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講義①と『ストーリー』と『シナリオ』の関係

 改稿を終えました。

 講義①は前回の第①話と第③話を統合したものになります。

 

 ……想像はしていましたが、この講義①は長い。長すぎる。

 前編後編とわけようかとも考えましたが、関係しまくるのでわけるのに抵抗感が強かったので長いのを覚悟して書きました。


 もうどうにでもな~れ♪


 講義①の前にちょっとした前提を説明します。

 本編でよく使う『創作者』と『ユーザー』についてです。


 ここでいう『創作者』は主に「小説やマンガの作者」や「アニメや映画の監督」といった娯楽作品を作った人を指します。厳密に言えば「作品の物語部分とその演出部分を決定した人」という定義になるかと思います。


 次に『ユーザー』についてです。『ユーザー』は「作品を理解して楽しむ消費者」です。主に「小説やマンガの読者」「アニメや映画の視聴者」といった人たちのことです。




 それでは講義①を始めます。


 講義①では筆者の創作論の『ストーリー』と『シナリオ』の違いについて書きます。またそれらに深く関係する〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉と〈骨格ストーリー〉について書いて、講義①を終了とさせていただきます。


 なお、後書きでは講義①の内容を箇条書きで簡単に書いています。講義①を読む必要はないけど内容を簡単に確認したい場合に活用してください。




 まず『ストーリー』と〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉から説明します。


 『ストーリー』とは「物語の最小単位である」と筆者は考えています。例を上げるなら「勇者が魔王を倒す」といったものが『ストーリー』です。


 なぜこれが『ストーリー』であるのかというのは「〇というキャラクターが問題を起こし、△というキャラクターが問題に対処し、その結果が□である」という構造になっており、それがユーザーに単独の物語の「勇者が魔王を倒す」などとして受け入れてもらえるからです。


 この「勇者が魔王を倒す」を言い換えると「勇者が魔王に戦いを挑む(問題発生)。魔王がそれに抵抗する(問題対処)。そして魔王が倒される(結果)」というようにできます。こうすれば上記の構造になっていることがよくわかります。


 これをあえて不足させてみましょう。


 例えば「魔王が抵抗するが(問題対処)、魔王は倒される(結果)」という話であった場合、魔王を倒そうとするキャラクターが「勇者が挑む」「王様が軍勢を率いて挑む」「魔王の配下が裏切って挑む」「隕石が降ってきて魔王を殺そうとする」などユーザーの想像の数だけ『ストーリー』ができてしまいます。もちろん、「問題対処」や「結果」を不足させても同じようになります。


 それぞれが別の物語になっているのが理解できると思います。これでは単独の物語として認めることなんてとてもできないので、物語になっていない、つまり『ストーリー』が成立していないと言えるわけです。


 このような状態になると、ユーザー「評価ができない出来損ないの作品」として扱うしかありません。「物語がおかしい」「物語が破綻している」などの批判は、ユーザーがどこかでこういったことが起きていると創作者に伝えているのです。


 そのため私の創作論ではこの「勇者は魔王を倒して世界は平和になった」などを『ストーリー』としています。


 正確な定義は『ストーリー』=「キャラクターが問題を起こし、キャラクターが問題に対処し、その結果が生まれる」というものになります。


 筆者はこれを「1+1=2」という数式のようなものに置き換えることができると考えました。そうして生まれたのが〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉という式です。


 

Ⓣ=キャラクターが問題を起こす。

  Ⓣは英語のトラブルから。

Ⓢ=キャラクターが対処する。

  Ⓢは解決するという英語のソリューションから。

Ⓐ=結果が生まれる。結末、後日談などもここ。

  Ⓐは英語のアンサーから。



 注意点としてこの「キャラクター」は人物だけでなく地震、津波、時間といった現象も含まれます。例を上げましょう。



Ⓣ=地震が発生して建築物を破壊しようとする

Ⓢ=人々が避難をする。

Ⓐ=地震によって建築物が破壊されたが、人々は無事だった



 という感じです。文章にすると「地震が発生して建築物が破壊されたが、人々は避難をして無事だった」というものになります。


 またこのⒶですが「Ⓐ1=Ⓣ2」「Ⓐ1≒Ⓣ2」「Ⓐ1=Ⓢ2」「Ⓐ1≒Ⓢ2」というように「Ⓐを別のⓉやⓈに置き換えることが可能」です。


 例えば「勇者が魔王を倒して世界が平和になり、使命を終えた勇者は旅を始めた」という

『ストーリー』があったとしましょう。〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉ではこうなります。



