第34話 救世主は役立たず
突然の侵入者に、時が止まった。
「とうっ!!」
その隙に、と、力の緩んでいたコクヨウの手を振り払い、逃げる。
今までの人生でもまれに見るほどの素早い動きでベッドから飛び降り、できるだけ距離を取った。
危ない危ない。
もう少しでホントにやっちゃうところだったよ。
やっちゃうというか、やられるというか、まぁ、あれだ。
それを、あの場ですぐに拒否できなかった自分がホントに嫌だ。
あいつの思い通りになってなるものか!
私は意地でも元の世界に還るんだから!!
自分の意思を再確認した上で、状況を把握する。
部屋の隅っこにぺたりと張り付いた私と、対極の端にあるベッドの上にいるコクヨウ。
怒っているかと思いきや、その表情は若干の呆れ顔?
そして、さっきの声の正体は――――
可愛い女の子。
…ただし、半透明で宙に浮いてる。
つまりこれはアレですね。
「精霊さん?」
「ホタル、だいじょうぶ?
あたしたちがきたからもう安心だよ!」
私の問いかけに対する返事ではなかったけれど、半透明のその子は、ソラと同じようなオーラをまとっている。
空色のソラとは違って、この子は薄桃色。
どこかで見たことがあると思ったら、先ほど中庭で見た精霊の片割れのようだ。
「助けに来てくれたの?」
「そう、ちょっと道にまよっちゃって、おそくなっちゃったけど。
まにあった? 魔王にくわれてない?」
「なんとか、無事、かな…?」
道に迷うとか、ソラみたいだ。
精霊ってみんなどっか抜けてるのかな…。
食われる、喰われる…キスはくわれたことになるのかな。
ま、無事は無事、かな。
…あんまり足腰に力が入んないんだけどさ…。
さっきの機敏な動きが嘘のように、若干プルプル震える自分の足を気遣いつつ、コクヨウを見る。
ベッドに腰掛けて、薄桃色の精霊さんを見ている。
さっきまでの呆れ顔からまた違った顔になってる。
その顔、どっかで見たことあるなぁ。
そうそう、あれだ、ソラを見るときの顔。
なんていうか、邪魔なものを見てます的な?
つまり、この流れは…
「あ、ちょ、ホタ―――」
…そして精霊さんは魔王によってドアの外に追いやられ、またもや魔王と二人きりになりましたとさ。
とさ、じゃないよ!!
役立たず~~!!
「やっとついたぁ~」
と思ったら、またもや精霊さん登場。
今度は青色の精霊さん。
言わずもがな、中庭で会ったもう一人の精霊さんだ。
なんだかおっとりした精霊さんだなぁ、と思ってたら。
「ホタル、大丈夫?
頑張ったんだけど場所がわかんなくって……」
「…まだいたのか」
「…え?? あれ~~??」
私との会話も出来ないままに、コクヨウによって追い出されちゃったよ。
……精霊ってあれか? 役には立たないのか?
久しぶりの更新なのに短くてスイマセン・・・。