第二話
この小説はリレー形式で進んでいきます。
作者→ogaさん
俺の名前は竜崎狩斗。
先日、この会社に入社したばかりだが、ここはただの会社じゃない。
あの、モンスターハングリーを手がけている大手ゲームメーカーだ。
採用通知が来た時は、絶対に何かの手違いだろうと思ったが、相手の気が変わる前にと、その日に返事をした。
入社してから少したったある日、喫煙所で先輩にこんなことを言われた。
「お前、サファリパークとか行ったりする?」
俺は最初、親睦を深めるための、ただの誘いかと思った。
「サファリっすか? 全然行きますけど」
「んじゃ、明日この座標に行ってくれ」
先輩は胸ポケットから、一枚の紙を取り出して俺に差し出してきた。
その用紙には、謎の数値が書き記されていた。
「X3356、Y7723 ……何っすか、これ?」
「そこ、住所が無いんだわ。 とりあえず、身軽な服装で会社に来といてくれたらいいわ。 主任が案内してくれっからさ」
「はあ」
先輩はグリグリとタバコを灰皿に押しつけ、去り際に肩を叩いて出ていった。
「ま、頑張れよっ」
先輩に言われた通り、その日はスーツをやめて、ジャージ姿で会社に出社した。
「身軽って、学校で使ってたジャージくらいしか無かったんだけど……」
朝礼を受け、しばらく席に座っていると、主任がやって来た。
ちなみに名前は井上で、まだ未婚らしい。
「準備万端だね。 じゃあ、早速向かおうか」
「……はいっ!」
はい、といいつつ、どこに行くのか知らねーけど。
主任に連れられ、会社の駐車場にやって来ると、もう一人、女子が車の前に立っていた。
「……あ、えーと」
「初めまして、桜井美玲です」
「は、初めまして、竜崎狩斗です」
上下緑のジャージ姿。
何が何だか分からず、桜井さんを見て最初に思ったのは、俺と同じジャージ姿、ということだった。
3人で車に乗り込むと、主任の運転で都内を抜ける。
その間、俺は隣の桜井さんに小声で話しかけてみた。
「……あの」
何も知らないで来たのか? と思われてしまうだろうが、このモヤモヤをそのままにはしておけない。
「これからどこ行くんすかね?」
一瞬、訝しげな目で見られた気がしたが、ふっと目元が笑った。
「実は、私もよく知らなくて。 ただ、ちょっと面白そうじゃないですか?」
……いやいや。
何やらされんのか分からないし、正直、怖いだろ。
ただ、これからやらされるのがただの健康診断とかだったら、ビビってた自分がアホらしい。
ここは、桜井さんみたく楽観的な気持ちでいた方がいいのかも知れない。
「……車から降りて、ここからは船での移動になるけど、船酔いとか平気?」
車はいつの間にか墨田川沿いの駐車場に到着していた。
船なんて滅多に乗らないから、一瞬返事に困ったが、大丈夫です! といつもの軽い返事で答えた。
楽観的な気持ちでいるつもりだったが、いよいよ行き先が分からず、不安しかない。
(マジで、どこ行くんだよ……)
押し黙っていると、船は川を抜けて海へ。
そのままひたすら真っ直ぐ進む。
「良い天気ですね!」
桜井さんは船のふちに掴まって、海の地平線でも見ているようだ。
ボートに並走するように、白いカモメが飛んでいる。
「そろそろ島に到着する。 これから概要を説明するから、よく聞いてくれ」
のどかな光景から一変して、俺は目を疑った。
主任は肩に、黒光りした細長いものを担いでいる。
どっからどーみても……
そして、主任が放った言葉も、穏やかなものではなかった。
「今から君たちには、魔物の住む島でサバイバルをしてもらう!」