Ⓣ1=勇者が魔王に戦いを挑む

Ⓢ1=魔王が勇者に抵抗する。

Ⓐ1=勇者が魔王を倒し、世界が平和になる。

   勇者は旅に出る。



 となります。次に別の『ストーリー』として「野良の魔物に頻繁に襲われている村の村長が旅をしていた勇者に助けを求め、勇者が魔物を倒して村が平和になる」を作ってみましょう。これにⒶ1を組み込むとこうなります。



Ⓣ2=村長が勇者に助けを求める

Ⓢ2=Ⓐ1から繋がっている。

   魔王を倒してから世界を旅していた勇者が村長の求めに応じる。

Ⓐ2=勇者が魔物を倒して村が平和になる。



 といった感じです。


 このような仕組みで書いていくとⒶをしっかり書いておけば『ストーリー』がどんどん繋がっていきます。これを利用して短編や長編などの小説といった作品が作られているわけです。


 この〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉の理論を使う際、ⓉⓈⒶのそれぞれに5W1H(人物、目的、方法、場所、理由、内容) を意識するようにしておくといいでしょう。


 念のために補足すると、このⓉとⓈを行なうキャラクターは「同じ『ストーリー』において同一人物でも構わない」ということに注意してください。

例としてこんなものがあります。


Ⓣ=編集が「なろう」でおもしろい作品を探している。

Ⓢ=編集が〈なろう〉で評価の高い作品を見つける。

Ⓐ=編集が上司と掛け合い、作品の作者へ

  書籍化の打診を行なう決定をする。



 と言った感じです。




 では次に移ります。

 次は『シナリオ』と〈骨格ストーリー〉についてです。


 まず筆者の創作論において『シナリオ』は以下のように定義があります。



「『シナリオ』は単独の『ストーリー』または複数の繋がった『ストーリー』であり、それらを創作者やユーザーが指定してまとめたものである」


「上記①に『キャラクター』『世界観』『描写』を加えることで小説やマンガなどの作品にしたものである」


「『シナリオ』と『シナリオ』を繋げるには『世界観』『キャラクター』が共通しており、その二つの『シナリオ』を繋げる『ストーリー』が必要である」


 

 といった感じです。重要単語の『キャラクター』『世界観』『描写』は講義②と講義③で詳しく扱うのであまり気にしないでください。


 では説明しましょう。


 まず①の『ストーリー』が単独であるというのは簡単です。短編で「勇者が魔王を倒す」という『ストーリー』を小説にしたものをイメージすればよいでしょう。


 この『ストーリー』に「勇者は緊張していた」とか「魔王城で勇者と魔王が向かい合う」という地の文を書いたり「よく来た勇者よ」「おまえはここで滅びるのだ、魔王!」といった会話文を描写したりして「勇者が魔王を倒す」という『ストーリー』を小説にすればよいのです。これで小説という『シナリオ』になります。


 では①の複数の『ストーリー』というのはなにか。


 先ほど〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉で説明した「Ⓐは別のⓉやⓈにすることができる」という理論を元に「繋がったストーリー」をいくつも作って小説にすればいいということです。


