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講義②「文章における描写」はユーザー層を意識せよ

 外伝編を投稿します。

 理由は単純、気分転換と練習で文章を書きたくなったからです。


 それから個人的な考えで「創作論をまとめるために書こう」「擬音についてムカムカした」「つまり擬音は俺には合わねえわ」などといった理由があったりします。


 では講義②を始めるとしますか。


 講義②は以下の四項目を論じようと思います。



「良い文章とは情報が含まれている文章である」

「しっかりした文章とは具体的な情報が含まれている文章である」

「読みやすい文章とはユーザーの負担が小さい文章のことである」

「文章はしっかりした文章と読みやすい文章のバランスが大切である」



 これらが今回のお題となります。


 これが創作論の何に関係するのかと言うと、小説を創作する際に関係します。ですからこれは「小説の描写に関するマイスターマインの思想」だと思ってください。だから鵜呑みにするのはくれぐれも注意しましょう。




 まずは一つ目のお題である「良い文章とは情報が含まれている文章である」を説明します。


 以前にも書いたと思うのですが、小説にしろマンガにしろ映画にしろ、描写をしなければユーザーには何も伝わりません。「これは素晴らしい物語だ!」と強調しながら白紙のコピー用紙を渡しても白紙のコピー用紙でしかないわけです。


 その中で小説は描写で文章を使用します。そうなるとユーザーに読んでもらうためには必然的に「しっかりした文章」「読みやすい文章」などのように「ユーザーにとって良い文章」が求められるわけです。


 じゃあ「それらってどういう基準で良い悪いが決まるわけ?」と思ってしまうわけです。それを可能な限り客観的に結論を出してみました。


 失敗している可能性があることも心に留めておいてください。


 まず文章とは「特定の情報を相手に伝えるための道具」のようなものです。ですから「情報を伝えられない文章とはただの文字の羅列であり、無意味なもの」となります。


 つまり「良い文章」とは「文章を書いた人の伝えたいことが、正確に情報として含まれているもの」が「良い文章」として評価されるのではないでしょうか。


 「駄文」などはもちろん逆です。「伝えたいことが伝わらない文章」「情報が含まれていない文章」などが該当するでしょう。


 小説で例えて考えるなら「伝えようとしてるのはわかるけど、読んでも読んでも主人公の年齢や性別がわからない」などが致命的だったりしますよね。伝わってないだもん。


 じゃあ「文章はどういった形が最適なのか?」という疑問も湧くと思います。これについての筆者の答えは単純です。


「伝えたい情報が読み手にしっかり伝われば、文章の形とかどうでもいい」


 というのが結論になります。


 まあ、これは当たり前ですよね。小説でも「地の文」「会話文」などはそれぞれの良さがあるわけですから、その時に伝えたい情報に合わせて考えていけばいいのです。


 良い文章を書くコツは色々あると思われます。その中でマイスターマインが考えた「これなら良い文章になるんじゃねえの?」というやり方を紹介してみます。


 実際にやってみましょう。


 まずは書きたいことの情報をまとめます。小説の文章なら「アイディア」「キャラクター」「世界観」など、文章を書くのに必要な情報をまとめるのです。箇条書きでまとめるのが簡単でしょう。


 こういった感じです。




【伝えたい情報】

〇時代は江戸時代とかそこらへんである。

〇石川政宗はやべー剣豪である。

〇政宗は用心棒で生計を立てる。

〇裏では辻斬りを行ない、人斬りを楽しんでいる。

〇辻斬りで斬った人数は九十九人。一〇〇人目を探している。




 といった感じです。

 これをユーザーに伝えるために、適当に小説の地の文っぽい文章を作ってみます。




【例文1:開始】


 戦国が終わり平和になった江戸の時代、とあるところに石川政宗という剣豪がいた。

 この男、表では用心棒で生計を立てている。その凄腕によって周囲にいる人間の信頼は厚く、常に依頼が舞い込むため生活に困ることがなかった。つまり、剣豪にとっては一つの理想的な日常を過ごしている。

