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三叉路目

作者: サバチー

丁度街の中心に位置する公園で愛実(まなみ)半熊(はんくま)はベンチに座り語り合っていた。

「ありがとう、今日は楽しかったわ。」

「ううん、俺のほうが楽しかったよ。愛実みたいな可愛い子と久しぶりにデートした。」

「なにそれ。」

愛実は笑いながらも満更でも無い様子だった。

愛実と半熊はバイトの先輩と後輩。

先日、もうすぐバイトを辞めるという半熊に愛実から最後に一緒に食事に行かないかと誘ったのだった。

「じゃあ、もう遅い時間だしそろそろ帰ろうか。」

「そうね。」

「送っていくよ。」

「ありがとう。だけど私の家は遠いからここで別れましょう。」

「愛実がそう言うならそうするよ。また、ご飯一緒に行こうね。」

そんな言葉をかわし二人はそれぞれ帰路についた。

帰りの地下鉄に乗るため愛実が園内を歩きながら、今日の楽しかった食事のことを思い返す。

半熊のことをただ仲の良い先輩と考えていた愛実だったが、食事をしながら会話をするとその印象もより深まってくる。

彼のことをもう少しだけ知りたいな、と愛実は思った。

と、思いを馳せながら駅に向かっていると、懐かしい顔に出会った。

尾羽(おはね)さん!お久しぶりです。」

「ん?おー、愛実ちゃんか。久し振りだね。」

尾羽とは半年ほど前に人気アーティストのコンサートで知り合った。

最初はアーティストの話題で盛り上がっていたが、そのうち恋愛の話や将来の話をするうちに連絡先を交換し、偶に会うようになった。

尾羽と言う男は人に好かれやすく、それでいてどこか飄々としていて、人のことを見透かしたような事を言う不思議で魅力的な人間だった。

「こんな遅くにどうしたの?」

「バイト先の先輩と食事をしていて、今帰りです。」

「なるほど、男だな。それも年上。」

尾羽はいつもの様に言い当てた。

「愛実ちゃんも年頃だからね、男と遊ぶななんて言わなけど君は悪い大人に騙されちゃうタイプだから。ま、ほどほどにね~。」

「やめてくださいよ。先輩はそんな人じゃありませんから大丈夫ですよ。」

愛実は反論しながらも尾羽の言葉に妙な説得力を感じていた。

「ま、暇あったら今度は俺ともご飯行きましょうや。俺も駅向かってるからそこまで送ってくよ。」

そして二人は食事の約束をして各々別の電車に乗り帰っていった。


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それから三ヶ月ほどたったある日、愛実と尾羽はレストランで話していた。

あれから二人は既に三回一緒に遊びに行っていた。

二人の仲は急速に縮まり、愛実は尾羽の全てを欲していた。

しかし、頭のなかでは半熊のことがチラチラと浮かぶ。

彼は結局バイトも辞めることはなく、アプローチは日々深まっていくばかりだった。

対して尾羽も愛実の全てを知りたいと思っていた。

彼女の全てを見透かした態度でいる尾羽も、何もせずに愛実の全てを知ることなんて到底不可能なのだ。

そろそろ時間も深まり、店を出て帰り支度をしようかというとき、尾羽の方が切り出した。

「愛実ちゃん、大切な話がある。」

しかし、愛実はその話を聞く覚悟がまだなかったようで、その言葉を遮る。

「ちょちょちょ、ちょっと待って下さい!まだ早いですよ!」

「…」

それを聞いて尾羽は押し黙った。

断られる可能性は低いと考えていたからだ。

「その気持ちはすごく嬉しいです。そして私も尾羽さんのこと、好きです。だけどもうちょっと待って下さい。私は尾羽さんのことが好きだから。だからこそもっと深く知ってからお付き合いしたいんです。」

その言葉に他意はない。

尾羽はそう信じることにした。

彼女の後ろに見える半熊のことをすっと胸の中にしまい込みながら。

「わかったよ。ここで付き合えても、断られても、俺が愛実ちゃんのことを好きだっていうのは変わりないから。いつまでも待ってられるよ。だからこれからももっと仲良くしてお互いのことちゃんと知っていこう。」

