分析したなら短編を。長編なら長編という設定にします。あるいは「完結作品が読みたい」という需要が「なろうサイト」にあり、そこへ作品を供給したいと考えたなら「全24話の完結作品」といったように指定します。


 それからあらかじめ長さを設定することで「完結を具体的に目指せる」「ゴールが見える」といった利点があります。これによって創作者は「伏線をどこで入れ、どこで伏線を暴露するか」ということをしやすいと思われます。


 という感じで「②〈コンセプトとテーマ〉と〈ジャンルと作品容量〉」は終わります。このようにして「完成作品のイメージとその長さ」を指定しましょう。




 次に③の〈シナリオ構成〉と〈描写方針〉ですね。ここでは「時間軸上における具体的なシナリオの流れ」と「シナリオの描写順番や心理描写などの方針」を書きます。つ

 まり「制作目的やコンセプトなどの完成作品のイメージ」を「実現するには何のシナリオをどのように描写するべきかという方針」を書きましょう。


 まず〈シナリオ構成〉です。ここでは「物語の時間軸通りのシナリオ(ストーリーの束)の繋がりと流れ」と「シナリオが生み出す感情」を書きましょう。


 ここで書いたシナリオこそが「最終的に読者が理解して感動や共感などの感情を受け取ってほしい物語の簡易版」になります。


 時間軸上で書かなければならないのは「物語そのもの」だからです。けして「小説を読む際に理解する順番のスト―リーではない」ことに注意しましょう。


 分かりにくいかもしれないので具体的に言います。例えば「まほらば」というマンガの作品を例にしてみましょう。相当簡略化しているのはご了承ください。


 この作品の第1話は「引っ越した主人公がアパートの管理人であるヒロインと出会う」というものです。しかし10巻で「10年ほど前のシーン。精神的に追い詰められていた幼いヒロインが幼い主人公から精神的な支えとなるものを教えてもらい、主人公に恋心を抱く」というストーリーがあります。


 ユーザーが理解するストーリーの順番は「前者→後者」という順番です。しかし物語の時間軸の流れは「後者→前者」ですよね。当然ですが「シナリオでストーリーとストーリーが繋がっていなければならないのは物語の時間軸での話」です。

 じゃあ回想シーンなどはなぜ存在するのかというと「そういう順番で理解していったほうがもっとも感情が大きくなると判断して行なった、シナリオの描写である」というだけです。


 そのためここでは読者に伝えたいストーリーの束(=シナリオ)の「時間軸におけるシナリオの始まりから終わりまでの流れ」を書こうという部分になります。


 ただし『企画書』の段階では一つ一つの細かいストーリーを書く必要はありません。制作の際にぶれない作業をすることや確認が目的ですから簡単に書くに越したことはありません。


 ではどうすれば良いのか。それはシナリオを簡単なストーリーでまとめたものである「骨格ストーリー」を利用すればよいのです。これを書きましょう。そして「Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ」の式を利用して最低限のストーリーが成立するようにしましょう。


 また簡単でいいので「設定も付属した骨格ストーリーを書くとよい」と思われます。それに伴い「ユーザーに与えたい、与えるだろうと思われる感情」を書き出します。こちらも簡単で構いません。明らかに足りないものを探す意識程度でいいでしょう。