 しかし政宗には悪癖があった。それは常習的に辻斬りを行なうことである。その目的は己の腕試しのためではない。純粋に人を斬ることがなによりも勝る彼の娯楽であった。

 そして薄暗い夜の入りかけで、政宗は一〇〇人目の獲物を探して人気のない場所をうろついている。


【例文1:終了】




 といった感じです。

 たぶん「伝えたい情報」は全て伝わっていると思います。


 このように文章を書く前には「伝えたいことを整理してから文章を書く」という作業を行なうといいでしょう。


 書いた文章を「きちんと情報を伝えている文章なのか?」と確認したいときは逆の作業をするとよいでしょう。書いた文章を読み、そこから情報を箇条書きにして並べます。


 このとき情報が一つも箇条書きにできないなら文章がおかしいですし、思ったものがない、あるいは足りないとなったら、その部分を補強するように文章を修正しましょう。そうすれば「きちんと情報が含まれている文章」になります。


 なお、これはあくまで「良い文章」について論じています。「キャラクターがありきたり」「演出がありきたり」などを改善するには別の技術が必要なことです。気をつけてください。




 次は二項目目の「しっかりした文章とは具体的な情報が含まれている文章である」について論じたいと思います。


 なお上記は筆者が「しっかりした文章」の定義でもあります。

 これを頭に入れておいてください。


 では始めましょう。


 よく誉め言葉として「しっかりした文章」や「読みやすい文章」などが使われますね。しかし、ある作品がレビューなどで褒められていたので期待していたのにがっかりした、なんてことはありませんか?


 例えば「しっかりした文章だけど難解な言葉が多くて読みにくい」「読みやすいけど基本的にスッカスカでおもしろくない文章」などといった感じです。


 どうしてユーザーごとにこんな感想の違いが生まれるのかというと、これは非常に単純な話で「ユーザーそれぞれの読解力や知識量が異なるから」ですね。


 それなら「最低レベルのユーザー」に合わせてしっかりした文章を書けばいいと安易に考えそうですが、これを行なうとだいたい「読みやすい文章」や「誰にでも伝わる文章」になるだけです。まず「しっかりした文章」にはなりません。


 理由は単純です。「最低レベルのユーザーに合わせる=誰にでも読める」は「使える表現が制限されている」ことに等しいからです。


 具体的で簡単な例を出しましょう。


 では「最低レベル=小学一年生」だとします。そして「伝えたい情報」として「幽霊に胸を掴まれ、凄まじい痛みが走った。危機感を感じてすぐにその場から逃げ去った」というものを伝えたいとします。


 するとこんな感じの文章が精一杯じゃないかなと筆者は考えるわけです。


【例文1:開始】


 ゆうれいにむねをつかまれた。そしたらむねがものすごくいたくなったの。とてもこわくなってはしったの。そしたらズボンがおしっこできもちわるくなってたの。


【例文1:終了】



 こんな感じですね。小学生一年生に伝えるわけですから漢字が使えません。使えたとしたらそれは上級レベルの賢い小学一年生であり、最低レベルのユーザーとはとても呼ぶことなどできません。


 これの特徴としては表現が曖昧なものであることです。例えば「ものすごくいたくなった」ですが、伝わるのは「ものすごく痛い」だけです。その痛みが「肉を抉られるような痛み」「チェーンソーで千切られるような痛み」などは伝わりませんよね。


 あるいは「どういった痛みなのか断定できない」わけですから「しっかりした」という表現からかけ離れていると言えます。


 では上記の「伝えたい情報」を今度は「しっかりした文章」で表現してみましょう。やり方は簡単です。「語彙を駆使して伝えたい情報をしっかり表現する」だけです。



【例文2:開始】


 幽霊に胸を掴まれた。そのドロドロした手が皮膚を通り抜けてくる。すると強烈な痛みが走った。まるで心臓を握り潰されているかのようだった。本能が告げてくる危機感に従い、無我夢中でその場から逃げ去った。


