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白馬の魔王様  作者: あむ
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第27話 魔王様の側近

「本当に俺が相手でいいのか?」


 魔王城の一角で、アウインが魔王に問いかける。

 魔王とその側近という間柄でありながら、2人しかいないときは少し砕けた話し方になる。魔族第1位である魔王と、第2位のアウイン。もちろんその魔力の差に大きな開きがあるものの、一番近しいものとして、陰日なたからサポートしてきた。長い年月、戦いの日々も退屈な日々も、共に過ごしてきた主従でありながら友人のような間柄だ。



 そんな2人が話す内容はもちろん、2日前に召喚した娘のことだ。

 最近の話題はこれしかないと言ってもいい。


 ついさっき、娘の部屋の警備をしていた者から、彼女が部屋を出たがっていると連絡が入った。

 ここに来て2日。あの部屋にいるだけでは暇なのだろう。

 だが、まだ今のこの城は彼女にとって安全とは言い切れない。出たいといって、はいそうですかと出してやるわけにもいかない。

 陛下もそう伝えているであろうに、まったく、危機感がない。

 まぁ平和な世界から来たようだし、暇をもてあましているようだから、仕方ないのかもしれないが。


 で、冒頭のセリフになる。




「俺より、陛下が行くべきなのでは? もっと一緒にいればいいじゃないか」


 彼女に城を案内してやって欲しいという陛下に、疑問を感じるのは俺だけではないはずだ。


 彼女がきて2日。陛下の機嫌はすこぶるいい。

 こんなに機嫌がいいのは数十年ぶりではないだろうか?

 あの時は確か、未開の地へ遠征(という名の暇つぶし)に出掛け、世にも珍しいピンク色のトラを捕獲してきた。珍種というより神種と言っていいそのトラを手なずけたと、2階建ての一戸建てほどの大きさのトラの背に乗って、子供のように笑って帰ってきた陛下を思い出す。

 まぁ、そのことよりも、その日の夕餉にトラの丸焼きが出されて肝をつぶした記憶のほうが鮮明に残っているが。

 

 …ちなみに、夕餉のトラは珍種のピンクのトラではなく、普通のトラだったらしいが。どちらにしろ、魔族とはいえ、飼い始めたばかりのペットと同種を食べる魔王の気が知れない。

 ピンクのトラは、今でも魔王城の一角で大切に飼われている。



 あれ以来となる機嫌のよさ。今朝も、鼻歌でも歌う勢いで執務室に入ってきた。気味悪く思いつつ問えば、返ってくるのはあの娘の話。陛下が纏う魔力もやわらかい。

 機嫌の悪いときは俺ですら近くにいて命の危機を感じることもあるのだから、嬉しいことだ。


 そうまで気に入っている娘ならば、もっと側にいればいいと思うのが自然な流れというものだろう。

 今だって、執務室とはいえ、特に仕事もなく優雅に茶を飲んでるだけなのだから。


「いや、あまり長く居たんでは逆につまらないからな。じっくり少しずつ、じわじわと落としていくほうが面白いだろう? …時間はたっぷりあるのだし」


 魔王にかかれば后探しも暇つぶしのゲームの一環だ。少し、未来の后に同情した。 ま、そういう自分も楽しんでいる一人に違いないのであまり陛下ばかりを悪くは言えないけれど。


「まぁそういうことなら俺が行って来ます。けど、もしあの娘が俺に惚れてしまっても知りませんからね」


 少しでも陛下を焦らせてやろうと思ったけれど、そんな俺のセリフにも、陛下はにやりと微笑んだだけだった。


「それならそれで、再び俺様に惚れ直させてやるまでさ」


 どこまでも自信満々なのが陛下らしい。けど、他の男に惚れても尚、惚れ直させたいと思うくらい惹かれてるのだと、陛下は気づいているのだろうか。



 魔王様の恋の動向はどうなるのか…。

 しばらく、暇だけはしなさそうだ。


前回のあとがきを裏切って、まさかのアウイン視点。

次話はちゃんとホタルとアウインの回になってますのでスイマセン。

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