「わかりました、ありがとうございます。そしてごめんなさい、すぐに気持ちに答えられなくて。これからも仲良くしていきましょう。」

そう言った二人に陰惨な雰囲気はなくむしろ清々しい空気さえ流れていた。


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更に二ヶ月が経過した。

あれから愛実と尾羽の連絡は減っていた。

所謂ところの好き避けだと尾羽は考えていたが、勿論その奥に鳴りを潜めている事実も心の底では見抜いていた。

そんな尾羽の元に愛実からの連絡が届いた。

『色々悩んで半熊さんと付き合うことに決めました。尾羽さんごめんなさい、私は尾羽さんの気持ちを踏みにじって本当にひどいことをしました。許してください。』

そのメッセージを読んだ尾羽に動揺の色は決してなかった。

あの食事の後から、愛実が時折見せる態度でこうなることは予想済みだったからだ。

『おめでとう、愛実ちゃん。謝ることなんて全然ないよ。自分が本当に好きな人と付き合うのが一番幸せだからね。俺のことは気にしないで大丈夫。けどたまには遊んでくれよな~。』

尾羽は努めて明るく返信する。

尾羽は愛実の話や様子を窺い、半熊がろくでもない男だということを知っていた。

我儘で傲慢、尊大で金遣いも荒くケチで大人になりきれないような男。

さる日の公園で尾羽が愛実に注意を促したまんまの姿の男に愛実を幸せにすることなんてできない。

そのことをわかったうえでこのような返信をしたのだった。


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愛実は罪悪感に苛まされていた。

尾羽は自分のことは心配するな、幸せになれと言ってくれたが、その言葉が余計に愛実の胸にチクチクと突き刺さった。

明らかに尾羽の方が半熊に比べいいところも沢山あり、魅力もあり、愛実のことを第一に考えてくれた。

それなのに愛実は尾羽のことを裏切って結局半熊のところへ行ってしまったのだ。

しかし、それには愛実なりの理由があった。

半熊のアプローチは病的で、付き合ってくれなければ死ぬとまで言い出したのだ。

この人は私が居なければきっとダメになってしまうんだ。

そう考えた愛実は半熊と付き合うことを決心した。

しかし、愛実は知っていたのだ。

半熊にはつい先日まで恋人がいた事、まだその女性のことが好きなこと、愛実は単なる穴埋めに過ぎないということを。

そんな事実もあり、愛実は半熊に対する猜疑心と尾羽に対する罪悪感から再び尾羽と親しい付き合いをするようになっていくのだった。


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それから再び数ヶ月の時が流れた。

愛実と尾羽が未だに半熊の目を盗み逢瀬をしていることに半熊は腹を立てていた。

愛実は俺の女だ。俺以外の男が愛実と会っていいわけがない。

半熊は本気でそう考えていた。

自分だけがこんな目に会うくらいなら死んだほうがマシだ。

狂気とも思える感情を孕んだ半熊は本気でそう考えていた。

そしてどうやら今日も愛実は尾羽は会っているようだ。

今日という今日はと思った彼は愛実に連絡することにした。

半熊は早速電話を手に取り、もう手に馴染んだ連絡先を押す。

だが愛実は電話に出なかった。

恐らくまだ尾羽と会話を楽しんでいるのだろう。

そのことにより腹を立て、半熊は立て続けに電話をかけた。

何十回も、何百回も。

結局愛実が電話に応えたのは深夜12時を過ぎてからだった。

「…何?」

「何じゃないだろ。お前が何してたんだよ。」

「今日は友だちと会うって言ったでしょ。」

「どうせ尾羽だろ。お前いい加減にしろよ。お前は俺の女なんだ。そんな男ともう二度と会うんじゃねぇよ。」

「私の勝手でしょ?それに尾羽さんは別にそういうのじゃなくて、仲の良い友達というか、尊敬している人だから。」

「そんなの関係ない。いつお前がそいつと浮気するとも限らないだろ。昔であろうとお前に告白してきた男とホイホイ遊ぶお前もお前だよ。いいか、金輪際尾羽とは連絡取るな。そうすればなんだってやってやるから。」

