第30話 護ってくれるもの
久々の更新です!!
お待たせしました!!
パタン、という扉の閉じる音で我に返った。
ぼんやりしつつも辺りを見渡せば、見覚えのある景色。
うっすら黒い魔力が満ちた、魔王様の部屋だ。
けれど、あれからどうやって部屋に戻ったのかさっぱり思い出せない。
気付けば見覚えのあるベッドにぼんやりと座ってた。
側にヒトの気配はない。
記憶を何とか呼び起こしてみれば、つい先ほど、この部屋まで送ってくれたアウインが退出していったのだと思い当たる。相変わらず、あれからどうやってここま帰ってきたかは全く記憶にないのだけれど。
ちょっとイロイロありすぎて混乱してるみたいだ。
なんていうか、何にも考えずに眠りたい…。
ぼんやりしたまま、ベッドに体を預ける。
柔らかなベッドに吸い込まれるように、眠気が降りてきた。
なんだかとっても疲れた。部屋の外があんなに危険だったなんて、思いもしなかった。
もうこのまま、寝てしまおう。外は恐いけど、ここなら大丈夫。
……大丈夫?? 本当に?
――――ココは、ホントに、安全な場所??
……イヤイヤ!!
急速に眠りの世界へと向かっていた意識が一気に覚醒する。
ここが安全な場所?? 答えはもちろんNOですよ!
危うくこんな危険な場所で不用意に寝るとこだったよ!
ガバリと起き上がり、辺りを伺う。窓の外は明るい。あれからそんなに時間はたってないみたいだ。
こんな悪の本拠地で無防備に寝ようとするなんて、私はなんてウカツなんだろう!
部屋いっぱいに広がる魔王の魔力。
この部屋の外は色んな色の魔力であふれていた。でも、ここには魔王の魔力しか見えない。魔王の魔力で護られているみたいだ。
そのことに、ちょっと安心しちゃった自分がくやしい。あんなむっつり鬼蓄魔王にいいように乗せられている気がする。なんてこったい。
そういえば、ソラはどうしたんだろう? 回廊に締め出されてたっぽいけど…。
あの中庭にいた2人の精霊さんも、せっかく手を振ってくれてたのになぁ。また、会えるだろうか?
『会えるよ!』
突然の声とともに現れたのは、さっきまでアウインに締め出されていた役立たずな精霊、ソラだ。
「ソラ、大丈夫なの?」
きいてみて、しまった、と思った。ソラの表情が目に見えて曇ったから。
『ホント、むかつくよね!! 精霊の人権なんだと思ってるんだろ!!
これだから魔族って嫌いなんだよ!!』
泣く…かと思ったソラは、いつかのように自分を追い出した人物に対する怒りをぶつけてきた。
なんていうか、ソラらしくて安心する。
「会えるって、どういうこと?」
このままソラの愚痴を聞いたところで埒があかないと本能的に察知して、話題を戻す。
何より気になってたことだし。
「また、あそこに行けば会えるって事? けど、魔王はもう簡単には外に出してくれないと思うんだけど」
正直、私自身もあまり外に行きたくない。
自分を護るだけの力がない今のままでは、また恐い目に合うのが目に見えてるから。
『ううん。もうあの2人はホタルの事好きになってたから、きっと向こうから会いに来てくれるよ』
「向こうから? それは嬉しいけど、私の事好きって? まだ話もしたことないのに」
『精霊は、見ただけでその人の事好きかどうかわかるの。それにあの時2人とも、ホタルの事護ろうとしてたし』
そういえばあの時、「ホタル!」って叫ぶ精霊さんの声を聞いた気がする。
護ろうとしてくれてたんだ。なんか、うれしい。
「ソラも、ありがと」
『え?』
思い出したようにお礼を言うと、キョトンとした感じで返された。
でも、ちゃんとお礼、言いたかったんだ。
「私の事、護ろうとしてくれて、ありがとう」
『そんな…私は何にも、出来なかったのに…』
「それでも。私のこと心配してくれて、護ろうとしてくれて嬉しかったから。ありがと」
危険がいっぱいで、命が狙われてて、でも、それでも私を護ろうとしてくれる存在。
それって、とても力強い。
そんな精霊たちが付いていてくれるなら何とかなるかも、なんて、そんな風に思うんだ。
「なんだ、元気そうだな」
そんな声とともに突然現れたのは、この部屋の主。
そして、それとともに姿の消えたソラ。
扉の外に移った気配に、前途はまだまだ多難だな、なんて、人事のように考えてしまう私だった。
…はぁ……。