 では「私は【なろう】に小説を投稿した」という話を、複数の『ストーリー』で構成された『シナリオ』にしてみようと思います。


 まずいくつかの『ストーリー』を〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉で作ります。



Ⓣ1=私は完成した小説を「なろう」に投稿する。

Ⓢ1=「なろう」へ投稿する前に友人が私の作品を評価する。

Ⓐ1=友人の批判で修正を加えた私の小説が〈なろう〉に投稿される。

   読者から高評価を得た。


Ⓣ2=編集が「なろう」でおもしろい作品を探している。

Ⓢ2=Ⓐ1から繋がる。

   編集が〈なろう〉で評価の高い私の作品を見つける。

Ⓐ2=編集が上司と掛け合い、作品の作者へ

   書籍化の打診を行なう決定をする。


Ⓣ3=Ⓐ2から繋がる。

   編集が私にメールで書籍化を打診する。

Ⓢ3=私は書籍化した私の作品を想像する。

   書籍化しても売れないと判断し、断る決意をした。

Ⓐ3=編集は粘り強く交渉してきたが、私は

   書籍化の話を丁寧に断った。

   以後、私はアマチュア作家を続けている。



 ではこれを『シナリオ』にして書いてみましょう。



「私は完成した小説を〈なろう〉というサイトに投稿することにした。その際、友人に私の作品を評価してもらった。

 友人の批判を元に修正した私の作品は〈なろう〉の読者から高評価を得た。それに目を付けたある出版社の編集が書籍化の打診をしてきた。

 私は作品が書籍化された想像をしたが、どうしても売れるイメージができず、話を断ることにした。編集は粘り強く交渉してきたものの、私は書籍化の話を丁寧に断った。

 以後、私はアマチュア作家として活動している」



 となります。これが先ほどの①に含まれます。


 これにさらに会話文、詳細な地の文を加えれば小説という作品=『シナリオ』になります。これを映像などで表現すればアニメや映画という『シナリオ』になるわけです。これらが②になるというわけです。


 ではこれに繋がりがないとどうなるのか。


 繋がりのあるキャラクターを使ってまったく関係のない『ストーリー』を持ってきてみましょう。


 例えば「Ⓣ4=友人がサッカーで大怪我したので入院した。Ⓢ4=私はお見舞いのために病院を訪れた。Ⓐ4=私は彼に歓待された」という話を上記のどこかにそのまま入れてみてください。


 入れましたか?


 ものすごくどうでもいい『ストーリー』ですよね。


 どこにも繋がっていないわけだから「独立した無関係のお話」として読むしかないわけです。上記の「私は【なろう】に小説を投稿した」という話にはどこにも関わってないから上記の『シナリオ』に含まれないということです。


 ただし繋がっていれば一見すると無関係に見える『ストーリー』も『シナリオ』に含ませることができます。


 では上記の『ストーリー』に別のストーリーを追加して繋がりを持たせ、『シナリオ』に含ませてみましょう。


 追加する「ストーリー」はこれです。



Ⓣ5=Ⓐ4から繋がる。

   私を歓待した友人は以前に話した私の小説を読みたいと話す。

Ⓢ5=私は友人の要求に渋い顔をするが、

   慰めになるならと作品を渡す。

Ⓐ5=嬉しそうな友人は後日に評価を送ると言う。

   不安を抱えながら私は退室して帰宅する。

   Ⓢ1へ繋がる。



 そして「Ⓣ4+Ⓢ4=Ⓐ4」と「Ⓣ5+Ⓢ5=Ⓐ5」を「私は小説を投稿した話」に追加して「シナリオ」にします。



「私は完成した小説を【なろう】に投稿することにした。その小説は、サッカーで大怪我した友人を私がお見舞いに訪れた際に友人に渡して、評価をしてもらったものだ。

 友人の批判を元に修正した私の作品は【なろう】の読者から高評価を得た。それに目を付けたある出版社の編集が書籍化の打診をしてきた。

 私は作品が書籍化された想像をしたが、どうしても売れるイメージができず、話を断ることにした。編集は粘り強く交渉してきたものの、私は書籍化の話を丁寧に断った。

 以後、私はアマチュア作家として活動している」



 という『シナリオ』になります。


 もちろん「Ⓐを別のⓉやⓈにできる」というのは創作者しだいで無限に行なうことができます。そのため創作者が「この『シナリオ』はこの『ストーリー』を書ききって終わりです」と指定します。代表的な指定したシーンが「エンディング」などと呼ばれるものに該当しますね。


 またユーザーが指定するというのは長い『シナリオ』を「第一章は勇者が聖剣を手に入れるまでの話だな」などと勝手に区別することです。創作者が読みやすいように配慮している場合もあれば、ユーザーが読みやすいように勝手に『シナリオ』を別個のものとして扱う場合があるというだけです。


 では最後に③についてです。『シナリオ』同士が『ストーリー』で繋がっているのはなんとなくわかるかと思います。


 でも数年後とかを描いた作品の続編とかはどうなるの?

 特に『ストーリー』は書いてないよ?

