主人公は〈三田〉の名称を獲得した!
10。
…………………………………………。
…………認めます。
…………はいはい、認める事にしますよ。
………ええ、そうしますとも。
……え、何です?………………は?…三田?
…………そ、そう?
……なら、それで行くけど…。
「………………………………………」
…ユッサ…ユッサ。
…………………ぐはぁーーーー。
また逆さまですか、そうですか。
何かもうね…慣れたね。
えーと、状況整理からか…?
……………………………………………………。
まあ、思い出せるのは……いきなり、言語野か何かをヤられて…。
………………幽霊…?
あ、スターマか…の前で意識を失った、のか?
…………何か、夢を見た…気が。
………ん?…んん!……夢を、見た?
……………ミタ?
…………………………………三田?…………そう、三田!
三田だ!
俺の名前は三田だ!!
ひゃっはぉ~!うっし!
テンション上がって来たぁ~~!!
名前、ゲットだぜ!
すると…。
…ギュン!
…?!意識が……いや。
景色が加速して見えて…。
ググググ……
身体が、四分五裂しそうなほど縄が食い込んで?
ズドスッ!!
腹部に壊滅的打撃音、と。
「………うるさい」
と一喝したローテ嬢は、更に…。
「………名前」
………はい?
「…名前、思い出したの…?」と、聞いて来た。
おう!オイラ、三田ってんだ!
よろしくな、怪力!
ドボスン!!
天地が、揺れ…。
そして、踏まれた…。
…いや、踏み抜くような勢いで顔面を震脚された…。
…この女、中国武術の使い手か?!
戦士じゃなくて、カンフーマスターなの? ローテって…。
とにかく…。
相変わらず『希望』はないが、名前を…自らを規定する『記号』を獲得したのが嬉しすぎて、テンション戻すのを忘れてたな。
いや、失敗失敗。
「………ミタ、ねえ…」
怪訝そうに呟くローテ嬢。
だが…すぐに彼女は 俺=ヌイグルミット=三田を担ぎ直す。
遺憾ながらも…。
すでに定位置となりつつあるローテ嬢の尻…じゃなく、後背に回されて気付いたのだが…。
彼女は俺とは別に、もう一つ…外套の下に物を襷掛けで背負っていた。
……ギター?ウクレレ…じゃあないな。
…琴、でもない……………琵琶、か?近いのは…。
…………い……………………異世界なら…リュート、とか言ったかな?
…………………吟遊詩人が持ってるアレ、だよな…。
なんで、物理戦闘者が持ってるんだ…。
ギラリ…。
ローテは肩越しに獰猛な眼光を向けて来た…。
そして俺は、黙る。…黙らされる。
「……大体、いつ戦士だって言ったのよ」
憤慨されているご様子のローテ嬢。
確かに、仰られてないかと…。
「……なら、あ…アタシが、バードでもいいじゃない」
何故か赤面のローテ嬢。
……お、仰るとおり!
仰るとおりでござんすヨ、姐さん!
「………フン」
…やはり、バードなのか?!
だが…ここは突っ込みを入れるべき所ではないだろう。
これ以上、ブッ飛ばされてたら命に関わるし、話が進まない。
とにかく、色んな意味で分水嶺な感じがする!
だから俺、頑張れ!
頑張ってローテ嬢のフォロワーになれ!
ご機嫌を損なわせるな!
そうして何とか、ご機嫌取りに成功したのか。
俺を再度、担ぎ直すローテ嬢。
……しかし、本当に嫌そうな顔してるなローテ嬢は。
いっそ清々しいよ、ええ。
はいはい。
これが俺の異世界生活の予定調和。
いわゆる俺用の『お約束』というなのですよね?
分かった分かった…。
これが、この世界の流儀で俺の立ち位置。
独り言が うるさいから、腹に遠心力を利かせた膝蹴り一閃。
てのも、挨拶なんですよね?
…OKブラザー。いやシスターか?
とにかく承知したよ。
゛そ、そんなに卑屈にならなくても…また、ぶり返しますよ?゛
やあスターマ、元気か?相変わらず幽霊か?
俺は、後から宙に浮きながら付いてくる女魔術師の幽霊に挨拶した。
゛まあ元気ですけどね…幽霊ですけど…゛
そうか、それは何よりだ。
゛それはそうと……ふふ。゛
ん、何だ?
゛お二人は、仲がよろしいのですね?゛
……………………………はあ?
何言ってるんですかね、この幽霊女は!
見てなかったんですかね、あの!あの惨状を!
もう視力が悪いんじゃなくて、臨終と同時に目が腐ったんじゃないですかねスターマさん。
゛…うううう。そこまで言わなくても…゛
と、突然…ローテがまた、肩越しに話し掛けて来る。
「…あのさ。さっきから誰と…いえ、『何と』話してるの?アンタ…」
…………へ?
いや姐さん、ここに居る…スターマさんって女性が…。
「何処にいるのよ…女性なんて」
…!?