【例文2:終了】



 といった感じです。「例文1」よりは「しっかりした文章」ではないかと思います。


 例えば「痛み」の部分は「強烈な」「心臓を握り潰されるような」を具体的な表現として使ってみたりしました。「強烈な」というのは「痛みの中でも上位の痛みだよ」という表現でしかないので、自信がちょっとなかったりしますけど。


 まあ、こんな感じです。


 「例文1」よりは「しっかりした文章」として「伝えたい情報」を伝えることができたのではないかと思います。


 この「しっかりした文章」の特徴ですが、具体的な情報が含まれるおかげで「明確なイメージを抱ける」「伝えたい情報がより正確なものになる」というメリットが発生すると筆者は考えています。


 逆にデメリットは「難解になりがち」「長文になりやすい」などがあります。これは「ユーザーの負担が大きい」ことにも繋がっていきますね。


 もちろん程度はありますし、文章を作る際に「対象のユーザーが誰であるか」に気をつければある程度のデメリットの調整は可能です。


 例えば「最低レベルのユーザー」を「高校生」とするなら「例文2」の文章は「難解である」というデメリットを気にしなくていいでしょう。


 ではこの「しっかりした文章」を作るにはどうすればよいかを説明します。


 これは簡単です。作業で言えば「良い文章」を作る作業と同じです。文章を書く前に「伝えたい情報を整理する」作業を行なってから文章を書けばよいのです。


 具体的な例文として一項目目で使った「石川政宗」の例文を使ってみます。

 まずは書きたいことをまとめます。




【伝えたい情報】

〇時代は江戸時代とかそこらへんである。

〇石川政宗はやべー剣豪である。

〇政宗は用心棒で生計を立てる。

〇裏では辻斬りを行ない、人斬りを楽しんでいる。

〇辻斬りで斬った人数は九十九人。一〇〇人目を探している。




 こういった感じです。


 しかしこれでは「しっかりした文章」が書けるのか不安だ。そうなったときは「伝えたい情報を増やす」「伝えたい情報を具体的なものに改変する」などを行ないましょう。


 こんな感じです。




【伝えたい情報の改変の一例】

〇石川政宗はやべー剣豪である。

 ↓

〇死体蹴りする頭がおかしい剣豪である

〇生半可な剣客なら瞬殺できる強さの剣豪である




 といったように改変し「曖昧な情報を具体的な情報にする」ことを行ないます。こういったことを納得できるまで行なってから文章にするといいでしょう。


 というわけで納得いくまで「伝えたい情報」を改変し、文章にしてみたのがこちらです。ついでに会話文なども加えてちょっとしたお話にしてみました。


 作成した意図としては「最初の伝えたい情報が伝わればそれでよし」としています。


 もし練習に使おうと思うなら「最初の伝えたい情報を必ず伝えなければならない」というルールを守りつつ「しっかりした文章」を作ってみましょう。その際に筆者の「例文3」と比べてみるのもおもしろいかもしれません。