 

 こういった感想を抱くと思います。

 これは「ドラゴンボール」を使って説明しましょう。


 「ドラゴンボール」というマンガは「大魔王編」「天下一武道会編」「ラディッツ編」といったように複数の『シナリオ』がまとめられた作品です。


 これが繋がりを持っているのは「共通したキャラクターと世界観」があるからです。そしてもう一つの要素に「シナリオとシナリオの間にそれを繋げているストーリーがある」から「ドラゴンボール」としてまとめられています。


 例えば「大魔王編」と直後の「大魔王ピッコロの息子であるピッコロが登場する天下一武道会編」は数年の時間が経過しています。


 この時間経過を〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉で表すと。



Ⓣ=時間(キャラクターとして扱う)が

  時間を数年ほど経過させる(問題発生)

Ⓢ=それぞれが修行や日常生活を行なう

Ⓐ=数年後の天下一武道会でみんなが再会する



 といった『ストーリー』が間に挟まれていると考えればいいのです。


 実際の描写では「孫くんったら大きくなっちゃって」といったブルマのセリフやナレーションの「大魔王を倒してから数年後」といった形で上記の『ストーリー』が描写されていたはずです。


 これで③を説明できたかと思います。


 ちなみにですが『ストーリー』を「物語」のように描写するか「セリフ」として描写するのかは創作者が決めることです。これは講義③あたりで詳しく扱うと思います。




 では最後に〈骨格ストーリー〉について説明します。

 〈骨格ストーリー〉にはこういった定義が含まれています。



「『シナリオ』は[複数の繋がったストーリー]である。そのため我々は複雑な『シナリオ』を強引にまとめて1つの『ストーリー』にすることができる。

 これを〈骨格ストーリー〉とする」


「創作者は『シナリオ』をすべて理解しているため最初から〈骨格ストーリー〉を作ることができる。

 ユーザーは小説やマンガを読むといった行為で[1つ1つのストーリーを理解]しながら『シナリオ』を理解していく。

 そのためユーザーの〈骨格ストーリー〉は『シナリオ』をすべて理解するまで変化を続けていく」



 ではまず①について。筆者の創作論では『シナリオ』=「繋がりのあるストーリー×N」と表記することができます。


 この繋がりがあるおかげでなんらかの〈骨格ストーリー〉を意図的に作ることができるわけです。

 例として以下の『ストーリー』を使って『シナリオ』を作ります。



Ⓣ1=勇者が魔王に戦いを挑む

Ⓢ1=魔王が勇者に抵抗する

Ⓐ1=勇者が魔王を倒し、世界が平和になる。

   Ⓣ2へ繋がる。


Ⓣ2=Ⓐ1から繋がる。

   平和になったので勇者が旅に出ようとする。

Ⓢ2=国王が功績に報いるため勇者を引き留める。

   貴族の地位と領地を与えようとする。

Ⓐ2=国王の熱意に押され、勇者は貴族となって

   国内に留まる。



 ではこれをちょっとした『シナリオ』にしてみます。



「勇者は魔王に戦いを挑み、魔王は勇者に抵抗した。その戦いは勇者の勝利となって幕を下ろし世界は平和になった。

 世界が平和になったので勇者は旅に出ようとした。しかし国王は功績に報いねばならないと勇者を引き留め、領地と貴族の地位を与えることにした。

 勇者は国王の熱意に押され、貴族となって国内に留まった」



 と言った感じになります。

 これを可能な限り短くまとめてください。一本の『ストーリー』として書けるようにしてみましょう。


 するとこういった『ストーリー』ができていると思います。「勇者が魔王を倒して貴族となる話」や「勇者が平和をもたらして貴族になる話」といったものなどです。これが〈骨格ストーリー〉です。


 なぜこういうことができるのかというと「ストーリーが繋がっているため、結末やその過程が決まっているから」です。我々は自然と「物語が不自然にならないように話を短くしよう」としているのです。