 具体的にはこんな感じです。



【全体のまとめシナリオ】

「異世界に召喚された日本人の勇者が、人類に侵略戦争を仕掛けている悪逆非道の魔王を、仲間と協力して倒し、世界が平和になる話」

Ⓣ=悪逆非道の魔王が人類に侵略戦争を仕掛ける。

Ⓢ=勇者が仲間と協力して魔王に挑む。

Ⓐ=魔王が倒され平和になる。

感情=「共感」「安心感」「外道すぎる魔王」「王道シナリオの満足感」


【シナリオ①】

「異世界に召喚された勇者が、魔王軍に邪魔されながらも、仲間を増やしていく話」

感情=「魔王軍がうざい」「地味ながら渋い仲間がよし」「勇者はおぼっちゃん」

【シナリオ②】

「仲間を加えた勇者が、魔王軍の幹部たちを戦って倒しつつ、聖剣を手に入れるまでの話」

感情=「頼もしくなってきた勇者」「幹部は強い」「幹部は無能」「素晴らしい切り札たる聖剣」

【シナリオ③】

「最終決戦。聖剣を手に入れた勇者が、魔王城の奥にいる魔王と戦い、勝利するまでの話」

感情=「すっきり」「爽快」「逆転きたあ!」



 というように「骨格ストーリー」で各シナリオを簡単に書き、「物語の流れ」を確認できるようにしておきましょう。これを確認しながら作業すれば「時間軸での矛盾」「無関係なストーリーをシナリオに含めてしまう」ことなどを防げます。

 ちょっと大雑把すぎるなあと思った場合はシナリオをより細かく分割すればよいでしょう。逆に「全体のシナリオ」だけでも充分な場合もあると思われます。


 「感情」については本当に大雑把な目安でいいです。綿密な計算による構築は後の『ストーリー構成』で行ないます。また「なんとなくこういう感情を提供したい」というものも記載しておくとよいです。


 次は〈描写方針〉ですね。ここでは「シナリオをどのようにユーザーに理解させるか」ということを書きます。


 最初はまず、いわゆる序破急やシーン構成などの「シナリオの描写の流れに関することを書くのがよい」です。例えば上記のシナリオを使うなら「全体=②→①→②→③」の順番でシナリオを書くと記載します。


 この際に簡単なチェックで「相性の悪いシナリオの流れがあるのではないか」というチェックをするとよいでしょう。基礎編の〈感情〉を説明したときに「シーンの理解する順番で感情の大きさが増減する」といったことが書いたと思います。そちらを確認していただければ幸いです。


 これができたら次は「細かい描写方法やシナリオ構成の制限などを簡単に書くと良い」でしょう。特に「制作目的やコンセプトによって必要なことは記載する」べきです。


 例を出すなら「伏線やどんでん返しのために不足描写や隠蔽描写をシナリオ①で使う」「ユーザーにインパクトを与えたり、シナリオ理解を促進するトップダウン処理を行わせるために勇者と魔王戦のストーリーだけはプロローグで書く」などがあります。


 また上記を記載するために「文章だけでは抽象的すぎて確認作業に使えない」などの問題があった際には必要に応じて「サンプル」を書きましょう。つまり「具体的な描写などを直接すればいい」です。


 例として「目的=現代高校生のラブコメを書く!」「コンセプト=ツンデレ少女の内心は伏線でドドーンと描写する!」「シナリオ①=○○。シナリオ②=△△……etc」と記載された企画書があり、その「サンプル」を作ってみます。



【シナリオ②のヒロインのセリフ。不足描写。ユーザー初見バージョン】

ヒ「もう主人公! なんであんたはいっつも私に起こされるまで寝ているのよ! さっさと起きてご飯を食べなさい! あんたと違ってあたしは歩いて学校行きたいのよ! わかるっ!?」


【シナリオ②のヒロインのセリフと信条の隠蔽描写。シナリオ④を理解後に追加される】

ヒ「もう主人公! なんであんたはいっつも私に起こされるまで寝ているのよ!(寝顔を見るのが役得すぎるので不満はないけど) さっさと起きてご飯を食べなさい!(朝食を食べない釘を刺しとかないと。ああでもその分お昼のお弁当は美味しそうに食べてくれるし……いや落ち着けヒロイン。願望はNG。健康第一) あんたと違ってあたしは歩いて学校行きたいのよ!(二人きりで話しながらの登校は至福なんだから) わかるっ!?」