「どうしてそこまで言われなきゃならないの?私は貴方の彼女かもしれないけど所有物じゃない。」

「だったらもう死ぬ。」

「………わかった、わかったから。もう尾羽さんとは連絡しないから。だから死ぬなんて言わないでよ。」

そんな半熊の身勝手な意見を愛実は受け入れ、約束してしまった。

もう尾羽とは連絡を取れない。

会うことも出来ない。

愛実と仲良くしたい尾羽、愛実と交際している半熊。

この二つに板挟みされては仕方のないことなのだと愛実は自分に言い聞かせた。


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『尾羽さん、もう会うのは今日で最後にしましょう。連絡も今日で終わり。やっぱり私、このままじゃ半熊さんに申し訳ないです。尾羽さんのこと嫌いになったわけじゃありませんが、このままズルズル続けていても良くないと思うんです。』

愛実は遂に尾羽に別れのメッセージを送ってしまった。

きっとこれが一番いいんだ。

半熊と自分二人で仲良くしていくのが二人にとって本当の幸せなんだ。

そう自分に言い聞かせる。

そうしている間に早速尾羽から返事が来た。

『愛実ちゃん、ちょっと待ってよ。こんなの俺はおかしいと思う。もしかしたら世間一般から言わせれば浮気なんてことになるのかもしれない。けどきっと、哀しいけど、愛実ちゃんはそういう目で俺のと見ていないと思う。今後そういった関係にならないのであれば、半熊じゃ支えられない部分を俺が支えてあげられる。もしそういった関係になってしまうんだったら愛実ちゃんのことを踏みにじるアイツがおかしいと思うし。土壇場になって情けないこと言っているかもしれないけど、もう一度考えなおしてみて欲しい。』

事実、尾羽は相当焦っていた。

交際を断られることは視野に入っていても、今後一切の関係を断つと言われるなど露とも思っていなかったのだ。

対して愛実もこのメッセージに目を通し心が揺れていた。

尾羽のいうことは正しいと愛実自信も感じるし、こんな状況になっても尾羽は愛実のことを考えていてくれたのだ。

だが愛実はもう決心していた。

きっと何があろうと半熊は認めてくれないだろうし、何があっても半熊は自分から離れてくれないだろう。

ならば、お互いがつらい思いをするならば、きっと納得してくれる尾羽と別れを告げ、私のような汚れている女ではない別のいい人と幸せになるべきなのだ。

このような問答を続けているうちに、愛実の決心が揺れ動かない間にきっぱりサヨナラをしてしまおうと愛実は考えた。

『ううん、もういいんだ。尾羽さんにはきっと私より素敵な人が居ます。だからもうお話できません。サヨウナラ』

愛実はそうメッセージをうち、尾羽の連絡先をブロックした。


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愛実は尾羽に別れを告げたことを半熊に教えると、失意のうちに眠りについた。

そして翌朝、携帯をチェックすると、尾羽らしき人物からメールが届いているのを見つけた。

SNSアプリをブロックしても、メールのことを忘れていたのだった。

そのメールにはこう書いてあった。

『もう連絡はとらないということだったので、最後にこちらからもお別れの挨拶をさせてください。今までありがとう、そしてごめんなさい。いつか愛実ちゃんは俺に謝ってくれたけど、きっと一番つらい思いをしてたくさん悩んだのは愛実ちゃん自身だったんだと思います。だから、いままでそんな思いをして俺と遊んだり話してくれたりしてありがとう。絶対に幸せになってください。俺が出来なかったこと、いっぱいしてもらってください。どうか俺のことは忘れて精一杯楽しんでください。愛実ちゃんはバカで気が弱いから遠慮しがちだと思うけど、嫌なことをされたらちゃんと意思表示をしてください。これが俺からの最後のメッセージです。もうお別れだけど、きっと俺は愛実ちゃんのことがずっと好きです。それではサヨウナラ、世界で一番大好きだった人。』