 では「例文3」を載せます。



【例文3】


「ぬ? 私に何用かな?」

「こんな場所じゃあ、誰の目にも入らない。大体察せるはずだ」

「っ!? おぬし、まさか石川政宗か!?」

「ほう? 俺も有名になったもんだな」

「暗がりで見間違えた噂かと思っておったが、まさか事実だったとは……」


 青年の武士が提灯を放り投げると、腰に下げた刀に手をかけ、いつでも抜刀できる姿勢に移った。

 武士がすぐさま警戒したのは、言葉を発した男の雰囲気に剣呑な色が映ったからである。

 江戸幕府が開いて月日がたち、太平の世になった日の本。そんな世の中でこのような色を放つ。それを行なう人物なぞ、武士には人斬りくらいしか思い当たるものがなかった。


「おいおい、震えてどうすんだよ。腕がナマクラになっちまうぞ?」

「……貴様、何故このようなことを? あの酒場にて評判のいい用心棒であろう? 金に困っていたように思えなかったが……」

「人斬りに金など求めやしねえ。特に一〇〇人目にそんな俗なもんはいらねえ。必要なのは斬り合いで生まれる命のやり取りだ」

「……狂人め」


 武士が刀を抜き正眼の構えを取る。一方、政宗はただゆったりと見ているだけだ。刀に手を添えることさえしていない。

 しかしおかしなことに武士の思考には、殺される、という認識だけが膨れていく。様子を伺うすり足を行なうが、それはまるで政宗に動かされるかのようであった。

 これが剣豪と称される人間が生み出す間合い、というものなのかもしれない。


「──いやあ!!」


 武士が気合と共に渾身の斬り下ろしを繰り出す。その技は人生の中でもっとも苛烈であり洗練されたものでもあった。

 それが虚しく空を斬り、返す刃が政宗の顔を狙おうとする。

 しかし腕を動かしても返す刃がいっこうに向かおうとしない。代わりに、両腕に痛烈な熱さが生まれた。両耳にカララという、刀が地面へ転がる音が聞こえてくる。


「人を斬ったことがない──実に惜しい腕だ」


 武士の膝が政宗のつぶやきと同時に地面へ落ちる。喉に強烈な熱さを感じる。それが思考を急速に奪った。そして、助けを呼ぶ、逃げる、大声を上げる、そういった行動を選ぶことができなくなってしまったのである。


「あの世で五〇人目に斬った爺さんに学びな。そっちでまた斬り合おうぜ──そうだな──」


 政宗が抜刀していた刀を収め軽薄な笑みを浮かべる。そこからやや思考に没頭したのだが、彼は続く言葉を発しなかった。

 代わりに、躯となった武士を軽く蹴りつける。

 それは石川政宗のみが掲げる、自分が斬り伏せた人間に対して行なう独自の作法による賞賛であった。その作法を終えて満足した笑みを浮かべると、彼は夜へ紛れるように歩き出した。


【例文3】




 あ、もちろん「石川政宗」は創作したキャラクターです。実在しません。

 以上で二項目目は終わりです。




 次は三項目目の「読みやすい文章とはユーザーの負担が小さい文章である」です。これは本編の描写構成などで書いたこととの重複が多いかもしれません。


 筆者の定義する「読みやすい文章」とは「情報を理解しやすい」「文章を読む際に文字数が少なくてすむ」などの「ユーザーに負担が少ない文章」を指します。


 色々なコツがありますが、正直、コツを一つ一つ解説するときりがないです。そのため筆者が勝手にそれらの中でもっとも重要なものをまとめてみました。

 それがこちらです。



【読みやすい文章のコツ】

〇文字数を可能なかぎり少なくする

〇一つの文章を長くしすぎてはならない

〇文章の構造は可能なかぎり単純なものにする

〇文章の表現はユーザーに適切なものを使う

〇誤読を避けるように文章を作る



 これらを意識して文章を作成すれば「読みやすい文章」を作ることができるでしょう。

 いちおう、それぞれを詳しく説明します。


 まず「文字数を可能なかぎり少なくする」と「一つの文章を長くしすぎてはならない」ですが、これは単純です。


 わかりやすい例としては「痛い」などのような「三文字ほどの単語を理解すること」と「二十万文字の小説を理解すること」の、はたしてどちらが理解するのが簡単かを考えてみましょう。当然ながら理解しやすさや負担の少なさは圧倒的に前者が優れています。


 これは文章でも当てはまることです。例えば「私は天才作家である」という情報を伝えたいとしましょう。わかりやすい文章はもちろん「私は天才作家です」などの短い文章になります。これを意図的に長くした一つの文章を作ってみます。


「私は誰もが天才的な文章を書けると認める文豪であり文章作成の神様であると自画自賛せざるを得ない天才作家である」


 いかがでしょう? 読みづらいですよね。


 たかが「私は天才作家である」という情報を伝えたいだけの文章として考えると、不必要な文字が多すぎるせいで「何度も読む」「文章の構造を考えさせられる」「不必要な情報を弾かなければいけない」などの手間暇をユーザーに強要させることになっています。


