第三証人「白面絢爛九尾狐・万葉」
「ぬぉぉぉぉ……」
妾は倒れ伏し、モジモジと身じろぎしていた。
「ヤマト二ウムが、ヤマト二ウムが足りぬぅ……七影ぇ、今すぐ大和様を連れて参れぇ」
「無理です」
「この役立たずめぇ。はぁぁ、妾も区長という立場でなければ、大和様を探しに行けるんじゃが……この区長という座、苦労して手に入れたし、美味しいポジションだから手放すのはもったいない。でも大和さまぁ……はぁぁ」
ゴロゴロゴロゴロと転がり、妾は決意する。
「よし決めた。もう三日して大和様が来なかったら、区長の座を捨てて大和様を探しに行く」
「どうか、どうか自重じてください。万葉様」
「煩いぞ! 七尾風情が黙っておれ!」
「はっ……」
このままでは抜け殻になってしまう……
ああ大和様、大和さまぁ……
何故なのじゃ。
何故あんなバナナ野郎に封印を施してもらったんじゃ。
妾では駄目だったのか?
「……ぴこーん!!!!」
「!?」
狐耳を尖らせる。
七影は驚いているが、そんなことはどうでもいい。
くんくん、くんくんくん……
「大和様の匂いじゃあ……っ」
近くに、近くにいるのか……!!?
ええいこうしてはおれぬ!!
「七影!! 妾は少し出る!! 留守を頼んだぞ!!」
「万葉様!?」
妾は大急ぎで屋敷を出た。
逃がさぬぞ!! 大和様!!
◆◆
匂いのする場所は、琴音の場所だった。
まさか、琴音と一緒に……?
恨めしや。
琴音の奴、大和様を誘惑しおったのか?
許さぬ。
呪い殺してやる。
殺気を隠さず琴音の屋敷を目指していると、匂いの元は途中にあった。
「うう、ひっく……」
二尾のクソ餓鬼だった。
泣きじゃくっている。
こ奴から、大和様の匂いが濃厚に漂ってくる。
「おい、クソ餓鬼」
「万葉、様……?」
「お主、大和様の近くにいたじゃろう? 大和様とはどういう関係じゃ? 吐け。でないと貴様の尻尾を引きちぎる」
クソ餓鬼は震えながら、言った。
「大和パパは……!!」
「大和、ぱぱぁ……?」
ふ、ふふふ、ふ。
その黒髪、鋭い双眸。
少し面影があると思ったが、本当に……
「おいクソジャリ、詳細を吐け」
ふふふふふ。
大和様、あとであなた様からも詳しい話を、聞かせてもらうからのぅ。