表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白馬の魔王様  作者: あむ
25/35

第25話 侍女と精霊

 着替えを手伝ってもらっている間も、コーラルはえらくご機嫌だった。

 ニコニコニコニコ。

 笑うばかりで何も言わない。むしろ、恐い。


「え~っと、何かいいことあったの?」

「もちろんですわ!!」


 聞きたくないけど、聞かないとこの無言のニコニコ攻撃は終わらないと思って聞いてみた。

 待ってましたとばかりにしゃべりだしたコーラルに、やっぱり聞くんじゃなかったとすぐさま後悔したけれど、もちろんもう遅い。


「魔王様と后様が2晩連続で同じ寝所でお休みになったんですよ!! しかも、朝から魔王様はご機嫌な様子でしたし、后様からは魔王様の魔力をまとってらっしゃるし……。まだ本番まではいかれてないご様子ですけど、この分では時間の問題ですわよね!! お2人は心身ともに結ばれ、真の夫婦に……すぐ御子も授かるかもしれませんわね!! お2人の御子ですもの、さぞかし魔力の強い、美しい御子に違いありません!! ……あぁ、早く婚儀の準備を進めなくてはいけないですわ!!」

「な……」


 なんていうか、開いた口が塞がらない。なんだこの人。みたいな目で見てしまう。

 2晩寝ただけでもう子供とか…どんだけ展開速いんだよ。まぁもともと后として召喚されたからそういう期待大きいんだろうケドさ。

 っていうか、私、魔王の、コクヨウの魔力まとってるわけ??

 確かに昨日キスはしたけど、そのせい?


 そう思ってよくよく見れば、自分の体を覆うようにうっすらと、コクヨウと同じ黒い靄が見える。

 なんか、魔王の菌が移ったみたいで気持ち悪い。

 どうやったらとれるんだろうか?





『ホタルぅ~~!!』


 黒い気をまとってしまった自分の体をどうしたものかとを見ていたら、どこからともなく声がした。

 この声は、ソラだ。

 外したままだったメガネを掛けて見たら、なにやら憤慨した様子のソラが入り口から入ってくるところだった。


「おはよう、ソラ。 何かあったの?」

『何かじゃないよ!! 昨日の夜から私、ここの部屋閉め出されてたんだよ!!』

「え?」


 美少女は怒っていても可愛い、とか関係ないことを考えてたけど、そんな私にはかまわず、ソラはぷりぷりしながら昨日の様子を語ってくれた。


 いわく、昨日ベッドでコクヨウと2人で寝ることについて話し合って(怒鳴りあって?)いる最中、なんとか私の役に立とうと奮闘していたはずなのに、気づけば部屋の外に出されていたらしい。

 その後どう頑張っても中には入れず、廊下でうろうろしていたんだとか。

 そういえばあの話の途中からソラの声を聞かなかった。言い合いに夢中で気が付かなかったけど…。今朝まで姿も見ないから寝てるものと思ってたんだけど。


「ごめん」

『ホタルは何にも悪くないんだよ!! 魔王が結界を張って、私を追い出したんだよ。

私、ホタルが魔王に食べられちゃうかと思って心配で心配で…』


 ソラの不在にも気遣いまま、むしろ精霊も寝るのかなぁとかのんきなことを考えていた自分が申し訳ない。ご主人様失格だ。でも、ソラの怒りの矛先は魔王のみにあるようだ。

 ついでに、昨夜からの怒りと心配の反動か、ひとしきりしゃべった後、しがみつかれて泣かれた。

 美少女は泣き顔も可愛いけれど、自分のことで泣かれるのはどうも落ち着かない。





「后様は精霊が見えるのですか?」


 泣き止まないソラをどうしたものかと思っていたら、第3者から声がかかった。

 そういえばコーラルもいるんだった。


「あ、そう。大気の精霊のソラ。 コーラルも見えるの?」

「いえ。なんとなく気配を感じることは出来ますが、姿は見えませんし、声を聞くこともできません。」


 あぁそういえばそうだった。精霊は基本、魔族には見えないんだ。なんでかコクヨウには見えるみたいだけど。まぁあの俺様魔王様には不可能はないらしいしね。


「このあたりにいるのですか?」

「うん、そう。私にしがみついてる」


 見えない空間を見つめるコーラル。その目はものすごく、真剣だ。そのにいるはずのソラの姿を探して、目を凝らす。だけれど、ソラが見せようとしていない以上、コーラルにはソラの姿は見えない。

 しばらくして残念そうに私に視線を戻してきた。


「さすがお后様ですわね。精霊の姿が見え、会話まで出来るだなんて…うらやましいです…」


 なおも残念そうに、ソラがいる空間を見つめるコーラル。その目はとても、哀愁を帯びている。

 泣いていたソラも、その視線を感じてか、私から顔を上げた。


「コーラルは精霊を、悪くは思ってないの?」

「もちろんですわ!! 中には自然の力を借りて駆使する精霊を、魔力を持たないモノとして下等とみなす魔物もおりますけれど、私はそうは思いません。私たちには扱えない自然の力を使える聖なるモノ、そう思っております」


 魔物はみんな、精霊を嫌ってるものと思っていたけれど、そうでもないらしい。


「私の生まれた場所が人間界に近かったせいもあって、小さい頃は精霊もたまに姿を見せてくれたのです。…それはそれは、光をまとった美しいモノ達でございました…」


 うっとりとその姿を思い浮かべるコーラル。…なんだかその笑顔がエロい。さすが淫魔。

 横を見ると、ソラもどうしていいかわからない様子でそんなコーラルを見つめている。


「姿、見せてあげたら?」


 その様子に、魔族への嫌悪感みたいなものは感じられなかったので、ソラにだけ聞こえる音量で言ってみた。第一、3人でいるのに1人だけ仲間はずれにしてるみたいでなんか居心地が悪いし。


『はい』

「あぁ!! 精霊!! 本物ですのね!!」


 返事と共にコーラルにも姿が見えるようにしたらしいソラを見つめて、コーラルが歓喜の悲鳴を上げた。キラキラした瞳でソラを見つめる。

 対するソラは、困惑気味だ。

 嫌っていた魔族からの羨望のまなざしに、どうしていいかわからないのだろう。


「わたくし、この度后様の侍女を魔王様より仰せつかりましたコーラルと申します。ソラ様、これから共に后様のお側でお仕え致しましょう!!」

『あ、はい…』


 なんだか温度差がすさまじいけれども、2人の顔あわせは無事に終了したようだ。


「ま、何はともあれ、2人とも、よろしくね」

「『はい』」


 声を揃える2人を見て、姉妹がいたならこんな風かなぁなんて、関係のないことを思っていた。



なんか区切りが悪くて、いつもより長め。

コーラルとソラ、仲良くなれるといいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