バカバカしい。

ロマンチックすぎて歯が浮く。

やっぱり最後まで私のことを考えてくれていた。

そのメッセージを見た途端、愛実はとてつもなく尾羽のことが愛しくなった。

一体この人は何を考えているのか。

どうしてここまで私の為を思ってくれるのか。

どうしてこんなにひどいことをしてきたのにそれでも私を愛してくれているのか。

だから嫌だったんだ、と愛実は思った。

こういうことを言ってくるのがわかっていたから、知っていたから、だから返事も聞かずにブロックしたのだ。

なのに尾羽はどうにか連絡手段を考えて、向こうからも最後であると言ってくれて、それでいてメッセージを送ってくれた。

愛実は遂に耐えかねなくなってSNSのブロックを解除し、ついつい尾羽に返事のメッセージを送ってしまった。

『だから嫌なんですよ、尾羽さん。ごめんなさい、都合がいいですけど、やっぱり最後なんて嫌です。』


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また、二人は連絡と逢瀬を繰り返すようになっていた。

愛実は自分はひどい女だと理解しつも、それを受け止めてくれる尾羽のことが愛しかった。

尾羽もまた、元来変わった性である自分を受け止めてくれる愛実のことを知りたいという気持ちは変わっていなかった。

しかし、やはりそんなことは半熊が許すわけがなかった。

病的な愛情を持つ彼の嗅覚は凄まじいもので、二人がまた親しくしているということをなんとなくではあるが嗅ぎつけていた。

愛実は尾羽に会い、そして半熊に怒鳴られ批判されるうちに、自分はどちらを選ぶべきなのか、どうすることが正解なのかわからなくなっていった。

そうして愛実は尾羽に相談することにした。

当人たちのことを当人に相談するのはフェアではないかもしれないが、尾羽ならきっと自分にとって一番いい選択を選んでくれると思ったからだ。

しかし尾羽はその選択肢を選んでくれることはなかった。

「俺か半熊か。二つの道に揺れることなんて決して無いんだよ。それを決めるのは愛実ちゃん自身。俺か半熊かではなく愛実ちゃんが考えた、愛実ちゃんが作った三つ目の道こそが愛実ちゃんが選ぶ道なんだよ。」

その言葉を聞いた愛実は一瞬戸惑い、考え、そしてすぐに全てを悟った表情になった。

そうか、これが真の意味での尾羽の愛情なのだ、と。

それに対して私も真の意味での愛情で応えるの道理なのだ、と。

真の愛情をくれる尾羽にこそ真の愛情で接し、異常ながらも偽りの愛情しかくれない半熊にはその通り応えるのが一番の、そして三本目の道なのだと。


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「半熊さん、いままでごめんなさい。私もう悩まないから。これで本当に尾羽さんとは最後にする。」