 つまり「文字数が多いため情報を整理しにくい」わけですね。おまけに「読む時間も長くなるので体力的にも辛くなる」わけです。


 そのため文字数は可能なかぎり少なくすると、整理しやすくなりますし、体力的にもやさしいものになり、ユーザーの負担が減少します。


 また「文章の構造は可能なかぎり単純なものにする」も「ユーザーに情報を簡単に整理させることを配慮しよう」という意味になります。


 先ほどの駄文の構造を単純にしてみます。


「誰もが私を天才的な文豪であると認めている。だから文章作成の神様だとつい自画自賛してしまう。天才作家だからしかたないね」


 こういった感じで文章を複数に分けて「私は○○である」「だから○○する」などの単純な文章にしましょう。


 すると駄文よりも「天才的な文豪」「天才作家である」などと個別の情報としてまとめやすくなり、ユーザーが整理しやすくなります。


 次に「文章の表現はユーザーに適切なものを使う」です。これは先ほどから何度も言っていますね。「ユーザー層に合う表現を使え」というだけです


 小学一年生に漢字をふんだんに使った表現は読めないのでダメです。そうさせることは小学一年生に国語辞典を引きながら文章を読めと言うようなものです。なんたる鬼畜の所業でしょうか。

 

 また、中学生や高校生に「ひらがなオンリーのみの文章」などもダメですね。例えば「あい」と言う言葉を使った際、それが「愛」「合い」「会い」「相」のどれなのかわからない状況が多発してしまいます。


 読みやすいようにそのユーザー層に気をつけた表現を行ないましょう。



 次の「誤読を避けるように文章を作る」は「間違った文章に解釈できないように文章を工夫しよう」というものです。


 例えば「最早僕は~」「当然私は~」といった冒頭の書き方がわかりやすいですね。


 漢字を開いて「もはや僕は~」にしたり、句読点を使って「当然、僕は~」にします。間違っても三文字熟語みたいな解釈をされないように配慮しましょう。


 誤読したら文章に含まれる情報が無くなる可能性もあります。注意しましょう。


 以上が「読みやすい文章」の基本的なコツとなります。


 実際に「読みやすい文章」を作りたいときの作業は「良い文章」を作る作業と同じです。ただし、その際には「ユーザーの負担になることを取り除いた文章を作ること」を心掛けましょう。


 上記の「読みやすい文章」の基本的なコツはもちろんですが、人間が文字を読むときの性質などにも注意するといいでしょう。


 いちおう、筆者が読んだ文章作成関係の心理学からまとめた、特に注意するべき人間の性質も書いておきます。参考になったら幸いです。




【まとめ・文章を読む際の特に注意するべき人間の性質】

〇文章を理解させるにはトップダウン(全体→部分)が優れている

〇一つの文章で理解できることは三つ程度

〇文章の中で特に注目してほしいことは

 「アイキャッチャー」を使う。

 アイキャッチャー=「」『』などで文字を挟む


〇文章は一文一義がいい。ただしやりすぎは逆にダメ。

〇一つの文章での長文は35~50文字までがよい。

 60文字以上は認識や処理が厳しくなる

〇チャンクは7つ程度がよい。

 「こう」『いった』〈も〉「の」がそれぞれチャンクです。

 漢字ひらがなカタカナ、これでもチャンクは発生している。


〇断定文、命令文、否定文は「強制的なイメージ」のおかげで

 記憶に残りやすい。

〇文章はなるべく肯定文が良い。

〇口語体のほうが基本的に読みやすい

〇段落は一つの大きな意味的な文章で分けよ




 こういったところですね。

 他にも色々とあるので、気になるものは調べてまとめるといいでしょう。




 では最後の4項目目である「文章はしっかりした文章と読みやすい文章のバランスが大切である」について語ります。


 これは筆者が考えた、小説などの創作物における文章に対する結論です。このことについて論じたいと思います。


 なぜ「しっかりした文章」と「読みやすい文章」のバランスが大切なのか。答えは簡単で「状況によって使い分けなければならないから」です。


 例えば転生系のファンタジー小説があるとしましょう。


 その主人公が「酒場」に寄ったとします。今後その「酒場」は登場しません。だから「酒場」について説明する際にあまりにも「しっかりした文章」で書いてしまうと、読む労力に対してまったく割に合わなかったりします。


