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大和さんの異世界漫遊譚 第二部【未完】  作者: 桒田レオ
《第一章・惑星バトル編》
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プロローグ



 はじめまして、私は惑星バトルで行われる剣闘大会の受付嬢をしているものです。

 惑星バトルは剣闘大会が盛んに行われている惑星です。

 元々は獣人族が密かに暮らす辺境的な惑星だったのですが、三千世界の富豪達がここを剣闘大会の聖地にしようと方策し、現在に至ります。


 惑星バトルでは様々な内容の剣闘大会が開かれており、出場する者達も多様です。

 中でも今年は「ある大会」が開催されるので、受付兼酒場のここは大渋滞。

 今も荒くれ者達が酒をがぼがぼ飲みながら、他の出場者の様子を何気に探っています。

 中には普通に飲んでいる人もいますが……


 まぁ、そんなこと私には関係ないですね。

 はぁ、猫耳もしおれてきた。

 疲れるんだよねー、この仕事。

 給料がいいからしてるけど。

 剣闘大会に出場する選手って、大体荒れた人ばかりだから。

 困っちゃうにゃー。


 富豪さんたちがこの惑星を剣闘大会の聖地に定めたのはいいよ?

 実際、原住民の私達にも利益の数パーセントは入っているわけで。

 私もこうして働かせてもらってるし。


 でも、平穏な生活が一番だにゃー。


 そう思っていると、酒場に一人、また客人が入ってきた。


 編み笠を被った男だ。

 身長は二メートルほどか、がっしりとした肉体、小麦色の肌。

 サムライ装束の上から緋色のマント、腰には刀を大小差している。


 他の剣闘士に比べれば対して目立つ容姿ではないのだが、私も、酒を飲んでいたものたちも、彼を見つめていた。

 彼には、視線を引き付ける何かがあった。


 サムライは私の元までやってきた。

 私は営業スマイルで聞いてみる。


「御用ですか?」

「ああ、剣闘大会に出場したいんだが」


 サムライは傘を取る。

 私は思わず頬を赤らめた。

 種族は人間だろう。

 驚くほどの美丈夫だ。

 灰色の三白眼、ギザギザの歯。

 肉食獣を連想させるが、鼻や口元などのパーツが細かく整っている。


 私はハッと我に返る。


「ど、どの剣闘大会にエントリーなさいますか?」

「アルティメットワンに出たい」


 そうサムライが言った瞬間、酒場が笑い声で包まれた。

 陽気なものではない、嘲笑だ。

 私も苦笑しながら、サムライに問う。


「あの、本当に、アルティメットワンに出場なさるんですか?」

「おう、何かおかしいのか?」

「……お客様は、人間ですよね?」

「そうだ」

「……無礼を承知で申し上げます。アルティメットワンは危険な大会です。他の剣闘大会をお勧めします」

「ふぅん、どんな風に危険なんだ? 一応話は聞いているが、お嬢ちゃんの口から直接聞きてぇ」

「アルティメットワンは多種多様な剣闘大会が開かれている惑星バトルでも種族、経歴、武器の使用、その他一切の出場条件を問わない無差別級剣闘大会です。試合はどちらか死ぬまで続行されるため、最後に立っているのは優勝者ただ一人です。出場人数は四万を超えます。優勝者には巨万の富と生涯の名声、そして最強の称号が与えられます。……こんなところでしょうか?」

「よし、出る」

「……あのー、お話しを聞いていらっしゃいましたか?」

「ああ」

「アルティメットワンには神魔霊獣が普通に出場しています! 人間であるあなたが出場すれば、死んでしまいます!」


 はっきりと告げた。

 酒場にいる剣闘士たちもうんうんと頷いている。

 しかしサムライは、ニヤリと笑う。


「いいねぇ、いいねいいねぇ、たまらねぇよ。強い奴等がゴロゴロいるんだろ? 俺にも参加させろよ」

「……本当に、よろしいのですね?」

「ああ」

「……わかりました。では、お名前とサインをこの書類にお願いします」


 サムライはささっと書類に名前とサインを記載する。

 私は彼の名前を見て、声を出して驚いてしまった。


「大和……!!? 大和って、あの超越者の!!?」

「クックック」


 私の声に同僚の受付嬢も、酒場の剣闘士たちも驚愕している。

 名前だけならまだいい。

 しかしサムライは、格好までそっくりだったのだ。

 サムライマスター、世界を救った伝説の剣豪。

 いいや、今は違うか。


 強者を求め異世界を渡り歩く鬼神。

 無敵の辻斬り。


 大和。


 もし彼が本物だとしたら……

 今回のアルティメットワンは……


「これだけでいいか? じゃあもう行くぜ。さっさと宿で寝てぇ」


 サムライ、大和さんは欠伸を漏らしながら去っていく。

 私達は彼の後ろ姿を、呆けながら眺めることしかできなかった。


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