 この〈骨格ストーリー〉を〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉で分解すると。



骨Ⓣ=勇者が魔王に戦いを挑む

骨Ⓢ=魔王が勇者に抵抗する

骨Ⓐ=勇者が貴族になる



 といったようにできます。


 これを先ほどの「Ⓣ1+Ⓢ1=Ⓐ1」「Ⓣ2+Ⓢ2=Ⓐ2」を使ってどれがどのように繋がっているかを書くとこのようになります。



骨Ⓣ=勇者が魔王に戦いを挑む。

   Ⓣ1。

骨Ⓢ=魔王が勇者に抵抗する。

   Ⓢ1。

骨Ⓐ=勇者が貴族になる。

   Ⓐ2。

その他=「Ⓣ2+Ⓢ2=Ⓐ2」「Ⓐ1=Ⓣ2」



 といった感じです。全ての『ストーリー』が繋がっていることがわかります。

 念のために繋がった『ストーリー』を追加して改めて『シナリオ』を書いてみましょう。そしてそこから新しい〈骨格ストーリー〉を作ってみます。



Ⓣ1=Ⓐ4から繋がる。

   勇者が魔王に戦いを挑む

Ⓢ1=魔王が勇者に抵抗する

Ⓐ1=勇者が魔王を倒し、世界が平和になる。

   Ⓣ2へ繋がる。


Ⓣ2=Ⓐ1から繋がる。

   平和になったので勇者が旅に出ようとする。

Ⓢ2=国王が功績に報いるため勇者を引き留める。

   貴族の地位と領地を与えようとする。

Ⓐ2=国王の熱意に押され、勇者は貴族となって

   国内に留まる。


Ⓣ3=国王が魔王を倒すために強い戦士を勇者に任命する

Ⓢ3=強い戦士はそれを素直に拝命する。

Ⓐ3=勇者として魔王を倒すために旅立つ。

   Ⓣ4へ。


Ⓣ4=Ⓐ3から。

   勇者が魔王を倒すために聖剣を手に入れようと

   聖地に移動する。

Ⓢ4=それを察知した魔王が部下に勇者抹殺か

   聖剣を奪うための行動をさせる

Ⓐ4=勇者が魔王の部下を倒し、聖剣を手に入れる。

   聖剣を手に入れたので魔王のもとへ向かう。

   Ⓣ1へ。



 これを『シナリオ』にするとこうなります。



「国王は魔王を倒すために強い戦士を勇者に任命した。素直に拝命した勇者は魔王を倒すために旅に出た。

 その旅の途中、聖剣の情報を手に入れた勇者はそれを手に入れるために聖地へと向かう。その道中で魔王の部下が勇者を襲うがこれを撃退し、無事に聖剣を手に入れた。

 聖剣を手に入れた勇者は魔王に戦いを挑み、魔王は勇者に抵抗した。その戦いは勇者の勝利となって幕を下ろし世界は平和になった。

 世界が平和になったので勇者は旅に出ようとした。しかし国王は功績に報いねばならないと勇者を引き留め、領地と貴族の地位を与えることにした。

 勇者は国王の熱意に押され、貴族となって国内に留まった」



 という『シナリオ』になります。


 これを短くすると〈骨格ストーリー〉は「勇者が魔王を倒して貴族になる話」「聖剣を手に入れた勇者が魔王を倒して貴族になる話」「勇者が魔王討伐のための行動を起こし、魔王たちの妨害を乗り越え、最後は魔王を倒して貴族になる話」といったものができると思います。


 〈骨格ストーリー〉は『シナリオ』を「ストーリーのようにして強引に短くまとめたもの」とも言えます。そのためどの〈骨格ストーリー〉も正解であり、問題はありません。


 これを先ほどの〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉のように当てはめるとこうなります。「勇者が魔王討伐のための行動を起こし、魔王たちの妨害を乗り越え、最後は魔王を倒して貴族になる話」を使ってみます。



骨Ⓣ=勇者が魔王討伐のための行動を起こす

   Ⓣ1+Ⓣ4。

骨Ⓢ=魔王やその部下が勇者の妨害をする。

   Ⓢ1+Ⓢ4。

骨Ⓐ=勇者が貴族になる。

   Ⓐ2。

その他=「Ⓣ2+Ⓢ2=Ⓐ2」「Ⓐ1=Ⓣ2」

    「Ⓣ3+Ⓢ3=Ⓐ3」「Ⓐ3=Ⓣ4」「Ⓐ4=Ⓣ1」



 といった感じになります。全ての〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉が何らかのⓉⓈⒶに繋がっており、その最後は〈骨格ストーリー〉のⓉⓈⒶに繋がっています。


 ちなみにここに「繋がっていないストーリー」を入れた場合、〈骨格ストーリー〉に含めることができません。独立した無関係の『ストーリー』なので、あってもなくても『シナリオ』は成立するし〈骨格ストーリー〉も上記のようになります。先ほどの「高校生が自動車にひかれて死んだ話」を入れてみるといいでしょう。


 次に②です。



「創作者は『シナリオ』をすべて理解しているため最初から〈骨格ストーリー〉を作ることができる。

 ユーザーは小説やマンガを読むといった行為で[一つ一つのストーリー]を理解しながら『シナリオ』を理解していく。

 そのためユーザーの〈骨格ストーリー〉は『シナリオ』をすべて理解するまで変化を続けていく」



 これについてですが、創作者の場合は「自分がどういう『シナリオ』を作るかを決めてから会話文や地の文と言った描写を加えて作品にする」という過程を通って小説やマンガといった『シナリオ』を作ります。