 具体的に言うと「5ページのうち、4ページは酒場に関する説明。残りの一ページでゴロツキが絡んできて外で戦闘。以降、酒場の登場はなし」とかもう想像しただけで投げつけたくなる小説だな、と筆者は思うわけです。


 改善例を言うなら「酒がいっぱい置いてある。カウンターにはガラの悪いゴロツキや冒険者っぽい女性が酒を飲んでいる。繁盛しているのだろう」という描写だけにするなどがよろしいかもしれません。その後はしっかりストーリーを書いたほうがユーザーは嬉しいでしょう。


 逆に「読みやすい文章」より「しっかりした文章」で書いてくれた方が嬉しいのは「ストーリー」「主人公」「ヒロイン」などが代表だと思います。


 上記は設定や心情の詳しい情報があればあるほど嬉しいですよね。


 例えば上記で「主人公がごろつきに絡まれる」とありましたが、この主人公に対して「戦闘能力がまったくないが、知略が凄まじいので~」「武道を習っていたのでごろつきが素人だとすぐにわかった。特に顕著なのは歩き方~」などと、「しっかりとした文章」で細かく正確に情報を伝えてくれるとうれしいわけです。


 なぜなら「強い」というだけの「読みやすい文章」の説明より、上記のような「しっかりした文章」のほうが詳しく設定を理解できるからですね。


 その状態でストーリーを動かしてくれると、それはもう色々な感情が生み出されるのは間違いありません。「強い」だけだと「ふーん、勝って当然じゃん」という程度の感情しか生まれないでしょう。

 

 こういったように「重要でないことは読みやすい文章を重視する」「重要なことはしっかりした文章を重視する」などと書き分けることが、小説では大切なことなんじゃないかなと思います。


 ちなみに「バンバン!」「キンキンキン!」「カキーンカキーン!」などの擬音ですが、これはもう「読みやすい文章」の筆頭だと思います。


 「小説家になろう」の作品で、擬音で重要な戦闘シーンが描写されていたりしますよね。書籍化された作品にも「擬音のみで表現したと言わんばかりの戦闘シーン」が描写されている作品などがあります。


 あれがどうして小説家になろうで高評価されているのか筆者にはわかりませんでしたが、最近になってその原因の一つに気づきました。


 あれは創作者が「優秀ななろうユーザーにおんぶにだっこと全力で甘えている」からあんな描写をしているのだということです。


 どういうことかというと、なろうの作品を読む人はどういった思惑であれ「活字をいっぱい読みたい人」です。そうでなければなろうの作品を読まないでしょう。


 その「活字をいっぱい読みたい人」は「趣味が読書の人」「商業作品の偏ったカテゴリーに飽きてしまった人」「ノベルゲームをやりまくっている人」などと考えることができるのではないでしょうか。


 つまりなろうユーザーは「消費したことのある小説やマンガなどの創作物」という知識が「一般の人よりはるかに多い知識量になっている」と予測ができます。


 そうなると「バンバン!」「キンキンキン!」という表現だけでも「ああ、このセリフがあるからブ〇ックラ〇ーンみたいに銃を撃ちまくってるんだな」「ここでこういう会話、ということはブ〇ーチ系の戦闘シーンだな」などと言った感じで「自分の知識だけで必要な戦闘シーンを思い描くことができてしまう」のです。


 そうなっていると確かにユーザーにとって重要なことの比重が「ストーリーがどう動いたか、どう動くのか」「キャラクター魅力的か」などに傾きます。そこだけでも良ければ高評価は取れるかもしれないなと考えました。そうであるとすると、なろうに投稿するなら「しっかりした文章」は必要ないかもしれません。


 しかし、もしこの考察が正しいのなら悲しいことに、書籍化した作品の売り上げが爆死したというのは当然の結果である言わざるを得ません。


 なぜなら「書籍を買う人の全てがなろうユーザーというわけでない」のです。むしろ充分な売り上げを確保するには「なろうユーザーではない人」にも楽しめる作品にする必要があります。そうでないと購入者が少なすぎて書籍化してもゴミみたいな売り上げにしかならないでしょう。


 書籍化して売れている作家はそこをしっかりと理解して創作をしているのでしょう。


 ちなみにこの擬音ですが、用法容量を守れば効果的な技術として使えると思います。例文を使って説明してみようと思います。


 まずはこの「例文1」を読んでみてください。



【例文1:開始】

 

 キンキン! キンキンキン! カキーン! ガツン!


