第22話 二つの月
何事もなく、夜は更けた。
はい、深夜です。
寝れません。
私だって、そこまで神経図太くないんだよ。
昨日はなんかいろいろあってすぐ寝ちゃって、さらに朝までしっかり熟睡でしたけども。
…だからって、そう毎晩、こんな昨日今日会ったばかりの男の隣で寝れるほど、肝の据わった女じゃないのですよ!!
なんて力説したところで、魔王様はスヤスヤお休みのご様子。ソラも夜は寝るのか、メガネを外したせいで見えなくなっているだけなのか、声も聞こえず静かな夜。
そっと天蓋を開けてみれば、部屋のカーテンの隙間から光が見えた。
うっすらと室内を照らす、淡い、青白い光。
「月……?」
知らず、声に出ていた。
けれど、振り返ってみても、コクヨウは変わらず眠っていてホッとする。
そっと起き上がり、天蓋の外へ。
ふかふかの絨毯は、足音もかき消してくれる。
たどり着いた窓の外には、大きさの違う2つの月が浮かんでいた。
「月も、2つあるのか…」
そのままぼんやりと月を眺める。
二つの月が輝く外は、元の世界よりも明るい。さらに、月を中心にキラキラと金色の輝きが舞っている。月にも魔力があるのだろうか?
念のため、枕元に置いていたメガネをかけて見てみれば、金の輝きは見えなくなった。
やっぱりここは、知らない世界。
再びメガネを外し、空を見る。
黒い闇に浮かぶ、金の月。そして、星々の輝きと魔力の煌き。
「キレイ…」
知らない世界、だけど、その光景はとても、キレイに見えた。
神秘的で、幻想的。この世のものじゃ、ないみたいに。
ふと、窓枠に置いた手に雫を感じた。
知らず、涙がこぼれていたみたい。
この夜空以外にも、キレイな光景はいっぱいあるんだろう。
けど、それ以上に、この世界が恐い。
知らない世界が、恐い。
誰も頼る人のないこの世界が、恐い。
また雫を感じて目をやれば、涙に濡れる手の中で、愛用のメガネが淡く光っていた。
今回短め。次回に続く。