【シナリオ④でシナリオ②の伏線を暴く。シナリオ④始まりの主人公と友人女の会話。友人女の()は他のシナリオを理解してからの隠蔽描写】

主「もしかしてヒロインはとんでもないツンデレではないか? そして僕にベタ惚れなんじゃないだろうか? どう思うかね友人女?」

女「は? どうしてそんなこと(いまさらすぎる周知の事実)を確認する?」

主「いやあのさ、あいつって告白されるでしょ? でも断るじゃん? だから幼馴染である僕に気があるんじゃないかって論理的に考えたんですよ」

女「眼鏡をクイすんな。まあ、おもしろそうだから協力してもかまわん」

主「さすが友人女様は話のわかるお方だ。ということでゴニョゴニョ……」

女「……友人男にも協力させよう(マジで気づいてない? さすがにドン引きだわ)」



 とこんな感じで「サンプル」を作ればよいかと思います。


 これも本格的なことは『描写構成』のほうで行なえばいいです。とにかく「ユーザーにシナリオを理解させる描写のやり方」を「方針や目標として書いておく」ことを行ないましょう。




 次は④の〈キャラクター設定〉と〈世界観設定〉です。ここでは「ユーザーに与えたい感情を作るために必要な設定」を簡単に書きます。


 こちらはあくまで『企画書』です。本格的なこと(登場人物の総人数や詳細な設定)は『キャラクター設定』『世界観設定』の『プロット』の方へ書けば問題ありません。


 そのため具体的には「制作目的、コンセプト、テーマなどに書かれた制作でもっとも重要な設定」「シナリオ構成に書かれた感情を発生させるために必要な設定」「全体的なシナリオの、あるいは重要なシナリオの成立と不成立に関わる設定」などを大雑把に書きます。


 例えば全体のシナリオが「異世界で勇者が魔王を倒す話」だとこのお話に絶対に必要なキャラクターと世界観は「勇者」「魔王」「異世界」です。この三つを大雑把に書きます。そうすることで創作者自身に「これらが不足した場合ははまず間違いなくシナリオが破綻するという警告をする」のです。

 極端な例だと「異世界で~」というシナリオなのに「日本で~」というシナリオになっていたらシャレにならないというわけですね。


 また「シナリオの成立と不成立には必要としないこともできるが、目的やコンセプトのためには必要なキャラクターや世界観」もあると思います。そういうものは「サブキャラクター」などと別個に分けておくほうが良いでしょう。「ストーリーが成立していればシナリオになる」からです。


 例えば先ほどの「異世界で勇者が魔王を倒す話」の中に「王国の姫を助ける話」が含まれているとしましょう。この「王国の姫」は「王国の姫を助ける話」があるから必要であり、「異世界で勇者が魔王を倒す話」には入れても入れなくてもいい話です。

 この部分を「幼馴染を助ける話」に置き換えて「幼馴染」にしても「異世界で勇者が魔王を倒す話」は成立します。場合によってはこちらのほうがクオリティを高める結果に繋がることもあるかと思います。


 そのため「不足したらコンセプトから外れてしまいクオリティの低下を免れない警告」「代用や削除が可能で、それらを行なってもシナリオが成立可能な要素」といったように「メインキャラクターよりは重要度が落ちる」という線引きをしておいたほうが良いと思われます。


 世界観も同じように線引きするほうがいいかもしれません。ただ個人的にはそこまで書くと大雑把なものとは言えなくなるので世界観はメインのみ表記しています。

 

 イメージ的にはこんな感じで分けます。いくつか例を増やしてみます。



【シナリオ①=異世界で勇者が魔王を倒す話】

●メインキャラ=勇者、魔王。

●サブキャラ =王女

●世界観   =異世界


【シナリオ②=異世界で勇者が魔王にさらわれた王女を助ける話】

●メインキャラ=勇者、王女、魔王

●サブキャラ =未定

●世界観   =異世界


【シナリオ③=異世界で勇者が聖剣で魔王を倒す話】

●メインキャラ=勇者、魔王

●サブキャラ =王女、鍛冶師

●世界観   =異世界、聖剣



 というように線引きしておきましょう。


 そして「設定」のほうですが、これには「基本設定」と「改変設定」といったものがあるという話を基礎編で行なったと思います。詳しくは基礎編を読んでください。


 記載する内容は「設定は基本設定も改変設定も混ぜ、始めから終わりまでのものを簡単に書くほうがよい」と思われます。ここで設定を書く意味は「発生する感情を簡単に確認、あるいは大まかに推測できる」ことが大切だからです。

