04,新しい自分
白い上着を羽織り、これまた白く短い髪を整える。おっと、眼鏡も忘れずに?
……もちろん、これはボクの本来の姿ではない。語り手さんに頼んで、髪と目の色素を抜いてもらった。本当は長い黒髪に制服姿だけど、なにも妄想の中でまで片山梨子でいる必要はないだろう。
むしろボクは妄想の中でのみ、本当の自分になれる気がする。
置かれていた羽ペンを取り、最後に、語り手さんに貰った分厚い本を持つ。身支度を終え、彼に挨拶をすることにした。
「語り手さん、色々とありがとうございました!」
「どういたしまして。〔物語〕を集め終えたら、1度こっちに戻ってくるんだよ」
「はい、わかりました!」
分厚い本を開いた。真っ白なページだらけの本の、最初のページにだけ魔法陣が描かれている。そこをペンで叩くと、魔法陣から光が溢れだし、ボクを照らした。
大冒険は、すぐそこに……!
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい……〈リーテ〉」
妄想少女、片山梨子は現実の彼方へ消え去った。ボクは、新人〔語り手〕リーテだ。
ボクを取り囲む光が、だんだん強くなっていく。
視界が白く染まる前に、そういえば語り手さんの本名を聞いてないな、と思った。次に会った時、聞いてみようかな?
リーテは眼鏡っ娘。