プロローグ
さぁて、今日の大和さんは休日だ。
どこかもわからない異世界で昼寝をしている。
視界一面に広がるのは蒼穹、周囲には草の絨毯。
傾斜になっているので寝やすい。
下には川の水が緩やかな音を立てて流れていた。
はぁぁ、大自然の恵みを感じるよ。
マジで気持ちいい。
たまにはこうして休むのも必要だ。
強者を斬り殺す旅は確かに楽しいが、しすぎると自分を制御できなくなるからな。
適度にこうした休憩が必要だ。
「ここには目立った強者はいそうにねぇし、もうちょっと休んでから、別の世界へ行くかねぇ」
欠伸を漏らしながらそう呟くと、俺へ近づいてくる足音が。
足音と呼吸の使い方から見て、子供か。
それもこの気配……
人間じゃねぇな?
ただ、敵意は感じねぇ。
なんの用だ?
「……」
影がさしかかったので目を開けると、つぶらながら鋭い瞳が俺を覗いていた。
俺は身を起こし、あらためてソイツの全貌を見る。
女の子だった。
年の頃八歳ほどだろうか。
艶のある黒髪に鋭い双眸、ぷにぷにの頬。
純白のワンピースを着ており、頭には麦わら帽子を被っている。
女の子は俺を見て、静かに礼をした。
「はじめまして」
「……はじめまして。で、俺に何の用だい、お嬢ちゃん」
女の子は俺をマジマジと観察した後、懐から取り出した写真と見比べ、頷く。
そして、麦わら帽子を取った。
ひょっこりと現れる黒い狐耳。
同時にお尻のほうからもぴょこっと尻尾が二本生えてくる。
成程、妖狐か。
それも、相当な力を持っているな。
「わたし、二葉と、いいます」
「俺ぁ大和だ」
この後、二葉は柔和に微笑みながら、とんでもない爆弾発言をかましてきた。
「会いたかった……大和パパ」
「…………は?」
「大和パパ、私のパパ。お父さん」
二葉は俺に抱きつく。
……。
……。
……。
……。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」