 そのため創作者は作品が完成した時点、つまり最初から〈骨格ストーリー〉ができあがっているわけです。


 しかしユーザーは小説やマンガを読んでいき、そのすべてを読み終わってから『シナリオ』を理解します。その過程で少しずつ描写された『ストーリー』の順番に従って『シナリオ』を理解していくのです。


 数式で言うなら【「Ⓣ1+Ⓢ1=Ⓐ1」=『シナリオ』→「Ⓣ1+Ⓢ1=Ⓐ1」+「Ⓣ2+Ⓢ2=Ⓐ2」=『シナリオ』→……】というように理解していくわけです。


 そうなると読者の〈骨格ストーリー〉も「勇者が魔王を倒す話」→「勇者が魔王を倒して貴族になる話」→「勇者が魔王討伐のための行動を起こし、魔王たちの妨害を乗り越え、最後は魔王を倒して貴族になる話」というように〈骨格ストーリー〉を変化しつつ、『シナリオ』を理解していくことになります。


 もちろん最初に「勇者が魔王の部下を倒して聖剣を手に入れる話」が小説のプロローグであるなら、このプロローグが最初の〈骨格ストーリー〉となります。


 しかし最終的に創作者とユーザーは同じ『シナリオ』を理解するため、必然的に、同じかもしくは非常に似通った〈骨格ストーリー〉を持つことになるわけです。


 そのため同じ『シナリオ』を読んで創作者とユーザーがあまりにも異なる〈骨格ストーリー〉を抱いた場合はその『シナリオ』にはなんらかの欠陥があることになります。

 例を出すと。



創「勇者が魔王を倒して世界が平和になる話」

ユ「勇者が魔王に敗北したけど世界が平和になる話」

 ↓

「勇者が魔王を倒す話」で「勇者が敗北したと受け取られた描写がある」



 といった感じです。


 これがひどい場合は「シナリオとしてユーザーに認められない」といった状態になることもあります。


 またユーザーは『シナリオ』の全体を理解する前に、全体の〈骨格ストーリー〉を作ることがあります。どうやって作るのかと言うと作品の途中で「この続きはこうなるだろう」と予測して頭の中で簡単な仮の『シナリオ』を作るのです。


 これには理由があります。


 人間が情報を処理する際には「トップダウン(全体から部分)」か「ボトムアップ(部分から全体)」のどちらかの方法で物事を理解します。そして情報を処理して理解しやすいのは「トップダウン」です。


 例えば「10個のストーリーで作られたシナリオ」があるとします。その内の5番目に「国王が強い戦士を勇者に任命する」という『ストーリー』が含まれています。



 これを「勇者が魔王を倒す話かな? これはその5番目か」というように読んだ部分や推測を簡単にまとめながら理解する「トップダウン」の理解。


 そして「最初は強い戦士が魔物を倒す話。次が強い戦士の仲間が死ぬ話。次が幼馴染の……で、3つまとめてだいだい○○のような話? それで次が……」というように1つ1つを覚えながら理解していく「ボトムアップ」の理解。



 どちらがユーザーにとって負担が少ないのか。

 間違いなく前者が楽です。


 勝手に全体の〈骨格ストーリー〉をユーザーが作るのは楽に読みたいからです。テストのように間違いが許されない状況ではないのでなおさらでしょう。


 もちろんこれは全ての『シナリオ』では発生しません。先ほどのユーザーが「勇者が魔王を倒す話かな?」と全体を予測したのはそれと「似通った作品の知識と記憶があるため」です。

 

 これを逆手に取り、最終盤にようやく「勇者が国王を倒す」という〈骨格ストーリー〉を持たせて作品の『シナリオ』を理解させることで。ユーザーの意表を突き楽しませるといったことができます。おそらく「どんでん返し」といったものが該当しますね。


 ただしこれは「ユーザーに知識がないと成立しない」ものです。


 作品中で地の文や会話文で匂わせるなどして知識を与えるなら問題ないでしょう。しかし完全にユーザーの知識頼みで「その知識がないと楽しめない作品」になってしまった場合、読者層を狭めることに直結します。注意しましょう。


