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大和さんの異世界漫遊譚 第二部【未完】  作者: 桒田レオ
《第一章・惑星バトル編》
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第四証人「戦神・ハルス」


 さて、遂にこの時がやってきたな。

 超越者と戦える日が。

 ふふふふ。


 暇つぶしで出た片田舎の大会であるが、まさかここまでの大物が紛れていようとはな。

 超越者、黒鬼、大和。

 超越者随一の剣の使い手にして、殺人剣を極めしもの。

 その強さは超越者の中でも上位にランクインしている。


 先の赤修羅との戦いも制してみせ、更には白羅刹、金獅子の二人がかりでも止めることはできなかった。


 ふふふふふ。

 とある外宇宙で主神と戦神を兼任している俺は、強者に飢えていた。

 ずっと戦ってみたいと思っていた。

 超越者と。


 負けるは必定、もしかしたら手も足も出ないかもしれない。



 だが、それがどうした。



 強者に挑むことこそ我が生き甲斐。

 戦士として最上級の誉れ。

 悠久の時を無駄に生きながらえるのであれば、いっそのこと派手に散ったほうがいい。


 ああ、どうしてこんなことに先日まで気づけなかったのだろうな。

 馬鹿馬鹿しい。

 俺は主神をしているうちに、戦神として、戦士として一番大切な情熱を忘れていた。


 さぁ、超越者よ。

 闘争の時だ。

 貴様を思う存分楽しませてやる。

 我が命にかけてな。



 ◆◆



「さてさて、この剣闘大会も今日遂に決着がつきます! 東の門よりー! 超越者、大和選手の入場です!!」

『ワァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!』


 褐色肌のサムライ、大和が現れる。

 相変わらずいいオーラを纏っている。

 戦士として、理想のオーラだ。

 何時如何なる時でも戦闘できる、二十四時間臨戦態勢。

 俺も、お前を見ていて、思い出したんだよ。

 お前に感謝しなければな。


「お次は西の門から、とある外宇宙で主神をしております! 戦神ハルス選手の入場です!!」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!』


 さて、俺も既に準備は整っている。

 何時でもいいぞ。


「大和選手とハルス選手、超越者と神、果たしてどちらが強いのか!? 決着を皆で見届けましょう!! それでは、試合――開始!!!!」


 銅鑼が鳴り響く。

 大和は……消えていた。


「!?」


 俺は瞬間的に腕をクロスさせ、ガードする。

 するとすぐに両腕が斬り飛ばされた。


 目の前にいる大和は、既に刀を二本持っており、口元を半月に歪めていた。


「なぁ神様よォ!! テメェなら多少力を出してもいいよなぁ!!」

「……ふっ、はははは!! 無論だ!! 楽しませてやるとも!! 命をかけてな!!」


 俺は両腕を再生させ、地面を踏み抜く。

 すると、闘技場が崩壊を始めた。


「み、みなさん!! 危険ですので一時撤退してください!! ひゃー!! マジぱねぇ!!」


 観客たちが慌てて逃げ出す。

 大和は気にした素振りを見せない。

 いいや、コイツは俺しか見えていない。

 周囲のことなんて、微塵も気にしていない。

 完全にスイッチが入っている。


 そうでなくてはな!! 

 俺も周囲を気にすることをやめよう!!


 ありったけの神気を両手に集中させ、解放する。

 有形無形問わず全てを消滅させる破壊の閃光だ。

 威力は惑星バトルを百個ほど破壊する威力。

 食らうがいい!!


 放った瞬間、閃光は二つに割れた。

 大和が斬り裂きながら突貫してくるのだ。

 むぅ!! やはりこの程度の技では足止めすらできないか!!


 割れた閃光は大陸を焼き尽くし、宇宙に消えていく。

 既に闘技場の面影はなく、瓦礫の山となっていた。


「……脆い。テメェとやるには、惑星じゃ脆すぎる」

「そうだな、ステージを変えよう」


 俺は指を鳴らし、自分と大和を外宇宙へ転移させる。

 星、銀河、銀河団、超銀河団、宇宙、多次元宇宙、超多次元宇宙。

 その先の世界が外宇宙だ。


 ここでなら、俺は全力を出せる。

 だが、大和。

 お前はこの世界でも、ほんの少ししか力を出せないのだろう?

 知っているとも。

 であればこそ、せめてお前を愉しませなければならないなぁ!!


