03,期間限定の幸せ……?
ボク、片山梨子は、とても幸せだった。なんたって、妄想の中にいるからね!
今回は、ボクが〔語り手〕なるものに選ばれた、という設定らしい。
白づくめの語り手さんが説明してくれたところによると、〔語り手〕と言うのは、様々な世界で起こった事を記録し、それを〔物語〕として語り継ぐ人達のようだ。記録係兼読み聞かせ、といったところか。その使命を全うするため、今日は〔語り手〕としての事前研修がある。
やっぱり……妄想、最高!
事前研修という名の作文執筆は、半日で終わらせた。……最低でも3日はかかるって聞いていたのに、だ。
驚愕している語り手さんに、明日から〔語り手〕となり〔物語〕を集めてこいと言われた。
まあ、これは主人公補正なんだろうな……はっ、いけないいけない。メタ思考は控えなければ。〔妄想〕が終わってしまう。そうしたら、あの灰色の現実がのしかかってきて……
自分が足元から凍りついてしまいそうな錯覚に襲われた。
この〔妄想〕を、この期間限定の幸せを、少しでも長く続けるために、余計な事は考えないようにしなければ。
……もう、寝ようか。明日からは大冒険だ。