表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/44

27,彼の謎、ボクの試練

 それは、語り手さんが〔全世界要注意人物図鑑〕を片付けようとした時の事だった。

「待て!」

 叫んでミツキ君は、その本を語り手さんから奪い取った。

「うわ!」

「何してるんですか、ミツキ君!?」

『ミツキ、あんたねぇ……!』

 ボク達の言葉にも、彼は答えない。手をかざすことでページを捲れるのは持ち主だけのようで、ミツキ君はごく普通の図鑑の使い方をしている。まるで、必死に何かを探すように。

様々な人間の立体画像が、現れては消えていく。

「返してくれ! ミツキ氏!」

 語り手さんが声を上げた。

 ボクは驚いて思わず、ミツキ君への呼びかけを止める。それはミランダさんも同じだったようで。

『あんた……どうしてそんなに焦ってるんだい?』

「…………」

 彼女の問いかけに、語り手さんは返答に詰まる。そしてその表情が、下半分だけでも分かるほど絶望に染まった。

 ミツキ君のページ捲りが止まったその場所には……語り手さんの立体画像があったのだ。


 ミツキ君によると、図鑑が捲られる時に、語り手さんの立体画像を見かけたという。

「1度目は気のせいかと思ったのだが、先程、また語り手殿の絵が見えたのでな」

「……参ったなあ。ミツキ氏の動体視力を侮っていたよ」

 取り繕うように、彼の口元に明らかな作り笑いが浮かぶ。

『あんたは、危険人物なのかい……?』

 声に警戒を滲ませるミランダさん。

 ボクは疑問と疑惑を紐解くため、図鑑に目を通すが……残念ながら、何語かも分からない文字で書かれていた。

「違うよ。危険人物なら、〔語り手〕の教育係なんてやってない」

「じゃあ、あなたは、いったい……」

「それは」

 畳み掛けるように言われる。

「君が、故郷の話をしてくれたら、話そう」

「…………!」

 自分だけ話すのは不公平だ、と、そういう事らしい。


 今まで散々逃げてきたボクに、立ち向かえというのか。 この〔妄想〕が始まった時から、ずっと目を背けてきたものに。


 ボクはどんな顔をしていたのだろうか。苦笑した語り手さんが口を開く。

「それか、現実世界へ〔物語〕を集めに行ってもらうか」

「……分かりました。そちらで」

 そう答えていた。〔現実〕へ行くのも嫌だが……語り手さんの正体も知りたい。

〔語り手〕などやったせいで、好奇心旺盛になったのかもしれない。彼の事を、どうでもいいと思っていないからかもしれない。

「少し、準備をさせてください」

 心の準備を。口の中でそう呟いて、ボクは語り手さんの部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