第21話 ベッドorソファー
「そういえば、コクヨウはソラのこと見えてるの?」
コクヨウと距離をとりながら、さっきから気になっていたことを聞いてみる。
そういえば昨日も精霊の声がどうのとか言ってた気がするし、ソラのほうを見ながら話してたりするから、姿も見えているのだろうか?
「俺様に不可能はない」
「あ、そう」
なんかこいつの相手疲れてきた。なんでいつもこんなに自信満々なんだろう?
俺様魔王様だから?
「また失礼なことを考えていただろう?」
「別に」
なんでこいつは私がこんだけそっけなくするのにどことなく面白そうなのだろうか?
もしかしてマゾ??
「俺様をそんな目で見るのはホタルくらいのものだぞ?」
「ふーん。どんな目?」
「…もっと崇め奉れ」
「無理」
やばい、魔王が阿呆に思えてきた。または可哀相な子?
「お前と話すのは疲れる。寝るぞ」
「それはこっちのセリフです」
私の可哀相な子を見る目に何を思ったか知らないが、早々に目を逸らされた。
人と話すときは目を見て話すものですぞ?
っていうか、寝るのか?
魔王の可哀相っぷりに聞き逃してたけど、寝てしまうのですか?
ここで?
昨日はなんか疲れちゃってあのまま寝たけど、このまま毎晩なんて恐ろしすぎる。
コーラルに頼んでなんとか客間を用意してもらおうとか思ってたんだけどなぁ。すっかり忘れてた上に、さっきの話だと無理っぽいよなぁ…。
「私、そこのソファーで寝てもいい?」
「かまわないが、朝そこで寝ているお前も見て、コーラルはどう言うだろうな」
「コーラル?」
「コーラルは俺様の后の世話が出来ると喜んでいたからな。
そんな后が俺様と共にベッドで寝るのではなく、ソファーで寝ていたら…」
言われて、私を“后様”と呼ぶコーラルを思い出す。
淫魔だと言っていた彼女。
后様の精を奪うのは禁止されているからと言っていた。
けど、私が后ではなかったら? 魔王と共になるのを拒否することは后でないと宣言すること?
「私、コーラルに食べられちゃう?」
淫魔がどうやって精を取るのかはわからないけれど、吸血鬼のように首筋を噛まれる様が脳裏に浮かんだ。血だって出血しすぎたら死んでしまう。精ってやつも、奪われすぎたら死に至る、気がする。
そんなことを思いながらコクヨウに聞いたのに、奴はニヤニヤ笑うだけで否定もしなければ肯定もしない。なんて性格が悪いんだ!!
「俺様だって相手は選ぶ。
ホタルが俺を拒絶しているうちは、お前に手は出さない。
まぁ、少しでも俺に心を許す気があるのならば、今すぐにでも抱いてやるぞ?」
「な、許すわけないでしょ!!」
「じゃ、一緒のベッドで寝ても何の問題もあるまい?」
「う…うん……?」
なんか納得してないままの返事を了解と取ったのか、魔王は一人でさっさとベッドに入ってしまった。
ぽつんと一人残された私。
あれ、この展開って??
うまいこと流された??
そして今夜も魔王様の隣に。
こんなんでホントに私、還れるのかなぁ…。