「ほう、ヒックスもやるようになったな」

「ああ痛そう……ビリーも鬼教官だねえ」


 訓練場で模擬戦をする二人を見ながら、女性たちはそれぞれに呟いた。


【例文1:終了】



 はい、このままだと駄文ですね。


 なぜならこの擬音で「ユーザーがなにを思い浮かべればいまいちはっきりしない」からですね。「キンキン!」は「剣がぶつかり合う音」「槍がぶつかり合う音」などどうとでも取れて曖昧です。他の擬音もそうです。このままだと読みやすいけど曖昧過ぎる表現になっているのです。


 なのでユーザーの知識量から来る想像力におんぶしたいのですが、そうしなくてもよい技術があります。


 単純な話です。「例文1」を読む前に「キンキン!=剣がぶつかりあう音」と理解させるような「前置きの文章をあらかじめ書いておけばいい」わけです。

 そのための「例文2」を用意しました。



【例文2:開始】


 ヒックスとビリーは訓練場で激しい模擬戦を行なっている。


「このぉ!」


 掛け声と同時にキンキン!──という音が鳴り響く。

 ヒックスとビリーの剣閃が重なったときに発生する音である。


「うわぁ!」


 ヒックスが驚愕すると同時にカキーン!──という甲高い音が鳴り響く。

 ビリーが剣で強くはじいたことで、ヒックスの態勢を崩したのだ。

 同時にビリーが踏み込み、ヒックスの顔へ拳を振り抜いた。

 その衝撃に耐え切れずにヒックスが地べたを転がっていく。


「立て、次のダンジョン攻略までの時間が足らねえからな」

「……ウイっす」


 フラフラしながらヒックスが立ち上がる。ガントレットの部分で殴られたからか、耳にはまだ聞こえてはいけない音が残っている気がした。

 しかしヒックスはそれを堪えて模擬戦をまた始める。

 次のダンジョン攻略は、冒険者ランクの昇級がかかっているからである。

 あとマーニャちゃんにかっこいいとこ見せたい、ヒックスは再び剣を握り締めた。


【例文2:終了】



 といった感じです。この「例文2」を読んでから「例文1」を読んでみましょう。

 いかがでしょう?


 このように「例文2」の情報がある状態で「例文1」を読むと、「剣で斬り合っている」などの具体的なイメージを作ることができると思います。


 このように「擬音のためにあらかじめ前置きの文章を描写しておく」と効果的に擬音を使うことができるのではないかと筆者は考えます。そしてこの使い方であれば、なろうユーザーでない人も擬音でしっかりしたイメージを持てるようになります。


 そういう注意点を考えておけば擬音というのは頼もしい「読みやすい文章」として扱うことができると言っていいでしょう。


 なお、筆者は擬音をうまく使える自信がないことを告白しておきます。正しいかわからないので使う場合は気をつけて使ってください。またこれ以外にも擬音を生かす技術はあるので、注意をお願いします。




 以上で講義②は終了です。


 この講義で「しっかりした文章」「読みやすい文章」の使い分けや、あるいは文章力向上のお役に立てれば幸いです。


 長い文章を読んでくださり、ありがとうございました。

 


【余談】

実は最後の擬音について語りたくてこの講義を書きました。


というのもですね、小説制作中に「かわいい猫」を描写しようと考えて、擬音を使ってみたんですよ。

これが少しも可愛くなかったんですよ。


なんでや! コミカルさとか表現するのに最適とかどっかの創作本で読んだ覚えがあるぞコラ! ムカつくから心の中でボールペンを投げ飛ばしてやる!


という勢いで書いたのが講義②だったのでした。

はあ~すっきりしました~。よしがんばろっと。



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