「そう言っていつも最後じゃないじゃねぇか、信用できるかよ。」

「本当、本当に最後。けどその代わり、いつだったか何だってするって言っていたよね。一つだけお願いしたいことがあるの。」

「何だよ。」

「あの人を、尾羽さんを殺して、それで私の目の前に連れて来てほしいの。」

「お前何言ってんだよ!?正気じゃないぞ!それに俺だって捕まっちまう!」

「ううん、私は正気。だって愛に応えるにはこれしかないんだもの。出来ないのなら私は貴方と別れて尾羽さんのところに行く。私を愛しているなら尾羽さんを殺して。」

そのような愛実の狂気に満ちた台詞に半熊は戦慄した。

いくら愛実と同じく狂気をもった半熊でもその願いを聞き入れるには躊躇いがあった。

しかし、尾羽に対する積年の恨み、そして愛実を今度こそ自分のものにできると言う高揚感から遂に半熊はその願いを承諾してしまっていた。

「わかったよ、愛実。アイツが死ねば今度こそお前は俺のものだ。尾羽を殺してお前の前に連れてくる。」

「ありがとう、半熊さん。愛しているわ。」


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ちょうど街の中心に位置する公園。

人気がなくなるのを待ち構えていた半熊は尾羽の首に縄をかけ締め付けていた。

苦しそうな声で尾羽が言う。

「アンタが半熊だな。これは、アンタが考えたことか?」

「ち、違うよ馬鹿野郎。愛実がお前に死んで欲しいとさ!」

「ふふ、そういうことか。ありがとう、愛実ちゃん。幸せに生きろよ。」

尾羽は死の直前まで全てを見透かしたような態度を崩さなかった。

そして微笑みのまま息を引き取った。

人を殺したという背徳感からの興奮か、自身まで息が上がっている半熊はその遺体を自分の車の中に運び込んだ。

遺体と半熊を乗せた車はやがて愛実が待つ家に辿り着いた。

半熊はもう息のない尾羽を担ぎ、そしてその身体を愛実の下へ持って行った。

「半熊さん、ありがとう。本当に尾羽さんを殺してくれたのね。これで私は本当に貴方だけのものよ。愛しているわ。」

その一言に半熊は大いに満足した。

これで愛実は自分だけのものだ。

それだけで人を殺めた価値がある、と思った。

「でもごめんなさい。最後に一回だけ尾羽さんとお別れをしたいの。だから、ちょっとだけ二人きりにさせてくれないかな。」

「…わかった。これで最後だ。愛しているぞ、愛実。」

そう言い、半熊は部屋から出て行く。

愛実は半熊が完全に出て行ったことを確認するとニッコリと微笑み、愛しそうな目で尾羽のことを見つめて彼のことを抱きしめた。

「ごめんなさい、ありがとう、尾羽さん。」

愛実は目を細め、尾羽の項垂れた頭を起こし、そして優しく、まるでサロメのようにキスをした。

「これが貴方の教えてくれた三叉路目の道。死んでしまった貴方はずっと私のものよ。」


いつ頃の事だっただろうか

オスカー・ワイルドの「サロメ」に深い衝撃を受けた

椎名林檎も言っていたが幼い、めちゃくちゃな愛情が行き着く先は相手が死ぬことにゴールがある

相手の死を持って相手のすべてを自分だけのものにするんだ

サロメは誰もが羨む美少女で、当時16歳

だが預言者である洗礼者ヨハネだけは彼女を罵倒する

その決して自分の手中には落ちないヨハネにサロメは恋してしまう

そして自分の力では自分のものにならないのなら、そのヨハネを殺してしまおうとサロメは考える

そして自分の命で処刑されたヨハネの首をサロメはそっと受け取り優しくキスをする

人の生き死にによって感情を揺さぶられてしまう人間だからこそそこに美しさを感じる

サロメの物語は遡ることオスカー・ワイルドの原作を超え、まだキリストが生きている2000年ほど前の話だ

そんな大昔のことでさえ、道徳観、倫理観が整備された現代社会に通ずるものがある気がしてならない

そこでサロメの物語に自分自身の失恋談を加え現代風にアレンジして脚色したのがこの三叉路目だ

愛実のモデルはサロメと恥ずかしながら僕が恋していた女性がモデル

尾羽は洗礼者ヨハネ、そして自分自身がモデル

半熊はヘロデ、死刑執行人、そして僕の恋敵であった男性がモデルだ

一見半熊だけが自分勝手に見える作品であるが、その実、愛実、尾羽ともにやはりまたエゴに溢れた自分勝手な人間だ

ある人は愛実にコウモリのような酷い女だと印象を持つだろう

ある人は尾羽に愛する女に対する決断力もないショボい男だと印象を持つだろう

ある人は半熊に束縛が酷い悪い男だと印象を持つだろう

だけど、それこそが、それぞれが正しく間違った考えだといえる

当のユダヤ教ないしキリスト教的な自己犠牲を持ってして他者の幸せを願う、それとは正反対でそれでいて順であるという一見して矛盾しているかのような内容が現代社会を表すいいディティールになっていると僕自身は思う

だからこそ正直この作品を読んで何を受け取って欲しいとかは特に考えてはいない

読者が思ったことがありのままこの作品の真実だ

こんなの間違っていると思っても、これが正しい道だと思っても、へぇこんな考えの人がいるんだなと思ってもなんだっていい

大事なのは何かを感じるということだと思うから

さて、長々と話したがまったくもって中身の無い話となってしまった

簡単にまとめるとこれはエゴの物語だ

作品内容も、作者も、そして読者も、全てエゴ

そういった内容のつもりで僕は三叉路目を書き上げた

ちゃんとしたものを書くのは初めてだから随分稚拙な内容になってしまい不甲斐ない

しかし、この作品を読んでなにか感じてくれる人がいてくれたら嬉しい限りである

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