 確認は「キャラクターがストーリーの行動をとった場合に自分ならどういう感情が発生するか」といったように作ったシナリオやストーリーに実際に当てはめみるのもいいかと思われます。




 最後に⑤の〈作品名候補〉と〈広告あらすじ〉ですね。これは単純に「タイトルを考える」「なろうなどに記載するあらすじを考える」ことを行ないます。もっと言うなら「作品の広告をどうするか」を考えましょう。


 そのためシナリオ制作自体に関わってくるわけではないですが、ここ以外で考える場所もないのでここで考えます。


 まずは〈作品名候補〉ですが、要するに「候補となる作品名をいくつも用意して、どれが適切かを精査して選べるようにしておく」というだけなので思いついたものを書き、サイトに投稿するときなどで使いましょう。


 これだけでは寂しいので「作品名」についての筆者の理論を述べます。


 筆者は「作品名」というのは「名詞系」「文章系」「名詞と文章の複合系」にわけられていると考えています。


 代表的なものとして「名詞系」は「ドラえもん」「ゴルゴ13」「まほらば」「FF8」「沈黙の艦隊」など「名詞が作品名になっていたりするもの」ですね。

 大まかな特徴として「短くて覚えやすい」「イメージを結び付けやすい」といったものが代表的でしょうか。


 メリットは「作品がどういったものなのか」を「イメージで思い出しやすくしている」ことだと考えます。例えば「バナナ」と書かれたら「黄色の果物」「うまい」と連想します。同じように「ドラえもん」=「青ダヌキ」「秘密道具で問題を起こしたり解決したりするお話」というようにユーザーに連想させるのです。

 デメリットとしては「初見で作品名だけを見ても中身がまったく推測できない」ということが代表的だと思います。特にキャラクターや世界観で書かれた「ドラえもん」「ゴルゴ13」の作品名を初見で見たとき、秘密道具やスナイパーなどを推測できるでしょうか。できませんよね。


 そのため「名詞系の作品名」にする場合は「なろうで投稿した作品にユーザーがブックマークを続けてほしい」などと考える創作者にオススメします。


 次に「文章系」です。これは「作品名が文章になっているやつ」です。例えば「俺の妹がこんなにかわいいわけがない!」「マリア様がみてる!」などです。

 この「文章系」の特徴は「シナリオの内容や利益となる感情を推測しやすい」ことが代表的なことですね。例えば「俺の妹がこんなにかわいいわけがない!」だと「妹となんかやりあう話」「妹がかわいいんだろうなあ」ということを初見のユーザーは考えるわけです。


 そのためメリットは「ユーザーに明確に作品をアピールできて作品を消費させやすい」ことですね。シナリオや感情の利益がわかるからユーザーが「俺が欲しいものはこれの可能性がある!」となってそのシナリオを手に取りやすいと思います。

 デメリットは「覚えにくい、思い出しにくい」ことです。身近なことで例を出すと「なろうでこの系統の作品名を使うとブックマークから外されやすい」と思います。「俺の妹がこんなにかわいいわけがない!」のように一文一義程度の覚えやすいものならマシですが、長文になるほどそのデメリットは大きなものになります。

 

 具体的に例えるために商業作品のタイトルを変更してみましょう。例えば「オラが格闘と気功で悪者をボコボコにしつつ色々な世界を冒険する話」というタイトルで該当する作品を5秒くらいで当ててみようとしてください。筆者は無理です。


 原因は恐らくユーザーのイメージを絞らせることで内容を理解させる補助となる反面、〈拡散的思考〉が制限されるからだと思います。

 このタイトルだけを読んで「かめはめ波」のイメージはぎりぎり出てきても「如意棒」「金斗雲」「魔貫光殺砲」は簡単には出てこないでしょう。というか答えでもある「ドラゴンボール」や「シェンロン」とか「ヤジロベー」などのイメージを出せた人がいるでしょうか。いたらすごいと思います。


 そのためこの「文章系の作品名」は「サイトに投稿などをする際に多くのユーザーに読んでほしい」などと考える創作者にお勧めします。


 そして「複合系」は「名詞系+文章系」が代表的です。例として「嘆きの亡霊は引退したい~最弱ハンターによる最強パーティー育成術~」などのように「タイトル+サブタイトル」の組み合わせになっているものですね。