 俺は瞬時に距離を詰め、肉弾戦に突入する。

 戦神として、格闘、武器術は極めている。


「俺に近接戦闘で挑むってか? その度胸は認めるが……愚策だぜ」

「生憎、これが一番得意でね! しっくりくる!」

「ククク、そうかい」


 剣、刀、槍、槌、斧。

 数々の武装を一気に顕現させ、怒涛の攻めを見せる。

 しかし大和はそれぞれの捌き方を熟知しており、完璧に対処してくる。

 武具を一つ一つ破壊され、最後は丸腰になってしまった。

 であれば、格闘で決める!!

 俺は素手のほうが強い!!


「ほぅ、流石戦神だ。いい強さだぜぇ。燃えるねぇ」


 大和は特殊なオーラを身に纏う。

 あれは……


『疾きこと風の如く』


 あれは……気か。

 森羅万象を司る生命エネルギー。

 ここまでの密度のものは初めてみる。

 流石は超越者だな。


 観察したところ、身体に纏っただけだ。

 身体能力や五感の強化、治癒能力の促進をはじめ、毒耐性も高くなっているな。

 ふむふむ……


「単純なステータスアップか、しかし、厄介だな!」


 回し蹴りを放つと、大和は肩で受け止め、威力を別方向へ流す。

 知っているぞ! 合気だろう! 力のベクトル操作!

 それがある限り、俺はお前に傷を付けることすらできない。


 ぶっちゃけ、もう詰みだ。

 どれだけ策を巡らそうとも。

 どれだけ修練しても。

 お前を超えることは、できない。


 であれば、心。

 心だけは、決して負けない。

 俺はお前に勝つ。

 それだけを信じて、突き進む。

 前進あるのみ!!


 全身全霊、戦神ハルスの全てを受け止めてみせろ!!


「いいねぇ!! いいねいいねぇ!! その目!! 最高だぜぇ!! 諦めてない目だ!! そういう目、大好きだぜ!! 諦めてない奴ってのは、どんなに弱くても、芯があるんだ!! 最後まで俺を愉しませてくれる!!」


 喜んでもらえて何よりだ!!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 ラッシュラッシュラッシュ。

 無我夢中に攻撃を加える。

 それしかできない。

 それしか、ない。


 大和は嬉々として突撃してくる。

 合気もロクに使わず、全身を殴打されながら、ただ俺の首めがけて突っ込んでくる。

 とらせはせん!!

 とらせはせんぞォォォォォォォォ!!!!


「大和ォォォォォォォォォ!!!!!」


 一瞬の交差。

 俺達は時が停まったかのように動きを止めた。


「……ふっ、やはり、無謀であったか」


 大和の日本の刀は俺の首元でクロスされていた。

 大和は満身創痍で微笑む。


「満足だ。テメェは確かに弱かった。だがその魂は、強く滾っていた。俺も思わず熱くなっちまったよ。防御なんて考えないで、ガチンコで勝負しちまうほどにな」

「……ありがとう、大和。俺に戦神としての本質を思い出させてくれて」

「礼を言うのはこっちだ。ありがとうな。本当に、楽しかった」


 大和は悲しそうに瞳を細め、そして俺の首を飛ばした。


 ふは、ふははははははは!!!

 ああ……最高に幸せだ。

 楽しかったぁ……



 ◆◆



 アルティメットワンが終わってから数日後。

 私、ラビは娼館で雑用をしながら、母親の看病に勤しんでいた。


 娼館の仕事は、雑用オンリーにしてもらった。

 給料は大分下がるが、他の仕事と掛け持ちすれば、どうにかなる。

 私は……大和様以外に抱かれたくない。

 そう、強く想うようになっていた。


 アルティメットワンの優勝者は大和様だった。

 私もスクリーン映像で見ていたけど、大和様は、やはり超越者だった。

 強い、なんてものではない。

 私の少ない語彙力では、彼の強さを表現しきれない。


 闘技場はほぼ全壊、北の大陸には壊滅的なダメージが残ったが、幸い、あそこは森だけしかなかったので、被害者は出なかった。


 あれから大和様は別の世界へ旅立ってしまった。

 せめて、一言かけてほしかった……

 そう思っていると、私宛に手紙がやってきた。

 大和様からだった。



 アルティメットワンで貰った賞金、いらねぇから全部やる。

 母親の治療代になるだろう?

 だから、無理して娼婦なんてすんなよ?


 大和より。


「大和様の……ばかっ、こんな、私……っ」


 後に私は母親と一緒に森の奥深くに引っ越し、ひっそりと、平和に暮らし始めた。

 お金に不自由しないから。


 大和様……

 また、アルティメットワンに参加しようと思ったなら……

 いいえ、他の剣闘大会でもいい。

 惑星バトルに来た時は……


 私、会いに行きます。

 私は今でも……あなたのことを、お慕いしていますから。

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