バンシーさん、こんにちは♪
7。
子供の柔らかく温かい脳ミソには、沢山の状況変化が不可欠だ…。
ねー?…何、話してるのー?
こうしてると、何故か…。
小さい頃、母親の尻にしがみ付いて買い物に同行していたのを思い出す…。
母親が、八百屋の親父やご近所さんと話し込んでいる間の堪らなさや気まずさ、そして…言い知れない疎外感というヤツだ…。
その上、キチンと挨拶しろとか…どんな無茶振りだ、とさえ思ったな…。
まあ。
子供には、ゆっくりご歓談やゆっくり解説動画は無理だという、哲学話だ。
入口から、真っ直ぐ食堂を通り抜けた正面に…。
小さいが、鬼髭生やした筋骨逞しいオッサンがいた。
…………あえて『ドワーフみたいな』という表現は使わない。
何か、大切な事実関係や前提条件とかが本格的に確定してしまいそうだから…。
それはともかく、オッサンだ。
銭湯の番台みたいな所に何故か陣取り、その厳ついオーラで来る客をいちいち威圧するのが担当職務なのだろう。
番台の左手奥の出入り口から、食器とかを洗う水音とタワシの擦過音…。
それと……。
「……♪♪…♪…♪♪…」
女性の鼻歌らしき声が聞こえてる。
それらをBGMに…。
ローテは、オッサンと話し込んでいる。
「………!?……!……………………!…」
………どうやら。
俺を何処かに連れて行きたいが為、その前に風呂に入れたいらしい。
まあ、今の俺の身なりから言うと、洗濯や洗浄というのが正しいだろうが…。
……む。
話が着いたようだ。
ローテはオッサンに、銅貨数枚を放ってから俺を担ぎ直し、番台右側の階段を上り始めた。
階段を上り終える際、オッサンと目があった気がした…。
ローテは左奥の部屋の前に来てから…。
………俺を落とした。
うむ。
そのままの意味でだ。
言い訳のしようもないほど、見も蓋もなく落とされた。
歩みが止まったと思った瞬間、気が付いたら廊下の木目がハッキリ見える距離たったから、背ける事も、恨み言を言う暇さえなく…顔面から落ちた。
落ちるしかなかった…。
目を閉じたかったが、俺には目蓋がなかった。
…なんか、居たたまれなかった。
時間にして…わずか2秒弱のダイブだったが、フリーフォールより怖かった…。
祈りも恨みも心構えもないまま、突然の暴虐に曝されるとヒトは、切なくなるのだと知った。
そんな…怒りだとか、悲しみだとか…伝えきれない色々な感情を、暴挙を行った当人にぶつけようと顔を上げた瞬間!
「ちょっと待ってて…」
そう、冷ややかに言い捨てて…暴君ローテ嬢はドアの向こう側に消えたのだった。