 わかりやすい代表的な例は「商業作品の二次創作作品」に多いと思います。

例を上げると「ドラゴンボールのヤムチャに現代人が憑依して作品のイベントを乗り越える」という作品とか。商業作品にもありますね。


 あれは簡単に言うと「ヤムチャがサイバイマンにやられるけどどうなるんだろう?」という感じで原作の『シナリオ』を〈骨格ストーリー〉にしつつ、それが変化する瞬間を楽しみにする娯楽作品です。


 そのため「楽しむには原作を読むのが前提」になっています。だから『シナリオ』は原作の描写を省くことが多いです。ユーザーの〈骨格ストーリー〉を変化させないと楽しめないからその部分を丁寧に描写します。名場面を描写しても変化していなかったら「それは原作で読んだ」となりユーザーは楽しめませんからね。


 なので「原作を読んでないユーザー」には楽しむのが難しい作品です。少し内容を見ただけであとは見向きもしないユーザーもいるでしょう。「原作を読まなくても大丈夫な作品」になっていれば上記に該当しないか、相応の配慮をして作られていると思います。




 以上で講義①は終了します。

 お疲れさまでした。




〇講義①『ストーリー』と『シナリオ』の関係まとめ〇

●『創作者』とは「娯楽作品を作った人」を指す。

 例:「小説やマンガの作者」「アニメや映画の監督」など

●「ユーザー」とは「作品を楽しむ消費者」を指す


●『ストーリー』とは「物語の最小単位」である

●『ストーリー』とは「キャラクターが問題を起こし、

 キャラクターが問題に対処し、その結果が生まれる」

 というものである。


●『ストーリー』のうち上記のいずれかが欠けたら

 それは『ストーリー』として成立しない。

●『ストーリー』が不成立であった場合、ユーザーは

「評価ができない出来損ないの作品」として扱うしかない。


●『ストーリー』は〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉という式で表現できる。

 Ⓣ=問題発生 Ⓢ問題への対処 Ⓐ=結果 

●ⓉやⓈを行なうキャラクターは人物だけでなく現象なども含まれる。

 例:地震、津波、時間など

●Ⓐは別のⓉやⓈに置き換えることができる。

 例:「Ⓐ1=Ⓣ2」「Ⓐ1≒Ⓣ2」など

●ⓉやⓈを行なうキャラクターは同一でも構わない。


●『シナリオ』は単独の『ストーリー』または

 複数の繋がった『ストーリー』であり、それらを

 創作者やユーザーが指定してまとめたものである。

●上記に『キャラクター』『世界観』『描写』を加えることで

 小説やマンガなどの作品にしたものも『シナリオ』である。

●『シナリオ』と『シナリオ』を繋げるには『世界観』『キャラクター』が

 共通しており、その二つの『シナリオ』を繋げる『ストーリー』が必要である

 例:ストーリー「数年の時間が経過する」

 →ナレーション「あれから数年が経過した」などで描写するなど


●『シナリオ』は「複数の繋がったストーリー」である。

 そのため我々は複雑な『シナリオ』を強引にまとめて1つの

 『ストーリー』にすることができる。

 これを〈骨格ストーリー〉とする。


●創作者は『シナリオ』をすべて理解しているため最初から

 〈骨格ストーリー〉を作ることができる。

 ユーザーは小説やマンガを読むといった行為で

 「1つ1つのストーリーを理解」しながら『シナリオ』を理解する。

 そのためユーザーの〈骨格ストーリー〉は『シナリオ』をすべて

 理解するまで変化を続けていく。


●〈骨格ストーリー〉を〈Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ〉で表すと『ストーリー』が

 繋がっているため、なにかしら繋がっている形になる

●同じ『シナリオ』を読んで〈骨格ストーリー〉を作った場合、

 最終的に創作者とユーザーの〈骨格ストーリー〉は同じものか、

 似通ったものになる。

 明らかに異なる場合はその『シナリオ』に欠陥がある。


●人間は情報を「トップダウン」で処理したほうが理解しやすい。

●上記の理由からユーザーは『シナリオ』を理解しやすくするため、

知識から仮の『ストーリー』や『シナリオ』を作ることがある。

●これにより作られたユーザーの〈骨格ストーリー〉は

 逆手にとって創作者の作品に生かすことができる。

 しかし時には読者層を狭めてしまうこともあるので注意。


〇内容の修正について〇

・2018/07/30・  

2回目の改稿を行ないました。

内容自体は変わっていません。

ただし講義①は2回目の①と④を統合しています。

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