 特徴はこれはうまく使えば上記の良いとこ取りにもなりますが、悪いとこ取りにもなる可能性があるということでしょうか。


 そのため「作品名は目的に合わせることが大切」だと考えます。


 次は〈広告あらすじ〉ですね。なろうのあらすじや商業作品の小説にあるあらすじのことです。筆者は勘違いしていたのですが、あれは「概要ではない」ですよね。「テレビや動画に差し込まれるCMと同じ存在」です。


 そのためこれを作る目的は「ユーザーにシナリオを理解させることではない」のです。「あらすじ」の目的は「シナリオはどういったジャンルなのか」「ユーザーに与える感情は○○だ!」などのユーザーに対する広告なのです。


 そう考えると〈広告あらすじ〉は以下の意識で作成することを推奨します。



①ユーザーの資質を意識する

②可能な限り短くする

③シナリオのジャンルを詳細かつ単純に説明する

④作品に含まれている感情の質をアピールする

⑤何らかのイメージを植え付ける



 ことが大切です。


 ①番は基本ですね。「対象ユーザーにふさわしくない難解な表現はするな」ということです。伝わらなければ意味がありません。


 ②番はテレビなどのCMを見る自分を想像しましょう。30秒もCMを見たいですか? それよりやりたいことをやりますよね。だから「短い時間で全部伝わるようにする」ことが大切になります。


 ③番はそのままですね。具体例で言うと「強いゾンビが出ます!」「ヒロインの聖女は稲妻キックで城門をぶち抜きます!」などが良いのではないでしょうか。長すぎると②番に違反して「めんどくせえ」と読むことを拒否されるので注意が必要です。


 ④番もそのままです。「感動します!」「これは目を背けるレベルの悲劇……」「主人公はゴミクズwwだがそれがいい!」などユーザーに与えたい感情をアピールしましょう。

 特に「大きさよりどんな種類の感情があるのか」といったことを明確に伝えるほうが良いでしょう。一つでもほしい感情があれば食いついてくれる可能性があります。


 ⑤番は総合的なことですね。人間は言葉よりも視覚化できそうなイメージのほうが覚えやすく、印象に残ります。イメージを作品に結び付けるようにしましょう。

 例としては以下のようなストーリーを書くなどはどうでしょうか。()は地の文で脳内補完をお願いします。



【例】

「稲妻キィーック!!」

「ええっ!?」

 (城門をぶち抜く聖女とそれに驚愕する日本から召喚された勇者)

「さあ! このクソッタレ王国から出て行きますよ勇者様! むむ!? この剣戟! 甘いぞどりゃー!」

 (騎士団長をぶん投げる聖女)

「さあ! 脱出ですっ!! すたこらさっさぁ!」

「ちょっま──いたた!? 膝っ!? 俺のひざぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁ────」

 (勇者の手を取って引きずりながら城を出て行く聖女) 



 と作品のイメージを待たせ、続きを連想させやすくしましょう。その連想で期待できそうと判断されればシナリオを消費してくれるでしょう。これは会話文を加えることで作品の感情のアピールも兼ねてますけどね。




 以上で講義③は終わります。


 これで『企画書』の説明は終わりです。このように『企画書』は「作品の全体像や全ての制作作業内容が理解できるもの」「大雑把だが短時間で確認できるもの」を作り、制作作業がぶれないように手助けできるものを作りましょう。


 本当にお疲れさまでした。長すぎだよ……。


〇講義③『企画書』で制作するシナリオの全体をイメージするまとめ〇

●『プロット』に含まれる『企画書』では以下のものを作る

 「作品の全体像や全ての制作作業が理解できるもの」

 「短時間で制作するシナリオの全体を確認できるもの」

●『企画書』は「プロット作成や執筆作業でズレないため」に作る。

 完成はA4容姿で3~20枚くらいを目安にする。

●『企画書』には以下の内容が含まれている。

 ①〈制作目的〉と〈対象ユーザー〉

 ②〈コンセプトとテーマ〉と〈ジャンルと作品容量〉

 ③〈シナリオ構成〉と〈描写方針〉

 ④〈キャラクター設定〉と〈世界観設定〉

 ⑤〈作品名候補〉と〈広告あらすじ〉


●〈制作目的〉と〈対象ユーザー〉では「目的と需要」について書く。

 完成イメージはこのようになる。

目的「王道シナリオを書くぞぉ!」

 ↑

原因「なろうで王道シナリオが不足しているよぉ」byユーザー

原因「ふえぇ……なろうの作者はみんな奇をてらいすぎだよぉ」byユーザー

 ||

需要「質の高い王道シナリオを読ませろこらぁ!(切実)」byユーザー

対象「ユーザーは16~40歳くらいの男女だ! 活字慣れしているぞ!」


●〈コンセプトとテーマ〉は「完成作品のイメージ」と考えよう。

●〈ジャンルと作品容量〉は「シナリオの種類とその長さ」と考えよう。


●「コンセプト」には「シナリオに含めたい具体的なもの」を書こう。

 なんでもいいが「制作目的に真っ向からケンカを売るものはNG」。

●「テーマ」には「ユーザーに与えたい利益である大雑把な感情」を書こう。

 こちらも「制作目的にケンカを売ることはNG」

 サブテーマを作っても良い。テーマが牛丼ならサブテーマは紅ショウガ。

●「作品容量」を指定すると「伏線」などが使いやすい。


●〈シナリオ構成〉には以下のものを書こう。

 「時間軸上における具体的なシナリオの流れ」。

 「シナリオが生み出す感情」。

●この〈シナリオ構成〉は「最終的に読者が理解して

 感動や共感などの感情を受け取ってほしい物語の簡易版」である。

●〈シナリオ構成〉で書くシナリオは「骨格ストーリー」を使うとよい。

 ついでに「骨格ストーリーに設定も付属させる」ことをする。

 これで大まかな「ユーザーに与えたい感情」を確認する。


●〈描写方針〉では「シナリオをどのようにユーザーへ理解させるか」を書く

●まずは「全体=②→①→②→③」などとシナリオを描写する順番を書く。

 ここで「相性の悪いシナリオの描写の流れ」がないかをチェックする。

●次に「細かい描写方法やシナリオ構成の制限など」を簡単に書く。

 例:「伏線」「どんでん返し」「不足描写」など

●〈描写方針〉を書く際に文章だけでは抽象的すぎる場合は

 「サンプル」を作ろう。


●〈キャラクター設定〉と〈世界観設定〉は

 「ユーザーに与えたい感情を作るために必要な設定」を書こう。

●キャラクターや世界観は重要度で線引きしよう。

 例としてこんな感じをオススメする。

 【シナリオ①=異世界で勇者が魔王を倒す話】

  ・メインキャラ=勇者、魔王。

  ・サブキャラ =王女

  ・世界観   =異世界

●「設定」は「基本設定」と「改変設定」を混ぜたものを書こう。

 そうして「シナリオの始めから終わりまでのもの」を簡単に書く。


●〈作品名候補〉と〈広告あらすじ〉では「タイトルを考える」

 「なろうなどに記載するあらすじを考える」ことを行なう。

●「作品名」は「名詞系」「文章系」「名詞と文章の複合系」に分けることができる


●「名詞系」は「覚えやすくてイメージを結び付けやすい」という長所がある。

 短所は「初見で作品名だけを見ても中身がまったく推測できない」こと。

●「文章系」は「シナリオの内容や利益となる感情を推測しやすい」

 という長所がある。短所は「覚えにくい、思い出しにくい」こと。

●「複合系」は「名詞系+文章系」が代表例。

 良いとこ取りになるものもあれば悪いとこ取りになることもある。注意。


●〈広告あらすじ〉は「テレビや動画に差し込まれるCMと同じ存在」である。

 以下の注意を払って作成するべきと考えられる。

 ①ユーザーの資質を意識する

 ②可能な限り短くする

 ③シナリオのジャンルを詳細かつ単純に説明する

 ④作品に含まれている感情の質をアピールする

 ⑤何らかのイメージを植え付ける


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